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hel_education - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2024-04-23 15:39

2021-11-08 Mon

#4578. 朝ドラ『カムカムエヴリバディ』が始まっています [notice][hel][hel_education][english_in_japan]

 先週より,NHK連続テレビ小説(朝ドラ)の新シリーズが始まっています.『カムカムエヴリバディ』です.「カムカム英語」として名をはせたラジオ英会話の昭和史とともに,3世代にわたるヒロインの人生を描く朝ドラです.斜めからではありますが日本における英語受容史を描いているという点で,本ブログの読者の皆さんにも一推ししておきたいと思います.第2週目ですので,まだ見ていない方も十分に追いつけます.なお,今後登場してくるはずのラジオ英会話の平川唯一は,英語受容史上に名を残す重要な存在です (cf. 「#3695. 日本における英語関係史の略年表」 ([2019-06-09-1])) .

カムカムエヴリバディ



 日本における英語受容史ということですので,大きくいえば日本の言語文化史の話題となりましょうか.もう少し言語学に寄せていえば,日本における諸言語使用の歴史というところかと思います.
 しかし,見方によっては英語史の話題ともなり得ます.近現代において英語が世界的拡大を進めるなかで,○○国にはどのような過程で英語が食い込んでいったのか,という観点からみると,周辺的ではありますが一応英語史のテーマとなり得ます.昨今の英語史では近現代の世界英語 (world_englishes) への関心が著しく高まっていますが,この機会に,日本を舞台とする英語拡大史の一環を「カムカム英語」を通じて振り返ってみるのもおもしろいと思います.
 ということで,私としては向こう半年ほど,日本の英語受容史の観点と英語史の観点を織り交ぜて意識しながら,この朝ドラを追いかけていきたいと思っています.脚本家も役者も素晴らしいですしね.皆さんも,ぜひどうぞ.
 ちなみに,朝ドラと連動する形で,NHKラジオではこの11月1日より新講座として「ラジオで!カムカムエヴリバディ」も開講されているようです.テキストでは「日本人と英語講座の100年の歩み」と題する連載も始まっており,実に楽しみです.朝ドラ,英会話学習,英語受容史の記事で,3倍(以上)楽しめるのではないでしょうか.それはそうと,私自身がNHKラジオの別の講座『中高生の基礎英語 in English』のテキストに毎月寄稿している連載「歴史で謎解き 英語のソボクな疑問」もよろしくお願いしますね(笑).
 それにしても,朝ドラの第1週目は展開が甘酸っぱすぎて,オジサンの私には刺激が強すぎました,しかも朝から(泣).第2週も引き続きキツそうですので,昭和らしく正座してテレビに向かおうと思います.

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2021-11-01 Mon

#4571. 英語史は中・高等学校教員養成課程のコアカリキュラムにおいて正当に評価されている [hel_education][elt][world_englishes][standardisation][sociolinguistics]

 昨日の記事「#4570. 英語史は高校英語の新学習指導要領において正当に評価されている」 ([2021-10-31-1]) と連動して,大学における英語の教職科目についても,英語史の重要性が正当に評価されている事実を紹介しておきたい.  *
 文部科学省は「外国語(英語)コアカリキュラムについて」という文書にて「英語科に関する専門的事項」の方針を述べている (7--9) .そこでは「英語コミュニケーション」「英語学」「英語文学」「異文化理解」の4つの系列の各々に学習目標と到達目標が定められているのだが,注目すべきは「英語学」に関する文言である.同文書の p. 8 より引用する.

◇学習項目
 (1) 英語の音声の仕組み
 (2) 英文法
 (3) 英語の歴史的変遷,国際共通語としての英語

◇到達目標
 1) 英語の音声の仕組みについて理解している。
 2) 英語の文法について理解している。
 3) 英語の歴史的変遷及び国際共通語としての英語の実態について理解している。


 それぞれの第3項目にみえる「英語の歴史的変遷」は,まずもって英語史という領域が扱ってきた伝統的な領域であることは言うまでもない.同じく「国際共通語としての英語」も,近年の社会言語学的な知見を取り入れた英語史の得意とする分野である.3項目のうちの1つを担っている点が重要である.(さらにいえば,第1,2項目の英語の音声や文法も,当然ながら英語史の領域でしっかり(以上に)カバーしている.)
 このように英語史が日本の英語教育において正当に評価されていることは素晴らしいことだと思う.私も英語史が英語教育におおいに貢献できることをこれからも示していきたいし,多くの英語教育関係者の方々には,ぜひ英語史に関心を寄せていただければと切に思う次第です.

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2021-10-31 Sun

#4570. 英語史は高校英語の新学習指導要領において正当に評価されている [hel_education][elt][world_englishes][standardisation]

 英語教育や英語史の界隈ではある程度知られていることだが,平成30年(2018年)に告示された「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 外国語編 英語編 平成30年7月」では,英語史の重要性が正当に評価されている.高校における英語科のいわゆる新指導要領において,英語史の役割がしっかり認められているということだ.  *
 「第3章第1節 指導計画作成上の配慮事項」の第7項 (214--15) に次のような文言が見える.

(7)言語能力の向上を図る観点から,言語活動などにおいて国語科と連携を図り,指導の効果を高めるとともに,日本語と英語の語彙や表現,論理の展開などの違いや共通点に気付かせ,その背景にある歴史や文化,習慣などに対する理解が深められるよう工夫をすること。


 日本語や英語の背景にある「歴史や文化,習慣」への理解を促すためには,日本語史や英語史の知見が求められるということである.この後に,次のような説明書きも続く (215) .
 

 この配慮事項は,言語能力の向上が,学校における学びの質や,教育課程全体における資質・能力の育成に関わる重要な課題であるという平成28年度12月の中央教育審議会答申に基づき,国語科の指導内容とのつながりについて述べたものである。
 国語教育と英語教育は,学習の対象となる言語は異なるが,共に言語能力の向上を目指すものであるため,共通する指導内容や指導方法を扱う場面がある。各学校において指導内容や指導方法等を適切に連携させることによって,英語教育を通して日本語の特徴に気付いたり,国語教育を通して英語の特徴に気付いたりするなど,日本語と英語の言語としての共通性や固有の特徴への気付きを促すことにより,言語能力の効果的な育成につなげていくことが重要である。


 「日本語と英語の言語としての共通性や固有の特徴への気付き」を促すことは,まさに日本において英語学や英語史が従来担ってきた役割でもある.
 次に「第3章第2節 内容の取扱いに当たっての配慮事項」の第4項に注目したい (217) .

(4)現代の標準的な英語によること。ただし,様々な英語が国際的に広くコミュニケーションの手段として使われている実態にも配慮すること。


 標準英語とともに,世界英語 (world_englishes) の存在にも注意を払うべきことが明記されている.様々な英語が存在し,尊重されるべきであることは,英語史を通じて最も効果的に理解することができる.昨今の英語史研究において,世界英語への関心が著しく高まってきていることは「#4558. 英語史と世界英語」 ([2021-10-19-1]) などでも触れてきた通りである.
 「第3章第3節 教材についての配慮事項」の第2項には,より直接的に英語史に関わる文言が確認される (219) .

