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英語支配に抗う論客の1人,津田幸男は『英語支配とことばの平等』のなかで,国際的な取り組みとして,(1) 英語税,(2) 英語教育の無償化,(3) 外国語使用の義務化の3案を提起している (192--204) .以下に要約しよう.
(1) 「英語税」導入で英語支配を抑制する
「トービン税」という国際金融取引税に発想を得て,国際コミュニケーションなどで用いられるすべての英語について課税するという提案である.特に英語国から非英語国への英語使用に対して,文書であれ,電子メールであれ,話し言葉であれ「英語税」が課される.英語税により得られた資金は,少数言語の反故や復興その他,国際コミュニケーション上の平等を達成するために用いられる.英語使用へのためらいが生ずる機会が増え,英語帝国主義の独走に歯止めをかけられると期待される.
(2) 英語教育は無償にすべきである
現在,英語学習の費用は学習者持ちである.このことは当然のように思われているが,そんなことはない.英語学習の増加により最も利益を被るのは,英語国と英語話者である.コミュニケーション強者である彼らは過剰な利益を得ているのだから,コミュニケーション弱者である英語学習者にその利益を還元するのが筋である.むしろ,「英語支配による過剰な利益に対する罪滅ぼしの意味も含めて,英語国,英語話者は英語を教えることを通して一切経済的な利益を得ないことを国際的協定にすべきである」(津田,p. 201).要するに,英語母語話者はボランティアで英語を教え,英語学習者は英語教育を無償で受けられるべきである.
(3) 外国語使用の義務化
国際コミュニケーションにおいて,誰もが外国語を使用することを義務づけるという提案である.すべての人が,自分の母語でない言語を使うことによって,ハンディキャップを平等化するという発想である.それによりコミュニケーションがあまりに複雑化する場合には,通訳で対応すればよい.国際コミュニケーションでは,誰もが外国語を使うという常識が行き渡れば,世界の言語的不平等は軽減されるだろう.
これらの提案は実現可能性という観点からは課題が多すぎるというのが大方の反応だろうが,この提案から読み取りたいことは,津田の根幹にある,英語帝国主義がもたらしている世界の言語的不平等への筋金入りの反発心である.英語帝国主義批判については,以下の記事も参照.
・ 「#3010. 「言語の植民地化に日本ほど無自覚な国はない」」 ([2017-07-24-1])
・ 「#2458. 施光恒(著)『英語化は愚民化』と土着語化のすゝめ」 ([2016-01-19-1])
・ 「#2306. 永井忠孝(著)『英語の害毒』と英語帝国主義批判」 ([2015-08-20-1])
・ 「#1194. 中村敬の英語観と英語史」 ([2012-08-03-1])
・ 津田 幸男 『英語支配とことばの平等』 慶應義塾大学出版会,2006年.
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最終更新時間: 2024-11-26 08:10
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