1ヶ月半ほど前の5月6日(土)に,YouTube チャンネル「ゆる言語学ラジオ」に初めて出演させていただきました.「歴史言語学者が語源について語ったら,喜怒哀楽が爆発した【喜怒哀楽単語1】#227」というお題で,水野さんと私が日英語の語源の話題で盛り上がるという回でした(cf. 「#5122. 本日公開の「ゆる言語学ラジオ」に初ゲスト出演しています」 ([2023-05-06-1])).
日英語に限らず言語には一般に母音交替がよくある,という話をしていたところ,動画の19分40秒付近で,堀元さんが,なぜそもそも母音を替えるというパターンがあるものなのか,という素朴な疑問を投げかけてきました.あまりに本質的で鋭い問いなので,水野さんも私もしばらく固まってしまいました.私もしどろもどろになりつつ,背後にある原理の1つとして音象徴 (sound_symbolism) がありそうだ,というところまでは述べたのですが,まったく納得できる回答にはなっていなかったと思います.
先日,Comrie による論文を読んでいて,この究極の問いに関連する言及を見つけました.ゲルマン語派に生じたウムラウト (i-mutation or umlaut) の再建について論じた後で,印欧祖語の母音交替 (gradation or ablaut) の起源と再建を考察している箇所です (252) .
. . . if we go back to an earlier stage of the Indo-European ablaut --- for instance, some instances of the so-called zero grade, with complete loss of the vowel, can plausibly be attributed to shift of the accent away from that vowel --- there is no general explanation, so that ablaut remains a morphophonemic alternation for which we cannot reconstruct a plausible origin.
なぜ印欧祖語(そして後代の印欧諸語の多く)に母音交替があるのかについて,やはり一般的な説明はないということです.この問いは「母音を替えることによって機能を替えるという言語上の工夫ががいかにして芽生えたか」と換言することができますが,これは確かに究極の問いのように思われます.調音・聴覚・音響音声学の観点からも,母音の変異が人類言語において利用しやすいデバイスだからなのではないかと想像していますが,はたしてどうなのでしょうか.
・ Comrie, Barnard. "Reconstruction, Typology and Reality." Motives for Language Change. Ed. Raymond Hickey. Cambridge: CUP, 2003. 243--57.
言語類型論で知られる Comrie (248) が,言語の起源と発展をめぐる考察において,人類言語は最初から複雑だったか否かという問題について議論している.ちなみに,ここでいう複雑さとは,主に形態(音韻)論的な複雑さを指している.
One question that then arises is how some languages come to have such complexities as complex morphologies and morphophonemics.
One possible answer is that they have always had these complexities, i.e. that some languages, from the beginnings of human language, just started out being complex. After all, if languages with complex morphologies, like, say, the Eskimo languages, can be acquired with relatively little difficulty by children, then they are clearly within whatever limits exist on the acquisition and use of language by human beings in general, and as soon as humans attained the level necessary for dealing with such complexity they would have been able to deal with such a language. But although such a scenario cannot be excluded a priori, the nagging question keeps coming back of where such complexity could have come from, almost as if it were improbable to accept the complexity as always having been there and at least more tempting to try to explain its origin.
引用の最後に示唆されているように,Comrie 自身は,人類言語が最初から複雑だったという説には否定的のようだ.当初は単純だったものが徐々に複雑化してきた,という正反対の説を声高に表明しているわけでもないが,何らかの複雑化説を念頭に置いていると考えられる.
そもそも言語における複雑さという問題は難しい.上記では形態(音韻)論における複雑さのみが考慮されているにすぎないが,その他の部門の複雑さも含めて総合的に評価する必要があるからだ.そして,その評価の基準について研究者間での合意はない.この問題と関連して,以下の記事を参照.
・ 「#293. 言語の難易度は測れるか」 ([2010-02-14-1])
・ 「#1839. 言語の単純化とは何か」 ([2014-05-10-1])
・ 「#2820. 言語の難しさについて」 ([2017-01-15-1])
・ 「#4165. 言語の複雑さについて再考」 ([2020-09-21-1])
・ Comrie, Barnard. "Reconstruction, Typology and Reality." Motives for Language Change. Ed. Raymond Hickey. Cambridge: CUP, 2003. 243--57.
「#3082. "spelling bee" の起源と発達」 ([2017-10-04-1]) で,アメリカでは "spelling bee" というスペリング競技会が国民的人気を誇っている.正式には Scripps National Spelling Bee と呼ばれる.イギリスなどその他の英語国でも対応する競技会はあるが,アメリカの熱狂的な人気には及ばないようだ.Horobin (199--200) より,spelling_bee の沿革を説明する箇所を引用する.
The spelling bee began in the 1700s, forming a key part of a child's education. By 1800 spelling bees came to be viewed more as social entertainment; such frivolous pleasures were frowned upon by the Puritans who rebranded them as spelling 'schools' in an attempt to re-assert their educational focus. Spelling bees gradually fell out of favour in New England society, but were preserved within a frontier culture for whom correct spelling was still considered an index of education and social status. The publication of The Hoosier Schoolmaster (1871) led to a craze in spelling contests, following which the term spelling bee was introduced. The use of the word bee to refer to a social gathering of this kind, often with a specific purpose in mind, such as apple-bee, husking bee, or the more sinister lynching-bee, is based upon an allusion to the social character of bees themselves. But while these gatherings were social, they were also highly competitive, as the alternative name 'spelling fight' makes clear. The first national spelling bee was introduced in 1925, subsequently rebranded the Scripps bee in 1941, and is still going strong today. . . . The popularity of the spelling bee is far greater in America than it is in Britain. The British equivalent, the BBC's Hard Spell, was a short-lived innovation, while British schools rarely engage in the spelling bees that are such an integral part of American society.
では,なぜアメリカで spelling bee がここまで人気なのか.イギリス綴字と一線を画するアメリカ独自の綴字が,綴字改革者であり愛国者でもある Noah Webster (1758--1843) によって導入され推進されたことは,英語史ではよく知られている.独立前後から独自の綴字を作り上げてきたという国民的記憶と自負が,アメリカでのスペリング競技会人気の背景にあるのではないかと私は睨んでいる.さらにいえば,合衆国憲法がまさにそうであるように,spelling bee は多民族国家アメリカにとって,いわば「国民統合の象徴」に近いものなのではないか.アメリカは,Webster から spelling bee に至るまで,綴字という目に見えるものを国民の遵守すべき規範として掲げることによって,国民どうしの結束を固め,保とうとしているのではないか.イギリスで spelling bee への熱狂が見られないことと対比して,このように考えてみた次第である.
・ Horobin, Simon. Does Spelling Matter? Oxford: OUP, 2013.
・ サイモン・ホロビン(著),堀田 隆一(訳) 『スペリングの英語史』 早川書房,2017年.
昨日の記事「#5166. 秋元実治(編)『近代英語における文法的・構文的変化』(開拓社,2023年)」 ([2023-06-19-1]) で,先日発売された本をご紹介しました.同書については,YouTube 「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」の最新回でも取り上げています.「#137. 辞書も規範文法も18世紀の産業革命富豪が背景に---故山本史歩子さん(英語・英語史研究者)に捧ぐ---」です.どうぞご覧ください.
YouTube では,同書の第4章「18世紀の文法的・構文的変化」(山本史歩子さんが執筆された章)の後半の記述にインスピレーションを得て,なぜ規範文法 (prescriptive_grammar) ,ひいては規範主義 (prescriptivism)が,18世紀というタイミングで盛り上がったのかについてお話しています.実際には様々な要因があるのですが,同章に基づき,とりわけ産業革命 (industrial_revolution) とそれに伴う社会変化に注目しています.詳しくは,ぜひ本書を読んでいただければと思います.
