hellog〜英語史ブログ

#95. まだある! Norman French と Central French の二重語[norman_french][doublet][triplet]

2009-07-31

 Norman French と Central French の方言差については,昨日の記事[2009-07-30-1]を含め,これまでに何度か扱ってきた([2009-07-13-1], [2009-07-12-1]).フランス語の方言差を反映した借用語の2形態が英語へそのまま借用され,結果として英語内で二重語 ( doublet ) が存在する例を見てきた./w/ (NF) と /g/ (CF) の対応については[2009-07-13-1]で触れたが,両方言の音の対応は他にもある.
 たとえば,/tʃ/ (NF) と /s/ (CF) の対応を見てみよう.

NF CF
catch 「捕らえる」 ?a1200 chase 「追いかける」 ?a1300
launch 「進水させる;発射する;投げつける」 ?a1300 lance 「槍で突く;投げつける」 ?a1300


 catchchase の例は,語頭子音に注目すれば /k/ (NF) と /tʃ/ (CF) の対応例ともなっている.他の例として,cattle 「家畜」と chattel 「家財」があり,いずれも13世紀に英語に入ってきている.ともにラテン語 capitālis に由来し,capital 「資本」と合わせて実に三重語 ( triplet ) となっている.
 母音の対応例としては,display 「広げる,展示する」と deploy 「(軍を)展開する」の語末の二重母音を比べられたい.前者は Norman French がイギリス内に持ち込まれて発展した Anglo-French に由来するのに対し,後者は Central French に由来する.
 これまでの音対応をまとめると次のようになる.

NF CF
/w/ /g/
/tʃ/ /s/
/k/ /tʃ/
/eɪ/ /oɪ/


 NF と CF の二重語は探せばもっとあるのではないか.新たに気づいたらまた報告したい.

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