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hel_education - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2024-04-27 09:58

2013-05-16 Thu

#1480. (英語)社会言語学概説書の書誌 [bibliography][sociolinguistics][hel_education][link]

 「#1445. 英語史概説書の書誌」 ([2013-04-11-1]) と同様の趣旨で,(英語)社会言語学の概説的な参考図書のリストを作成した.
 近年,(英語)社会言語学の発展は著しく,扱う範囲が広大になってきているが,以下では(英語)社会言語学に関する概説的な図書とレファレンスのお薦めリストを掲げる(◎○は特にお薦めのもの).このほかにも,各図書の巻末に掲載されている参考文献リストや,オンラインでは O'Grady et al. の言語学入門書のコンパニオンサイトに置かれているPDFの参考文献リストも要参照.また,本ブログでも社会言語学の話題を多く扱っているので,とりわけ sociolinguistics の各記事を参照されたい.
 以下と同じ内容の印刷配布用のPDFはこちらからどうぞ.

[概説書(日本語)]

 ○ 東 照二 『社会言語学入門 改訂版』,研究社,2009年.
 ○ 鈴木 孝夫 『ことばと文化』 岩波書店〈岩波新書〉,1973年.
 ・ 田中 克彦 『ことばと国家』 岩波書店〈岩波新書〉,1981年.
 ○ 田中 春美,田中 幸子(編著) 『社会言語学への招待』 ミネルヴァ書房,1996年.
 ・ 津田 葵 「社会言語学」『英語学大系第6巻 英語学の関連分野』(柴谷 方良, 大津 由紀雄, 津田 葵),大修館書店, 1989年,365--495頁.
 ・ 日比谷 潤子(編著) 『はじめて学ぶ社会言語学』 ミネルヴァ書房,2011年.
 ・ ルイ=ジャン・カルヴェ(著),萩尾 生(訳) 『社会言語学』 白水社,2002年.

[概説書(英語)]

 ・ Fasold, Ralph. The Sociolinguistics of Language. Oxford: Blackwell, 1990.
 ・ Holmes, Janet. An Introduction to Sociolinguistics. 3rd ed. Harlow: Pearson Education, 2008.
 ◎ Hudson, R. A. Sociolinguistics. 2nd ed. Cambridge: Cambridge University Press, 1996.
 ・ Romain, Suzanne. Language in Society: An Introduction to Sociolinguistics. 2nd ed. Oxford: Oxford University Press, 2000.
 ○ Trudgill, Peter. Sociolinguistics: An Introduction to Language and Society. 4th ed. London: Penguin, 2000.
 ○ Wardhaugh, Ronald. An Introduction to Sociolinguistics. 6th ed. Malden: Blackwell, 2010.

[(英語)社会言語学の参考図書]

 ・ 石橋 幸太郎(編) 『現代英語学辞典』 成美堂,1973年.
 ○ 大塚 高信,中島 文雄(監修) 『新英語学辞典』 研究社,1982年.
 ・ 寺澤 芳雄(編) 『英語学要語辞典』 研究社,2002年.
 ・ 松浪 有,池上 嘉彦,今井 邦彦(編) 『大修館英語学事典』 大修館書店,1983年.
 ○ Crystal, David. The Cambridge Encyclopedia of the English Language. Cambridge: Cambridge University Press, 1995. 2nd ed. 2003.
 ・ Crystal, David. The Cambridge Encyclopedia of Language. Cambridge: Cambridge University Press, 1995. 2nd ed. 2003.
 ○ McArthur, Tom, ed. The Oxford Companion to the English Language. Oxford: Oxford University Press, 1992.
 ◎ Trudgill, Peter. A Glossary of Sociolinguistics. Oxford: Oxford University Press, 2003.

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2013-05-11 Sat

#1475. 英語と言語に関する地図のサイト [internet][link][timeline][hel_education][map][global_language][elf][vexillology]

 Map of the World という,様々な地図を提供する良サイトを見つけた.探してみると,英語やその他の言語に関する地図やヴィジュアル資料による説明も豊富で,本ブログとして紹介する価値があると思ったので,以下にリンクを張っておきたい.地図の一般的な用途にも便利に使える.

 ・ English Language --- Facts & Infographic: 英語の特徴や英語の歴史を大雑把に解説.そのなかの English Speaking Countries の地図は有用.
 ・ Should English Be The Official Language Of The World --- Facts & Infographic: 世界語としての現代英語の地位を客観的に記述.データの典拠はわからないが The Web of Words では,ウェブ上のコンテンツの英語比率は56%(圧倒的首位),ウェブ上のコミュニケーションの英語比率は26.8%(中国語について2位)となっている.英語が公用語となっている56カ国の国旗が示されている.アルファベット順に挙げると,Antigua and Barbuda, Bahamas, Barbados, Belize, Botswana, Cameroon, Canada, Dominica, Eritrea, Ethiopia, Federated States of Micronesia, Fiji, Gambia, Ghana, Grenada, Guyana, India, Ireland, Jamaica, Kenya, Kiribati, Lesotho, Liberia, Malawi, Malta, Marshall Islands, Mauritius, Namibia, Nauru, New Zealand, Nigeria, Pakistan, Palau, Papua New Guinea, Philippines, Rwanda, Saint Kitts and Nevis, Saint Lucia, Saint Vincent and the Grenadines, Samoa, Seychelles, Sierra Leone, Singapore, Solomon Islands, South Africa, South Sudan, Sudan, Swaziland, Tanzania, Tonga, Trinidad and Tobago, Tuvalu, Uganda, Vanuatu, Zambia, Zimbabwe.関連して,「#177. ENL, ESL, EFL の地域のリスト」 ([2009-10-21-1]) や「#376. 世界における英語の広がりを地図でみる」 ([2010-05-08-1]) も参照.
 ・ Top Ten English Speaking Countries: 地図で英語話者(母語話者とは限らない)人口の世界トップ10の国が示されている.データソースと凡例に不明な点があるが,アルファベット順に挙げると,Australia, Canada, France, Germany, India, Italy, Nigeria, Philippines, United Kingdom, United States.本当だろうか・・・.
 ・ Top Ten Daily Newspapers in English: これも地図で示されるが,英米とインドのみ.1日の平均発行部数順に,The Sun (UK), USA Today (USA), The Daily Mail (UK), The Mirror (UK), Times of India (India), Wall Street Journal (USA), New York Times (USA), The Daily Telegraph (UK), Daily Express (UK), Los Angeles Times (USA) .

 ・ Language Map of the World: 25言語とその他というくくりで色分けの地図がある.