第4章の執筆者である山本史歩子さん(青山学院大学)は,本書の出版を見る前にご逝去されました.英語史活動(hel活)の実践者にして,強力な理解者かつ応援者でもありました.昨年の春,2022年4月6日には,私の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にご出演いただきました.ぜひ「#310. 山本史歩子先生との対談 英語教員を目指す大学生への英語史のすすめ」をお聴きください.山本史歩子さんの英語史研究へのご貢献に深く感謝しつつ,心よりご冥福をお祈りいたします.
・ 秋元 実治(編),片見 彰夫・福元 広二・田辺 春美・山本 史歩子・中山 匡美・川端 朋広・秋元 実治(著) 『近代英語における文法的・構文的変化』 開拓社,2023年.
英語史において時制カテゴリーの成因や対応する表現はしばしば変化してきた.例えば,未来のことを指示するのにどのような表現が用いられてきたかを歴史に沿ってたどってみると,古英語から中英語にかけては現在時制を用いていたが,中英語から現代英語にかけては shall/will などを用いた迂言的な表現を用いるようになった等々.
Görlach (100) は,時制カテゴリーをめぐる英語史上の変化の概略を表にまとめている.以下に引用する.
ざっくりとした見取り図として参考にされたい.
・ Görlach, Manfred. The Linguistic History of English. Basingstoke: Macmillan, 1997.
形容詞 high と名詞 height は,それぞれ /haɪ/, /haɪt/ と発音されます.綴字と発音の関係について,前者は規則通りと考えられますが,後者は例外的です.これはなぜでしょうか.
まず high の綴字と発音の発達を振り返ってみましょう.古英語 hēah は中英語にかけて hēh > hēih > heih/hīh と発達しました.最後の段階で異形が2つ現われますが,後者の hīh が大母音推移を経て現代英語の high /haɪ/ に至ります.前者の heih は中英語ではむしろ有力でしたが,後に high に首席を明け渡しました.
ちなみに,古英語 nēah "near" もまったく同じ発達を遂げています.中英語にかけて nēh > nēih > neih/nīh と変化しました.最終段階の異形のうち前者は neighbour の第1要素に現われており,後者は nigh に連なります.
さて,名詞 height の古英語の形態は hēhþu でした.これは形容詞 hēah と歩調を揃えて中英語にかけて語形を発達させていき,hēhþ > hēihþ > heiht に帰着しました.ただし,形容詞と異なり,最後の段階に予想される異形 *hīht はありませんでした.名詞接尾辞に含まれる þ が後続する環境では,形容詞には生じた音変化が抑止されたからです.
こうして,名詞の綴字については,その後に綴字の若干の変化を経つつも height に落ち着きました.ところが,発音のほうは形容詞に引きつけられるようにして /haɪt/ で定着しました.こうして発音と綴字の複雑な発達過程と類推作用の結果, height ≡ /haɪt/ というちぐはぐな関係になってしまったのです.
以上,Prins (97) を参照して執筆しました.関連して,heldio より「#595. heah/hih/high --- 「ゆる言語学ラジオ」から飛び出した通時的パラダイム」をご参照ください.
・ Prins, A. A. A History of English Phonemes. 2nd ed. Leiden: Leiden UP, 1974.
標題は多くの英語学習者が抱いたことのある疑問ではないでしょうか?
目下 khelf(慶應英語史フォーラム)では「英語史コンテンツ50」企画が開催されています.4月13日より始めて,休日を除く毎日,khelf メンバーによる英語史コンテンツが1つずつ公開されてきています.コンテンツ公開情報は日々 khelf の公式ツイッターアカウント @khelf_keio からもお知らせしていますので,ぜひフォローいただき,リマインダーとしてご利用ください.
さて,標題の疑問について4月22日に公開されたコンテンツ「#9. なぜ be going to は未来を意味するの?」を紹介します.
さらに,先日このコンテンツの heldio 版を作りました.コンテンツ作成者との対談という形で,この素朴な疑問に迫っています.「#711. なぜ be going to は未来を意味するの?」として配信しています.ぜひお聴きください.
コンテンツでも放送でも触れているように,キーワードは文法化 (grammaticalisation) です.英語史研究でも非常に重要な概念・用語ですので,ぜひ注目してください.本ブログでも多くの記事で取り上げてきたので,いくつか挙げてみます.
・ 「#417. 文法化とは?」 ([2010-06-18-1])
・ 「#1972. Meillet の文法化」([2014-09-20-1])
・ 「#1974. 文法化研究の発展と拡大 (1)」 ([2014-09-22-1])
・ 「#1975. 文法化研究の発展と拡大 (2)」 ([2014-09-23-1])
・ 「#3281. Hopper and Traugott による文法化の定義と本質」 ([2018-04-21-1])
・ 「#5124 Oxford Bibliographies による文法化研究の概要」 ([2023-05-08-1])
とりわけ be going to に関する文法化の議論と関連して,以下を参照.
・ 「#2317. 英語における未来時制の発達」 ([2015-08-31-1])
・ 「#3272. 文法化の2つのメカニズム」 ([2018-04-12-1])
・ 「#4844. 未来表現の発生パターン」 ([2022-08-01-1])
・ 「#3273. Lehman による文法化の尺度,6点」 ([2018-04-13-1])
文法化に関する入門書としては「#2144. 冠詞の発達と機能範疇の創発」 ([2015-03-11-1]) で紹介した保坂道雄著『文法化する英語』(開拓社,2014年)がお薦めです.
・ 保坂 道雄 『文法化する英語』 開拓社,2014年.
一昨日の4月28日の午後3時過ぎより約60分間,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の生放送で「英語に関する素朴な疑問千本ノック(矢冨&堀田&まさにゃん)」を khelf 協賛でお届けしました.今回も多くの方にライヴで聴いていただき,さらに投げ込み質問も多数いただきました.難問・珍問が続出し,うまく回答できないものもありましたが,出演者とギャラリー一同,たいへん勉強になりました.聴いていただいたリスナーの皆さんにも,英語史の面白さと難しさを感じていただけたのではないでしょうか.
生放送を収録したものを,今朝レギュラー放送として公開しました.「#699. 4月28日に「英語に関する素朴な疑問千本ノック(矢冨&堀田&まさにゃん)」を生放送でお届けしました」です.
全体で17の質問に回答し,ときにギャラリーにも加わってもらい議論となりましたが,楽しかったです.適度な緊張と興奮がやめられませんね.各質問の分秒を一覧しておきます.ちなみに,いまや heldio 名物となった「まさにゃん暴走」は12:41辺りから始まる第5問目「kid と child が同じ意味なのはなぜ?」の回答中でお聴きになれます.
(1) 01:13 --- なぜ am は I の後ろにしか来ないのですか?
(2) 04:33 --- なぜ I am Japanese. となり I am a Japanese. とは言わないのですか?
(3) 07:46 --- なぜ未来の確定したことは現在形で表現できるのですか?
(4) 10:28 --- 現在と過去は動詞の語尾で示せますが未来は語尾で示せないのはなぜ?
(5) 12:41 --- kid と child が同じ意味なのはなぜ?(cf. この問いでは,いまや heldio 名物となった「まさにゃん暴走」を聴けます)
(6) 18:56 --- honest や hour の h を発音しないのはなぜ?(cf. 先日の「#5108. 4月20日の heldio 生放送「英語に関する素朴な疑問 千本ノック」のまとめ」の (3) で回答を試みています)
(7) 20:54 --- an historical というつながりを見たことがありますが a ではないのですか?
