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hellog〜英語史ブログ / 2010-05-15

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2010-05-15 Sat

#383. 「ノルマン・コンケスト」でなく「ノルマン・コンクェスト」 [norman_french][doublet]

 英国史上の最大の出来事である1066年の Norman Conquest については,これまでも様々な形で触れてきた.この事件の名称を日本語でカタカナ表記するとき,「ノルマン・コンクエスト」「ノルマン・コンクェスト」「ノルマン・コンケスト」などの間に揺れがあるようだ.[2010-04-24-1]で紹介した JReK による検索では,「ノルマン・コンクエスト」が圧倒的に多い.しかし,私としては是非とも「ノルマン・コンクェスト」と表記し発音したいと思っている.その理由は,何も /ˈkɒŋkwɛst/ という英語の発音に忠実でありたいからではない.「ノルマン」ときたら「コンクェスト」しかない歴史的な理由がある.
 conquest はフランス語からの借用語だが,特にそのノルマン方言 ( Norman French ) から借りてきた語である.このことは <quest> という綴字と /kwɛst/ という発音によって示されている.一方,中央のパリ方言 ( Central French ) での形は,現代フランス語の conquête 「獲得;征服」や conquêt 「取得財産」の綴字 と発音 /kɛ(t)/ に反映されているように,Norman French とは異なる.ノルマン方言風には「コンクェスト」,パリ方言風には「コンケ(ス)ト」ということになり,「ノルマン」ときたら是が非でも「コンクェスト」と続けたいのである.「エ」か「ェ」かという問題については,/kw/ こそが Norman French の特徴であるから,この子音群を尊重し,正確に反映して「コンクエスト」よりも「コンクェスト」がよい.日本語表記・発音としては少数派のようだが,今後はこれで行きたい.
 それでは,動詞形の conquer /ˈkɒŋkə/ はどうだろうか.conquest と同様に <qu> という綴字を含むものの,現代英語での第二音節の最初の子音(群)は /kw/ でなく /k/ なので,こちらは Central French の形に由来すると考えてよいだろう.
 Norman French と Central French の二重語 doublet に関する話題は[2009-07-13-1], [2009-07-30-1], [2009-07-31-1]を参照.

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