 ・ UK Map --- United Kingdom: イギリスの地図をざっと示すときに使える.Physical Map はこちら.  *  
 ・ USA Map: アメリカ地図をざっと示すときに使える.Physical Map はこちら.  *  
 ・ Europe Map: ヨーロッパ地図をざっと示すときに使える.Physical Map はこちら.  *  
 ・ Map of the World: 世界地図をざっと示すときに使える.  *  *  *

 ほかにオンラインの言語地図としては,「#715. Britannica Online で参照できる言語地図」 ([2011-04-12-1]) で張ったリンクや,EthnologueBrowse by Map Title を参照.

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2013-04-11 Thu

#1445. 英語史概説書の書誌 [bibliography][hel_education][link]

 年度の初めに,英語史概説書や参考図書など英語史・英語学を学習・研究する上で知っておきたい図書等を書誌としてまとめておく.近年,この分野の出版物は日本語でも英語でも数が多く,レベルも入門から専門までと幅広いので,選定するのが難しいのだが,以下は現時点での一応の厳選リストである.
 独断と偏見ではあるが,最重要として◎を,重要として○を付した.このほかに,各図書の巻末やウェブサイトに掲載されている参考文献表も要参照.印刷配布用のPDFも作ったので,こちらからどうぞ.

[英語史概説書(日本語)]

 ・ 家入 葉子  『ベーシック英語史』 ひつじ書房,2007年.
 ・ 宇賀治 正朋 『英語史』 開拓社,2000年.
 ○ 唐澤 一友 『多民族の国イギリス---4つの切り口から英国史を知る』 春風社,2008年.
 ◎ 寺澤 盾 『英語の歴史』 中央公論新社〈中公新書〉,2008年.
 ・ 中尾 俊夫,寺島 廸子 『図説英語史入門』 大修館書店,1988年.
 ・ 橋本 功 『英語史入門』 慶應義塾大学出版会,2005年.
 ○ 堀田 隆一 『英語史で解きほぐす英語の誤解 --- 納得して英語を学ぶために』 中央大学出版部,2011年.
 ・ 松浪 有 編,小川 浩,小倉 美知子,児馬 修,浦田 和幸,本名 信行 『英語の歴史』 大修館書店,1995年.
 ○ 渡部 昇一 『英語の歴史』 大修館,1983年.

[英語史概説書(英語)]

 ◎ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.
 ○ Bradley, Henry. The Making of English. London: Macmillan, 1955.
 ・ Bragg, Melvyn. The Adventure of English. New York: Arcade, 2003.
 ・ Brinton, Laurel J. and Leslie K. Arnovick. The English Language: A Linguistic History. Oxford: Oxford University Press, 2006.
 ○ Crystal, David. The Stories of English. London: Penguin, 2005.
 ○ Fennell, Barbara A. A History of English: A Sociolinguistic Approach. Malden, MA: Blackwell, 2001.
 ・ Gelderen, Elly van. A History of the English Language. Amsterdam, John Benjamins, 2006.
 ・ Jespersen, Otto. Growth and Structure of the English Language. 10th ed. Chicago: University of Chicago, 1982.
 ・ Knowles, Gerry. A Cultural History of the English Language. London: Arnold, 1997.
 ・ McCrum, Robert, William Cran, and Robert MacNeil. The Story of English. 3rd rev. ed. London: Penguin, 2003.
 ・ Smith, Jeremy J. Essentials of Early English. London: Routledge, 1999.
 ・ Strang, Barbara M. H. A History of English. London: Methuen, 1970.
 ・ Svartvik, Jan and Geoffrey Leech. English: One Tongue, Many Voices. Basingstoke: Palgrave Macmillan, 2006.

[英語史・英語学の参考図書]

 ・ 荒木 一雄,安井 稔(編) 『現代英文法辞典』 三省堂,1992年.
 ・ 石橋 幸太郎(編) 『現代英語学辞典』 成美堂,1973年.
 ・ 大泉 昭夫(編) 『英語史 ・歴史英語学:文献解題書誌と文献目録書誌』 研究社,1997年.
 ○ 大塚 高信,中島 文雄(監修) 『新英語学辞典』 研究社,1982年.
 ◎ 小野 茂(他) 『英語史』(太田朗, 加藤泰彦編 『英語学大系』 8--11巻) 大修館書店,1972--85年.
 ・ 佐々木 達,木原 研三(編) 『英語学人名辞典』,研究社,1995年.
 ◎ 寺澤 芳雄(編) 『英語語源辞典』 研究社,1997年.
 ・ 寺澤 芳雄(編) 『英語史 ・歴史英語学 --- 文献解題書誌と文献目録書誌』 研究社,1997年.
 ・ 寺澤 芳雄(編) 『英語学要語辞典』 研究社,2002年.
 ・ 寺澤 芳雄,川崎 潔 (編) 『英語史総合年表?英語史 ・英語学史 ・英米文学史 ・外面史?』 研究社,1993年.
 ○ 松浪 有,池上 嘉彦,今井 邦彦(編) 『大修館英語学事典』 大修館書店,1983年.
 ○ Biber, Douglas, Stig Johansson, Geoffrey Leech, Susan Conrad, and Edward Finegan, eds. Longman Grammar of Spoken and Written English. Harlow: Pearson Education, 1999.
 ○ The Cambridge History of the English Language. Vols. 1--7. Ed. Richard M. Hogg. 1992--2001.
 ◎ Crystal, David. The Cambridge Encyclopedia of the English Language. Cambridge: Cambridge University Press, 1995. 2nd ed. 2003.
 ・ Crystal, David. The Cambridge Encyclopedia of Language. Cambridge: Cambridge University Press, 1995. 2nd ed. 2003.
 ・ Huddleston, Rodney and Geoffrey K. Pullum, eds. The Cambridge Grammar of the English Language. Cambridge: CUP, 2002.
 ○ McArthur, Tom, ed. The Oxford Companion to the English Language. Oxford: Oxford University Press, 1992.
 ◎ The Oxford English Dictionary. 2nd ed. CD-ROM. Oxford: Oxford University Press, 1992. Version 3.1. 2004. (Also available online as Oxford English Dictionary Online at http://www.oed.com/ .)
 ○ Quirk, Randolph, Sidney Greenbaum, Geoffrey Leech, and Jan Svartvik. A Comprehensive Grammar of the English Language. London: Longman, 1985.

