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昨日の記事「#5057. because の語源と歴史的な用法」 ([2023-03-02-1]) で,この日常的な接続詞を歴史的に掘り下げた.もともとは節を導くために that の支えが必要であり,because that として用いられたが,14世紀末までには that が省略され,現代風に because 単体で接続詞として用いられる例も出てきた.しかし,その後も近代英語期まで because that が並行していたことに注意を要する.
さて,because は意味機能としては「理由・原因」を表わすと解されているが,「目的」を表わす例も歴史的にはあった.昨日の記事の最後に「because + to 不定詞」の構造に触れたが,その意味機能は「目的」だった.理由・原因と目的は意味的に関連が深く,例えば前置詞 for は両方を表わすことができるわけなので,because に両用法があること自体はさほど驚くべきことではない.しかし,because の場合には,当初可能だった目的の用法が,歴史の過程で廃されたという点が興味深い(ただし方言には残っている).
OED によると,because, adv., conj., n. の接続詞としての第2語義の下に,(廃用となった)目的を表わす15--17世紀からの例文が4つ挙げられている.
†2. With the purpose that, to the end that, in order that, so that, that. Obsolete. (Common dialect.)
1485 W. Caxton tr. Paris & Vienne (1957) 31 Tolde to hys fader..by cause he shold..doo that, whyche he wold requyre hym.
1526 Bible (Tyndale) Matt. xii. f. xvv They axed hym..because [other versions 'that'] they myght acuse him.
1628 R. Burton Anat. Melancholy (ed. 3) iii. ii. iii. 482 Annointing the doores and hinges with oile, because they shall not creake.
1656 H. More Antidote Atheism (1712) ii. ix. 67 The reason why Birds are Oviparous is because there might be more plenty of them.
問題の because 節中にはいずれも法助動詞が用いられており,目的の読みを促していることが分かる.
現代に至る過程で because は理由・原因のみを表わすことになり,目的は他の方法,例えば (so) that などで表わされることが一般的となった.冒頭で述べたように,もともと形式としては because that から始まったとすると,that を取り除いた because が理由・原因に特化し,because を取り除いた that が目的に特化したとみることもできるかもしれない.
ちなみに18世紀の規範文法家 Lowth は目的用法の because の使用に注意を促している.「#3036. Lowth の禁じた語法・用法」 ([2017-08-19-1]) を参照.
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最終更新時間: 2024-12-16 08:44
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