(2)英語を使用している人々を中心とする世界の人々や日本人の日常生活,風俗習慣,物語,地理,歴史,伝統文化,自然科学などに関するものの中から,生徒の発達の段階や興味・関心に即して適切な題材を効果的に取り上げるものとし,次の観点に配慮すること。〔後略〕


 このように英語史は,新学習指導要領において正当に評価されており,重要な役割が認められていることを強調しておきたい.

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2021-10-27 Wed

#4566. heldio で古英語期と古英語を手短かに紹介しています(10分×2回) [notice][hel_education][oe][heldio][link][masanyan]

 昨日と今日の2日間,私の Voicy の番組 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」で古英語(期)の超入門をお届けしています.10分×2回の短いものです.現代の英語は知っているけれども古い英語はまったく初めて,という多くの方々に向けて,古英語期とはどんな時代なのか,古英語とはどんな言語なのかについて,おしゃべりしています.



 1本目の「古英語期ってどんな時代?」では,英語の始まりから説き起こして,英語の歴史の時代区分,そして古英語期といわれる5?12世紀のイングランドについて,駆け足で独りごちました.
 2本目の「対談 『毎日古英語』のまさにゃんと,古英語ってどんな言語?」では,日本初の古英語系 YouTuber であるまさにゃんとインフォーマルな対談を通じて,古英語という言語の特徴を紹介しました.
 ちなみに,最近まさにゃん「まさにゃんチャンネル」にて,シリーズ「毎日古英語」を精力的に展開しています.今回の heldio 対談は古英語の超入門のみで終わっていますので,関心をもった方はぜひ「毎日古英語」で具体的な古英語にテキストに触れてみてください.なお,本ブログでも1年半ほど前に「#4005. オンラインの「まさにゃんチャンネル」 --- 英語史の観点から英単語を学ぶ」 ([2020-04-14-1]) で紹介しています.

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2021-10-21 Thu

#4560. ゼミ合宿でのコンテンツ展覧会のベスト作品 [hel_education][khelf][notice]

 去る9月21日,22日の両日,昨年に引き続きオンライン開催となりましたが,学部・大学院のゼミ合宿を実施しました.本ブログでも「#4530. 今年度のオンラインゼミ合宿の1日目」 ([2021-09-21-1]) と「#4531. 「World Englishes 入門」スライド --- オンラインゼミ合宿の2日目の講義より」 ([2021-09-22-1]) で簡単に報告した通りですが,2日間にわたるゼミ合宿では様々なイベントを催行しました.
 そのなかの目玉の1つが,4大学合同で開催したオンラインの「英語史コンテンツ展覧会」でした(具体的には学習院大学,専修大学,明治学院大学,慶應義塾大学).学生が事前に英語史に関して調べたコンテンツ(雑談以上でレポート以下,ただし学術のルールに則って参考文献などはしっかり付すこと,という仕様)を匿名で公表し,決められた時間内にお互いに読み合って,ツイート風にコメントするというライヴ企画です.
 展覧会の後には出展者である学生同士で投票を行ない,おもしろかったコンテンツを選出するという仕掛けも設けました.そのベスト10コンテンツ(実際には順位タイも含めて12件)が決まりましたので,一般にも公開したいと思います.khelf (= Keio History of the English Language Forum) のサイトに展覧会用特設ページを設けました.
 ぜひ学生たちの柔軟な好奇心と鋭い問題意識,英語史の幅広さと奥深さ,遊び心からスタートする学びの素晴らしさをご堪能ください.以下にもラインアップを示しておきます.軽めで読みやすいものから調査を尽くした力作まで,硬軟のコンテンツが揃っています.なにせ出展者は学部2年生から博士課程シニアの学生までと幅広く,本当に感心するほど多岐にわたっておもしろいです!

 ・ "dog" に対する「人間」のイメージ
 ・ I think, I think うっせえわ
 ・ 主語と時制を無視するスラング 'ain't'
 ・ 「はい、チーズ!」 じゃなきゃダメなんですか?
 ・ フリーランスと騎士
 ・ 自分の名前を紹介するときどちらを使うか?
 ・ 語源から考える人間像
 ・ どっちそっち「チラ見」?
 ・ ちゃんと「カンパイ」出来ていますか?
 ・ アナ雪『Let It Go』はなぜ“ありのまま”と訳される?
 ・ 5文型の先の世界
 ・ ニューヨークの地名から見る英語史

 英語史教育・学習の一環として行なった企画です.趣旨を理解していただき,ぜひ楽しんでお読みいただければ幸いです.

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2021-10-19 Tue

#4558. 英語史と世界英語 [hel_education][world_englishes][model_of_englishes][variety][link][heldio]

 昨日の記事「#4557. 「英語史への招待:入門書10選」」 ([2021-10-18-1]) で,明治学院大学で英語史の授業を担当している泉類尚貴氏による推薦書を紹介させていただきました.その中で7番目の書籍である鳥飼玖美子(著)『国際共通語としての英語』(講談社現代新書,2011年)が意外性をもって受け取られるかもしれません.タイトルからは確かに英語を巡る重要な問題であることは分かるのですが,英語史とどのように関わるのかという疑問が浮かぶのではないでしょうか.この点を確認すべく,昨日に引き続き「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて同氏と対談しました.「対談 英語史×国際英語」というお題です.以下よりどうぞ.



 英語史の領域では近年,世界英語 (world_englishes) への関心が急上昇しています.私自身も食らいついていかなければと思い,にわか勉強を始めているわけですが,急激なオンライン・リソースの拡大も相まって,すでに分野を一望するのも難しい水準にまで膨張しています.関心はあってもどこから始めたらよいかと迷うのも無理もありません.
 私のお勧め図書としては,唐澤一友(著)『世界の英語ができるまで』(亜紀書房,2016年)を挙げておきます.本ブログでも world_englishesmodel_of_englishes にて関連する記事を多く書いてきましたが,比較的最近書いた記事をピックアップすると,次のようなラインアップになります.

 ・ 「#4531. 「World Englishes 入門」スライド --- オンラインゼミ合宿の2日目の講義より」 ([2021-09-22-1])
 ・ 「#4466. World Englishes への6つのアプローチ」 ([2021-07-19-1])
 ・ 「#4506. World Englishes の全体的傾向3点」 ([2021-08-28-1])
 ・ 「#4507. World Englishes の類型論への2つのアプローチ」 ([2021-08-29-1])
 ・ 「#4508. World Englishes のコーパス研究の未来」 ([2021-08-30-1])
 ・ 「#4169. GloWbE --- Corpus of Global Web-Based English」 ([2020-09-25-1])
 ・ 「#4492. 世界の英語変種の整理法 --- Gupta の5タイプ」 ([2021-08-14-1])
 ・ 「#4493. 世界の英語変種の整理法 --- Mesthrie and Bhatt の12タイプ」 ([2021-08-15-1])
 ・ 「#4501. 世界の英語変種の整理法 --- McArthur の "Hub-and-Spokes" モデル」 ([2021-08-23-1])
 ・ 「#4502. 世界の英語変種の整理法 --- Görlach の "Hub-and-Spokes" モデル」 ([2021-08-24-1])

 世界英語を扱うオンライン・コーパスとしては,上にも触れた GloWbE (= Corpus of Global Web-Based English) を入り口としてお勧めします.このコーパスについては,専修大学文学部英語英米語学科菊地翔太先生のHPより,こちらのページに関連情報があります.ちなみに菊地翔太先生のHPを探検し紹介するコンテンツ「菊地先生のホームページを訪れてみよう 」を大学院生が作ってくれましたので,こちらもお勧めしておきます.

