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hellog〜英語史ブログ / 2019-07-20

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2019-07-20 Sat

#3736. Yamna culture --- 印欧祖語の担い手の有力候補 [indo-european][map]

 昨日の記事「#3735. 印欧語族諸族の大移動」 ([2019-07-19-1]) で,印欧祖語の分化の年代としておよそ紀元前3300年が提案されていることをみた.「#637. クルガン文化印欧祖語」 ([2011-01-24-1]) で紹介した Gimbutas の有力な説によると,印欧祖語の話者はクルガン文化の担い手と同一の集団ではないかとされる.
 しかし,考古学的な観点からもっと精密にみると,後期新石器時代から金石併用時代にかけて黒海およびカスピ海の北部ステップ地帯 (Pontic-Caspian steppes) で生活を営んでいた人々の存在が浮かび上がってくる.とりわけ紀元前3500年頃にはこの地域に "Yamna(ya) culture" という文化が栄えており,乗馬が行なわれていた可能性もあったという.また,Yamna は,後に分化していくインド=イラン語派と関連づけられる,東方に位置する "Andronovo culture" とも考古学的な関係が近いという.とすると,Yamna の担い手は,インド=イラン人の原型,あるいはインド=ヨーロッパ人そのものであるという可能性が開けてくる.年代的にも大きな齟齬はない.
 一方,Yamna 自身は,部分的に黒海北部に展開していた "Sredny Stog culture" (紀元前4500--3500)や,その東に位置する "Khvalynsk culture" から発展したものともされ,Khvalynsk こそが真の印欧祖語の故地であるとする見方もある.
 以上,Fortson (41--43) の記述に拠った.参考までに,Fortson (42) の地図を掲載しておく.

Map of Late Neolithic and Chalcolithic Cultures North of the Black and Caspian Seas

 ・ Fortson IV, Benjamin W. "An Approach to Semantic Change." Chapter 21 of The Handbook of Historical Linguistics. Ed. Brian D. Joseph and Richard D. Janda. Blackwell, 2003. 648--66.

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最終更新時間: 2024-11-26 08:10

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