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昨日も引用した近藤和彦(著)の新書のイギリス史に,「イギリス史のパターン」と題するセクションがある (16) .俯瞰的かつ示唆に富む文章として引用しておきたい.
氷期が終わるとともに,ブリテン諸島は海によってヨーロッパ大陸から隔てられ,グレートブリテン島とアイルランド島も分離した.だが,これは孤立の始まりではない.海は人や文化を隔てるだけでなく,結びつけもする.イギリス史はけっしてブリテン諸島だけで完結することなく,広い世界との関係において展開する.農耕・牧畜民やローマやヴァイキングをはじめとして,海の向こうからくる力強く新しい要素と,これを迎える諸島人の抵抗と受容,そして文化変容.これこそ先史時代から現代まで,何度となくくりかえすパターンであった.
こうしたことをくりかえすうちに,やがてイギリス人が外の世界へ進出し,他を支配し従属させようとする.その摩擦と収穫をはじめとして,さまざまの経験を重ねつつ,競合し共存し,それぞれに学びあい,新しい秩序が形成される.二一世紀のイギリスと世界は,そうした歴史の所産である.
この文章中の「イギリス史」を「英語史」と置き換えても,そのまま当てはまることに驚く.この文章は,ほぼそのままで「英語史のパターン」の文章として読み替えることができるのだ.鍵となる概念をつなげれば,接触・競合・混合・共存・変容・支配・従属・消失・獲得・秩序といったところだろうか.これに沿ってイギリス史も英語史も展開してきたといえる.
・ 近藤 和彦 『イギリス史10講』 岩波書店〈岩波新書〉,2013年.
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最終更新時間: 2024-11-26 08:10
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