先日の月曜日に「#5593. 2024年度の夏期スクーリング「英語史」講義が始まります」 ([2024-08-19-1]) でお伝えしましたが,この1週間は通信教育課程の「英語史」集中講義に文字通り集中していました.昨日無事に講義を終えました.履修された30名ほどの皆さんも,お疲れ様でした.
最終日,履修者全員に,なぜこの講義を履修したのかをリアクションペーパーで書いてもらいました.また,講義全体の感想も自由に記述してもらいました.それをいくつか紹介したいと思います.
まず本講義の履修の動機づけについて,全体として以下のものが多かったようです.
・ 拙著『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』(研究社,2016年)を読んで
・ 本ブログを読んで
・ YouTube 「いのほた言語学チャンネル」を視聴して
・ YouTube 「ゆる言語学ラジオ」を視聴し,英語の語源や英語史に関心をもって
・ 以前,井上逸兵先生の集中講義「英語学」を履修したときに,次は「英語史」と薦められた(←井上先生の「営業」の効果でしょうか(笑))
日々,hel活 (helkatsu) として各種媒体で英語史の話題を発信していますが,多くの方々に英語史の魅力が届いているということでしょうか.たいへん嬉しいコメントでした.
続けて,1週間の講義を受けた自由記述の感想より.
英語史はある程度英語を理解した上で学ぶ分野に思われます.しかし,このような英語との繋がりは「中学生或いは高校一年生あたりに教育されるとこれまでの日本人の英語理解の困難を緩和するのではないでしょうか」.
英語の文法や発音が難しくてあまり英語を勉強するのは好きではなかったのですが,今回の授業を通して,英語の奥深さについて知ることができ,英語学習へのモチベーションが上がりました.
時間的制約もあり,今回の講義の内容は非常に表面的であったと感じたので,独学意欲が増したと同時に,通学生がうらやましくなった.
大きな話題ばかりで英語史は通時的な視点を与えてくれる事を実感する講義でした.また,英語を俯瞰し,つきあい方を見直すきっかけにもなりました.
大学以来30年間,英語史を勉強したり,あきてやめたりを繰り返していましたが,数年前に先生の著書『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』を読んで,非常に分かりやすく,一度授業を受けたくなり,今回願いがかなって受講できました.
英語史の講義で様々な現代英語の持っている問題や不完全性・不自然性を実感すると,かえって英語学習のモチベーションが下がってしまうような気がしたのですが,それなら学習する言語をその言語の完成度で選ぶべきなのかと,また疑問に感じてしまいました.そこで気付いたのは英語を世界共通語として認識しているからこういう困惑に当たるのであって,一つの歴史を持つ一つの言語として学べばより面白く感じられるかもしれないということでした.今回の講義で英語の歴史への理解を深めて,様々な不完全性を飲み込みながら外国の人々ともそれを共有してコミュニケーションを取れれば良いと思いました.
1週間,それぞれの学びと気づきがあったことと思います.英語史,皆で引き続き学んでいきましょう!
「#5593. 2024年度の夏期スクーリング「英語史」講義が始まります」 ([2024-08-19-1]) でお伝えした通り,今週は慶應義塾大学通信教育課程の夏期スクーリングで「英語史」の集中講義を行なってきました.本日がその最終日となります.
初日の月曜日,履修者の皆さんに「英語に関する素朴な疑問」 (sobokunagimon) を寄せてもらい,授業後に Voicy heldio にて恒例の「英語に関する素朴な疑問 千本ノック」」を生配信しました.そのアーカイヴが「#1178. 千本ノック for 夏スク「英語史」となります.60分ほどの長尺となりますが,お時間のあるときにお聴きいただければ.
13の疑問を取り上げています.以下に本編(第2チャプター)の分秒を挙げておきますので,ご参照ください.
(1) 01:23 --- なぜ英語の大文字と小文字では同じ形のものと違う形のものがあるのですか?
(2) 08:43 --- なぜ女性だけ Miss と Mrs. の違いがあるのですか?
(3) 12:30 --- なぜ大文字が廃れないのですか?
(4) 19:03 --- なぜ people は複数扱いなのですか?
(5) 22:28 --- なぜオーストラリア英語で name を「ナイム」,Monday を「マンダイ」と発音するのですか?
(6) 25:48 --- [k] の発音は <c> や <k> で綴られますが,その使い分けは何ですか?
(7) 31:11 --- なぜ英語は単数と複数の違いにうるさいのですか?
(8) 35:57 --- 英語母語話者は発音記号を読めないのですか?
(9) 38:47 --- 可算名詞と不可算名詞とは何なのですか?
(10) 41:45 --- フランス語では正しい語法を決める組織としてアカデミー・フランセーズが設立されましたが,英語ではそのような組織はないのですか?
(11) 46:55 --- 3人称代名詞について,単数では he, she, it と区別があるのに,複数では they と1つになってしまうのはなぜですか?
(12) 50:50 --- なぜ英語では分かち書きをするのですか?
(13) 55:23 --- なぜ英語では津波は "tsunami" なのですか?
前回,前々回の千本ノックは,小河舜さんとタッグを組んでの回答でした.そちらも好評につき,ぜひ以下からアクセスしていただければ.
・ 「#5475. 久しぶりの千本ノック収録を公開しています」 ([2024-04-23-1])
・ 「#5492. 「英語に関する素朴な疑問 千本ノック」 --- 小河舜さんと東北本線普通列車より生放送でお届けしました」 ([2024-05-10-1])
本日より,慶應義塾大学通信教育課程の夏期スクーリング科目「英語史」が開講します.土曜日までの6日間にわたる集中講義です.
本日の初回講義では,本ブログの記事を組み合わせながら英語史の世界への導入を図ります.履修生の皆さんは,いつでもこちらの記事に戻ってきてください.
