先日,3月19日にケニアでキタシロサイのオスの最後の生き残り「スーダン」が死んだというニュースを読んだ.1960年代にはウガンダ等に2300頭が生息していたが,角を求めて密猟が行なわれ,2000年代には野生の個体は絶滅していた.現在,残る2頭はメスのみなので繁殖できず,今後の種の絶滅が確定した.
国際自然保護連合 (IUCN) の基準によれば,2017年9月公表のレッドリストの区分と種の数は以下の通り(5月17日の読売 KoDoMo 新聞より).赤で示した部分が「絶滅危惧種」であり,計25062種がこの区分に属する.
区分 | 種の数 |
絶滅 | 859 |
野生絶滅 | 68 |
絶滅危惧IA類 | 5403 |
絶滅危惧IB類 | 8152 |
絶滅危惧II類 | 11507 |
準絶滅危惧 | 5691 |
その他3区分 | 56287 |
計 | 87967 |
昨今,生き物の絶滅危惧種については,上の「スーダン」のようにしばしば国際的な話題となるが,言語の絶滅危惧種や「言語の死」 (
language_death) についてはニュースなどで大きく取り上げられる機会はほとんどないといってよい.同じ絶滅(危惧種)の話題でありながら,この認知度の差は何に由来するのだろうか.言語の死は様々な角度から議論が可能であり,社会言語学のディスカッションの好テーマとなる.ぱっと思いついたところでは,次のような疑問が挙げられる.
・ そもそも言語の死とは何か?
・ なぜ言語の死は起こるのか?
・ 言語の死は他殺か自殺か?
・ これまで世界中でどれだけの言語が死んだのか?
・ 現在,世界中でどれだけの言語が死んでいるのか?
・ 言語が新たに生まれるということはあるのか?
・ 死んだ言語を蘇らせることはできるのか?
・ 瀕死の言語を人為的に救うことはできるのか?それはどのようにか?
・ 言語の死は憂うべきことか?なぜそうなのか,あるいはそうではないのか?
・ 言語の死と合わせて,方言の死についてはどのように考えるべきか?
・ 生き物と言語の絶滅では,何が同じで,何が異なるか?
・ 世界語である英語は,諸言語の死とどう関わっているか?
・ いつか英語や日本語も死語になる日が来るのだろうか?
これらの問題の多くについて,「#274. 言語数と話者数」 (
[2010-01-26-1]),「#276. 言語における絶滅危惧種の危険レベル」 (
[2010-01-28-1]),「#277. なぜ言語の消滅を気にするのか」 (
[2010-01-29-1]),「#280. 危機に瀕した言語に関連するサイト」 (
[2010-02-01-1]),「#1786. 言語権と言語の死,方言権と方言の死」 (
[2014-03-18-1]) をはじめ
language_death の各記事で考えてきた.授業などで改めて議論してみたいと考えている.
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