[英語史関連のウェブサイト]

 ・ 家入 葉子 「英語学関係(基本文献など)」 http://homepage3.nifty.com/iyeiri/students/English.htm .(より抜かれた基本文献のリスト)
 ・ 堀田 隆一 「hellog?英語史ブログ」 http://c-faculty.chuo-u.ac.jp/~rhotta .本授業の履修者は必見.特に「参考文献リスト」 (http://c-faculty.chuo-u.ac.jp/~rhotta/course/2009a/hellog/references.html) を参照.
 ・ 三浦 あゆみ 「A Gateway to Studying HEL: Textbooks(日本語編)」 http://www013.upp.so-net.ne.jp/HEL/textbooks.html .(充実した英語史の文献リスト)

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2013-04-08 Mon

#1442. (英語)社会言語学に関する素朴な疑問を募集 [hel_education][notice][sobokunagimon][2022_summer_schooling_english_linguistics]

 新年度が始まったところだが,授業で「#1093. 英語に関する素朴な疑問を募集」 ([2012-04-24-1]) に加え,「(英語)社会言語学に関する素朴な疑問」を募集することにした.宣伝のため,本ブログ上でも呼びかけておきたい.素朴な疑問を共有するために,何か思い浮かんだ方は気軽にこちらの入力画面より投稿してください.
 以下に募集案内と素朴な疑問のサンプルを掲げておきます.同じ内容の配布用PDFはこちらからどうぞ.

 (英語)社会言語学は,言語(英語)と社会の関係について研究する言語学の一分野です.社会学系の学問からの知見を応用して言語(英語)の諸問題を解明することを目指します.言語と社会のあいだに深い関係があるということは直感的にわかると思いますが,具体的にどのような関係なのか,真剣に考えたことのある人は少ないでしょう.社会言語学では,自明と思われている両者の関係について,様々な具体的な事例を通じて,本格的に論じます.(英語)歴史言語学との親和性も高いので,(英語)歴史社会言語学としてとらえてもよいと思います.
 当たり前のことを大まじめに考察するのが社会言語学のおもしろさです.素朴な疑問であればあるほど答えるのは難しく,よい問いといえます.このような素朴な疑問(ばかりではありませんが)を取り上げて,あれこれと論じる記事を,「hellog?英語史ブログ」にて日々更新中です.
 以下のリストは,「素朴な疑問」の一部です.

  1. 現代世界における英語話者の人口はどのくらいか?
  2. 英語は何カ国で使われているのか?
  3. なぜ英語は世界語となったのか?
  4. なぜ英語には英米差があるのか?
  5. 標準英語とは何か?
  6. 規範文法はどのように成立したのか?
  7. 辞書はどのような背景で誕生したか?
  8. 言語(方言)間に優劣はあるか?
  9. 言語や方言にまとわりつくステレオタイプはどのように生まれるのか?
  10. 言語と方言の区別はどこにあるのか?
  11. 方言と方言の境界は明確か?
  12. なぜ世界の言語の数は数えられないのか?
  13. なぜ言語は方言化してゆく傾向があるのか?
  14. 方言の水平化とは何か?
  15. 方言周圏論とは何か?
  16. 波状モデルと系統樹モデルとは何か?
  17. 言語圏とは何か?
  18. 印欧祖語は本当に存在したか?
  19. 純粋な言語は存在するか?
  20. なぜ他の言語から語などを借用するのか?
  21. なぜ借用の多い言語と少ない言語があるのか?
  22. なぜ男ことばと女ことばの区別があるのか?
  23. 女性のほうよく話すというのは本当か?
  24. 社会構造が言語へ反映している例とは?
  25. なぜ階級により言語が異なりうるのか?
  26. 文明レベルと言語構造に相関関係はあるか?
  27. エスキモーの言語には雪を表わす語が多いか?
  28. 虹は本当に7色か?
  29. cow vs beef のように動物名は英語本来語だが,肉の名はフランス語由来なのはなぜか?
  30. 言語の民族誌(学)とは何か?
  31. 言語と文化はどちらがどちらを規定するのか?
  32. 言語と気候や地形との間に関係はあるのか?
  33. 言語使用に好みや個人差があるのはなぜか?
  34. 法律の言語や漁師の言語など,特殊な言語が存在するのはなぜか?
  35. なぜ隠語が生まれるのか?
  36. なぜ聖典やお経など宗教の言語は古めかしいのか?
  37. なぜタブーは存在するのか?
  38. 婉曲語法はどのようにして発生するのか?
  39. PC (political correctness) とは何か?
  40. どのようにして非難される語法が生じるのか?
  41. ピジン語,クレオール語とは何か?
  42. ピジン語,クレオール語は他の言語と比べて劣っているか?
  43. 多言語使用国における個々の言語の役割はどのように異なっているのか?
  44. コードスイッチングとは何か?
  45. なぜ人と会ったとき挨拶するのか?
  46. 見知らぬ人どうしの会話で,なぜ天気の話題が選ばれやすいのか?
  47. ときに沈黙が何かを意味することがあるのはなぜか?
  48. なぜ相手の発音や語法に合わせてしまうことがあるのか?
  49. なぜエスペラント語のような計画言語が作られたのか?
  50. 言語(英語)帝国主義とは何か?
  51. 母語話者数とその言語の国際性は比例するか?
  52. 言語の死とは何を意味するか?
  53. 公用語のない国はあるか?
  54. 言語,国家,民族,文化,人種などの間にはどのような関係があるか?
  55. なぜ国連や EU には言語政策が必要なのか?
  56. ウェールズ語のように復興している言語があるのはなぜか?
  57. 変化しない言語は存在するか?
  58. なぜ言語は変化するのか?
  59. 誰が言語変化を始めるのか?
  60. 言語変化はどのように人々に伝播してゆくのか?
  61. 保守的な言語や革新的な言語の区別はあるか?
  62. 基層言語仮説とは何か?
  63. なぜ英語には敬語が存在しないのか?
  64. 日本語で敬語が衰退してきているというのは本当か?
  65. ポライトネスとは何か?
  66. 会話における協調の原理とは何か?
  67. 文字の発明により言語活動はどのように変わったか?
  68. 話しことばと書きことばとは何がどう違うのか?
  69. 産業革命や戦争などの社会的事件は言語に何をもたらしたか?
  70. 交通,メディア,教育などの発達は言語に何をもたらすか?
  71. 言語は単一起源か多起源か?
  72. 言語史における断続平衡モデルとは何か?
  73. 言語の機能とは何か?
  74. 言語記号の恣意性とは何か?


 いずれも,れっきとした(英語)社会言語学の研究テーマです.皆さんの抱く「素朴な疑問」を募集します.

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2013-02-04 Mon

#1379. 2012年度に提出された卒論の題目 [hel_essay][hel_education][sotsuron]

 今年度もゼミ生から卒業論文が提出された.今年度は以下の8本である.緩く分野別に並べてみた.2009--2011年の題目リストも合わせてどうぞ (##1379,973,608,266) .