1. イントロ
1.1. 不定冠詞 a と an について: 「#831. Why "an apple"?」 ([2011-08-06-1]),heldio 「#1. なぜ A pen なのに AN apple なの?」
1.2. 「英語史」講義担当者の紹介: note 「堀田隆一のプロフィール」,heldio 「#1171. 自己紹介 --- 英語史研究者の堀田隆一です」,「#2. 自己紹介」 ([2009-05-01-2])
2. 英語史の世界へようこそ
2.1. 英語史の魅力4点: 「#4546. 新学期の始まりに,英語史の学び方」 ([2021-10-07-1])
(1) 英語の見方が180度変わる
(2) 英語と歴史(社会科)がミックスした不思議な感覚の科目
(3) 素朴な疑問こそがおもしろい
(4) 現代英語に戻ってくる英語史
2.2. 「#4361. 英語史は「英語の歴史」というよりも「英語と歴史」」 ([2021-04-05-1]): 魅力 (2) に通じます
2.3. 「なぜ英語史を学ぶのか」の記事セット: 様々な角度から「なぜ学ぶのか」を検討してみました(cf. heldio 「#444. 英語史を学ぶとこんなに良いことがある!」や heldio 「#112. 英語史って何のため?」でも取り上げています)
3. 英語に関する素朴な疑問
3.1. 「#1093. 英語に関する素朴な疑問を募集」 ([2012-04-24-1]): 魅力 (3) に通じます
3.2. 3166件の素朴な疑問
3.3. これまで hellog で取り上げてきた素朴な疑問集
3.4. 知識共有サービス「Mond」で英語・言語に関する素朴な疑問に回答しています
4. 英語史を日常の風景に
4.1. 「#5097. hellog の読み方(2023年度版)」 ([2023-04-11-1]): 2009年5月1日より毎日更新している英語史のブログです.この hellog の効果的な使い方の tips をどうぞ.合わせて「#5362. 2023年によく読まれた hellog 記事は?」 ([2024-01-01-1]) もご覧ください.
4.2. 音声コンテンツ一覧 (heldio & hellog-radio): hellog の音声版というべき Voicy 「英語の語源が身につくラジオ」 (heldio) .2021年6月2日より毎朝6時に1本10分ほどで英語史の話題をお届けしています.日々の英語史の学びのためにフォローしてください.英語史の話題が日常になります.「#5093. heldio の聴き方(2023年度版)」 ([2023-04-07-1]),「#5098. 英語史を学び始めようと思っている方へ hellog と heldio のお薦め回一覧(2023年度版)」 ([2023-04-12-1]),「#5554. リスナー投票による heldio 2024年第2四半期のランキング」 ([2024-07-11-1]) も参照.
4.3. 「#5091. khelf の沿革,活動実績,ミッションステートメント」 ([2023-04-05-1]): khelf HP,公式 X アカウント @khelf_keio,公式 Instagram アカウント @khelf_keio より情報を発信しています.
4.4. 「#5496. 『英語史新聞』第9号が発行されました」 ([2024-05-14-1]): 世界初の英語史を主題とする新聞の第9号です.
4.5. khelf イベント「英語史コンテンツ50+」が始まっており,まだ続いています: 今年4月10日より休日を除く毎日,英語史を専攻するゼミ生・院生から手軽に読める「英語史コンテンツ」がウェブ上にアップされてきます.上記だけでは足りないという方は,過年度の同企画もどうぞ.
4.6. もう1つの khelf イベント「#5568. 9月8日(日)「英語史ライヴ2024」を開催します」 ([2024-07-25-1]) もご参照ください.
4.7. 「いのほた言語学チャンネル」(旧「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」): 2022年2月26日より同専攻の井上逸兵先生(英語学・言語学)と一緒に週2回(水)と(日)の午後6時に動画を公開しています
5. 講義の進め方
5.1. 講義スライド,テキスト,リアクションペーパー提出課題,試験,評価について
5.2. 指定テキストは拙著『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』(研究社,2016年).本書のコンパニオン・サイトもあります.
5.3. 英語史の読書案内:「#5462. 英語史概説書等の書誌(2024年度版)」 ([2024-04-10-1]),「#4557. 「英語史への招待:入門書10選」」 ([2021-10-18-1]),heldio 「対談 英語史の入門書」
5.4. 過年度の「英語史」履修生の言葉: 「#5393. 2023年度,1年間の「英語史」の講義を終えて」 ([2024-02-01-1]),heldio 「#974. 1年間の「英語史」の講義を終えて --- 2023年度版」
6. 履修生よりライヴで寄せられた英語の素朴な疑問に即興で答える「千本ノック」
以上,スクーリングの1週間,そしてその後も,知的興奮に満ちた英語史ライフをお楽しみください! 関連して「#5463. 2024年度の「英語史」講義が始まります --- 慶應義塾大学文学部英米文学専攻の必修科目」 ([2024-04-11-1]) もどうぞ.
なぜ英語史を学ぶのか.迷ったら,まず「#444. 英語史を学ぶとこんなに良いことがある!」を.
1週間後の8月24日(土)17:30--19:00に朝日カルチャーセンター新宿教室にてシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」の第5回となる「英語,ラテン語と出会う」を開講します.
前回,7月27日の第4回では「現代の英語に残る古英語の痕跡」と題して,古英語の語彙,語形成,ケルト語からの僅少な影響に注目しました.そこでは古英語が純度の高いゲルマン系の語彙を保っており,造語能力も豊かであったことを解説しました.
しかし,古英語にも諸言語からの借用語は確かにありました.少数のケルト借用語の存在についてはすでに触れましたが,その他にもラテン語語や古ノルド語からの借用語が各々数百語(以上)の規模で古英語に入ってきていたのです.数百語ほどの数では語彙全体のなかではさほど目立たないのも確かですが,その後の豊富な語彙借用の歴史を念頭におけば,古英語期が英語史上重要な位置づけにあることが理解できるでしょう.
今回の講座では,古英語期(あるいはそれ以前の時代)におけるラテン語の語彙的影響に注目します.また,ラテン語の影響が語彙的・言語的なレベルにとどまらず文化的な次元にまで及んだことにも触れます.
本シリーズ講座は各回の独立性が高いので,第5回からの途中参加などでもまったく問題なく受講できます.新宿教室での対面参加のほかオンライン参加も可能ですし,その後1週間の「見逃し配信」もご利用できます.奮ってご参加ください.
なお,本シリーズ講座は「語源辞典でたどる英語史」と題しているとおり,とりわけ『英語語源辞典』(研究社)を頻繁に参照します.同辞典をお持ちの方は,講座に持参されると,より楽しく受講できるかと思います(もちろん手元になくとも問題ありません).
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
この夏休み,定期的に知識共有サービス Mond に寄せられてきた英語関連の素朴な疑問 (sobokunagimon) に回答しています.直近5件ほどの回答を,新しい順に並べます.
(1) なぜ be 動詞に属する動詞は be しかないのに,そんなに大仰な名前が付いているのでしょうか?
(2) 形容詞の屈折に -er という優等比較の屈折形態があるのに対して,劣等比較の屈折形態がないのはなぜですか?
(3) 関係詞は2文を1文にまとめる役割があると言われますが,2文にするか1文にするかで意味合いは異なるのでしょうか?
(4) 英語の "subjunctive mood" について,英語史的な知見をいろいろと知りたいと思っておりまして,質問させていただきます.
(5) 「be + 過去分詞」の過去分詞は 動詞なんですか, 形容詞なんですか?
それぞれ難問ですね.答えそのものというよりも,答え方に注目していただけますと幸いです.他にも様々な答え方がありますし,むしろここから議論が始まるものだと思っています.