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2021-10-18 Mon

#4557. 「英語史への招待:入門書10選」 [hel_education][bibliography][khelf][link][heldio][masanyan][voicy]

 昨日,青山英語史研究会(青山学院大学・寺澤盾先生主催)がオンラインで開催されました.「研究会」とはいうものの,今回は英語史を学ぶ大学生を主たるオーディエンスとして想定し,英語史の学びをエンカレッジする様々な企画が組まれました.私も参加させていただきましたが,たいへん実りの多い会となりました.ありがとうございます.
 プログラムの1つとして,明治学院大学で英語史の授業を担当している泉類尚貴氏による「英語史への招待:入門書10選」が紹介されました.氏の許可を得て,そのリスト(実際にはオマケ付きで11冊)を以下に掲載します.氏によると,この順序で手に取ってみることをお勧めするとのことです.
 ちなみに泉類氏とは,本日の「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて同じ話題で対談していますので,こちらも是非お聴きください.推薦書リストというものは,選者による簡単な解説があるだけでも説得力が増しますね.



 ・ 寺澤 盾 『英語の歴史:過去から未来への物語』 中公新書,2008年.
 ・ 家入 葉子 『ベーシック英語史』 ひつじ書房,2007年.
 ・ 堀田 隆一 『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史』 研究社,2016年.
 ・ 唐澤 一友 『英語のルーツ』 春風社,2011年.
 ・ 唐澤 一友 『世界の英語ができるまで』 亜紀書房,2016年.
 ・ 寺澤 盾 『聖書でたどる英語の歴史』 大修館書店,2013年.
 ・ 鳥飼 玖美子 『国際共通語としての英語』 講談社現代新書,2011年.
 ・ 西村 秀夫 編 『コーパスと英語史』 ひつじ書房,2019年.
 ・ 高田 博行・渋谷 勝巳・家入 葉子(編著) 『歴史社会言語学入門』 大修館書店,2015年.
 ・ Baugh, A. C. and T. Cable. A History of the English Language. 6th ed. Routledge, 2013.
 ・ Crystal, D. The Cambridge Encyclopedia of the English Language. 3rd ed. CUP, 2018.

 番外編として,参考になるウェブサイトということで以下の4点も紹介されました.

 ・ TED Ed
 ・ YouTube 「まさにゃんチャンネル」
 ・ 「hellog?英語史ブログ」
 ・ khelf (= Keio History of the English Language Forum)

 以上,英語史の学びのエンカレッジでした.昨日の記事「#4556. 英語史の世界にようこそ」 ([2021-10-17-1]) も合わせてどうぞ.

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2021-10-17 Sun

#4556. 英語史の世界にようこそ [hel_education][notice][heldio][hellog-radio][sobokunagimon][link]

 学期の始めなので,標題のような「英語史の学びのエンカレッジ系」の記事が多くなります.最近では「#4546. 新学期の始まりに,英語史の学び方」 ([2021-10-07-1]) も書いており,本ブログの記事などに関連するリンクを多々張っていますので,詳しくは是非そちらもご覧ください.今回は先の記事から重要な6点のみピックアップし,改めて英語史への入り口を案内します.

(1) 私(堀田隆一)の考える「英語史の魅力」はズバリこれ.

 1. 英語の見方が180度変わる!
 2. 英語と歴史(社会科)がミックスした不思議な感覚の科目!
 3. 素朴な疑問こそがおもしろい!
 4. 英語が本当によく分かるようになる!

(2) 上記の「素朴な疑問こそがおもしろい!」は本当です.「#1093. 英語に関する素朴な疑問を募集」 ([2012-04-24-1]) に挙げたような疑問が,英語史によりスルスルと解けていきます.それでも足りない方は「#4389. 英語に関する素朴な疑問を2685件集めました」 ([2021-05-03-1]) でどうでしょう!

(3) 本ブログ「hellog?英語史ブログ」は「英語史に関する話題を広く長く提供し続けるブログ」として2009年5月1日に立ち上げたものです.大学の英語史概説の講義に対する補助的な読み物を提供する趣旨で始めました.日々の記事の種類は多岐にわたり,英語を学び始めたばかりの中学生などを読者と想定した話題もあれば,大学院博士課程の学生を念頭においた学術的な話題もあります.書き手以外何を言っているか分からないという話題も少なくないと思います,失礼! それでも,ぜひ毎日タイトルだけでも目を通していれば,英語史のカバーする範囲の広さが分かってくると思います.毎日タイトルをお届けするツイッターアカウントもあります.

(4) 本ブログの姉妹版・音声版として「hellog ラジオ版 (hellog-radio)」(2020年6月23日?2021年2月7日に不定期で),および続編である「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」(2021年6月2日より現在まで毎日定期的に)を配信しています.hellog に比べ,話題は「英語に関する素朴な疑問」におよそ特化しています.各放送は10分以内の短い英語史ネタです.ぜひこれを聞くことを日課にどうぞ! ちなみに本日の放送では,上記 (1) を熱く語っています.



(5) 明後日10月19日は「TOEIC の日」.つい先日 TOEIC 事業などを手がける IIBC (一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会)のインタビューを受けました.テーマは「英語はいかにして世界の共通語になったのか」という,英語(史)に関する究極の疑問の1つです.英語史超入門ともなっているこちらのインタビュー記事をどうぞ(cf. 「#4545. 「英語はいかにして世界の共通語になったのか」 --- IIBC のインタビュー」 ([2021-10-06-1])).

(6) 最後に私の選んだ「#4358. 英語史概説書等の書誌(2021年度版)」 ([2021-04-02-1]) をご覧ください.英語史を学び始めるには,なんといっても本を読むのが一番です.

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2021-10-07 Thu

#4546. 新学期の始まりに,英語史の学び方 [hel_education][sobokunagimon][link]

 今年度も後期が始まる時期となりました.年度初めの4月に,本ブログでは英語史の学びのモチベーションを高めるキャンペーンを張ったのですが,この学期初めの10月にも,改めて英語史の学びを促すべく広報したいと思います.
 まず,私が新年度あるいは新学期の初回の授業で必ず述べることにしている「英語史」の魅力4点を明記します.



--- 英語史の魅力 ---

(1) 英語の見方が180度変わる!

(2) 英語と歴史(社会科)がミックスした不思議な感覚の科目!

(3) 素朴な疑問こそがおもしろい!
 
(4) 現代英語に戻ってくる英語史




 以下に,上記4点とも密接に関わる,英語史の学びに役立つ本ブログからの記事をいくつか紹介します.