 (1) 否定接頭辞 in- と un- の差異について --- 借用接頭辞 in- の勢力の拡大 ---
 (2) 近代英語期における clipping による語形成
 (3) Semantic Prosody of Synonymous Verbs Meaning "To Keep in Mind"
 (4) 助動詞 can における可能,可能性,許可の3用法 --- 共時的混同と通時的変化の観点から ---
 (5) 英語語彙における三層構造の批判的考察 --- 形容詞の類義語群の観点から ---
 (6) ポリティカル・コレクトネスによる是正語の考察
 (7) マオリ語の復興と学校教育 --- オーストラリアとの比較を交えて ---
 (8) 「英語帝国主義」は実在する --- 英語検定受検者数から見る「英語帝国主義」の存在 ---

 昨年度,コーパスを用いた卒論研究が増えてきたと述べたが,今年度は (1), (3), (4), (5) の4本でコーパス利用がみられた.伝統的な言語学の部門として形態,統語,意味,語彙,語用のテーマがそれぞれある一方で,(6)--(8) は社会言語学の話題だ.特に,(7), (8) は macro-sociolinguistics あるいは sociology of language といわれる分野の話題であり,卒論のテーマとしては,これまでなかった類だ.指導している自分がどこまで話題について行けるかということを試されているともいえるが,たいへん勉強になった.来年度の卒論も,variation の広さと新しい話題に期待したい.

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2013-02-03 Sun

#1378. 英語史のインフォグラフィック [timeline][hel_education][link]

 昨日の記事「#1377. Gelderen 版,英語史略年表」 ([2013-02-02-1]) も含め,ここ最近,英語史年表にこだわってきた(##777,1368,1369,1377 ほか,timeline の各記事も参照).
 取り上げてきたのは,年代と文字だけの伝統的で散文的な年表ばかりだが,絵入りの年表のようなものがあるとおもしろい.ウェブ上で探してみたところ,Infographic Showing the History of the English Language なるページを見つけた.画像による英語史の概説だ.画像は縦長で1.5MBと重いので,以下のようにクリックによるズームと移動を可能にした(あるいはこちらのページへ).



 このインフォグラフィック作成に当たっては,画像の下部にあるように以下のサイトを情報源として利用したという.ウェブ上には,あちらこちらに年表のページが転がっているようだ.

 ・ BBC British History in Depth: The Ages of English: 「#18. 英語史をオンラインで学習できるサイト」 ([2009-05-16-1]) で紹介したのと同じサイト内
 ・ Key Events in the History of the English Language: これ自身も英語史略年表.割りに詳しい説明がついている
 ・ Chronology of Events in the History of English: コメント付きの英語史略年表
 ・ Language Timeline: 数十年単位での説明つきの英語史略年表

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2013-01-23 Wed

#1367. なぜ英語史を学ぶか (4) [hel_education][prescriptive_grammar]

「#24. なぜ英語史を学ぶか」 ([2009-05-22-1]) ,「#1199. なぜ英語史を学ぶか (2)」 ([2012-08-08-1]) ,「#1200. なぜ英語史を学ぶか (3)」 ([2012-08-09-1]) に引き続き,ポーランドの英語史界の重鎮 Jacek Fisiak 先生による「なぜ英語史を学ぶ必要があるのか」を紹介する.訳書 pp. 20--21 をそのまま引用して,学ぶ理由4点を示そう.わかりやすく,かつ力強い主張である.

 将来英語の教師になるために学んでいる学生が英語史を勉強すべき理由をいくつか挙げると。
 まず第1に、現在の英語を理解するためには、英語の過去について何かを学び知っていることは有益である。歴史に目を向けることによって、新しい視点で現代の英語に取り組むことができる。今日の英語では変則的な変化形と見なされるもの、たとえば man -- men、foot -- feet、mouse -- mice、ox -- oxen などに見られる近代英語の名詞の複数形が、かつては規則的な変化形であったという点から、この変則性を説明し理解することができる。同様に、今日ではジャングルのようにこんがらがって見える近代英語の綴りもチョーサーの時代にはかなり規則的であり、言語学的必要性から生じたものであった。その歴史を知れば、/f/ の音が <gh> あるいは <f> で表されていることについてはなんらおかしいところも不規則なところもないことが分かる。
 第2に、ある言語の過去の状態を知ることは、昔の文学作品を原文で読み、鑑賞する機会を与えてくれる。たとえば最高の訳であっても現代語訳を通してでは、中世や、ルネッサンス期の傑作の持つ雰囲気を感じとり、堪能することはできないであろう。
 第3に、言語使用における規範に関するある種の偏見から我々を解放してくれる。言語は変化するものであり、今日の文法規則に反している言語形態が、明日は「正しい」ものとなるかも知れない。言語の歴史に目を向ければ、我々はもっと寛大になれる。現在会話や文章で用いられている言葉はどんなものでも受け入れるべきだというのではない。言語の発展がどういうものかを十分に理解するならば、より理にかなった批判ができるということである。
 最後に、英国の歴史や文学や文化を学ぶに当たって、英語の歴史は学ばなくてもよいという理由はどこにもない。「歴史をいくらかでも知らない者は、その人の人間性の重要な側面の1つを欠く者である。歴史が今日の人間を作りあげたのであるから、人間を理解するためにはその過去をいくらかでも知らねばならない」 (Bloomfield & Newmark 1963: 19) 。


 第3の理由として挙げられている段落の後半の議論は,特に重要である.英語のたどってきた歴史を振り返ると,何でもありのような自由奔放さが感じられるのは事実だが,だからといって現在生じているどんな言語変化でも無批判に受け入れるべきだということにはならない.「理にかなった批判」というのが非常に難しいところなのだが,それが何であるかを個人個人が自ら考えてゆく必要があるのではないか.「#1360. 21世紀,多様性の許容は英語をバラバラにするか?」 ([2013-01-16-1]) で見たように,規範主義が緩んできているという兆しが指摘されている昨今,この問題は重要性を増してくるだろう.そのために英語史が貢献しうることは多いと,私は考えている.
 なお,最後に引用されている著の書誌情報は,Bloomfield, M. and Newmark, L. A Linguistic Introduction to the History of English. New York: Knopf, 1963. である.

 ・ ヤツェク・フィシャク著,小林 正成・下内 充・中本 明子 訳 『英語史概説 第1巻外面史』 青山社,2006年.

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2012-11-18 Sun

#1301. Gramley の英語史概説書のコンパニオンサイト [link][review][hel_education]

 今年出版された Gramley の英語史概説書コンパニオンサイトが充実している.特に Timeline とそこからアクセスできる資料の豊富さが魅力だ.
 概説書をめくってみると,ページの至る所に,ウェブ上に説明書きのある項目が青字で示されている.多くは用語説明だが,なかには便利な表や一覧を含んでいるものもあり,相当の情報量だ.PDFで資料をダウンロードする必要があり,ウェブ上でシームレスにとはいかないが,探ってみる価値はある.
 こちらのページからは,古い英語のグロッサリー付きテキスト(91頁分)が手に入り,講読用教材としておおいに利用できそうだ.
 また,様々な英語変種で発音された音声ファイルがこちらから手に入る.諸変種のサンプル音源については,以下の記事に張ったリンクからもアクセスできるので参考までに.