(8) 22:34 --- leaf の複数形は leaves ですが,belief の複数形は beliefs です.なぜですか?
(9) 25:48 --- so は短いのに意味が多すぎます.なぜですか?
(10) 30:49 --- 英文法は誰が定めたのですか,あるいはどのように成立したのですか?
(11) 33:30 --- is も am も過去形ではともに was になるのはなぜですか?
(12) 38:21 --- なぜ不定詞には for ではなく to がつくのですか? 他の前置詞ではダメだったのですか?
(13) 41:08 --- なぜ使役では能動態だと原形不定詞を,受動態では to 不定詞を用いるのですか?
(14) 44:29 --- なぜ自動詞と他動詞は分かれたのですか?
(15) 49:45 --- It is fine today. ではなく Today is fine. というと不自然なのはなぜですか?
(16) 52:42 --- baggage と luggage の綴字が似ているのは歴史的に関係があるからですか?
(17) 53:57 --- 英語史上の最大の学説対立があれば教えてください.
過去の「千本ノック」回については「#5005. 過去17回の heldio 「千本ノック」の一覧」 ([2023-01-09-1]) あるいは senbonknock をご覧ください.
昨日の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて,4月20日に質問者の学生が居合わせるなかで生放送収録した「英語に関する素朴な疑問 千本ノック」をアーカイヴとして配信しました.「#691. 4月20日に「英語に関する素朴な疑問 千本ノック」を heldio 生放送でお届けしました」をお聴きください(60分ほどの長さですので,お時間のあるときにとうぞ).
英語学習者その他から英語に関する素朴な疑問を事前あるいは即興で寄せてもらい,それに対して私が英語史研究者の立場から回答するという試みは,様々な形でたびたび行なってきました.大学の授業や一般の講座でも行なってきましたし,本ブログでも sobokunagimon のタグのついた多くの記事で素朴な疑問に回答しています.また,知識共有サービス「Mond」でも,一般から寄せられた問いに専門的に答えてきました.ちょうど今朝も Mond にて than usually ならぬ than usual という表現についての疑問に回答したところです.
そして,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」でも,1年ほど前に「#341. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック」を配信したのを皮切りに,ときに他の英語史研究者を回答者としてお招きする形で19回ほど千本ノック企画を公開してきました.19回の履歴は「#5005. 過去17回の heldio 「千本ノック」の一覧」 ([2023-01-09-1]) をご覧ください.
とりわけ居合わせた学生などから直接に素朴な疑問を出してもらい,その場で回答するという,Voicy heldio 生放送でのスタイルは,新鮮で緊張感もあり私自身は好きなのですが,何よりも貴重なのは,その後に寄せられてくる反響のコメントです.今回の千本ノックが終わった後,学生たちに感想を書いてもらいました.いくつか紹介します(ただし,軽微な修正を含め文章に最小限の編集を施していることを断わっておきます).
質問によって多くのことに目を向けられるようになる気がした.他の人の疑問や,視点を知れたことで確かにと思うことや,そこから発展して疑問に思うことなどなど自分1人では思いつかないようなことをたくさん知れ,それこそがみんなで学習する意味なのだと改めて感じた.
今まで積んできた英語学習の中で,恐らくたくさんの疑問を抱えてきたはずだが,いざそれらの素朴な疑問を挙げるとなると,なかなか思い出すことができなかった.しかし,他の受講生の方の疑問を聞いていると,自身もかつて疑問に思ったな,と感じるものであったり,逆になるほど,そのような疑問もあったか,などというようなものもあり,とても新鮮に感じながら聞くことができた.
みんなが出してくれた疑問を聞いてみると,「確かに不思議だな」「そういえばなんでなんだろう」と感じるものばかりで,私もその回答を聞くことが楽しく,ワクワクしながら聞いていた.
同じ立場の人たちが英語に関する「素朴な疑問」をとても広い分野にわたって抱いていることが印象的だった.自分は質問を出すのに悩み,悩んだゆえに英語の学習過程で出会ったもののみのかなり範囲の狭い質問になってしまったが,今回の千本ノックで扱った質問は英語の学習という範囲のみに限らず日本で生活し英語と接する中で出てくるような質問ばかりだった.そうした小さな疑問を持ち追及することは意味のないことだと日常の中で無意識に思ってしまい出てこなかったのかもしれないと思い,改めてそのような質問が許される場と出会えたことはとても貴重だと感じた.
千本ノックのラジオでは,私が思いもつかなかった質問が次から次へと飛んでいて持っていなかった視点が沢山得られて驚きました.
千本ノックを聞いて,まず寄せられた質問の質の高さに驚きました.私は英語の素朴な疑問,と聞いて出すのに苦労したのですが,寄せられた質問を見るとすべて確かに疑問に思うことばかりでした.自分の中で当たり前になっていたり,「これはそういうものだから」と教えられたような事ばかりだったので新鮮だったと共に,私のような人間にこそ英語史の勉強が必要なのだろうと感じました.
千本ノックでは他の人たちがどんな疑問を抱いているのかを知ることができ自分もかつては抱いていたはずなのに忘れかけていたような疑問に再び出会うことができていい刺激になりました.疑問を他者と共有することは大切だと改めて認識させられました.
自分の中には無かった鋭い着眼点を含んだ質問が多く,文字通り素朴であることが凝り固まった自分の視点をほぐしてくれたような気がしました.
千本ノックは,自分一人では思いつかなかった疑問について考える貴重な機会になりました.また,自分が考えもしなかった疑問を他の学生が上げてくれていたので,新たな観点から英語の文構造を見ることができました.
いつもは目もくれない様々な「言葉」にもっと興味を持って,まるで地球を訪れてきたエーリアンのように常に好奇心を持って生きていきたいなと思いました.
今回の千本ノック後,友達と駅に向かって歩いていてマクドナルドの前を通り過ぎた時,同じタイミングで「あ!スコットランド!」と言って笑っていました(Mc の由来はスコットランドで,ケルト言語で息子という意味だと授業で聞いたので).
さらに,Voicy のコメント欄でもリスナーさんより「本当によくこんないい質問が浮かぶなあと,聴いていて対抗心が湧きました」など類似のメッセージが複数届いています.
これでお分かりかと思います.つまり,一見するとトリビアルに思われるような素朴な疑問を,皆で持ち寄り互いに鑑賞すること自体に価値があるということです.公開企画にすれば,それを広く皆で共有できるというメリットがあります.それに対する回答はそれとして重要ですが,二の次であるといってよいでしょう.
千本ノック公開企画を始めた当初は,この効用に気づいていませんでしたが,最近になってようやく分かってきました.疑問を共有することは,さらなる知的刺激を生み出すのだと.
千本ノック企画,これからも続けていきます(実際,次回は4月28日(金)の午後3時から生放送の予定です).
一昨日の4月20日の午前11:10より約60分間,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の生放送で「千本ノック」をお届けしました.ライヴで聴いてくださったリスナーの皆さん,ありがとうございました
生放送を収録したものを,今朝レギュラー放送として公開しました.「#691. 4月20日に「英語に関する素朴な疑問 千本ノック」を heldio 生放送でお届けしました」をお聴きください.