 ・ 「#4358. 英語史概説書等の書誌(2021年度版)」 ([2021-04-02-1]) --- 入門書から専門書までの厳選書誌
 ・ 「#4359. ぜひ英語史学習・教育のために hellog の活用を!(2021年度版)」 ([2021-04-03-1]) --- この hellog の効果的な使い方の tips
 ・ 「#4421. 「英語の語源が身につくラジオ」をオープンしました」 ([2021-06-04-1]) --- hellog の音声版というべき「英語の語源が身につくラジオ」 (heldio) を Voicy にて毎日配信中.1本10分未満で英語史の話題をお届けしています.
 ・ 「#4360. 英単語の語源を調べたい/学びたいときには」 ([2021-04-04-1]) --- 皆が関心をもつ英単語の語源の話題.自らどんどん調べてみてください.
 ・ 「#4361. 英語史は「英語の歴史」というよりも「英語と歴史」」 ([2021-04-05-1]) --- 上記の魅力 (2) に通じる話です
 ・ 「#1093. 英語に関する素朴な疑問を募集」 ([2012-04-24-1]) --- 上記の魅力 (3) に通じる話です
 ・ 「#4389. 英語に関する素朴な疑問を2685件集めました」 ([2021-05-03-1]) --- おびただしい疑問の一覧は直接こちらからどうぞ
 ・ 「#4545. 「英語はいかにして世界の共通語になったのか」 --- IIBC のインタビュー」 ([2021-10-06-1]) --- 英語史に関する究極の疑問かもしれません.インタビューに基づいたわかりやすい解説になっています.直接こちらからどうぞ.
 ・ 「なぜ英語史を学ぶのか」の記事セット --- 様々な角度から検討してみました.「英語史って何のため?」 (heldio) でもしゃべっています.
 ・ 「#4417. 「英語史導入企画2021」が終了しました」 ([2021-05-31-1]) --- 今年度初めに企画した英語史の学びを応援するイベント.すでに終了していますが「英語史コンテンツ」とは何かがよく分かります.

 皆さん,今学期も実り多い学びを!

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2021-10-06 Wed

#4545. 「英語はいかにして世界の共通語になったのか」 --- IIBC のインタビュー [notice][hel_education][sobokunagimon][link][future_of_english][linguistic_imperialism]

 先日,TOEIC 事業などを手がける IIBC (一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会)の Newsletter 44号のために,標題についてのインタビューを受けました.10月19日が「TOEIC の日」に制定されたそうで,その特別企画としての取材でした.(関係者の皆様,夏の暑い時期でしたが,私の研究室までお運びいただきありがとうございました.)
 冊子体でも発行されているのですが,ウェブでも公表されています.こちらよりご一読ください.英語史超入門ともなっています.(ゲルマン語系統図や英語史略年表も,とてもきれいに作っていただきました.あ,それから写真も.)
 標題の素朴な疑問への答えはインタビュー記事を読んでいただければ分かるわけですが,かいつまんでいえば英米両国の覇権という社会的な要因がほぼすべてです.英語の語彙が豊かだからとか,文法が簡単だからとか,その他の英語の言語的特質に起因するものでは決してありません.この点は拙著や本ブログでも繰り返し主張してきました.以下は関連する記事群です.

 ・ 「#1072. 英語は言語として特にすぐれているわけではない」 ([2012-04-03-1])
 ・ 「#1082. なぜ英語は世界語となったか (1)」 ([2012-04-13-1])
 ・ 「#1083. なぜ英語は世界語となったか (2)」 ([2012-04-14-1])
 ・ 「#1607. 英語教育の政治的側面」 ([2013-09-20-1])
 ・ 「#1788. 超民族語の出現と拡大に関与する状況と要因」 ([2014-03-20-1])
 ・ 「#2487. ある言語の重要性とは,その社会的な力のことである」 ([2016-02-17-1])
 ・ 「#2673. 「現代世界における英語の重要性は世界中の人々にとっての有用性にこそある」」 ([2016-08-21-1])
 ・ 「#2935. 「軍事・経済・宗教―――言語が普及する三つの要素」」 ([2017-05-10-1])
 ・ 「#3470. 言語戦争の勝敗は何にかかっているか?」 ([2018-10-27-1])
 ・ 「#4279. なぜ英語は世界語となっているのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2021-01-13-1])

 インタビューの後半では,むしろ今後英語がどうなっていくのかという問題も熱く論じました.これについては future_of_english の記事群をどうぞ.

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2021-09-23 Thu

#4532. 英語史を学べる菊地翔太先生(専修大学)の HP [link][hel_education][khelf][seminar][glowbe][khelf-conference-2021]

 一昨日,昨日と「khelf-conference-2021」と題する拡大版ゼミ合宿(オンライン)を開催し,無事に終了しました.たいへん濃密で充実した学びの時間となりました.ゼミ外部から参加していただいた方々にも,お礼申し上げます.
 さて,新学期が始まる時期ということもありますし,英語史の学びを促してくれるHPを1つ紹介したいと思います.昨日のゼミ合宿でもお世話になった専修大学文学部英語英米語学科菊地翔太先生のHPです.ご専門は初期近代英語期の社会言語学的研究ですが,英語史全般について,とりわけ授業関連のページに有用な情報が詰まっています.英語史に関して学べるサイトのリンク集や,ご専門の Shakespeare 関連の情報が含まれますが,とりわけ英語史関連の動画への案内が豊富です.
 また,GloWbE (= Corpus of Global Web-Based English) 関連の情報がまとまっているこちらのページも,コーパスの使い方を学ぶ上で非常に参考になります.
 今後,HP を充実してゆく予定とのことで,ますます楽しみです.(本ブログ記事にもたびたび言及していただいています,ありがとうございます!)

(後記 2021/10/18(Mon):菊地翔太先生の HP を探検し紹介するコンテンツ「菊地先生のホームページを訪れてみよう 」を大学院生が作ってくれました.こちらもご覧ください.)

Referrer (Inside): [2022-09-22-1]

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2021-09-22 Wed

#4531. 「World Englishes 入門」スライド --- オンラインゼミ合宿の2日目の講義より [khelf][khelf_hel_intro_2021][seminar][hel_education][world_englishes][slide][variety][glowbe][khelf-conference-2021]

 昨日と今日,私のゼミのオンライン合宿が行なわれています.2日目の今日は,様々な活動の間に,私の「World Englishes 入門」が挟まります.趣旨としては,次の通りです.

英語が複数形で "Englishes" として用いられるようになって久しい.現在,世界中で使われている様々な種類の英語を総称して "World Englishes" ということも多くなり,学問的な関心も高まってきている.本講演では,いかにして英語が世界中に拡散し,World Englishes が出現するに至ったのか,その歴史を概観する.そして,私たちが英語使用者・学習者・教育者・研究者として World Englishes に対してどのような態度で向き合えばよいのかについて議論する.


 準備したスライドをこちらに公開します.以下にスライドの各ページへのリンクも張っておきますので,復習などにご利用ください.