 ・ 「#517. ICE 提供の7種類の地域変種コーパス」 ([2010-09-26-1])
 ・ 「#303. 世界で話される英語の発音のサンプル音源」 ([2010-02-24-1])

 本書自体は未読だが,目次を見る限り,社会言語学的な観点を打ち出しており,外面史への傾斜が強いようだ.昨今の英語史の潮流を反映して,近代以降の諸変種の誕生にも力点が置かれている.438頁の分厚い本だが,いずれ目を通したい.

 ・ Gramley, Stephan. The History of English: An Introduction. Abingdon: Routledge, 2012.

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2012-08-09 Thu

#1200. なぜ英語史を学ぶか (3) [hel_education][prescriptive_grammar]

 「#24. なぜ英語史を学ぶか」 ([2009-05-22-1]) および「#1199. なぜ英語史を学ぶか (2)」 ([2012-08-08-1]) で取り上げてきた英語史学習・教育の重要性について付け加え.Schmitt and Marsden (71--72) は,英語史の知恵をいかに英語教育へ応用すべきかという問題に対して,核心を突いた解答を示している.その「教訓」を以下に要約しよう.

 しばしば学習者が質問するような不規則形などの問題は,純粋に歴史の偶然の産物である.例えば,3単現の -s がなぜ残ったのかは誰もわからない.ほかに問題となりうる規則には,規範文法家が独断と偏見で作り出したものが多い.彼らは英語はこのように話すべきだと定めることに関心があり,英語が実際にどのように話されているかという現実には目を向けなかった.分離不定詞 (split_infinitive) や shallwill の使い分け([2010-07-22-1]の記事「#451. shallwill の使い分けに関する The Wallis Rules」を参照)などがその例だ.
 このような理不尽な規則そのものと同じくらい問題をはらんでいるのは,唯一の正しい英文法があるという誤った考え方だ.この態度は学習者にも教師にも深く根付いている.学習者も教師も1つの正しい答えを期待しているが,実際には言語は生きた体系であり,常に変化し,新しい状況に適用しようとする複雑で変化に富んだ体系である.つまり,文法とは絶対的な規則集ではない.もちろん文法項目のなかには比較的不変の項目もあり,それを規則として教えるということはよいことだろう.しかし,そうでない柔軟に変化する文法項目もある.後者の場合には,規則としてとらえるのではなく,多くの場合に用いられる規則的な形はあるけれども状況に応じて変異する規約くらいにとらえておくのがよい.
 教師は,英語文法の柔軟性をよく理解し,変異を左右する文脈的な要因に通じている必要がある.特に話し言葉と書き言葉の区別は重要であり,それぞれに異なった文法が存在するのだと認識しておくことが肝要だろう.

 Schmitt and Marsden は,この主張を支持するために,現代英文法の大著 Longman Grammar of Spoken and Written English の著者たちの次の言葉を引用している.

It would . . . be wrong to assume that standard English is fixed, with little or no variability. In fact, one of the major goals of the LGSWE is to describe the patterns of variation that exist within standard English, and to account for those patterns in terms of contextual factors. . . . In particular, the notion that the standard insists on 'uniformity'---allowing just one variant of each grammatical feature---is a serious fallacy, arising from a misleading application to language of the notion of 'standard' and 'standardization' taken from other walks of life. (18--19)


 改めて,私も主張したい.英語は他のすべての言語と同様に,絶対的,固定的なものではなく,通時的にも変わるし共時的にも替わる流動体である.

 ・ Schmitt, Norbert, and Richard Marsden. Why Is English Like That? Ann Arbor, Mich.: U of Michigan P, 2006.
 ・ Biber, Douglas, Stig Johansson, Geoffrey Leech, Susan Conrad, and Edward Finegan. Longman Grammar of Spoken and Written English. Harlow: Pearson Education, 1999.

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2012-08-08 Wed

#1199. なぜ英語史を学ぶか (2) [hel_education][standardisation][prescriptive_grammar][language_change][variation]

 [2009-05-22-1]の記事「#24. なぜ英語史を学ぶか」への付け加え.オーストリアで英語史を教えている Schmetterer の英語史教育論といえる論考を読んだ.Schmetterer は,英語史のなかでも中英語と初期近代英語の歴史,とりわけ1500年以降の英語標準化の経緯を学び,教えることが必要だと力説する.言語的規制の弱い中英語から,言語の規格化へ乗り出す初期近代英語への著しい変わり映えを観察することで,言語が固定化された絶対的なものではありえないという認識に至ることができるという主張だ.この認識の中身について,Schmetterer は具体的に3点を挙げている.

 (1) "language change is both inevitable and necessary in order to meet the requirements of the world around us" (372)
 (2) "right" and "wrong" can be applied to language utterances only with the greatest possible caution" (372)
 (3) "a language consists of various levels, regional, social, and temporal" (373)

 言語とは通時的に変わる (change) ものであり,地理的,社会的,語用的な要因により共時的にも替わる (vary) ものである.そのような流動的な対象に正当に善し悪しの評価を加えるというのは,本来,不可能である.しかし,人間の社会生活において善悪の区別は本質的であり,言語についてもある程度の規準をもちたいという欲求は,特に近代国家とその国民にとって,抗いがたい.本来は不明確なところに善悪の線引きをしようというのだから,線引きする際にも,そしてすでに線引きされたものを評価する際にも,最大限の注意を払わなければならない.
 言語は変わりもすれば,替わりもするので,本来は善し悪しをつけがたい.これを十分に理解したうえでの規範であれば,役に立つ.このような言語観の形成に最も役立つのが,(必ずしも英語史とはいわずとも)言語の歴史ではないだろうか.

 ・ Schmetterer, Victor. "The History of the English Language and Future English Teachers." Studies in Early Modern English. Ed. Dieter Kastovsky. Mouton de Gruyter, 1994. 371--77.

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2012-08-03 Fri

#1194. 中村敬の英語観と英語史 [linguistic_imperialism][hel_education]

 ##1067,1072,1073 の記事で引用した英語論者,英語帝国主義批判論者である中村より,英語の社会的に優勢な立場に関する鋭い分析や辛口のコメントをいくつか紹介する.まずは,世界の英語観について.