これらの質問は一見素朴に見えて,実は英語の歴史や言語学の深い洞察を必要とするお題ばかりです.英語学習者の皆さんが日頃感じている疑問が,実は言語学的に非常に興味深い問題であることも少なくありません.このような Mond への質問をお待ちしています!
標題は,あらゆる世代の英語学習者からよく尋ねられる素朴な疑問です.この疑問について,中学生を念頭において回答する heldio を2回に分けて収録しました.ぜひお聴きください.
・ 「#1166. なぜ英語ではいつも主語が必要なの? --- 中学生のための英語史」
・ 「#1167. 続・なぜ英語ではいつも主語が必要なの? --- 中学生のための英語史」
最初の配信回では,日本語では主語が省略できるのに英語では省略できないのはなぜか,という問題意識を念頭に,今回の質問に真正面から答えました.
一方,続編では見方を変えて,英語でも実は主語の省略はないわけではない,むしろ部分的には省略されている,と主張しました.ここから,英語と日本語は意外と似ている側面もあるのだな,と気づいてもらえれば幸いです.
今後,今回のような「中学生のための英語史」 (hel_for_junior_high_school_students) シリーズに力を入れていきたいと思っています.関連して,過去の hellog 記事「#5352. なぜ英語を学ばなければならないの? --- 中学生からの反響」 ([2023-12-22-1]) もご参照ください.
ここ1週間ほどで,知識共有サービス Mond に寄せられてきた英語関連の素朴な疑問 (sobokunagimon) に5件ほど回答しました.新しい順に並べてみます.
(1) OK'd や OD'd という表現を見かけました.このアポストロフィはなぜついているのでしょうか?
(2) 英語の助動詞 can, shall, may, will などの過去形 could, should, might, would と,一般動詞の過去形語尾 -ed とは関係があるのでしょうか?
(3) take care of や listen to などの「群動詞」は受動態などにおいて1つの動詞であるかのように振る舞います.このように本来は統語上ひとまとまりではないものが群動詞的な性質を帯びた経緯について教えてください.
(4) なぜ cut は cut-cut-cut と変化しないのでしょうか? また,read は read-read-read と同様ですが,こちらはなぜ発音だけ変化するのでしょうか?
(5) コーラ,ノートのように日本語には「長音」がありますが,なぜ日本語に転写するときにこのように新しい記号を作る必要があったのでしょうか?
形態論,統語論,正書法に関する質問が寄せられてきました.いずれも一言では答えられないような問いではありますが,なるべく英語史・英語学の観点そのものを知ってもらればという思いで回答しています.ですので,答えそれ自体だけではなく,議論の展開にも注目していただければ.
Mond への鋭い質問をお待ちしています!
Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」のイベントのご案内です.2024年9月8日(日)に12時間連続の公開生収録の「英語史ライヴ2024」 (hellive2024) を都内某所で開催します! khelf(慶應英語史フォーラム)主催の,英語史に特化した大企画です.英語史系イベントとしては前代未聞の試みとなります.
学界の一線で活躍する研究者の先生方との対談を企画しているほか,「英語史クイズ」や人気シリーズ「はじめての古英語」なども予定しています.また,多くの出版社より協賛いただくことになっております.
当日は午前6時から午後6時まで,12時間の Voicy heldio 生配信をお届けします.公開生収録には,khelf メンバー,他大学の関係者の先生方や学生たちが立ち会います.
そのほか,Voicy heldio のプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪」 (helwa)(月額800円のサブスク)のリスナーさんにもご登録の上ご参加いただけます.詳しくは7月18日(木)の配信回「【英語史の輪 #160】「英語史ライヴ2024」への参加を正式に募集します(生配信)」をお聴きください.「英語史ライヴ2024」に参加するために helwa にお入りいただくことも歓迎いたします.
今から1ヶ月半ほど後のイベントですが,目下 khelf で鋭意準備中です.7月25日現在,「英語史ライヴ2024」に関して決まっていることを一覧します.
【メイン MCs】
・ 青木輝さん(khelf 会長,慶應義塾大学大学院生)
・ 藤原郁弥さん(慶應義塾大学大学院生)
・ 「まさにゃん」こと森田真登さん(武蔵野学院大学,元 khelf 会長)
・ 小河舜さん(上智大学)
・ 金田拓さん(帝京科学大学)
・ 堀田隆一(慶應義塾大学)
【対談予定の先生(五十音順)】
・ 秋元実治先生(青山学院大学名誉教授)
・ 家入葉子先生(京都大学)
・ 井上逸兵先生(慶應義塾大学)
・ 今村洋美先生(中部大学)
・ 田辺春美先生(成蹊大学)
・ 福元広二先生(法政大学)
・ 保坂道雄先生(日本大学)
・ 和田忍先生(駿河台大学)
【協賛出版社(五十音順)】
・ 朝倉書店
・ 開拓社
・ 研究社
・ 昭和堂
・ 大修館書店
・ 中央大学出版部
・ 白水社
・ 早川書房
・ ひつじ書房
【配信予定の番組】
・ 先生方との対談
・ 人気シリーズ「はじめての古英語」
・ 英語史クイズ
・ 『英語史新聞』第10号お披露目
・ 『英語語源辞典』読書会
・ 古英語LINEスタンプお披露目
今後の決定事項は随時 heldio の配信回や,khelf の公式 HP より「英語史ライヴ2024」特設ページにてお知らせしていきます.また,khelf の公式 X アカウント @khelf_keio,および khelf の公式 Instagram アカウント @khelf_keio からもイベント情報を発信していきます.日々ご注目ください.
とりわけ heldio では,頻繁に「英語史ライヴ2024」関連の告知配信をお届けしていく予定です.これまでの重要な告知回を挙げておきます.
・ 「#1119. 9月8日(日)「英語史ライヴ2024」を開催します by khelf」(2024年6月22日)
・ 「#1145. 重大告知 --- khelf 主催「英語史ライヴ2024」の出演者と協賛社の発表」(2024年7月18日)
・ 「#1152. 【速報】「英語史ライヴ2024」スポンサー,研究社との打合報告」(2024年7月25日)
「英語史ライヴ2024」,準備段階からおおいに盛り上げていきたいと思います.応援をよろしくお願いいたします.
今年度,朝日カルチャーセンター新宿教室にてシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」を月に一度のペースで開講しています.4,5,6月と3回の春期クールを終え,この7月からは夏期クールが始まります.
第4回は来週末の7月27日(土)の夕方 17:30--19:00 に開講されます.お申し込み窓口が開いておりますので,ぜひこちらより詳細をご確認ください.講座形式はいわゆるハイブリッド形式で,新宿教室での対面受講,あるいはリアルタイム・オンラインでの受講が可能です.また申込みされた方は,「見逃し配信」として,その後1週間,講座を視聴できます.ご都合の良い方法でご参加ください.以下の通り,本シリーズは全12回を予定していますが,各回,各クールの独立性は高いので,夏期クールより初めての受講であっても,まったく問題ありません.