新学期に大学生より多くの「英語に関する素朴な疑問」を寄せてもらいました.今回はその中から14の質問を取り上げましたが,良問・難問が続いてエキサイティングでした.参考までに各疑問と分秒を一覧しておきます,
(1) 02:01 --- McDONALD'S の Mc とは?
(2) 08:16 --- なぜ -tion は「ション」と読むの?
(3) 11:56 --- hour や honor で h を発音しないのはフランス語の影響?
(4) 15:53 --- なぜアルファベットには濁点・半濁点がないの?
(5) 21:10 --- 過去の習慣を表わす used to とは?
(6) 25:54 --- なぜ that には多様な用法があるのに this にはないの?
(7) 29:13 --- doctor はなぜ -er ではなく -or で終わるの?
(8) 34:05 --- なぜ do の3単現が does になるの?
(9) 39:00 --- なぜ英語は縦書きしないの?
(10) 42:25 --- なぜ new をもじった「オニュー」があるのに,old をもじった「オオールド」はないの?
(11) 48:31 --- whom の -m は何?
(12) 49:51 --- なぜ小文字と大文字で字形の違うものがあるの?
(13) 53:58 --- なぜ read - read - read は同じスペリングなの?
(14) 57:12 --- なぜ定冠詞 the は母音の前では「ズィ」になるの?
過去の「千本ノック」回については「#5005. 過去17回の heldio 「千本ノック」の一覧」 ([2023-01-09-1]) あるいは senbonknock をご覧ください.
一昨日の4月7日の午後11:20より約50分間,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の生放送で#678. 4月7日に「英語に関する素朴な疑問 千本ノック」を heldio 生放送でお届けしましたをお届けしました.ライヴでお聴きくださったリスナーの皆さん,ありがとうございました.
数十名のフレッシュな大学1年生を前にしての対面公開収録&生放送でした.その場で学生たちに英語に関する素朴な疑問を投げてもらい,私が回答するという「千本ノック」企画でしたが,今回も良問が多く出されました.私は常々「難しい問題ではなく素朴な疑問こそが重要」と言っていますが,今回もそのことが伝わるとよいなと期待しつつ回答したつもりです.どうだったでしょうか?
50分の長丁場ですので,時間のあるときにゆっくりお聴きください.
以下に,今回の「千本ノック」で取り上げた各疑問の分秒を一覧しておきます.
(1) 02:34 --- 英語になぜ敬語が存在しないの?
(2) 05:51 --- am, are, is という3つの be 動詞の由来が知りたいです
(3) 09:19 --- 日本語では一音で意味を持つものがあるにもかかわらず(例えば「絵」や「胃」)英語では一音で意味を持つことがほとんどないのはなぜですか?
(4) 13:14 --- -ed がつく過去形と不規則に変化する過去形がある理由
(5) 18:04 --- 3単現に -s がつく理由
(6) 21:52 --- 動詞 play が使えるスポーツと使えないスポーツの違いはなんですか?
(7) 24:02 --- なぜ英語には女性名詞や男性名詞がないのか?
(8) 27:11 --- 3単現の -s がないと,ネイティブスピーカーはどんな感覚なのか?
(9) 28:33 --- 英語と日本語はどうして順序が逆になるのですか?(住所とか)
(10) 31:03 --- <gh> などの発音しない子音があるのはなぜですか?
(11) 33:49 --- Pokémon (ポケモン)の e の上にある点は何?
(12) 36:09 --- 世界には英語が書かれたグッズが多く出回っているが(GAPなど),英語圏の人はどう感じているのか?
(13) 38:20 --- なぜ fine には「罰する」「罰金」という意味があるの?
(14) 41:35 --- 同じ単語にいくつも意味があるのはなんで?
(15) 44:00 --- どうしてアメリカ英語とイギリス英語があるんですか?
(16) 45:50 --- 日本語には句読点があるけれど,なぜ英語では空白で区切るの?
過去の「千本ノック」回については「#5005. 過去17回の heldio 「千本ノック」の一覧」 ([2023-01-09-1]) あるいは senbonknock をご覧ください.
不定人称代名詞 (indefinite_pronoun) の none は「誰も~ない」を意味するが,動詞とは単数にも複数にも一致し得る.None but the brave deserve(s) the fair. 「勇者以外は美人を得るに値せず」の諺では,動詞は3単現の -s を取ることもできるし,ゼロでも可である.規範的には単数扱いすべしと言われることが多いが,実際にはむしろ複数として扱われることが多い (cf. 「#301. 誤用とされる英語の語法 Top 10」 ([2010-02-22-1])) .
none は語源的には no one の約まった形であり one を内包するが,数としてはゼロである.分かち書きされた no one は同義で常に単数扱いだから,none も数の一致に関して同様に振る舞うかと思いきや,そうでもないのが不思議である.
しかし,American Heritage の注によると,none の複数一致は9世紀からみられ,King James Bible, Shakespeare, Dryden, Burke などに連綿と文証されてきた.現代では,どちらの数に一致するかは文法的な問題というよりは文体的な問題といってよさそうだ.
Visser (I, § 86; pp. 75--76) には,古英語から近代英語に至るまでの複数一致と単数一致の各々の例が多く挙げられている.最古のものから Shakespeare 辺りまででいくつか拾い出してみよう.
86---None Plural.
Ælfred, Boeth. xxvii §1, þæt þær nane oðre an ne sæton buton þa weorðestan. | c1200 Trin. Coll. Hom. 31, Ne doð hit none swa ofte se þe hodede. | a1300 Curs. M. 11396, bi-yond þam ar wonnand nan. | 1534 St. Th. More (Wks) 1279 F10, none of them go to hell. | 1557 North, Gueuaia's Diall. Pr. 4, None of these two were as yet feftene yeares olde (OED). | 1588 Shakesp., L.L.L. IV, iii, 126, none offend where all alike do dote. | Idem V, ii, 69, none are so surely caught . . ., as wit turn'd fool. . . .
Singular.
Ælfric, Hom. i, 284, i, Ne nan heora an nis na læsse ðonne eall seo þrynnys. | Ælfred, Boeth. 33. 4, Nan mihtigra ðe nis ne nan ðin gelica. | Charter 41, in: O. E. Texts 448, ȝif þæt ȝesele . . . ðæt ðer ðeara nan ne sie ðe londes weorðe sie. | a1122 O. E. Chron. (Laud Ms) an. 1066, He dyde swa mycel to gode . . . swa nefre nan oðre ne dyde toforen him. | a1175 Cott. Hom. 217, ȝif non of him ne spece, non hine ne lufede (OED). | c1250 Gen. & Ex. 223, Ne was ðor non lik adam. | c1450 St. Cuthbert (Surtees) 4981, Nane of þair bodys . . . Was neuir after sene. | c1489 Caxton, Blanchardyn xxxix, 148, Noon was there, . . . that myghte recomforte her. | 1588 A. King, tr. Canisius' Catch., App., To defende the pure mans cause, quhen thair is nan to take it in hadn by him (OED). | 1592 Shakesp., Venus 970, That every present sorrow seemeth chief, But none is best.
none の音韻,形態,語源,意味などについては以下の記事も参照.
・ 「#1297. does, done の母音」 ([2012-11-14-1])
・ 「#1904. 形容詞の no と副詞の no は異なる語源」 ([2014-07-14-1])
・ 「#2723. 前置詞 on における n の脱落」 ([2016-10-10-1])
・ 「#2697. few と a few の意味の差」 ([2016-09-14-1])
・ 「#3536. one, once, none, nothing の第1音節母音の問題」 ([2019-01-01-1])
・ 「#4227. なぜ否定を表わす語には n- で始まるものが多いのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2020-11-22-1])
また,数の不一致についても,これまで何度か取り上げてきた.英語史的には singular_they の問題も関与してくる.
