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Brigham Young University の Mark Davies により Corpus of Historical American English (COHA) が,最近,公開された.1810--2009年の範囲を覆うアメリカ英語コーパスで,総語数にして4億語を超える大型コーパスだ.公開されてからチョコチョコいじっているが,ワンクリックで10年区切りの頻度が出てグラフまで出してくれるので,この2世紀間のアメリカ英語の通時変化を鳥瞰するのにこれほど便利なツールはない.
特におもしろいのは,現在のイギリス英語とアメリカ英語とで形態や語法が異なっている1対の表現をそれぞれこのコーパスで検索してみることである.かつてはアメリカ英語でももっぱらイギリス的な表現が使われていたのが,時代が下るとともにイギリス色が抜けてゆく(あるいはアメリカ色が強まってゆく)様子がよく分かることだ.このこと自体は容易に予想されることだが,それがあまりに視覚的に明快に示されるので驚いてしまうのだ.例えば,私のゼミ学生で卒業論文のために英米差を調査している学生がいる.特に BrE in the street と AmE on the street の前置詞の差異に注目しているが,COHA でそれぞれをフレーズ検索すると後者が時代とともに増えてきていることが一目瞭然だという.
[2010-09-17-1], [2010-09-18-1]とで接続詞の while と whilst を話題にしたので,今回は COHA を用いて関連する調査をおこなってみたい.現代アメリカ英語では whilst はほとんど使われないが,イギリス英語では文語として現役である.では,かつてのアメリカ英語ではどうだったろうか.かつてはイギリス英語と同様にそれなりに使われていたが,ある時代から徐々に使われなくなり廃語となったという筋書きが予想される.それを COHA で確かめてみた.検索欄に "whilst.[cs]" (従属接続詞としての whilst )と入れて検索すると,たちどころに以下のような年代別頻度数が棒グラフとともに出力される.文字通りワンクリックなので「調査」と呼ぶのも大げさだ.結果としては,whilst は1810年代から2000年代までほぼ漸減を続けている.最も古い1810年代ですら whilst は while に比べれば minor variant にすぎないが,当時は100万語当たり81.27回現れていた.それが1930年代には5.04にまで落ちており,2000年代ではわずか1.59回である.
[2010-09-18-1]で出見たように Dracula (1897年) で while が14回しか現れないのに対して whilst が95回というのは,時代や文体によるところが大きいとしても,激しくイギリス的であることは間違いないようだ.
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最終更新時間: 2024-11-26 08:10
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