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2月6日の NPR に Software Company Helps Revive 'Sleeping' Language と題する記事があった.米国 Lousiana の Lafayette 南部に千人ほどが生活しているとされるアメリカ先住民 Chitimacha 族が,1940年に死滅した彼らの民族言語を,IT技術によって復活させているという内容だ.
言語関連のソフトウェアを開発している Rosetta Stone 社が,1934年に亡くなった Chitimacha の族長 Ben Paul の長時間にわたる肉声の録音をもとにして Chitimacha 語を復元し,現在に生きる Chitimacha 族の子供のための教材開発に役立てているという.自らが Chitimacha 族の一員でもある学校の先生は,開発されたソフトウェアを利用した教授法を模索しており,メール文章に同言語を織り交ぜたいという生徒のニーズに応えたいと述べている.
記事の筆致はポジティブだが,現段階では Chitimacha 語の復活がどのくらい現実的であり,今後どの程度の推進力を得てゆくかは不透明である.決して楽観視はできないだろう.だが,復活に向けたいくつかの条件が小刻みに揃っているという点に目を向けたい.
(1) かつての族長の長時間にわたる肉声録音と大量の言語学的メモが残っていること(←当時の言語学者 Morris Swadesh の努力)
(2) 復活させようという機運が民族内の大人(特に教師)に生じていること
(3) メール文章などの新しい言語運用環境にも応用してみたいというニーズが若年層に生じていること
(4) 言語に高い関心をもつ Rosetta Stone 社のような会社が存在し,言語復興と最先端のIT技術とを結びつける役割を果たしていること
人工的に復活された Chitimacha 語が言語的に独り立ちする可能性があるかどうかは未知数だが,たとえコミュニケーション用の完全な言語として蘇らないとしても,Chitimacha 語の知識と運用の一部が Chitimacha 族の文化のなかである特定の位置を占めることになるのであれば,復興の目的の一部は達せられたと考えられるのではないか.
Chitimacha 語は "dead language" ではなく "sleeping language" だっただけである,という言い方が興味深い."sleeping language" を目覚めさせるという,これまでの人類言語史では試みられもしなかったし起こり得なかったことが,いま起ころうとしている.まったくもって新たな現象である.
Chitimacha 語については Ethnologue の記述 や Wikipedia の記述 を参照.
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最終更新時間: 2024-10-26 09:48
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