・ 「#1144. 現代英語における数の不一致の例」 ([2012-06-14-1])
・ 「#1334. 中英語における名詞と動詞の数の不一致」 ([2012-12-21-1])
・ 「#1355. 20世紀イギリス英語で集合名詞の単数一致は増加したか?」 ([2013-01-11-1])
・ 「#1356. 20世紀イギリス英語での government の数の一致」 ([2013-01-12-1])
・ Visser, F. Th. An Historical Syntax of the English Language. 3 vols. Leiden: Brill, 1963--1973.
昨日『中高生の基礎英語 in English』の3月号が発売となりました.今回で丸2年続いた連載「歴史で謎解き 英語のソボクな疑問」も第24回で,最終回となります.取り上げる話題は,最終回にふさわしく「アルファベット最後の文字 Z のミステリー」です.よろしければ手に取っていただければと思います.
冒頭の節「Z はもっとも出番の少ない文字」では,Z が英語のアルファベット26文字中最も頻度の低い文字であることが述べられます.続く「Z を含む英単語を挙げてみると」では,Z を含む英単語が列挙されていきますが,パッとしないものばかりです.S と Z の守備範囲についても触れられます.次の「日陰者の人生」では,いよいよ Z の悲哀の歴史が明らかにされます.最終節「発音は「ズィー」か「ゼッド」か」の節では,この文字をどう呼ぶかに関する混乱と競合の歴史が描かれ,英語の英米差に話が及びます.
24回続いた連載は今回の Z の話題で幕を閉じます.読者より寄せられた疑問にお答えする回もあり,毎月,執筆者としても楽しみながら筆を執ることができました.編集者さんの丁寧なお仕事に助けられ,そしてイラストレーターさんの確立した探偵スタイルにも元気づけられ,24回を完走できました.関係の皆様に感謝致します.2年間のご愛読,ありがとうございました.
振り返りの意味も込め,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」で昨年10月22日で公開した放送回「#509. 毎月,中高生のために英語史連載を書いています」もお聴きいただければとと思います.
連載「歴史で謎解き 英語のソボクな疑問」はこれにて終了となりますが,英語の歴史の謎解き自体は,この hellog でも,その他の媒体でも,続けていきます.引き続きよろしくお願いいたします.
本日『中高生の基礎英語 in English』の2月号が発売となります.連載「歴史で謎解き 英語のソボクな疑問」の第23回は「なぜ現在分詞と動名詞は同じ -ing で表されるの?」です.
英語の -ing 語尾は多義ですね.現在分詞 (present participle) は,be と組み合わさって進行形 (progressive) を形成したり,形容詞として名詞を修飾・叙述したり,分詞構文を作ることもできます.動名詞 (gerund) としては,動詞を名詞に転換させる生産的な方法を提供しています.つまり,-ing は動詞を形容詞にしたり,副詞にしたり,名詞にしたりと八面六臂の活躍を示しているのです.
しかし,現在分詞の -ing と動名詞の -ing は起源がまったく異なります.古くは形態も異なっていたのですが,歴史の過程で -ing という同じ形に合わさってしまっただけです.今回の連載記事では,この辺りの事情を易しく丁寧に解説しています.また,進行形は近代英語期に確立した比較的新しい文法事項なのですが,なぜどのように成立したのか,その歴史的過程もたどっています.いつものように謎解き風の記事となっています.ぜひご一読ください.
Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の関連する放送回として「#375. 接尾辞 -ing には3種類あるって知っていましたか?」を紹介しておきます.連載記事と合わせて -ing への理解が深まると思います.
昨年5月に Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて「英語に関する素朴な疑問 千本ノック」企画を始めました.その後順調に回を重ねてシリーズとして定着してきた感があります.heldio リスナーさん,学生の皆さん,一般の方々から広く英語に関する素朴な疑問を募り,それに対して回答したり,回答しあぐねたり,雑談したりしていくラジオ番組仕立ての企画です.正確に数えていませんが,これまでに百本ノックくらいは受けたのではないかと思います.練習の結果,内野ゴロをさばく力はそこそこついてきたかもしれません.
当初はノックを受けるのは私一人で,いわば「個人練習」でしたが,昨年9月からは矢冨弘先生(熊本学園大学)や菊地翔太先生(専修大学))という英語史研究者仲間を巻き込んで「団体練習」でノックを受けています.シリーズ企画の途中から,事前収録から生放送へ切り替わり,またkhelf(慶應英語史フォーラム)主催のイベントとしてもリニューアルしました.
これまで質問を寄せていただいた皆さん,生放送・アーカイヴでお聴きのリスナーの皆さん,巻き込まれた先生方,司会を務める khelf 会長のまさにゃん,広報や準備に携わっている khelf のメンバーの皆さんに,感謝申し上げます.今年も「千本ノック」企画を続けていく所存です.よろしくお願いいたします.
司会のまさにゃんが,自身の note にて「千本ノック」の回顧記事「「英語に関する素朴な疑問 千本ノック(生放送)」 第一回目 まとめ」を掲載していますので,そちらもご覧ください.
以下,これまでの「千本ノック」の放送回を一覧しておきます.初めての方も2度目の方も,カジュアルに,しかしディープに英語史を楽しむことができると思います.とりわけ第14回以降の生放送が,多少の緊張感があってお勧めです.英語史をお茶の間にお届けします.どうぞお聴きください!
1. 【個人・事前収録】「#341. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック」(2022年5月7日放送)
2. 【個人・事前収録】「#342. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック --- 続き」(2022年5月8日放送)
3. 【個人・事前収録】「#350. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック --- Part 3」(2022年5月16日放送)
4. 【個人・事前収録】「#351. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック --- Part 4」(2022年5月17日放送)
5. 【個人・事前収録】「#360. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック --- Part 5」(2022年5月26日放送)
6. 【個人・事前収録】「#369. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック --- Part 6」(2022年6月4日放送)
7. 【個人・事前収録】「#390. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック --- Part 7」(2022年6月25日放送)
8. 【個人・事前収録】「#391. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック --- Part 8」(2022年6月26日放送)
9. 【個人・事前収録】「#398. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック --- Part 9」(2022年7月3日放送)
10. 【個人・事前収録】「#415. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック --- Part 10」(2022年7月8日放送)
11. 【個人・事前収録】「#415. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック --- Part 11」(2022年7月9日放送)
12. 【個人・事前収録】「#446. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック(リスナーさんからの質問編) --- Part 12」(2022年8月8日放送)
13. 【個人・事前収録】「#465. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック --- Part 13」(2022年9月8日放送)
14. 【団体・生放送】「#479. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック(矢冨弘&堀田隆一) --- Part 14」(2022年9月22日放送)(cf. 司会まさにゃんの note 記事「「英語に関する素朴な疑問 千本ノック(生放送)」 第一回目 まとめ」にて,今回取り上げられた素朴な疑問一覧と頭出し分秒が掲載されています)
15. 【個人・生放送】「#494. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック(生放送回) --- Part 15」(2022年10月7日放送)
16. 【団体・生放送】「#515. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック(矢冨弘&堀田隆一) 第2弾」(2022年10月28日放送)
17. 【団体・生放送】「#550. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック(矢冨弘&菊地翔太&堀田隆一) 第3弾」(2022年12月2日放送)(cf. 「#4967. 「英語に関する素朴な疑問 千本ノック(矢冨弘&菊地翔太&堀田隆一) 第3弾」は「補充法」の回となりました」 ([2022-12-02-1]) に,この回で取り上げられた素朴な疑問一覧と頭出し分秒が掲載されています)
(以下は,2023/04/23(Sun) 付で加えた後記です)
18. 【個人・生放送】「#678. 4月7日に「英語に関する素朴な疑問 千本ノック」を heldio 生放送でお届けしました」(2023年4月9日放送)(cf. 「#5095. 4月7日の heldio 生放送「英語に関する素朴な疑問 千本ノック」のまとめ」 ([2023-04-09-1]) に,この回で取り上げられた素朴な疑問一覧と頭出し分秒が掲載されています)
19. 【個人・生放送】「#691. 4月20日に「英語に関する素朴な疑問 千本ノック」を heldio 生放送でお届けしました」(2023年4月22日放送)(cf. 「#5108. 4月20日の heldio 生放送「英語に関する素朴な疑問 千本ノック」のまとめ」 ([2023-04-22-1]) に,この回で取り上げられた素朴な疑問一覧と頭出し分秒が掲載されています)
20. 【団体・生放送】「#699. 4月28日に「英語に関する素朴な疑問千本ノック(矢冨&堀田&まさにゃん)」(2023年4月30日放送)(cf. 「4月28日の heldio 生放送「英語に関する素朴な疑問千本ノック(矢冨&堀田&まさにゃん)」のまとめ」 ([2023-04-30-1]) に,この回で取り上げられた素朴な疑問一覧と頭出し分秒が掲載されています)
明けましておめでとうございます.「英語史をお茶の間に」をモットーに,本年も「hellog~英語史ブログ」より英語史の情報を発信していきます.姉妹版の音声ブログ Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」 も合わせて,皆様には「英語史」の領域を推していただければと思います.よろしくお願いいたします.