   1. World Englishes 入門 for khelf-conference-2021
   2. World Englishes 入門 --- どう向き合えばよいのか?
   3. 目次
   4. 1. はじめに --- 世界に広がる英語
   5. 2. イギリスから世界へ
   6. 関連年表
   7. 3. 様々な英語
   8. ピジン語とクレオール語
   9. 4. 英語に働く求心力と遠心力
   10. 5. 世界英語のモデル
   11. おわりに
   12. 参考文献

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2021-09-21 Tue

#4530. 今年度のオンラインゼミ合宿の1日目 [khelf][khelf_hel_intro_2021][seminar][hel_education][khelf-conference-2021]

 今日と明日,慶應義塾大学文学部英米文学専攻で英語史・英語学を学ぶ堀田隆一ゼミのゼミ合宿がオンラインで開催されます.昨年度に引き続き,コロナ禍により通常の泊まりがけのゼミ合宿はかなわず,オンラインでの開催となりますが,オンラインの良さを活かしたメニューで,充実の2日間にしたいと思っています.
 本ブログを読まれている皆さんには,この機会に上記ゼミで英語史に関して行なっている研究・教育活動について広報させていただきたいと思います.大学の1ゼミにすぎないのですが少々外向きの活動も行なってきていまして,今後もそのような活動の比重を高めたいと思っています.ゼミを構成する学部生・院生に,卒業生等の少数の関係者も加わって,khelf (= Keio History of the English Language Forum) と自称して活動しています.ホームページ制作班により khelf のホームページも昨年度から立ち上がっており,今後も少しずつコンテンツを増やしていく予定です.
 今年度のこれまでの最大の活動としては,4月の年度初めから2ヶ月にわたってほぼ毎日継続した「英語史導入企画2021」が挙げられます.目下,年度後半が始まるタイミングでもありますし,年度初めの意気を蘇らせるためにも,その趣旨を改めて思い起こしておきたいと思います.

年度初めの4月,5月は,学生も教員も一般人も新しい学びに積極的になる時期です.そこで,英語史を専攻する私たち khelf メンバー(大学院と学部のゼミ生たちが中心)が発信元となって,英語史という分野とその魅力を世の中に広く伝えるべく,何らかの「コンテンツ」を毎日1つずつウェブ上に公表していこうという「英語史導入企画2021」を立てました.

4月5日(月)から始めて5月下旬まで,日曜日を除く毎日更新していく予定です.「こんなに身近なトピックが英語史の入口になり得るのか」とか「こんな他愛のない問題について真剣に学問している集団があるのか」とか,様々に感じてもらい,英語史に関心をもってもらえればと思います.


 この企画を通じて,日々 khelf メンバーから英語史に関するエッセイ風コンテンツがアップロードされ,最終的には49件のコンテンツが集まりました.幸い多くの方に目を通していただき,それが励みとなって khelf メンバーの学習・研究の士気も大いに上がりました.本ブログの読者の皆様にも改めて感謝いたします.コンテンツのアーカイブは常にオープンしていますので,どうぞいつでもご閲覧ください.
 今後どのような企画を立ち上げていくかなども,今日明日のゼミ合宿で話し合いたいと思っています.khelf 活動につきまして,今後ともご支援とご協力のほどよろしくお願いいたします.

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2021-06-04 Fri

#4421. 「英語の語源が身につくラジオ」をオープンしました [heldio][hellog-radio][sobokunagimon][notice][hel_education][voicy]

 一昨日,音声配信プラットフォーム Voicy にて「英語の語源が身につくラジオ」と題するチャンネルをオープンしました.本ブログとも部分的に連携しつつ,英語史に関するコンテンツを広くお届けする試みとして始めました.一昨日,昨日と,10分弱の音声コンテンツを2本配信していますので,そちらをご案内します.

 1. 「なぜ A pen なのに AN apple なの?」
 2. 「flower (花)と flour (小麦粉)は同語源!」

 チャンネル設立の趣旨は,Voicy 公式ページに掲載していますが,以下の通りです.

 英語の歴史を研究しています,慶應義塾大学の堀田隆一(ほったりゅういち)です.このチャンネルでは,英語に関する素朴な疑問を入口として,リスナーの皆さんを広く深い英語史の世界に招待します.とりわけ語源の話題が満載です.
 英語史と聞くと難しそう!と思うかもしれませんが,心配いりません.実は皆さんが英語に対して日常的に抱いているナゼに易しく答えてくれる頼もしい味方なのです.
 なぜアルファベットは26文字なの? なぜ man の複数形は men なの? なぜ3単現の s なんてあるの? なぜ go の過去形は went なの? なぜ英語はこんなに世界中で使われているの?
 英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も教えてくれなかった数々の謎が,スルスルと解決していく快感を味わってください.ついでに,英語の豆知識を得るにとどまらず,言葉の新しい見方にも気づくことになると思います.
 本チャンネルと同じような趣旨で,毎日「hellog?英語史ブログ」を更新しています.合わせてご覧ください.なおハッシュタグの #heldio は,"The History of the English Language Radio" にちなみます.


 基本的には,これまで私が本ブログ,著書,雑誌記事,大学教育,公開講座などで一貫して行なってきた「英語史の魅力を伝える」という活動の延長です.メディア,オーディエンス,スタイルは変わるかもしれませんが,この方針は変わりません.
 チャンネル設立の背景について,もう少し述べておきたいと思います.昨年度,大学などでオンライン初年度となったことと関連して,通常の文章によるブログ記事の配信に加えて,音声版記事を「hellog ラジオ版」として配信する試みを始めました.主として英語に関する素朴な疑問に答えるという趣旨で,学期中は定期的に,学期外はやや不定期ですが継続してきました.結果として,数分から10分程度の長さの音声コンテンツが62本蓄積されました.
 学生などから様々なフィードバックをもらって分かったことは,発音に関するトピックは音声コンテンツのほうが伝わりやすいということです.当たり前といえば当たり前の話しですが,私はナルホドと深くうなずきました.私自身は英語の綴字と発音の関係に大きな関心を寄せており,音声の話題はよく取り上げるのですが,文章ブログでは発音を発音記号で表現しなければならず,実際に口で発音すればすぐに伝わるものが容易に伝わらないもどかしさを,どこかで感じていました.そのような折に,試しに音声コンテンツを作ってみたら,発音の話題と相性が良いという当たり前のことに改めて気づいた次第です.逆に音声メディアでは綴字については語りにくいという側面もあり,一長一短ではあるのですが,従来の文章ベースの本ブログと平行して,音声ベースのブログがあるとよいと考えました.
 昨年度は手弁当で「hellog ラジオ版」を作ってきましたが,昨今ウェブ上で音声配信プラットフォームが充実してきているという流れを受け,収録・配信の便を念頭に Voicy を通じて配信することに致しました.
 本「hellog?英語史ブログ」では,高度に専門的な話題から中学生も読める話題まで,日々気の向くままに様々なレベルで書いているのですが,音声コンテンツとなると「素朴な疑問」系の話題や単語の語源に関する話題が多くなるかと思います.今後具体的にどのような感じになっていくのかは私も分からないのですが,基本方針としては「英語史に関する話題を広く長く提供し続ける」趣旨で,本ブログの姉妹版のような位置づけとなっていけばよいなと思っています.通称/ハッシュタグを「#heldio」 (= "The History of the English Language Radio") としたのも,本ブログとの連携を念頭に置いた上での命名です.
 今後とも,本「hellog?英語史ブログ」と合わせて,「英語の語源が身につくラジオ」のほうもよろしくお願い申し上げます.