世界の英語観には大きく4つがある.(1) 広い通用度により英語の便利さを積極的あるいは消極的に評価する立場.(2) 英語の「高度な文化性」を評価する立場.(3) (主としてアフリカにおいて)民族統一あるいは国家形成の武器として英語を評価する立場.(4) 英語帝国主義論. (171)


 次に,日本における英語の受容は,英語帝国主義の甘受に等しいと手厳しい.明治以来の英学の先達の努力を,その歴史的コンテクストにおいてはおおいに評価しつつも,次のように批判している.

しかし,不徹底な対象化は,常に同一化への危険性をはらむ.モデルに近づくことを最大の目標とした場合,モデルに近づく努力だけで満足したり,モデルに近づいたと錯覚したりする人間が生まれる.そうした人間ができることは,アングロ・サクソン民族の目を通して世界を見ることであって,それを乗り越えることは極めて困難である.しかも,西洋の近代化が帝国主義の産物である以上,西洋をモデルとして同じように近代化を志向すれば,同じように帝国主義的思想を身につけても当然だった.だからして,日本が英米のまねをして,台湾をはじめ近隣諸国を侵略したのも当然の帰結なのである.(148)


 結果として,日本の言語観はいびつなものとなっていった,とする.

このような「アングロ・サクソン中心主義」 (Anglo-Saxon-centricism) は,100年後の今日に至るも払拭されておらず,「外来といえば(白人の)アメリカ」(ダグラス・ラミス,1981)という日本人一般の外国観として受け継がれている.そしてその思想は,外国語=英語=国際語という外国語観としても受け継がれている.(149)


「国家」を持たない民族語を,「国家」を背後に持つ「外国語」ということばで呼ぶしかないということが,日本人の言語意識,「外国」語,「外国」観(異文化理解)に,そしてもう一つ英語教育観にも,大きな影響を与えてきたのではないか――.これが筆者が年来考え続けてきた仮説である.(191)


 このいびつな言語観が英語教育にも負の影響を与えないはずはない,という主張が,著書の始めのほうで強く説かれている.

当然のことながら外国語教育は真空状態で行なわれるわけではないということである.特定言語が選ばれ,公教育の場での外国語教育のカリキュラムに配当されることは,その言語が他の言語に比べ社会的に優勢であって,その言語の教育が現代なら国策に直接間接に貢献することを期待されているからである.しかも,国策は国益のためにその時代の国際情勢によって形成されるものであるから,教授される言語は,その言語の絶対価値とは無関係に社会的な価値の高低によって選ばれる.したがって,もしかりに教授者が当該言語の社会的価値がどこからくるのかに無知であったとすれば,その言語の教授が学習者に,他の言語とその言語の使い手やその言語の背後にある文化に対する偏見を抱かせる危険性を生むことになるだろう.英語の社会的特性がもっと論じられてしかるべきだと考えるゆえんである.(21)


 表現は辛辣だが,中村の述べている趣旨には賛同する.現在の英語の社会的価値がいかにして生まれてきたか,これを歴史の事実として過不足なく理解することこそが,現代人にとって重要な課題である.そして,その理解にもっとも貢献するのが,英語史とその周辺の分野だろう.中村の著書は,並一通りの英語史概説書ではないが,れっきとした英語史の書だと考える.

 ・ 中村 敬 『英語はどんな言語か 英語の社会的特性』 三省堂,1989年.

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2012-04-24 Tue

#1093. 英語に関する素朴な疑問を募集 [hel_education][notice][sobokunagimon][2022_summer_schooling_english_linguistics]

 新年度が始まったところなので,本ブログの宣伝も兼ねて「英語に関する素朴な疑問」を改めて募集します.大学の授業のリアクションペーパーを通じて,あるいは個人的に質問してもらってもかまいませんが,素朴な疑問というのはたいてい多くの人が共有しているので,こちらの入力画面で投稿したり,こちらの掲示板 (hellog Board)で議論を始めてもらうのもよいかと思います.疑問の種類や数によりますが,できる限り何らかの形でフィードバックしたいと考えています.以下は,宣伝文.

 英語学は,込み入った英文法上の問題を扱うだけではなく,むしろ英語にまつわる当たり前で,他愛もなく,素朴な問題を真剣に論じる分野でもあります.
 何年も英語を学んでいると,学び始めの頃に抱いていたような素朴な疑問が忘れ去られてしまうことが多いものです.あるいは,最初から前提として受け入れており,本来は不思議であるにもかかわらず疑問すら抱かないような事項も多々あります.
 しかし,このような素朴な疑問を改めて思い起こし,あえて引っかかってゆき,大まじめに考察するのが,英語学のおもしろさです.たいてい,素朴な疑問であればあるほど答えるのは難しく,よい問いと言えます.
 以下のリストは,「素朴な疑問」の一部です.いくつかの疑問の末尾に,関連するブログ記事の番号を付しましたので,ご一読ください.同じ内容の配布用PDFはこちらからどうぞ.