年初ということで,昨年2022年に本ブログのどの記事が最もよく読まれたかを公表したいと思います.12月30日付のアクセス・ランキング (access ranking) のトップ500記事をご覧ください(過年度版は「#4632. 2021年によく読まれた記事」 ([2022-01-01-1]),「#4267. 2020年によく読まれた記事」 ([2021-01-01-1]) と「#3901. 2019年によく読まれた記事」 ([2020-01-01-1]) をどうぞ).
「素朴な疑問」系の記事 (sobokunagimon) がよく読まれているようなので,その系列で上位に入っている50記事を以下に挙げてみます(各行末の数字は年間アクセス数).お正月の読み物(ラジオの場合は聴き物)としてどうぞ.50記事をまとめて読みたい方はこちらから.
・ 「#4188. なぜ sheep の複数形は sheep なのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2020-10-14-1]) (6739)
・ 「#4044. なぜ活字体とブロック体の小文字 <a> の字形は違うのですか?」 ([2020-05-23-1]) (5218)
・ 「#1774. Japan の語源」 ([2014-03-06-1]) (5094)
・ 「#43. なぜ go の過去形が went になるか」 ([2009-06-10-1]) (5084)
・ 「#4199. なぜ last には「最後の」と「継続する」の意味があるのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2020-10-25-1]) (5027)
・ 「#3611. なぜ He is to blame. は He is to be blamed. とならないのか?」 ([2019-03-17-1]) (4645)
・ 「#3485. 「神代文字」を否定する根拠」 ([2018-11-11-1]) (3950)
・ 「#2924. 「カステラ」の語源」 ([2017-04-29-1]) (3651)
・ 「#4304. なぜ foot の複数形は feet なのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2021-02-07-1]) (3557)
・ 「#4017. なぜ前置詞の後では人称代名詞は目的格を取るのですか?」 ([2020-04-26-1]) (3309)
・ 「#2784. なぜアメリカでは英語が唯一の主たる言語となったのか?」 ([2016-12-10-1]) (2951)
・ 「#4219. なぜ DX が digital transformation の略記となるのか?」 ([2020-11-14-1]) (2949)
・ 「#4290. なぜ island の綴字には s が入っているのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2021-01-24-1]) (2854)
・ 「#3717. 音声学と音韻論はどう違うのですか?」 ([2019-07-01-1]) (2833)
・ 「#1258. なぜ「他動詞」が "transitive verb" なのか」 ([2012-10-06-1]) (2821)
・ 「#1299. 英語で「みかん」のことを satsuma というのはなぜか?」 ([2012-11-16-1]) (2752)
・ 「#3941. なぜ hour, honour, honest, heir では h が発音されないのですか?」 ([2020-02-10-1]) (2711)
・ 「#4042. anti- は「アンティ」か「アンタイ」か --- 英語史掲示板での質問」 ([2020-05-21-1]) (2709)
・ 「#4186. なぜ Are you a student? に対して *Yes, I'm. ではダメなのですか?」 ([2020-10-12-1]) (2422)
・ 「#4060. なぜ「精神」を意味する spirit が「蒸留酒」をも意味するのか?」 ([2020-06-08-1]) (2379)
・ 「#4195. なぜ船や国名は女性代名詞 she で受けられることがあるのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2020-10-21-1]) (2169)
・ 「#4178. なぜ仮定法では If I WERE a bird のように WERE を使うのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2020-10-04-1]) (1717)
・ 「#2502. なぜ不定詞には to 不定詞 と原形不定詞の2種類があるのか?」 ([2016-03-03-1]) (1659)
・ 「#3831. なぜ英語には冠詞があるのですか?」 ([2019-10-23-1]) (1564)
・ 「#103. グリムの法則とは何か」 ([2009-08-08-1]) (1555)
・ 「#3298. なぜ wolf の複数形が wolves なのか? (1)」 ([2018-05-08-1]) (1553)
・ 「#3852. なぜ「新橋」(しんばし)のローマ字表記 Shimbashi には n ではなく m が用いられるのですか? (1)」 ([2019-11-13-1]) (1505)
・ 「#2618. 文字をもたない言語の数は? (2)」 ([2016-06-27-1]) (1359)
・ 「#4196. なぜ英語でいびきは zzz なのですか?」 ([2020-10-22-1]) (1355)
・ 「#3588. -o で終わる名詞の複数形語尾 --- pianos か potatoes か?」 ([2019-02-22-1]) (1352)
・ 「#2189. 時・条件の副詞節における will の不使用」 ([2015-04-25-1]) (1333)
・ 「#40. 接尾辞 -ly は副詞語尾か?」 ([2009-06-07-1]) (1288)
・ 「#4233. なぜ quite a few が「かなりの,相当数の」の意味になるのか?」 ([2020-11-28-1]) (1180)
・ 「#1028. なぜ国名が女性とみなされてきたのか」 ([2012-02-19-1]) (1170)
・ 「#3983. 言語学でいう法 (mood) とは何ですか? (1)」 ([2020-03-23-1]) (1135)
・ 「#47. 所有格か目的格か:myself と himself」 ([2009-06-14-1]) (1121)
・ 「#4026. なぜ Japanese や Chinese などは単複同形なのですか? (3)」 ([2020-05-05-1]) (1101)
・ 「#2891. フランス語 bleu に対して英語 blue なのはなぜか」 ([2017-03-27-1]) (1093)
・ 「#2601. なぜ If I WERE a bird なのか?」 ([2016-06-10-1]) (1064)
・ 「#4272. 世界に言語はいくつあるのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2021-01-06-1]) (1055)
・ 「#580. island --- なぜこの綴字と発音か」 ([2010-11-28-1]) (1034)
・ 「#3648. なんで *He cans swim. のように助動詞には3単現の -s がつかないのですか?」 ([2019-04-23-1]) (992)
・ 「#3591. ネアンデルタール人は言葉を話したか?」 ([2019-02-25-1]) (973)
・ 「#4276. なぜ say の過去形,3単現形は「セイド」「セイズ」ではなく「セッド」「セズ」と発音されるのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2021-01-10-1]) (973)
・ 「#4714. 発話行為とは何か?」 ([2022-03-24-1]) (966)
・ 「#4080. なぜ she の所有格と目的格は her で同じ形になるのですか?」 ([2020-06-28-1]) (919)
・ 「#4387. なぜ名詞(句)が副詞的に用いられることがあるのですか?」 ([2021-05-01-1]) (869)
・ 「#146. child の複数形が children なわけ」 ([2009-09-20-1]) (865)
・ 「#1006. ルーン文字の変種」 ([2012-01-28-1]) (863)
・ 「#2200. なぜ *haves, *haved ではなく has, had なのか」 ([2015-05-06-1]) (853)
新年は学び始めにふさわしい時期です.英語史に関心をもった方,さらに関心をもちたい方は,保存版記事である「#4873. 英語史を学び始めようと思っている方へ」 ([2022-08-30-1]) とそこからリンクを張っている記事群をご参照ください.