1. 英語語源辞典を楽しむ(2024年4月27日)
2. 英語語彙の歴史を概観する(2024年5月18日)
3. 英単語と「グリムの法則」(2024年6月8日)
4. 現代の英語に残る古英語の痕跡(2024年7月27日)
5. 英語,ラテン語と出会う(2024年8月24日)
6. 英語,ヴァイキングの言語と交わる(2024年9月28日)
7. 英語,フランス語に侵される(日付未定)
8. 英語,オランダ語と交流する(日付未定)
9. 英語,ラテン・ギリシア語に憧れる(日付未定)
10. 英語,世界の諸言語と接触する(日付未定)
11. 英語史からみる現代の新語(日付未定)
12. 勘違いから生まれた英単語(日付未定)
7月以降の夏期クールも毎月1回,指定の土曜日の夕方 17:30--19:00 に開講する予定です.春期クールから続いているシリーズではありますが,各クール,各回とも独立性の高い講座ですので,夏期クールより初めてのご参加であっても,まったく問題ありません.
春期クール3回の広い意味での「イントロ」を終え,夏期クールはいよいよ英語語彙史の具体的な記述が始まります.第4回は「現代の英語に残る古英語の痕跡」と題して,英語史の幕開きとなる古英語 (Old English) の時代に注目します.古英語とは紀元449--1100頃の英語を指しますが,語彙においても,そして発音,文字,文法においても,現代英語とは驚くほど異なる言語でした.現代の観点からみると,例えば古英語の語彙は,その多くの割合が現代まで生き延びずに,死語となっています.古英語と現代英語の語彙は,内容も規模も大きく異なるのです.
確かに語彙の断続性は著しいのですが,語彙の継続性にも注目したいところです.第4回講座の目標は,古英語と現代英語の語彙が間違いなくつながっているという事実を確認することです.
第4回のお知らせと概要は,先日 Voicy heldio でもお話ししました.「#1140. 7月27日(土),朝カルのシリーズ講座第4回「現代の英語に残る古英語の痕跡」が開講されます」をお聴きください.
シリーズでは『英語語源辞典』(研究社)を頻繁に参照します.同辞典をお持ちの方は,講座に持参されると,より楽しく受講できるかと思います(もちろん手元になくとも問題ありません).
本シリーズに関する hellog の過去記事へリンクを張っておきますので,ご参照ください.
・ 「#5453. 朝カル講座の新シリーズ「語源辞典でたどる英語史」が4月27日より始まります」 ([2024-04-01-1])
・ 「#5481. 朝カル講座の新シリーズ「語源辞典でたどる英語史」の第1回が終了しました」 ([2024-04-29-1])
・ 「#5486. 5月18日(土)の朝カル新シリーズ講座第2回「英語語彙の歴史を概観する」のご案内」 ([2024-05-04-1])
・ 「#5511. 6月8日(土)の朝カル新シリーズ講座第3回「英単語と「グリムの法則」」のご案内」 ([2024-05-29-1])
・ 「#5528. 朝カル講座の新シリーズ「語源辞典でたどる英語史」の春期3回が終了しました」 ([2024-06-15-1])
春期クールは,私の歴代朝カル講座のなかで最も多くの方々に受講していただきました.第4回から始まる夏期クールも,多くの方々のご参加をお待ちしております!
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』 研究社,1997年.
先週の木曜日,6月20日(木)の夜に,堀田研究室に4名の英語史学徒が集結しました.そこで Voicy heldio にて「はじめての古英語」シリーズの第9弾を収録し,それを一昨日「#1124. 「はじめての古英語」第9弾 with 小河舜さん&まさにゃん&村岡宗一郎さん」としてお届けしました.生配信ではありませんでしたが,ライヴ感のある充実した内容となっているかと思います.ぜひお聴きいただければ.
今回の収録は,レギュラーメンバーの小河舜さん(上智大学),「まさにゃん」こと森田真登さん(武蔵野学院大学)に加え,村岡宗一郎さん(日本大学)をお呼びして収録しました.今回は古英語のある1文に集中しましたが,それだけで十分に堪能することができました.
上記のシリーズ回の翌日には「#1125. 「はじめての古英語」第9弾のアフタートーク」で,さらに4人が盛り上がる様子をお届けしています.個々のメンバーによる音読もあり,こちらも必聴です.
シリーズを重ねるにつれ,お聴きの皆さんの古英語への関心が高まってきているように感じます.さらにいえば,hel活 (helkatsu) 全般が活気づいてきています.リスナーの Grace さんによる A to Z の「英語史研究者紹介」というべき note,lacolaco さんによる「英語語源辞典通読ノート」,Lilimi さんによる古英語ファンアートを含む「Lilimiのオト」,り~みんさんによる X 上での古英語音読の試みなど,さまざまに盛り上がってきています
「はじめての古英語」シリーズ (hajimeteno_koeigo),これからも続けていければと思います.
英語史の研究者がじきじきに英語史分野を推す本気の「hel活」 (helkatsu) が現われてきています.
「#5487. 菊地翔太さん(専修大学)が note を始められました」 ([2024-05-05-1]) でご紹介した菊地翔太さん(専修大学)が,5月1日付でこちらの note に自己紹介の初記事を投下されました.
その後,周囲で期待が膨れ上がる中,50日あまりの沈黙を破り,昨日6月23日,第2弾となる記事が公開されました.満を持しての note 更新といってよいでしょう.「英語史学習の記録にブクログを!」です.
記事の内容は,菊地さんがゼミ生向けに始められた「ブクログ」による英語史活動の紹介です.ブクログは web 本棚サービスであり,本の感想やレビューによって人々がつながっていくことができるサービスです.菊地さんは,ゼミ生たちをブクログに巻き込み,英語史関連の書籍を紹介し合う学習・教育活動を展開しています.
まずは菊地さんご自身の「専修大学英語史ゼミの本棚」を覗いてみることをお薦めします.本棚にはすでに96冊の英語史書が並んでおり,圧巻の充実振りです.
菊地さんの斬新なhel活に刺激を受け,私自身もすぐにブクログのアカウントを開設し,とりあえず「helbs の本棚」(= "hel + bookshelf" のつもり)の名前で英語史の本棚を急ごしらえ.棚だけ作り,まず練習のために拙著を放り込んでみました.本格的な書籍選定はこれからなのですが,すでにおもしろい! ぜひ皆さんもブクログでご自身の本棚を持ち,菊地さんが提案する新しいhel活を始めませんか?