 1. 現代世界における英語話者の人口はどのくらいか (#933)
 2. 英語は何カ国で使われているのか (#177, #376)
 3. なぜ英語は世界語となったのか
 4. 英文法は誰が定めたのか (#124)
 5. なぜ日本ではアメリカ英語がイギリス英語よりも主流なのか
 6. 英語にも方言があるのか (#458)
 7. なぜイギリス英語とアメリカ英語では発音や語法の異なるものがあるのか (#244, #312, #357)
 8. 英語はラテン語とどのような関係にあるか (#455)
 9. 英語はドイツ語とどのような関係にあるか (#455)
 10. なぜフランス語には英語と似たような単語がたくさんあるのか (#845)
 11. なぜ give up = surrender のような類義語や代替表現が多いのか (#334)
 12. なぜ A を「ア」ではなく「エイ」と発音するのか (#205)
 13. なぜ knight に読まない <k> や <gh> があるのか (#122)
 14. なぜ busy と <u> で綴るのに [ɪ] で発音するのか (#562)
 15. なぜ women は「ウィミン」と発音するのか (#223, #224)
 16. なぜ one には <w> の綴字がないのに /w/ で発音するのか (#86, #89)
 17. <th> の綴字で表わされる発音はいつ [θ] になり,いつ [ð] になるのか (#842)
 18. なぜ品詞によってアクセントの位置が交替する単語があるのか (ex. increase, record) (#844, #805)
 19. なぜ日本人は /r/ と /l/ や,/b/ と /v/ の発音が下手なのか (#72, #74)
 20. 世界の英語話者は発音記号を読めるのか
 21. なぜ動詞の3単現に -s がつくのか
 22. なぜ不定冠詞は aan を区別するのか (#831)
 23. なぜ sheep の複数形は無変化なのか (#12)
 24. なぜ foot の複数形は feet なのか (#157)
 25. なぜ二本足で歩くのに on foot と単数形を用いるのか
 26. なぜ go の過去形は went なのか (#43)
 27. なぜ will の否定形は won't なのか (#89)
 28. なぜ5W1Hにおいて,how だけ <h> で始まるのか (#51)
 29. なぜ序数詞は first, second, third のみ -th でないのか (#67)
 30. なぜ you は単数と複数を区別しないのか (#167, #529)
 31. なぜ be 動詞は妙な活用をするのか (#798)
 32. なぜ1つの単語が異なる品詞として用いられるのか (cf. love) (#190, #264, #394)
 33. なぜ比較級には -er を付加するものと more を用いるものがあるのか (#403, #456)
 34. なぜフランス語などのように名詞に文法上の性がないのか (#25, #151)
 35. なぜ疑問文を作るときに主語と動詞を倒置するのか
 36. なぜ疑問文や否定文に do が出るのか (#486)
 37. なぜ主語を省略することができないのか
 38. なぜ SVO など語順が厳しく決まっているのか (#132, #137)
 39. なぜ天候や時間の表現で it を主語に立てるのか
 40. なぜ時・条件の副詞節では未来のことも現在形で表わすのか
 41. なぜ仮定法では過去形を用いるのか (ex. if I were a bird)
 42. なぜ丁寧な依頼に過去(仮定法過去)の形を用いるのか
 43. なぜ His jokes made me laugh を受け身にすると,I was made to laugh by his jokes のように to 不定詞へ変える必要があるのか
 44. 付加疑問で,amn't I? ではなくaren't I? となるのはなぜか
 45. なぜ可算名詞と不可算名詞を区別するのか
 46. 不定詞が前置詞の目的語にならないのはなぜか
 47. なぜ1つの単語に様々な意味があるのか (ex. bank, light)
 48. なぜ英語には敬語がないのか
 49. なぜ1人称単数代名詞の I は大文字で書くのか (#91)
 50. なぜ文頭や固有名詞は大文字で書き始めるのか (#583)
 51. なぜ studies では <y> を <i> に代えるのか
 52. なぜアルファベットは26文字なのか (#423)
 53. 英語の句読点の起源は何か (#575, #582)
 54. なぜ縦書きではなく横書きで,右から左ではなく左から右へ綴るのか

 いずれも,れっきとした英語学の研究テーマです.皆さんの「英語に関する素朴な疑問」(=英語学の研究テーマ)を募集します.

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2011-12-26 Mon

#973. 2011年度に提出された卒論の題目 [hel_essay][hel_education][sotsuron]

 2011年12月の半ばにゼミ学生が提出した卒業論文のタイトルをリストアップする(緩やかな分野別の順序で).2009年,2010年のリストと合わせて,##973,608,266 を参照.

 (1) イギリス英語における単数普通名詞と複数普通名詞の頻度 --- 書き言葉と話し言葉のジャンル別観点から ---
 (2) 名詞不規則複数形のゆれについての通時的研究
 (3) 書き言葉における do/make を用いた複合述語の増加
 (4) 近代英語後期における be 完了形の減少
 (5) 現代アメリカ英語から見る HELP + 不定詞構文における to 不定詞と原形不定詞 --- 形態と有生性の観点から ---
 (6) 味覚形容詞「酸っぱい」と "sour" にみる共感覚表現の日英比較
 (7) アメリカにおける性差別に関する PC 表現の変遷
 (8) カナダ英語がアメリカ英語に及ぼした語彙における影響
 (9) 動詞と共起する「関連」の前置詞 about, over, on における用法の差異
 (10) アメリカ英語の綴字改革における Noah Webster の影響力はどの程度のものなのか
 (11) 書き言葉の媒体の変化が与える綴り字への影響
 (12) 話しことばに現われるジェンダーに隠れた年齢差
 (13) インドにおける多様性と統一性 --- インド英語における現地語由来の語彙に現われた特徴 ---
 (14) The Identity Problem in Singlish Controversy

 昨年度までと同様に,扱われている話題は多岐にわたる.前年度から続く特徴としてはコーパス利用が14件中10件もあることである.授業でコーパスを紹介する際に,テーマによっては卒論での使用も考慮に入れてみては,と述べているのだが,当初の予想よりコーパスへの関心が高い.
 分野としては,伝統的な英語学の区分けによれば形態,統語,意味,語用,語彙,語法,綴字の研究があり,音声が見られないくらいである.社会言語学的な関心も目立っており,コーパスにより比較的手軽に扱えるようになってきた英語変種の研究が増えている.地域変種でいえば,英米のほか,カナダ,インド,シンガポールの英語が取り上げられた.
 時代でいえば,2件が近代英語に触れているが,それ以外はすべて現代英語である.(11) はインターネット上のデータを用いた最新の Netspeak の考察を含んでおり,現代というよりは現在進行中の話題だ.
 これだけテーマに幅があると着いて行くのが大変だが,その過程で私も学べることが多く,楽しいのも事実である.来年度も variation の広さに期待したい.

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2011-04-13 Wed

#716. 英語史のイントロクイズ(2011年度版)とその解答 [quiz][hel_education]

 毎年度,最初の授業でつかみとして実施している英語(史)に関する3択クイズ.本年度も問題はほとんど昨年度のものと同じだが,解答・解説スライドに本ブログの関連記事へのリンクを含めた.英語を取り巻く環境は年々驚異的な速度で変化しており,質問している数値データはすでに古くなっている可能性が高いので,アップデートすべきなのだが,導入用ということで参考までに.クイズ作成に利用した参考資料は Graddol その他.

 ・ 2011年度版イントロクイズ(問題用紙)
 ・ 2011年度版イントロクイズ(解答スライド)

 2010年度版は[2010-04-13-1]を,2009年度版は[2010-03-15-1]を参照.

 ・ Graddol, David. The Future of English? The British Council, 1997. Digital version available at http://www.britishcouncil.org/learning-research-futureofenglish.htm

Referrer (Inside): [2012-04-15-1]

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2010-12-26 Sun

#608. 2010年度に提出された卒論の題目 [hel_essay][hel_education][sotsuron]

 2010年12月にゼミ学生が提出した卒業論文のタイトルをリストアップする.2009年のリストは[2010-01-18-1]を参照.