なお,昨年の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」 の聴取ランキングは昨日の記事で取り上げています.「#4996. 今年1年間でよく聴かれた放送 --- Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」より」 ([2022-12-31-1]) を参照し,ぜひいろいろ聴取してみてください.
本年も,hellog, heldio ともにお付き合いのほど,よろしくお願いいたします.
名詞 (noun) と代名詞 (pronoun) は2つの異なる品詞とみなすべきか,あるいは後者は前者の一部ととらえるべきか.品詞分類はなかなか厳密にはいかないのが常であり,見方によってはいずれも「正しい」という結論になることが多い.昨今は明確に白黒をつけるというよりは,プロトタイプ (prototype) としてファジーに捉えておくのがよい,という見解が多くなっているのかもしれない.しかし,最終的にはケリをつけないと気持ちが悪いと思うのも人間の性であり,やっかいなテーマだ.
Aarts が両陣営の議論をまとめているので引用する.
[ 名詞と代名詞は異なるカテゴリーとみなすべきである (Aarts, p. 25) ]
・ Pronouns show nominative and accusative case distinctions (she/her, we/us, etc.); common nouns do not.
・ Pronouns show person and gender distinctions; common nouns do not.
・ Pronouns do not have regular inflectional plurals in Standard English.
・ Pronouns are more constrained than common nouns in taking dependents.
・ Noun phrases with common or proper nouns as head can have independent reference, i.e. they can uniquely pick out an individual or entity in the discourse context, whereas the reference of pronouns must be established contextually.
[ 名詞と代名詞は同一のカテゴリーとみなすべきである (Aarts, p. 26) ]
・ Although common nouns indeed do not have nominative and accusative case inflections they do have genitive inflections, as in the doctor's garden, the mayor's expenses, etc., so having case inflections is not a property that is exclusive to pronouns.
・ Indisputably, only pronouns show person and arguably also gender distinctions, but this is not a sufficient reason to assign them to a different word class. After all, among the verbs in English we distinguish between transitive and intransitive verbs, but we would not want to establish two distinct word classes of 'transitive verbs' and 'intransitive verbs'. Instead, it would make more sense to have two subcategories of one and the same word class. If we follow this reasoning we would say that pronouns form a subcategory of nouns that show person and gender distinctions.
・ It's not entirely true that pronouns do not have regular inflectional plurals in Standard English, because the pronoun one can be pluralized, as in Which ones did you buy? Another consideration here is that there are regional varieties of English that pluralize pronouns (for example, Tyneside English has youse as the plural of you, which is used to address more than one person . . . . And we also have I vs. we, mine vs. ours, etc.
・ Pronouns do seem to be more constrained in taking dependents. We cannot say e.g. *The she left early or *Crazy they/them jumped off the wall. However, dependents are not excluded altogether. We can say, for example, I'm not the me that I used to be. or Stupid me; I forgot to take a coat. As for PP dependents: some pronouns can be followed by prepositional phrases in the same way as nouns can. Compare: The shop on the corner and one of the students.
・ Although it's true that noun phrases headed by common or proper nouns can have independent reference, while pronouns cannot, this is a semantic difference between nouns and pronouns, not a grammatical one.
この討論を経た後,さて,皆さんは異なるカテゴリー派,あるいは同一カテゴリー派のいずれでしょうか?
・ Aarts, Bas. "Syntactic Argumentation." Chapter 2 of The Oxford Handbook of English Grammar. Ed. Bas Aarts, Jill Bowie and Gergana Popova. Oxford: OUP, 2020. 21--39.
『中高生の基礎英語 in English』の1月号が発売されました.連載「歴史で謎解き 英語のソボクな疑問」の第22回として「なぜヨーロッパの人は英語が上手なの?」に答えています.
この素朴な疑問は,大雑把でナイーヴな問いに響くかもしれません.ヨーロッパ人がみな英語が上手なわけではありませんし,アジアやアフリカを含めた世界の各地に英語が上手な人はたくさんいます.このことは承知の上で,今回の記事をなるべく多くの中高生に届けたいという思いから,あえてこのような表題を掲げた次第です.
中高生に英語学習の早い段階でぜひとも知ってもらいたい重要なことがあります.それは,英語とヨーロッパの主要言語との関係です.将来大学などに進学して英語以外の言語を学ぶことになったとき,あるいは独学で他言語に挑んでみようと思い立ったとき,もしヨーロッパの諸言語を念頭においているのであれば,ぜひ英語,ドイツ語,オランダ語,フランス語,スペイン語,イタリア語などの相互関係について言語学・言語史的な観点から理解しておいてください.学習言語を選択する上で,とても大事な知識だからです.
大学教員である私は日常的に大学生と付き合っていますが,彼らのなかには,英語史の授業などで英語とヨーロッパの諸言語との関係を初めて知ると,第2外国語として○○語ではなくフランス語/ドイツ語を選択しておけばよかった,などと口にする学生がいます.もう1年か2年早く諸言語間の関係を知っていたら△△語を選んでいたのに,と後悔しているようなのです.
中高生の皆さんは,いずれ英語以外の言語を学ぶ可能性があるのであれば,英語と他の言語との関係について知っていたほうが得です.主体的に学習言語を選択できることになるからです.最終的にどの言語を選ぶにせよ,事前に多くの情報をもっておくに越したことはありません.
英語やヨーロッパの主要言語は,いずれもインドヨーロッパ語族と呼ばれる言語家族の一員です.おおまかにいえば言語が互いに似ているのです.しかし,英語と比較してどの点でどのくらい似ているのか,あるいは似ていないのかは,言語ごとに異なります.
ドイツ語とオランダ語は,英語とともにインドヨーロッパ語族のなかでもゲルマン語派という派閥に属しており,文法や発音において互いに似ているところがあります.しかし,実際にドイツ語やオランダ語に触れてみると,英語と同じ派閥に属しているわりには,それほど似ていないという印象を受けるかもしれません.似ているけれども似ていない,似ていないけれども似ている,といった妙な距離感です.