ちなみに菊地さんは,この新手のhel活を「helロギング」 (= "hel-logging"?) と呼び始めていらっしゃいます.名前学的に本ブログの名称「hellog」(ヘログ)に寄りすぎたニアミスであり,領域侵犯の疑いから私も臨戦態勢に入りかけましたが,菊地さんが上記 note 記事のなかで私を名指して「Let's enjoy helロギング!」と高らかに唱えつつ文章を締めくくっているのを見るにつけ,完全に脱力しました(笑).
1週間前の6月8日(土)17:30--19:00 に,朝日カルチャーセンター新宿教室のシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」の第3回「英単語と「グリムの法則」」を開講しました.
4月より毎月1回,全12回のシリーズとして開始しましたが,最初のクール(3回分)が無事に済んだことになります.この春期クールには,40名を超える申込みをいただきました(私の講座としては歴代最多!).対面あるいはオンラインで出席していただいた方々,後日に動画で視聴した方々,ご参加ありがとうございました.毎回参加者より興味深い質問やコメントを多く寄せていただき,終了間際に短時間に回答するだけではもったいないほどなのですが,このように積極的に関わっていただき嬉しく思います.7月からの夏期クールもよろしくお願い致します.
改めて全12回のシリーズの予定を確認しておきます.
1. 英語語源辞典を楽しむ(2024年4月27日)
2. 英語語彙の歴史を概観する(2024年5月18日)
3. 英単語と「グリムの法則」(2024年6月8日)
4. 現代の英語に残る古英語の痕跡(2024年7月27日)
5. 英語,ラテン語と出会う(2024年8月24日)
6. 英語,ヴァイキングの言語と交わる(2024年9月28日)
7. 英語,フランス語に侵される(日付未定)
8. 英語,オランダ語と交流する(日付未定)
9. 英語,ラテン・ギリシア語に憧れる(日付未定)
10. 英語,世界の諸言語と接触する(日付未定)
11. 英語史からみる現代の新語(日付未定)
12. 勘違いから生まれた英単語(日付未定)
最初の3回は,シリーズ全体のなかでは,英語語源辞典と英語語彙史の導入の機会となりました.次の夏期クールの3回(第4,5,6回)は,いよいよ英語史本体に入ります.主に古英語期の言語接触に注目することになります.ゲルマン語派に属する英語が,いかにゲルマン語の語彙を保ち続け,いかに大陸の威信言語であるラテン語を受容し,いかにヴァイキングの侵攻に伴い,彼らの母語である古ノルド語の影響を被ったか.激動の英語語彙史の幕開きです.
7月以降も毎月1回指定の土曜日の夕方 17:30--19:00 に開講していく予定です.すでにお申し込みが可能になっていますので,こちらより詳細をご確認いただければ.春期クールから続いているシリーズではありますが,各クール,各回とも独立性の高い講座ですので,夏期クールより初めてのご参加であっても,まったく問題ありません.
このシリーズ講座については,本ブログや Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」でも予習・復習に資するコンテンツをお届けしてきましたし,これからもお届けしていく予定です.なお,お手元に寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』(研究社,1997年)が置いてあると,ますますエキサイティングに受講できる講座となっています.「#5436. 私の『英語語源辞典』推し活履歴 --- 2024年3月15日版」 ([2024-03-15-1]))と「#5522. 私の『英語語源辞典』推し活履歴 --- 2024年6月9日版」 ([2024-06-09-1]) もご参照ください.
6月6日(木)の夜,Voicy heldio の生放送で「#1107. 「はじめての古英語」生放送(第8弾) with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む (5)」をお届けしました.ライヴでお聴きいただいた方々には,盛り上げていただきましてありがとうございました.
シリーズも第8弾となり安定感が出てきましたが,今回は普段の3人に加え,古英語を専攻していない五所万実さん(目白大学)に生徒役・聞き手役として出演していただきました.五所さんにリスナー代表として素朴な疑問を投げかけていただいたので,普段以上に学べる回となっています.結果として,これまでとは異なるおもしろさをお届けできたと思います.
今回も引き続き Bede 著『英国民教会史』 (Historia Ecclesiastica Gentis Anglorum [= Ecclesiastical History of the English People]) の古英語訳の1節を読み進めました.古英語原文は hellog 「#5444. 古英語の原文を読む --- 597年,イングランドでキリスト教の布教が始まる」 ([2024-03-23-1]) に掲載していますが,その第1段落の最後の "Þæt wīf" で始まる1文を超精読しました.語順,接続法(仮定法),関係代名詞などの統語的な観点からも,助動詞や動詞の意味変化の観点からも,英語史的に話題豊富な1文となっています.韻文から散文への文学史的な流れについても議論しています.
1時間弱にわたる文献学的な対談精読実況中継となっています.「古英語を楽しむ」という趣旨でお届けしていますので,ぜひリラックスして楽しみながらお聴きください.生放送に引き続き,4人で「#1108. 「はじめての古英語」第8弾のアフタートーク」も収録しました.恒例の3人の各々による古英語音読コーナーもあります.ぜひご聴取ください.
今後もシリーズを続けていきますが,今回で Bede のキリのよいところまで終えられたので,次回は別の古英語テキストに切り替えようと思っています.どうぞご期待ください.
Baugh and Cable の英語史の古典的名著 A History of the English Language (第6版)を原書で「超」精読する Voicy 「英語の語源が身につくラジオ」 (heldio) のシリーズ企画を進めています.このシリーズは普段は有料配信なのですが,この名著を広めていきたいという思いもあり,たまにテキストを公開しながら無料配信も行なっています.これまでのシリーズ配信回のバックナンバーは「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1]) でご確認ください.
目下,第3章をおおよそ読了するところまで来ています.第3章の最後を飾るのが第52節 "Old English Literature" (pp. 65--68) です.古英語文学に関する重要な3ページ超の節で,短時間で超精読するにはなかなか手強い節です.これを私1人で解説するには荷が重いということで,本日6月12日(水)の夕方5時半頃より,強力な助っ人をお招きして,60分弱の対談精読実況生中継として2人でお届けする予定です(それでも終わらなければ,プレミアム限定配信 helwa で引き続き生配信することも十分にあり得ます).聴取はこちらからどうぞ.
今回は公開配信ということで,テキストも以下に掲載し公開しておきます(が,シリーズ継続のために,ぜひ本書を入手していただければ). *
52. Old English Literature. The language of a past time is know by the quality of its literature. Charters and records yield their secrets the philologist and contribute their quota of words and inflections to our dictionaries and grammars. But it is in literature that a language displays its full power, its ability to convey in vivid and memorable form the thoughts and emotions of a people. The literature of the Anglo-Saxons is fortunately one of the richest and most significant of any preserved among the early Germanic peoples. Because it is the language mobilized, the language in action, we must say a word about it.
