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「#2175. 伝統的な意味変化の類型への批判」 ([2015-04-11-1]) の記事に補足したい.McMahon (184--86) は,意味変化を扱う章で,やはり伝統的な意味変化の類型を概説しながらも,それに対する批判を繰り広げている.前回の記事と重なる内容が多いが,McMahon の議論を聞いてみよう.
まず,伝統的な意味変化の類型においては,一般化 (generalization),特殊化 (specialization),悪化 (pejoration),良化 (amelioration) のほかメタファー (metaphor),メトニミー (metonymy),省略 (ellipsis),民間語源 (folk_etymology) などのタイプがしばしば区別されるが,最後の2つは厳密には意味変化の種類ではない.意味にも間接的に影響を及ぼす形態の変化というべきものであり,せいぜい二次的な意味における意味変化にすぎない.換言すれば,これらは semasiological というよりは onomasiological な観点に関するものである.この点については,「#2174. 民間語源と意味変化」 ([2015-04-10-1]) でも批判的に論じた.
次に,複数の意味変化の種類が共存しうることである.例えば,民間語源の例としてしばしば取り上げられる現代英語の belfry (bell-tower) では,鐘 (bell) によって鐘楼を代表する "pars pro toto" のメトニミー(あるいは提喩 (synecdoche))も作用している.この意味変化を分類しようとすれば,民間語源でもあり,かつメトニミーでもあるということになり,もともとの類型が水も漏らさぬ盤石な類型ではないことを露呈している.このことはまた,意味変化の原因やメカニズムが極めて複雑であること,そして予測不可能であることを示唆する.
最後に,従来挙げられてきた類型によりあらゆる意味変化の種類が挙げ尽くされたわけではなく,網羅性が欠けている.もっとも意味変化の種類をでたらめに増やしていけばよいというものでもないし,そもそも類型として整理しきることができるのかという問題はある.
結局のところ,類型の構築が難しいのは,(1) 意味変化が社会や文化を参照しなければ記述・説明ができないことが多く,(2) 不規則で予測不可能であり,(3) 共時的意味論の理論的基盤が(共時的音韻論などよりも)いまだ弱い点に帰せられるように思われる.
・ McMahon, April M. S. Understanding Language Change. Cambridge: CUP, 1994.
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最終更新時間: 2024-10-26 09:48
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