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大学は学年末,学期末である.今年度も英語史の概説の授業が終了した.受講した学生に,英語史の授業を通じて学んだ(広い意味で「学んだ」)事柄のうち,最も価値のあるものは何だったか,自由に記述してもらった.以下,目にとまったものをランダムに箇条書きで列挙する.
・ 古英語から中英語(以降)への言語変化の幅が異常に大きいことを知った
・ イギリス王室のルーツがフランス貴族にあると知って驚いた
・ イギリスが多様な人種と雑種の言語で成り立っている国だと学ぶことができた
・ 現代世界において一流の言語たる英語が,イングランド一国のなかですら社会的地位の低い言語だった時代があったことを知った
・ フランス単語には英単語に似たものがたくさんあり,前者が後者を借用したものだと思っていたが,歴史的には逆だということがわかった
・ 受験英文法には近代の規範文法家が制定したものが多いことがわかった
・ 英語の英米差が,イギリス内部の方言差に還元し得ることを知った
・ イギリス(英語)は保守的,アメリカ(英語)は革新的というステレオタイプが,反例を多く示されたことで,崩れた
・ 英語(語彙)がいかに雑種であるかがわかった
・ 英語語彙の階層構造と日本語語彙の階層構造の類似性に気づかされた
・ 不規則な言語項の背後に,種々の歴史的な要因(言語内的・外的な)が関わっていることを知った
・ 言葉は変化するものであり,固定化することはないと知った
・ 言語というものがあらゆる面で有機的で可塑的であることを学んだ
・ 言語の社会的価値や流行は時代とともに変化するものであると学んだ
・ 語彙借用の原因の一つに,流行や格好の良さ(ファッション)があるということを学んだ
・ 内面史と外面史上の出来事が芋づる式に繋がって,知識欲を満たされ,英語学習への意欲がわいた
・ 歴史と言語を照らし合わせると,今まで考えたことのなかったことが見えてきた
・ 英語と歴史を同時並行的に学習していく英語史という分野は非常に魅力的である
・ 好きなもの(英語)を軸にすれば苦手なもの(歴史)もすんなり頭に入ることがわかった(←英語は好きだが歴史が苦手という学生の言葉)
・ 英語(言語)を100%理解することは不可能だと悟り,解放された気分になった
・ 言語は外面史と内面史の両方からとらえていくべきであるとわかった
・ 英語に関係してきた他の言語(やその地域)にも興味がわいた
・ ただ TOEIC を解いたりすることだけが英語学習なのではないとわかった
・ 英語がどうしてこういう形になったのか中学や高校では一度も教わってこなかったので,初めて学ぶことができた
・ 英語の未来について興味を抱き,考察してみるようになった
・ 他のどの授業よりも「英語のおもしろさ」を知ることができた
・ 英語は大学受験の能力検査で使われる一種のパズルだと思っていたが,生きている言語として感じられるようになった
・ 言語と権力というキーワードが結びつくことを知った
・ 言語には優劣はなく,今広く用いられている言語は,たまたま歴史の途中で繁栄を遂げているだけであるということがわかった
・ 言語の力とは,言語そのものではなく,言語を話す人々の社会的影響力であることを知った
・ 言語は母語話者のためにあるという当たり前のことに気づかされた
・ 母語によるバイアスが介入するため,言語の難易度をはかることは難しいことを知った
・ 英語が一種類ではないことを知った
・ 英語が広まったのは,英語自体の特徴とは関係なく,あくまで英語を話していた人々の歴史や功績によるものであるという考えに衝撃を受けた
・ 英語がまとっている一種の正当性・優越性という言説・神話から目を覚ますことができた
・ いかに私たちが抱いている英語への認識が偏り,間違ったものであるかという点を理解することができた
・ 英語を学ぶ上で,「こういうものだ」と決めつけすぎず,その時その時に実際に使われている活きた英語に目を向けていきたいと思った
・ 英語をより多角的に,多面的に,視野を広くして見られるようになった
・ 英語に対する見方だけでなく,モノに対する見方が変わった
・ 現在の物事の姿のみから何かを類推するのはとても難しいということを学んだ
・ 事実として学んだことに対して,ふと疑問を投げかけ,その謎を追究するという姿勢を学んだ
・ 英語史という科目名にとらわれずに,世界史などを学ぶことが結果として英語史についての学びを深めることになった
・ 言語学は苦手だが,歴史は好きであり,この英語史で互いが密接に関わっていると知り,言語学の方面にも興味をもつことができた
・ 英語史の授業は総合的な授業だった
・ 当たり前と認識していたことを深く考えて,原因や背景を探ることのおもしろさがわかった
・ 英語を深く知ろうとする追究心を得た
・ 新たな英語の楽しみ方を知った
・ 他分野の歴史よりも英語史をはじめとした言語史というものは,より身近な歴史なのだと感じた
・ 英語を単なる世界共通の道具としてではなく,イギリスの人々の生活や思いや歩んできた道が詰まったものだと思うことができるようになった
・ 時とともに変化してきた英語の歴史を眺めてきて,もっと言葉を大事にしようと思った
私の英語史の組み立て方や力点の置き方を反映してくれたリアクションが多く,その点では講義担当者冥利に尽きると言うほかない.私自身もそのようなコメントから学んだり,勇気づけられたりすることが多く,早速今から来年度の授業に向けてテンションが高まっている.
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最終更新時間: 2024-11-26 08:10
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