・ "Buzzword",流行語に見る現代イギリス社会と日本社会の比較
・ 語彙におけるアメリカ英語のイギリス英語への影響力 --- 食べ物、衣服、電話・郵便、交通の分野を中心に ---
・ 現代アメリカ英語における不定詞付き help 構文での to 不定詞と原形不定詞 --- 発話レベルと援助の方法の観点から ---
・ 近現代英語期における must, have to, have got to の意味の変遷 --- 文法化・主観化の観点から ---
・ 現代英語の造語の傾向 ---主に転換---
・ 19世紀におけるフランス語借用語の分野的特徴
・ 与格交替に表われる前置詞「to」と「for」の違い --- 前置詞と動詞の持つ意味合いから ---
・ 前置詞 in と on の選択における英米の相違 --- 通時的分布の推移と意味概念の観点から ---
・ インド英語の成立と複合語
・ 口語文語コーパスを用いた,whom の使用方法からみた分析 --- whom 単体と "前置詞+whom" 形の比較を中心に ---
・ On Transfer from Strong Verbs to Weak Verbs
・ 感覚表現における sweet の意味別の変遷 --- sweet smell, sweet voice, sweet smile を中心に ---
・ 12世紀から18世紀における不定冠詞 a, an の分岐
・ 現代英語における二人称複数代名詞の代用表現 ---you guys の増加を中心に---

 今年度の特徴は,[2010-11-16-1]で取り上げたオンラインコーパスを授業で導入したこともあって,コーパスを利用した研究がいくつかあったことである.分野としては相変わらず様々で,統語論,形態論・語形成,語彙論,意味論と幅広い.ただし,昨年度みられた音声と文字に関する論考はなかった.英語変種,英米差,通時的言語変化,社会言語学への関心も見られ,題目の variation の豊富さでは昨年度に比肩すると評価したい.

Referrer (Inside): [2012-08-27-1]

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2010-04-21 Wed

#359. American English or British English? の解答 [ame_bre][quiz][hel_education][americanism]

 今回は,[2010-04-19-1]の英米差クイズの正解を公表する.こちらのPDFからどうぞ.
 クイズは,英米差の目安である.英米差と一口にいっても,どちらかの変種でしか使われない表現というのは少ない.多くの場合,相対的な頻度として英米間に差があると考えるのが妥当だろう.近年のアメリカ語法 ( Americanism ) がイギリス英語(のみならず世界中の英語)に与えている影響の大きさを考えると,英米差は日々小さくなっているのであり,特に語彙対照リストなどは今後あまり意味をなさなくなってくるのかもしれない.この点について,"Americanism" ではなく "Americanization" を語るほうが適切だとする Svartvik and Leech の主張を引用しよう.

The notion of 'Americanism' itself is a moving target, and it is no longer practical to try to list Americanisms as in a glossary. Perhaps, indeed, the concept of 'Americanism' has had its day, and is giving way to the concept of 'Americanization' --- the ongoing and often unnoticed influence of the New World on the Old. (159)


 ・ Svartvik, Jan and Geoffrey Leech. English: One Tongue, Many Voices. Basingstoke: Palgrave Macmillan, 2006.

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2010-04-19 Mon

#357. American English or British English? [ame_bre][quiz][hel_education]

 英語の英米差についてのクイズを作ってみた.語彙,文法,語法,意味,発音の英米差を問う全65問の問題用紙はこちらのPDFでどうぞ.以下はその中からサンプルとして抜粋した13問.

 各問に挙げられている表現のペアは,一方が AmE (American English) に,他方が BrE (British English) に結びつけられることの多い対応表現である.各ペアについて,典型的に AmE の表現として知られているものにチェックを入れなさい.

・ 秋 : □ autumnfall
・ ボンネット : □ bonnethood
・ トラック : □ lorrytruck
・ 店 : □ shopstore
・ 歩道 : □ pavementsidewalk
・ □ I demanded that he not leave. □ I demanded that he should not leave.
・ □ They pay them pretty good. □ They pay them pretty well.
learn の過去・過去分詞形 : □ learnedlearnt
pants : □ 「ズボン」 □ 「下着」
ask : □ /ɑ:sk/ □ /æsk/
suggest : □ /səgˈdʒɛst/ □ /səˈdʒɛst/
what : □ /wɒt/ □ /ʍɑ:t/
・ □ <traveler> □ <traveller>

 正解は近いうちに掲載の予定.

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2010-04-13 Tue

#351. 英語史のイントロクイズ(2010年度版)とその解答 [quiz][hel_education]

 新年度の始まるこの時期,英語史関係の初回授業ではかなり荒っぽいイントロクイズを実施する.英語は長らく勉強してきたけれども,英語についてはあまり勉強したことがなかったですよね,という趣旨である.2009年度版のイントロクイズは一ヶ月ほど前に[2010-03-15-1](問題)と[2010-03-16-1](解答)で掲載したばかりだが,5問だけ出題数を増やした2010年度版を以下に掲載する(PDF形式).(中味はほとんど変化なしです.他にいい質問はないでしょうか・・・.)

 ・ 2010年度版イントロクイズ(問題用紙)
 ・ 2010年度版イントロクイズ(解答スライド)

 昨年度版から追加した5問は以下のもので,以前にこのブログで取り上げたことのある話題がもとになっている.そちらもご参照を.

 ・ 世界の言語が失われてゆくペースは? → [2010-01-26-1] および language_death の諸記事へ.
 ・ 南アフリカ共和国の英語母語話者人口の割合は? → [2010-04-05-1]の記事へ.
 ・ 最も頻度の高い文字は? → [2010-03-01-1]の記事へ.
 ・ 最も忌まわしいとされる文法間違いは? → [2010-02-22-1]の記事へ.
 ・ 学校英文法ができたのは? → [2009-08-29-1], [2009-09-15-1]の記事へ.

Referrer (Inside): [2011-04-13-1] [2010-05-04-1]

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2010-03-16 Tue

#323. 英語史のイントロクイズ(2009年度版)の解答 [flash][quiz][hel_education]

 昨日[2010-03-15-1]のクイズの解答は,こちらの Flash のスライドでどうぞ.(ファイルが500KB強とやや重いので,本記事には貼りつけなかった.直接,PDFのスライドとして落としたい方はこちらからどうぞ.)
 スライドでは,各問題の次のページが解答(と補足)になっている.昨日も述べた通り,クイズ自体は荒っぽいし,数値も数年前のものでありアップデートされていないので,あくまで参考までに.クイズ作成に利用した参考資料はいくつかあるが,Graddol を参照することが多かった.

 ・ Graddol, David. The Future of English? The British Council, 1997. Digital version available at http://www.britishcouncil.org/learning-research-futureofenglish.htm

Referrer (Inside): [2010-04-13-1]

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2010-03-15 Mon

#322. 英語史のイントロクイズ(2009年度版) [flash][quiz][hel_education]

 毎年度始め,英語史の初回の授業で以下のようなクイズを試している(全25問).かなり荒っぽいクイズではあるがそこそこ好評なので,1年ほど前に使用した2009年度版のクイズを以下に掲載する(全画面モードでどうぞ).直接,PDFのスライドとして落としたい方はこちらからどうぞ.答えは,明日の記事で.



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