Generally speaking, this literature is of two sorts. Some of it was undoubtedly brought to England by the Germanic conquerors from their continental homes and preserved for a time in oral tradition. All of it owes its preservation, however, and not a little its inspiration to the reintroduction of Christianity into the southern part of the island at the end of the sixth century, an event whose significance for the English language will be discussed in the next chapter. Two streams thus mingle in Old English literature, the pagan and the Christian, and they are never quite distinct. The poetry of pagan origin is constantly overlaid with Christian sentiment, while even those poems that treat of purely Christian themes contain every now and again traces of an earlier philosophy not wholly forgotten. We can indicate only in the briefest way the scope and content of this literature, and we shall begin with that which embodies the native traditions of the people.
The greatest single work of Old English literature is Beowulf. It is a poem of some 3,000 lines belonging to the type known as the folk epic, that is to say, a poem which, whatever it may owe to the individual poet who gave it final form, embodies material long current among the people. It is a narrative of heroic adventure relating how a young warrior, Beowulf, fought the monster Grendel, which was ravaging the land of King Hrothgar, slew it and its mother, and years later met his death while ridding his own country of an equally destructive foe, a fire-breathing dragon. The theme seems somewhat fanciful to a modern reader, but the character of the hero, the social conditions pictured, and the portrayal of the motives and ideals that animated people in early Germanic times make the poem one of the most vivid records we have of life in the heroic age. It is not an easy life. It is a life that calls for physical endurance, unflinching courage, and a fine sense of duty, loyalty, and honor. A stirring expression of the heroic ideal is in the words that Beowulf addresses to Hrothgar before going to his dangerous encounter with Grendel's mother: "Sorrow not... . Better is it for every man that he avenge his friend than that he mourn greatly. Each of us must abide the end of this world's life; let him who may, work mighty deeds ere he die, for afterwards, when he lies lifeless, that is best for the warrior."
Outside of Beowulf, Old English poetry of the native tradition is represented by a number of shorter pieces. Anglo-Saxon poets sang of the things that entered most deeply into their experience---of war and of exile, of the sea with its hardships and its fascination, of ruined cities, and of minstrel life. One of the earliest products of Germanic tradition is a short poem called Widsith in which a scop or minstrel pretends to give an account of his wanderings and of the many famous kings and princes before whom he has exercised his craft. Deor, another poem about a minstrel, is the lament of a scop who for years has been in the service of his lord and now finds himself thrust out by a younger man. But he is no whiner. Life is like that. Age will be displaced by youth. He has his day. Peace, my heart! Deor is one of the most human of Old English poems. The Wanderer is a tragedy in the medieval sense, the story of a man who once enjoyed a high place and has fallen upon evil times. His lord is dead and he has become a wanderer in strange courts, without friends. Where are the snows of yesteryear? The Seafarer is a monologue in which the speaker alternately describes the perils and hardships of the sea and the eager desire to dare again its dangers. In The Ruin, the poet reflects on a ruined city, once prosperous and imposing with its towers and halls, its stone courts and baths, now but the tragic shadow of what it once was. Two great war poems, the Battle of Brunanburh and the Battle of Maldon, celebrate with patriotic fervor stirring encounters of the English, equally heroic in victory and defeat. In its shorter poems, no less than in Beowulf, Old English literature reveals at wide intervals of time the outlook and temper of the Germanic mind.
More than half of Anglo-Saxon poetry is concerned with Christian subjects. Translations and paraphrases of books of the Old and New Testament, legends of saints, and devotional and didactic pieces constitute the bulk of this verse. The most important of this poetry had its origin in Northumbria and Mercia in the seventh and eighth centuries. The earliest English poet whose name we know was Cædmon, a lay brother in the monastery at Whitby. The story of how the gift of song came to him in a dream and how he subsequently turned various parts of the Scriptures into beautiful English verse comes to us in the pages of Bede. Although we do not have his poems on Genesis, Exodus, Daniel, and the like, the poems on these subjects that we do have were most likely inspired by his example. About 800, and Anglian poet named Cynewulf wrote at least four poems on religious subjects, into which he ingeniously wove his name by means of runes. Two of these, Juliana and Elene, tell well-known legends of saints. A third, Christ, deals with Advent, the Ascension, and the Last Judgment. The fourth, The Fates of the Apostles, touches briefly on where and how the various apostles died. There are other religious poems besides those mentioned, such as the Andreas, two poems on the life of St. Guthlac, a portion of a fine poem on the story of Judith in the Apocrypha; The Phoenix, in which the bird is taken as a symbol of the Christian life; and Christ and Satan, which treats the expulsion of Satan from Paradise together with the Harrowing of Hell and Satan's tempting of Christ. All of these poems have their counterparts in other literatures of the Middle Ages. They show England in its cultural contact with Rome and being drawn into the general current of ideas on the continent, no longer simply Germanic, but cosmopolitan.
In the development of literature, prose generally comes late. Verse is more effective for oral delivery and more easily retained in the memory. It is therefore a rather remarkable fact, and one well worthy of note, that English possessed a considerable body of prose literature in the ninth century, at a time when most other modern languages in Europe had scarcely developed a literature in verse. This unusual accomplishment was due to the inspiration of one man, the Anglo-Saxon king who is justly called Alfred the Great (871--99). Alfred's greatness rests not only on his capacity as a military leader and statesman but also on his realization that greatness in a nation is no simply physical thing. When he came to the throne he found that the learning which in the eight century, in the days of Bede and Alcuin, had placed England in the forefront of Europe, had greatly decayed. In an effort to restore England to something like its former state, he undertook to provide for his people certain books in English, books that he deemed most essential to their welfare. With this object in view, he undertook in mature life to learn Latin and either translated these books himself or caused others to translate them for him. First as a guide for the clergy he translated the Pastoral Care of Pope Gregory, and then, in order that the people might know something of their own past, inspired and may well have arranged for a translation of Bede's Ecclesiastical History of the English People. A history of the rest of the world also seemed desirable and was not so easily to be had. But in the fifth century when so many calamities were befalling the Roman Empire and those misfortunes were being attributed to the abandonment of the pagan deities in favor of Christianity, a Spanish priest named Orosius had undertaken to refute this idea. His method was to trace the rise of other empires to positions of great power and their subsequent collapse, a collapse in which obviously Christianity had had no part. The result was a book which, when its polemical aim had ceased to have any significance, was still widely read as a compendium of historical knowledge. This Alfred translated with omissions and some additions of his own. A fourth book that he turned into English was The Consolation of Philosophy b Boethius, one of the most famous books of the Middle Ages. Alfred also caused a record to be compiled of the important events of English history, past and present, and this, as continued for more than two centuries after his death, is the well-known Anglo-Saxon Chronicle. King Alfred was the founder of English prose, but there were others who carried on the tradition. Among these is Ælfric, the author of two books of homilies and numerous other works, and Wulfstan, whose Sermon to the English is an impassioned plea for moral and political reform.