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2021-05-31 Mon

#4417. 「英語史導入企画2021」が終了しました [khelf_hel_intro_2021][hel_education][link][khelf][notice]

 4月5日に開始し,およそ2ヶ月間継続していた「英語史導入企画2021」が予定通り終了しました.企画の趣旨としては,「#4362. 「英語史導入企画2021」がオープンしました」 ([2021-04-06-1]) で次のように述べていました.

年度初めの4月,5月は,学生も教員も一般人も新しい学びに積極的になる時期です.そこで,英語史を専攻する私たち khelf メンバー(大学院と学部のゼミ生たちが中心)が発信元となって,英語史という分野とその魅力を世の中に広く伝えるべく,何らかの「コンテンツ」を毎日1つずつウェブ上に公表していこうという「英語史導入企画2021」を立てました.


 当初の計画に沿って,日曜日を除く毎日,慶應義塾大学文学部英米文学専攻にて英語史を学ぶ院生・学部生(一部卒業生)から1件の英語史コンテンツが同ページにアップされ,一昨日の企画終了までに計48件のコンテンツが公表されました.息切れしそうな長距離リレー企画でしたが,読者の皆さんに上記の趣旨を少しでも伝えられることができたのであれば成功です.
 本ブログでは,各コンテンツが公表された翌日に,追いかけるようにそれを紹介する記事を書いてきました.毎日学生からランダムに振られてくるテーマについて翌日の記事で何か反応しなければならないというのは,なかなか厳しい課題でしたので,私としては企画が無事に終了してホッとしているところです.それでも,自分では積極的に選択しなさそうなテーマや想像できないテーマが日々舞い込んでくるので,実に刺激的でした.
 コンテンツを提供してくれた学生たちにも,鑑賞していただいた一般読者の方々にも,御礼申し上げます.
 企画は終了しましたが,48件のコンテンツは「英語史導入企画2021」よりいつでもアクセスできますので,自由にご覧ください.以下にもコンテンツ一覧と hellog 紹介記事へのリンクを張っておきます.

 1. 「be surprised at―アッと驚くのはもう古い?(1)」 (hellog 紹介記事はこちら
 2. 「借用語は面白い! --- "spaghetti" のスペルからいろいろ ---」 (hellog 紹介記事はこちら
 3. 「"You deserve it." と「自業自得」」 (hellog 紹介記事はこちら
 4. 「それ,英語?」 (hellog 紹介記事はこちら
 5. 「コロナ(Covid-19)って男?女?」 (hellog 紹介記事はこちら
 6. 「キラキラネームのパイオニア?」 (hellog 紹介記事はこちら
 7. 「Brexitと「誰うま」新語」 (hellog 紹介記事はこちら
 8. 「日本人はなぜ Japanese?」 (hellog 紹介記事はこちら
 9. 「否定と植物」 (hellog 紹介記事はこちら
 10. 「dog は犬なのか?」 (hellog 紹介記事はこちら
 11. 「英語を呑み込む 'tsunami'」 (hellog 紹介記事はこちら
 12. 「Number の略語が nu.ではなく,no.である理由」 (hellog 紹介記事はこちら
 13. 「英語嫌いな人のための英語史」 (hellog 紹介記事はこちら
 14. 「MAZDA Zoom-Zoom スタジアムの Zoom って何」 (hellog 紹介記事はこちら
 15. 「身近な古英語5選」 (hellog 紹介記事はこちら
 16. 「「社会的」な「距離」って結局何?」 (hellog 紹介記事はこちら
 17. 「英語 --- English --- とは」 (hellog 紹介記事はこちら
 18. 「友達と恋人の境界線」 (hellog 紹介記事はこちら
 19. 「be surprised at―アッと驚くのはもう古い?(2)」 (hellog 紹介記事はこちら
 20. 「goodbye の本当の意味」 (hellog 紹介記事はこちら
 21. 「英語の語順は SV ではなかった?」 (hellog 紹介記事はこちら
 22. 「『先輩』が英語になったらどういう意味だと思いますか」 (hellog 紹介記事はこちら
 23. 「先生,ここに前置詞いらないんですか?」 (hellog 紹介記事はこちら
 24. 「信号も『緑』になったことだし,渡ろうか」 (hellog 紹介記事はこちら
 25. 「古英語解釈教室―なぞなぞで入門する古英語読解」 (hellog 紹介記事はこちら
 26. 「お酒なのにkamikaze」 (hellog 紹介記事はこちら
 27. 「古英語期の働き方改革 --- wyrcan の多義性 ---」 (hellog 紹介記事はこちら
 28. 「フォトジェニックなスイーツと photogenic なモデル」 (hellog 紹介記事はこちら
 29. 「疑いはいつも 2 つ!」 (hellog 紹介記事はこちら
 30. 「「疲れた」って表現,多すぎない?」 (hellog 紹介記事はこちら
 31. 「ことばの中にひそむ「星」」 (hellog 紹介記事はこちら
 32. 「Morning や evening には何故 ing がつくの?」 (hellog 紹介記事はこちら
 33. 「Oh My Word!?なぜ Word なのか?自己流考察?」 (hellog 紹介記事はこちら
 34. 「犬猿ならぬ犬猫の仲!?」 (hellog 紹介記事はこちら
 35. 「Synonyms at Three Levels」 (hellog 紹介記事はこちら
 36. 「先生,進行形の ing って現在分詞なの?動名詞なの?」 (hellog 紹介記事はこちら
 37. 「意味深な SIR」 (hellog 紹介記事はこちら
 38. 「POP-UP STORE って何だろう?」 (hellog 紹介記事はこちら
 39. 「"Family is" or "Family are"」 (hellog 紹介記事はこちら
 40. 「変わり果てた「人力車」」 (hellog 紹介記事はこちら
 41. 「なぜ未来のことを表すための文法が will と be going to の二つ存在するのか?」 (hellog 紹介記事はこちら
 42. 「この世で一番「美しい」のは誰?」 (hellog 紹介記事はこちら
 43. 「A Succinct Account of German and Germanic (hellog 紹介記事はこちら
    補足記事:「'German' と 'Germanic' についての覚書」
 44. 「視覚表現の意味変化 --- 『見る』ことは『理解』すること」 (hellog 紹介記事はこちら
 45. 「映画『マトリックス』が英語にのこしたもの」 (hellog 紹介記事はこちら
 46. 「複数形は全部 -s をつけるだけなら良いのに!」 (hellog 紹介記事はこちら
 47. 「発狂する帽子屋 as mad as a hatter の謎」 (hellog 紹介記事はこちら
 48. 「office, john, House of Lords --- トイレの呼び方」 (hellog 紹介記事はこちら
 49. 「テニス用語の語源」 (hellog 紹介記事はこちら

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2021-05-30 Sun

#4416. トイレの英語文化史 --- 英語史語彙論研究入門 [taboo][euphemism][khelf_hel_intro_2021][thesaurus][dictionary][lexicology][htoed][semantics][synonym][slang][hel_education][bibliography][link]

 4月5日より始まっていた「英語史導入企画2021」のコンテンツ紹介記事は,今回で最終回となります.話題は「office, john, House of Lords --- トイレの呼び方」です.トリを飾るに相応しいテーマですね! トイレの英語文化史あるいは英語文化誌というべき内容で,Historical Thesaurus of the Oxford English Dictionary (= HTOED) を用いてこんなにおもしろい調査ができるのかと教えてくれるコンテンツです.コンテンツ内の図と点線を追っていくだけで,トイレの悠久の旅を楽しむことができます.
 タブー (taboo),婉曲表現 (euphemism),類義語 (synonym) といった語彙論 (lexicology) 上の問題は,英語史の卒業論文研究などでも人気のテーマです.英語史語彙論研究に関心をもったら,これらのタグの付いた hellog の記事群を読んでみてください.また,以下に今回のコンテンツと緩く関連した記事も紹介しておきます.

