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古英語や中英語には2人称代名詞に数の区別が存在した.中英語形で示せば,単数は thou,複数 は ye である.ye と you は本来それぞれ主格と対格・与格を表わしたが,近代英語期以降,相互に混同が生じた.(2人称代名詞に関連する話題は,[2009-10-11-1], [2009-10-24-1], [2009-10-25-1], [2009-10-29-1], [2010-02-12-1], [2010-03-26-1], [2010-07-11-1], [2010-10-08-1], [2011-03-01-1]を参照.)
thou も ye は現在では《古風》あるいは《方言》だが,特殊な文脈や慣用表現で用いられることがある.ここでは ye について見てみよう.この語は強形では /ˈjiː/, 弱形では /ji/ と発音され,視覚方言として <ee> のように綴られることもある.現在では,次のような表現で用いられることがある.
Abandon hope, all ye who enter here. ( Dante, The Divine Comedy )
Do ye not know me? 「私をご存じないのですか」
Hark ye. 「聞け」
Hear ye, hear ye! 「(民衆に向かって)聞け,聞け」
How d'ye do? 「初めまして」
I tell ye. 「おまえに言っておく」
Look ye. 「見よ」
Thank ye. 「ありがとう」
What d'ye think? 「どう思うかい」
Ye are the salt of the earth. 「汝らは地の塩なり」 ( Matt. 5:13 )
Ye gods! 「いやはや」
Ye hills and brooks 「汝ら山と川よ」
How d'ye do? などの主語としての ye は you の弱形と解されることがあるが,かつての2人称代名詞(敬称) ye の方言的・口語的な生き残りと考えるべきである.
同綴字だが定冠詞 the を表わすもう1つの ye については,[2009-05-11-2]の記事「英国のパブから ye が消えていくゆゆしき問題」を参照.
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最終更新時間: 2024-11-26 08:10
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