So large and varied a body of literature, in verse and prose, gives ample testimony to the universal competence, at times to the power of beauty, of the Old English language.
終わり方も実に味わい深いですね.さて,次回からは第4章 "Foreign Influences on Old English" へと進みます.
(以下,後記:2024/06/16(Sun)
上記の生放送は2時間かけて配信されました.アーカイヴでは2回に分けてお届けしました(2回目はプレミアム限定配信となります).
(1) 「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (52) Old English Literature --- 和田忍さんとの実況中継(前半)」
(2) 「【英語史の輪 #146】 英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (52) Old English Literature --- 和田忍さんとの実況中継(後半)」
・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.
先日,菊地翔太先生(専修大学)と話しをする機会があり,大学の授業で標題の本 The Long Journey of English: A Geographical History of the Language をテキストとして用いているとのこと.昨年出版された,社会言語学の泰斗 Peter Trudgill による英語史の本です.伝統的な英語史書というよりは,主題・副題からも読み取れる通り,英語拡大史の本といったほうが分かりやすいと思います.当然ながら,世界英語 (world_englishes) の話題とも密接に関連してきます.私は未読ですが,早速入手はしました.これから読み進めつつ,菊地先生や学生の皆さんとともに議論したいな,などと思っています.
まず,本書の目次を挙げておきましょう.
Prologue: A View from the Birthplace
1 Where It All Started: The Language Which Became English
2 The Journey Begins: The First Movement South
3 Interlude: A View from the Celtic Island
4 Heading West Again: The North Sea Crossing, 400--600
5 Anglo-Saxons and Celts in the British Highlands, 600--800
6 And Further West: Across the Irish Sea, 800--1200
7 Atlantic Crossing: On to the Americas, 1600--1800
8 Onwards to the Pacific Shore
9 Across the Equator: Into the Southern Hemisphere, 1800--1900
10 Some Turning Back: English in Retreat
11 Meanwhile . . . Britain and the British Isles from 1600
12 Transcultural Diffusion: The New Native Englishes
Epilogue: Sixteen Hundred Years On
タイトルで "Geographical" と謳っている通り,本書内には地図が豊富です.また,巻末には参考文献一覧と索引が付いています.皆さんも一緒に読んでみませんか.
なお,菊地先生は,今後「hel活」 (helkatsu) としてご自身の note 上で英語史関連の記事を書かれていくつもりだとおっしゃっていました.本書の話題も出てくるかもしれませんね.たいへん楽しみです.
・ Trudgill, Peter. The Long Journey of English: A Geographical History of the Language. Cambridge: CUP, 2023.
昨日の記事「#5516. あなたの「推し前置詞」は何ですか?」 ([2024-06-03-1]) では,変わったお題を取り上げました.そこでも触れたように,先に大学生にも同じ質問を投げかけており,たくさんの興味深い回答が集まってきています.推し前置詞を挙げてもらい,さらになぜそれを推すのかの理由も挙げてもらいました.この回答集を読むのが非常におもしろく,夕べ読みながら時間があっという間に過ぎ去りました.今回は全体の一部にすぎませんが,ざっとまとめてみます.
推し前置詞 | 推しの理由 |
---|---|
about | on + by + out とは知らなかった! |
according to | 2語なのに前置詞! |
across | cross 「十字架」が意味に含まれているとは! |
after | 接続詞としての機能ももつ前置詞の代表選手! |
against | 「~に反して」と「~に寄りかかって」の語義が共存! |
among | between とちょっと違うのが萌える! |
as | 多義すぎる! |
at | 前置詞問題で迷ったら at を選べ!(←本当?) |
bar | 「~を除いて」を意味する前置詞とは知らなかった! |
beyond | 「かなた」で世界が広がっていく壮大さが好き! |
by | 地味だけれど異様に多義(OED では102語義あり)! |
during | 動詞由来とは萌える! |
given | 前置詞らしからぬ存在! |
in | "in 24 hourse" などで「~後」の意味をもつ! |
like | 動詞,名詞,形容詞,接続詞があって前置詞もある! |
of | 超高頻度で,日本語にも「だるいオブだるい」や「アウトオブ眼中」などと取り込まれている猛者! |
on | 意外な用法が多くワクワクする! |
over | 壮大でロマンチック! |
regardelss of | 語源にドラマを感じる! |
regarding | 動詞由来,しかもフォーマル! |
round | 「だいたい」「全体」を意味する! |
under | under construction, under way などは「下」というよりも「中」! |
until | by との使い分け,勘弁してください! |
up | 明確な方向性をもつ前置詞! |
vis-à-vis | face to face で良さそうなのに,あえてこれ! |
with | 付帯状況の with が最高! |
within | 前置詞のみならず副詞もあり.副詞の場合には「内面」を指すことがある! |
without | with の反対語を作るのに,なぜ out が付くくのか不明で萌える! |
5月23日(木)の夜,Voicy heldio にて「#1093.「はじめての古英語」生放送(第7弾) with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む (4)」をお届けしました.ライヴでお聴きの方々には,投げ込みのコメントや質問をいただきましてありがとうございました.
今回もお相手は小河舜先生(上智大学)および「まさにゃん」こと森田真登先生(武蔵野学院大学)です.毎回3人で元気に配信しています.
精読対象テキストは,前回に引き続き,Bede によりラテン語で著わされた『英国民教会史』 (Historia Ecclesiastica Gentis Anglorum [= Ecclesiastical History of the English People]) の古英語訳の1節です.原文は,hellog の「#5444. 古英語の原文を読む --- 597年,イングランドでキリスト教の布教が始まる」 ([2024-03-23-1]) に掲載しています.
今回は,音読練習,統語的呼応と語順,仮定法を含む動詞屈折のおさらい,散文の発達に関する話題等で議論が盛り上がりました.収録後,3人のくだけた振り返り回として「#1094. 「はじめての古英語」第7弾のアフタートーク」も公開していますので,ぜひお聴きください.
これまでの「はじめての古英語」シリーズ回を一覧しておきます.
(1) 「#822. ゼロから学ぶはじめての古英語 --- Part 1 with 小河舜さん and まさにゃん」
(2) 「#829. ゼロから学ぶはじめての古英語 --- Part 2 with 小河舜さん and まさにゃん」
(3) 「#836. ゼロから学ぶはじめての古英語 --- Part 3 with 小河舜さん and まさにゃん」
(4) 「#1030. 「はじめての古英語」生放送 with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む」
(5) 「#1057. 「はじめての古英語」生放送 with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む (2)」
(6) 「#1078. 「はじめての古英語」生放送 with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む (3)」
(7) 「#1093.「はじめての古英語」生放送(第7弾) with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む (4)」
次回もお楽しみに!