 ・ 「#470. toilet の豊富な婉曲表現」 ([2010-08-10-1])
 ・ 「#471. toilet の豊富な婉曲表現を WordNet と Visuwords でみる」 ([2010-08-11-1])
 ・ 「#992. 強意語と「限界効用逓減の法則」」 ([2012-01-14-1])
 ・ 「#1219. 強意語はなぜ種類が豊富か」 ([2012-08-28-1])
 ・ 「#3885. 『英語教育』の連載第10回「なぜ英語には類義語が多いのか」」 ([2019-12-16-1])
 ・ 「#3392. 同義語と類義語」 ([2018-08-10-1])
 ・ 「#469. euphemism の作り方」 ([2010-08-09-1])

 ・ 「#4395. 英語の類義語について調べたいと思ったら」 ([2021-05-09-1])
 ・ 「#3159. HTOED」 ([2017-12-20-1])
 ・ 「#847. Oxford Learner's Thesaurus」 ([2011-08-22-1])
 ・ 「#4334. 婉曲語法 (euphemism) についての書誌」 ([2021-03-09-1])
 ・ 「#1270. 類義語ネットワークの可視化ツールと類義語辞書」 ([2012-10-18-1])
 ・ 「#1432. もう1つの類義語ネットワーク「instaGrok」と連想語列挙ツール」 ([2013-03-29-1])

 ・ 「#4092. shit, ordure, excrement --- 語彙の3層構造の最強例」 ([2020-07-10-1])
 ・ 「#4041. 「言語におけるタブー」の記事セット」 ([2020-05-20-1])

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2021-05-04 Tue

#4390. 現存する古英詩の種類 --- なぞなぞも重要な1種 [oe][poetry][literature][manuscript][alliteration][anglo-saxon][oe_text][hel_education][khelf_hel_intro_2021]

 古英語の詩 (Old English poetry) は,現存するテキストを合わせると3万行ほどのコーパスとなる古英語文学の重要な構成要素である.古英詩の「1行」は「半行+休止+半行」からなり,細かな韻律規則,とりわけゲルマン語的な頭韻 (alliteration) に特徴づけられる.
 現存する古英詩の大半は以下の4つの写本に伝わっており,その他のものを含めた古英詩のほとんどが,校訂されて6巻からなる The Anglo-Saxon Poetic Records (=ASPR) に収められている.

 ・ The Bodleian manuscript Junius II (ASPR I): Genesis, Exodus, Daniel, Christ and Stan などを所収.
 ・ The Vercelli Book, capitolare CXVII (ASPR II): The Dream of the Room,Andreas と Elene の聖人伝などを所収.
 ・ The Exeter Book (ASPR III) (ASPR III): 宗教詩,Guthlac と Juliana の聖人伝,説教詩,The Wanderer, The Seafarer, The Ruin, The Wife's Lament, The Husband's Message, riddles (なぞなぞ)などを所収.
 ・ The British Library Cotton Vitellius A.xv (ASPR IV): Judith, Beowulf などを所収.

 Mitchell (75) によれば,古英詩を主題で分類すると次の8種類が区別される.

1. Poems treating Heroic Subjects
   Beowulf. Deor. The Battle of Finnsburgh. Waldere. Widsith.
2. Historic Poems
   The Battle of Brunanburh. The Battle of Maldon.
3. Biblical Paraphrases and Reworkings of Biblical Subjects
   The Metrical Psalms. The poems of the Junius MS; note especially Genesis B and Exodus. Christ. Judith.
4. Lives of the Saints
   Andreas. Elene. Guthlac. Juliana.
5. Other Religious Poems
   Note especially The Dream of the Rood and the allegorical poems --- The Phoenix, The Panther, and The Whale.
6. Short Elegies and Lyrics
   The Wife's Lament. The Husband's Message. The Ruin. The Wanderer. The Seafarer. Wulf and Eadwacer. Deor might be included here as well as under 1 above.
7. Riddles and Gnomic Verse
8. Miscellaneous
   Charms. The Runic Poem. The Riming Poem.


 この中では目立たない位置づけながらも,7 に "Riddles" (なぞなぞ)ということば遊び (word_play) が含まれていることに注目したい.古今東西の言語文化において,なぞなぞは常に人気がある.古英語にもそのような言葉遊びがあった.古英語版のなぞなぞは内容としてはおよそラテン語のモデルに基づいているとされるが,古英語の独特のリズム感と,あえて勘違いさせるようなきわどい言葉使いの妙を一度味わうと,なかなか忘れられない.
 10世紀後半の写本である The Exeter Book に収録されている "Anglo-Saxon Riddles" は,95のなぞなぞからなる.その1つを古英語原文で覗いてみたいと思うが,古英語に不慣れな多くの方々にとって原文そのものを示されても厳しいだろう.そこで,昨日「英語史導入企画2021」のために大学院生より公表されたコンテンツ「古英語解釈教室―なぞなぞで入門する古英語読解」をお薦めしたい.事実上,古英詩の入門講義というべき内容になっている.

 ・ Mitchell, Bruce. An Invitation to Old English and Anglo-Saxon England. Blackwell: Malden, MA, 1995.

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2021-05-03 Mon

#4389. 英語に関する素朴な疑問を2685件集めました [sobokunagimon][hel_education]

 年度初めに大学の「英語史」の授業にて,履修者から「英語に関する素朴な疑問」をひたすら箇条書きで挙げてもらうことを,毎年の恒例行事としています.本年度もオンライン授業でのオンライン回答だったためか,例年よりも多くの疑問が回収されました.英語史の教育,学習,研究にとって非常に貴重な疑問リストとなります.改めてたくさん寄せてくれた履修者の皆さんに感謝します.
 昨年度5月に回収した素朴な疑問は「#4045. 英語に関する素朴な疑問を1385件集めました」 ([2020-05-24-1]) で示した通り1385件を数えましたが,今回はこれに今年度4月に回収したものを加えた計2685件を公開します.以下より一覧をどうぞ.壮観です.