ここ数日間で,知識共有サービス Mond に寄せられてきた英語関連の素朴な疑問 (sobokunagimon) に5件ほど回答しました.新しい順に並べ,リンクを共有します.
(1) どうして英語には冠詞がいるのでしょうか? なくても意味が通じるような気がします.冠詞がないと困るケースはあるのでしょうか? または,冠詞は言語史上淘汰されていったりするケースはないのでしょうか?
(2) どうして英語は "a" だけでもいろいろな発音があるのでしょうか? 単語ごとにちがったり,単語のどの位置あるかによってちがったり 何か理由などはあるのでしょうか?
(3) 不定詞の意味上の主語について質問です.
a. I want him to win the game.
b. It's easy for me to solve the problem.
c. It's kind of you to give me a call.
この3つの英文のように,なぜ前置詞がつかなかったり,for や of のような前置詞がついたりするんですか? 受験生のときに統一してくれっと何度も思いました.
(4) 小学2年の娘が poor をポールと発音していました.これはプアって読むんだよ,と言うと po って並んでるのはポだからプって読むのはおかしい!と納得してくれません.語源から納得のできる説明ってできるのでしょうか?
(5) 英語に取り入れられた日本語の語末の "e" についてお聞きしたいです.酒 sake セイクではなくサキ,カラオケ karaoke キャラオウクではなくキャリオキ,空手 karate キャレイトではなくキャラァアティみたいな発音になります.一般的な英語の発音ルールではないと思うのですが,これらの語末が /iː/ っぽくなるのはなぜでしょうか?
とりわけ (1) の冠詞の疑問については,こちらの X ポストで注目され,インプレッションが2.5万を超えています.
それにしても,なぜ「素朴な疑問」というのはこれほど魅力的で,答えるのが難しいのでしょうか! 思いも寄らない角度からボールが飛んできて,常識を揺さぶられます.Mond へ,あっと驚く質問をお寄せください.
新年度より,朝日カルチャーセンター新宿教室にてシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」を月に一度のペースで開講しています.
これまでに第1回「語源辞典でたどる英語史」を4月27日(土)に,第2回「英語語彙の歴史を概観する」を5月8日(土)に開講しましたが,それぞれ驚くほど多くの方にご参加いただき盛会となりました.ご関心をお寄せいただき,たいへん嬉しく思います.
第3回「英単語と「グリムの法則」」は来週末,6月8日(土)の 17:30--1900 に開講されます.シリーズを通じて,対面・オンラインによるハイブリッド形式での開講となり,講義後の1週間の「見逃し配信」サービスもご利用可能です.シリーズ講座ではありますが,各回はおおむね独立していますし,「復習」が必要な部分は補いますので,シリーズ途中からの参加でも問題ありません.ご関心のある方は,こちらよりお申し込みください.
2回かけてのイントロを終え,次回第3回は,いよいよ英語語彙史の各論に入っていきます.今回のキーワードはグリムの法則 (grimms_law) です.この著名な音規則 (sound law) を理解することで,英語語彙史のある魅力的な側面に気づく機会が増すでしょう.グリムの法則の英語語彙史上の意義は,思いのほか長大で深遠です.英語語彙学習に役立つことはもちろん,印欧語族の他言語の語彙への関心も湧いてくるだろうと思います.『英語語源辞典』(研究社,1997年)をはじめとする語源辞典や,一般の英語辞典も含め,その使い方や読み方が確実に変わってくるはずです.
講座ではグリムの法則の関わる多くの語源辞典で引き,記述を読み解きながら,実践的に同法則の理解を深めていく予定です.どんな単語が取り上げられるかを予想しつつ講座に臨んでいただけますと,ますます楽しくなるはずです.『英語語源辞典』をお持ちの方は,巻末の「語源学解説」の 3.4.1. Grimm の法則,および 3.4.2. Verner の法則 を読んで予習しておくことをお薦めします.
参考までに,本シリーズに関する hellog の過去記事へのリンクを以下に張っておきます.第3回講座も,多くの皆さんのご参加をお待ちしております.
・ 「#5453. 朝カル講座の新シリーズ「語源辞典でたどる英語史」が4月27日より始まります」 ([2024-04-01-1])
・ 「#5481. 朝カル講座の新シリーズ「語源辞典でたどる英語史」の第1回が終了しました」 ([2024-04-29-1])
・ 「#5486. 5月18日(土)の朝カル新シリーズ講座第2回「英語語彙の歴史を概観する」のご案内」 ([2024-05-04-1])
(以下,後記:2024/05/30(Thu))
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』 研究社,1997年.
5月9日(木)の夜,Voicy heldio にて「#1078. 「はじめての古英語」生放送 with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む (3)」をお届けしました.ライヴでお聴きの方々には,投げ込みのコメントや質問をいただきましてありがとうございました.
精読対象テキストは,前回に引き続き,Bede によりラテン語で著わされた『英国民教会史』 (Historia Ecclesiastica Gentis Anglorum [= Ecclesiastical History of the English People]) の古英語訳の1節です.原文は,hellog の「#5444. 古英語の原文を読む --- 597年,イングランドでキリスト教の布教が始まる」 ([2024-03-23-1]) に掲載していますので,そちらをご覧になりながらお聴きください.
著者の Bede については,heldio 「#1029. 尊師ベーダ --- The Venerable Bede」にて解説していますので,そちらもお聴きください.
今回は,古英語の動詞屈折の話題,とりわけ過去形や仮定法の話題に触れる機会が多くありました.また,定冠詞 the に相当する語の屈折についても議論しました.事後に出演者の1人「まさにゃん」こと森田真登さん(武蔵野学院大学)が,ご自身の note 上で復習となる記事「ゼロから学ぶ はじめての古英語(#6 生放送3回目)」を公開されているので,そちらも合わせてご参照ください.
これまでの「はじめての古英語」シリーズ回を一覧しておきます.
(1) 「#822. ゼロから学ぶはじめての古英語 --- Part 1 with 小河舜さん and まさにゃん」
(2) 「#829. ゼロから学ぶはじめての古英語 --- Part 2 with 小河舜さん and まさにゃん」
(3) 「#836. ゼロから学ぶはじめての古英語 --- Part 3 with 小河舜さん and まさにゃん」
(4) 「#1030. 「はじめての古英語」生放送 with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む」
(5) 「#1057. 「はじめての古英語」生放送 with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む (2)」
(6) 「#1078. 「はじめての古英語」生放送 with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む (3)」
目下,次回 Part 7 に向けて3人とも鋭意準備中です.
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