 ・ 英語に関する素朴な疑問の一覧(2020年度と2021年度の統合版)

 2685件といっても素朴な疑問には相当の重複がありますので,実質的には数は減ると思いますが,それにしてもよく集まりました.当初はざっと編集・整理をしようと思っていたのですが,あまりに多いので諦めました.最小限の編集しか加えていません.
 こんな質問は思いつきもしなかったと驚くものもあれば,質問の体をなしていない(?)ものもあり,実に雑多ではありますが,眺めているだけでインスピレーションが湧いてくるリストです.皆さんも,この一覧を眺め,様々に「利用」してみてください.
 日頃,本ブログでも大学の授業でも強調していることですが,英語史は難しい英文法上の問題を扱うだけではなく,むしろ英語にまつわる当たり前で,他愛もない素朴な問題を真剣に考察し議論する分野でもあります.何年も英語を学んでいると初学時に抱いていたような素朴な疑問はたいてい忘れてしまうものですが,そのような疑問を改めて思い起こし,あえて引っかかってゆき,大まじめに論じるのが英語史の魅力です.たいてい素朴な疑問であればあるほど答えるのは難しく,良問となります.英語史の世界へは,素朴な疑問から入っていくのがお薦めです.
 実際,私の学部・大学院の英語史ゼミでは,そんなことを皆で日常的に行ない,盛り上がっています.その成果物は,目下実施中の「#4362. 「英語史導入企画2021」がオープンしました」 ([2021-04-06-1]) で公開中です.直接にはこちらからどうぞ.
 「素朴な疑問」と関連して,ぜひ以下の記事もご一読を.

 ・ 「#1093. 英語に関する素朴な疑問を募集」 ([2012-04-24-1])
 ・ 「#4052. 「今日の素朴な疑問」コーナーを設けました」 ([2020-05-31-1])
 ・ 「#3677. 英語に関する「素朴な疑問」を集めてみました」 ([2019-05-22-1])
 ・ "sobokunagimon" タグの付いた記事一覧
 ・ 「#4021. なぜ英語史を学ぶか --- 私的回答」 ([2020-04-30-1])

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2021-04-27 Tue

#4383. be surprised at ではなく be surprised by も実は流行ってきている [hel_education][link][khelf][passive][preposition][corpus][clmet][lmode][oed][khelf_hel_intro_2021]

 この4月を通じて宣伝してきた「英語史導入企画2021」も,そろそろ折り返し地点にたどり着きます.大学院と学部の英語史ゼミのメンバーが日々「英語史コンテンツ」を提供するという,年度初め限定のキャンペーンを展開しています.
 4月6日に公表された初回コンテンツは,「#4362. 「英語史導入企画2021」がオープンしました」 ([2021-04-06-1]) で紹介した「be surprised at―アッと驚くのはもう古い?(1)」でした.英語学習者の誰もが習う be surprised at ですが,最近では be surprised by も多くなっているという衝撃の事実(?)を指摘した大学院生によるコンテンツでした.
 それを受けて昨日アップされたのは,同院生による第2弾「be surprised at―アッと驚くのはもう古い?(2)」です.前回は現代英語の諸変種に焦点を当てた「共時的」な内容でしたが,今回はいよいよ英語史的の醍醐味ともいえる「通時的」なアプローチでの分析です.おお,そうなのか!という驚きの事実が明らかになります.英語史導入企画としてナイスです,ぜひどうぞ.
 私もその洞察に刺激を受け,18--19世紀辺りの分布はどうだったのだろうと,後期近代英語のコーパス CLMET3.0 でちらっと検索してみました.70年刻みの3期に分け,(be 動詞はあえて指定せず)surprised atsurprised by でヒット数を単純に比較してみました.

Periodsurprised atsurprised by
1710--178015840
1780--185018955
1850--192015730


 この時代には surprised by はまだ全体の2,3割程度だったということになります.上記のコンテンツによれば,その後 surprised by が20世紀後半から伸張してきたということで,ますます目を離せない追い上げといってよいですね.なお,コンテンツ内でも触れられている通り,この問題に関する本格的な研究として以下のものがありますので,改めて明記しておきます.

 ・ Taketazu, Susumu. Psychological Passives and the Agentive Prepositions in English: A Historical Study. Tokyo: Kaibunsha, 2019.

 今回のコンテンツは,英語史学習への導入としてはややハイレベルだったかもしれませんが,英語史研究への導入としては,基本的ながらもたいへん重要な指摘を多く含んでいると思いました.5点ほど挙げれば次のようになるでしょうか.

 ・ 英語史研究にはコーパス利用がたいへん有効であること
 ・ 同じく OED (= Oxford English Dictionary) の利用が不可欠であること
 ・ ただし,これらから得られた情報は,単純に結論につなげるのではなく,慎重に分析し議論することが必要であること
 ・ 言語は常に変化しているということ
 ・ 新しいと思っていた表現が,実は古くから用いられたということ

 「英語史導入企画2021」はまだまだ続きます.引き続きよろしくお願い致します.

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2021-04-26 Mon

#4382. 『今さら聞けない英語学・英語教育学・英米文学』 --- 見開き2ページで1テーマ,研究テーマ探しにも [review][hel_education][terminology][verb][subjunctive][imperative][infinitive]

 日本英語英文学会30周年記念号として,こちらの本が出版されています(先日ご献本いただきまして,関係の先生方には感謝申し上げます).

 ・ 渋谷 和郎・野村 忠央・女鹿 喜治・土居 峻(編) 『今さら聞けない英語学・英語教育学・英米文学』 DTP出版,2020年.

 上記リンク先より目次が閲覧できますが,英語学・英語教育学・英米文学の各分野から,重要なキーワード,トピック,テーマが厳選されています.ページがきれいに偶数で揃っていることからも想像できる通り,すべての話題がページ見開きで簡潔に記述されているというのが本書の最大の特徴だと思います.ありそうでなかった試みとして,この工夫には感心してしまいました.各々の記述は簡潔ではあるものの,他の文献への参照も多く施されており,卒業論文やレポートなどの研究テーマ探しにもたいへん役立つのではないかと思いました(私自身もさっそくゼミ生などに紹介しました).
 英語学分野で取り上げられている話題を一覧すると,各著者の専門分野に応じて理論的なものから文献学的ものまで幅広くカバーされていますが,ここでは英語史の観点から2つほどピックアップしてみます.
 野村忠央氏による「定形性」(§52)は,動詞の定形 (finite form) と非定形 (non-finite form) という用語・概念に関する導入となっています.英語史において動詞の現在形,接続法(あるいは仮定法),命令形,不定詞は形態がおよそ「原形」に収斂してきた経緯がありますが,形態が同じだからといって機能が同じわけではないことが理論的かつ平易に解説されています.また,形が常に一定で変わらないのに「不定詞」という呼び方はおかしいのではないか,という誰しもが抱く疑問にも易しく答えています.
 定形とも非定形とも考えられそうな歴史上の「接続法現在」について,村上まどか氏が「仮定法原形」(§64)で取り上げているので,こちらも紹介します.I demand that the student go to school regularly. のような文における go の形態や関連する統語を巡る問題です.この問題についていくつかの参考文献を挙げながら解説し,この用法においては that 節が省略されにくいなどの興味深い事実を指摘しています.こちらも英語史上の重要問題です.
 上記2つの問題と関連する hellog からの記事セットをこちらにまとめましたので,関心のある方はどうぞ.
 本書で参照されている参考文献を利用して視野を広げていけば,よい研究テーマにたどり着く可能性があります.教育的配慮の行き届いた書としてお薦めします.

 ・ 渋谷 和郎・野村 忠央・女鹿 喜治・土居 峻(編) 『今さら聞けない英語学・英語教育学・英米文学』 DTP出版,2020年.

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