一方,フランス語,スペイン語,イタリア語などは,長らくヨーロッパの共通語だったラテン語とともにインドヨーロッパ語族のなかでもイタリック語派という派閥に属しています.英語とは大きく異なる派閥なのですが,英語は歴史を通じてフランス語やラテン語から多くの単語を借りてきた経緯があるため,語彙に関しては実は共通しているものが非常に多いのです.したがって,これらの言語を学んでみると,表面的には英語とよく似ているという印象を受けます.
英語は,ゲルマン語派にルーツをもつけれどもイタリック語派の影響を大きく受けながら発展してきた言語なのです.単純化していえば,英語はヨーロッパのいくつかの言語を混ぜ合わせたような混合言語といってよいでしょう.皆さんが英語の次に学ぶ言語を選択する際には,ぜひこのことを参考にしてみてください.
今回の話題と関連する Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の放送回としては「#486. 英語と他の主要なヨーロッパ言語との関係 ー 仏西伊葡独語」がお勧めです.ぜひお聴きください.
昨日午後1時より Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて,khelf(慶應英語史フォーラム)主催の生放送「英語に関する素朴な疑問 千本ノック(矢冨弘&菊地翔太&堀田隆一) 第3弾」をお届けしました.ライヴでお聴きくださったり,生で質問を投げ込んでいただいたリスナーの皆さん,ありがとうございました!
今朝,生放送を収録した音声を公開しました.60分弱の本編に続いて10分の振り返りトークがあります.長めですので,ゆっくりお時間を取れるときにどうぞ.
今回の千本ノックは矢冨弘先生(熊本学園大学),菊地翔太先生(専修大学),堀田隆一(慶應義塾大学)の3名で臨みました.3名いると答え方も多様となり,そこに化学反応も生まれ,かつ生放送のほどよい緊張感もあり,答えている側がおおいに勉強になりました.最後のほうには,Zoom 越しではありましたが矢冨先生のギャラリーとして控えていた学生さんにも参加してもらい,交流することができました.また,過去2回にもまして,司会のまさにゃんによる質問チョイスが光っていました.良問揃いです.以下に,質問と本編(第2チャプター)の分秒を一覧しておきます.
(1) 03:36 --- good の比較級・最上級が gooder, goodest ではなく better, best なのはなぜですか?
(2) 07:00 --- なぜ助動詞 must には過去形がないのですか?
(3) 10:50 --- 主格 I に対して属格・対格が my, me になるのは対応が取れていないように思いますが,これも補充法でしょうか?
(4) 12:20 --- なぜ英語は日本語よりも正確性を求める言語なのですか?
(5) 17:09 --- なぜ英語圏では brother や sister のように年上,年下を重要視しないのでしょうか?
(6) 22:02 --- 日本語でいう「よろしくお願いします」とまったく同じ意味の英単語,英語表現はないのですか?
(7) 23:50 --- なぜ one という綴りで「ワン」と読むのですか?
(8) 27:52 --- once, twice なのに three times, four times となるのはなぜですか?
(9) 32:07 --- 洋楽のタイトルや歌詞などで she don't などが出てくるのですが,文法をあまり気にしないネイティヴなどは気にならないのでしょうか?
(10) 36:57 --- 英語には疑問文につく助動詞の do がありますが,この文法事項について教えてください.
(11) 42:25 --- 英語は語順が厳格に定められているのに,一方で倒置のような表現が可能なのはなぜですか?
(12) 45:08 --- 英語は多数の言語から語彙を借用してきましたが,借用の過程で優位を占める言語はどのような基準で決まりますか?
(13) 51:18 --- 英語母語話者が英語を学ぶ際に,一番苦労する文法の分野は何だと思いますか?
(14) 56:14 --- 仮定法の if I were と if I was の使い分けはあるのですか?
このように様々な素朴な疑問が飛び出しましたが,補充法 (suppletion) をめぐる話題に注目が集まりました.この問題については,例えば以下の記事や heldio をご参照ください.
・ 「#43. なぜ go の過去形が went になるか」 ([2009-06-10-1])
・ 「#1482. なぜ go の過去形が went になるか (2)」 ([2013-05-18-1])
・ 「#4094. なぜ go の過去形は went になるのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2020-07-12-1])
・ 「#4403. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第3回「なぜ go の過去形は went になるの?」」 ([2021-05-17-1])
・ 「#4774. go/went は社会言語学的リトマス試験紙である」 ([2022-05-23-1])
・ 「#1585. 閉鎖的な共同体の言語は複雑性を増すか」 ([2013-08-29-1])
・ 「#764. 現代英語動詞活用の3つの分類法」 ([2011-05-31-1])
・ 「#4479. 不規則動詞の過去形は直接記憶保存されている」 ([2021-08-01-1])
・ 「#2600. 古英語の be 動詞の屈折」 ([2016-06-09-1])
・ 「#2090. 補充法だらけの人称代名詞体系」 ([2015-01-16-1])
・ 「#67. 序数詞における補充法」 ([2009-07-04-1])
・ 「#3859. なぜ言語には不規則な現象があるのですか?」 ([2019-11-20-1])
・ 「#765. 補充法は古代人の実相的・質的・単一的な観念の表現か」 ([2011-06-01-1])
・ 「#1580. 補充法研究の限界と可能性」 ([2013-08-24-1])
・ heldio 「#9. first の -st は最上級だった!」
・ heldio 「#10. third は three + th の変形なので準規則的」
・ heldio 「#11. なぜか second 「2番目の」は借用語!」
・ heldio 「#364. YouTube での「go/went 合い言葉説」への反応を受けまして」
・ heldio 「#483. be動詞の謎 (1)」
また,YouTube 「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」の第25弾「新説! go の過去形が went な理由」もよく視聴されていますので,ご覧ください.
最後に矢冨弘先生(熊本学園大学)と菊地翔太先生(専修大学),そして司会のまさにゃん(慶應義塾大学大学院)の運営するウェブリソースへのリンクを以下に張っておきます.ぜひ英語史の学びのために訪問してみてください.
・ 矢冨弘先生のホームページ:英語史関連のブログ記事や YouTube 講義動画が公開されています
・ 菊地翔太先生のホームページ: 英語史関連の授業資料や講習会資料が公開されています
・ まさにゃんによる YouTube チャンネル「まさにゃんチャンネル【英語史】」: 「毎日古英語」や「語源で学ぶ英単語」のシリーズなど英語史や英語学習に関する動画が満載です
今年もあっという間に師走の声が近づいてきました.明後日12月1日(木)のお昼過ぎ13:00--14:00に Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて「千本ノック」の生放送をお届けします.いつものように khelf(慶應英語史フォーラム)主催のイベントとなります.
今回千本ノックを受けるのは矢冨弘先生(熊本学園大学)と堀田,そして前回の第2弾で飛び入り参加いただいた菊地翔太先生(専修大学)の3人です.司会はいつものように,khelf 会長にして日本初の古英語系 YouTube チャンネル「まさにゃんチャンネル」を運営するまさにゃん (masanyan) です(YouTube 「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」でも何度か出演しています) .
前回の第2弾のために hellog や heldio などの広報を通じて皆さんからお寄せいただいた「素朴な疑問」が,未消化のままに数多く残っていますので,今回はそちらの疑問を中心に取り上げたいと思っています.ただし,ライブ感を出すために生放送中の投げ込み質問も歓迎しますので,ぜひ Voicy アプリよりお寄せください.
生放送で参加していただけると臨場感も緊張感もあっておもしろいと思いますが,平日の日中ですしご都合のつかない方におかれましては,翌朝の通常回で収録の様子をアーカイヴとして配信する予定ですので,そちらからお聴きください.
これまでの heldio の「千本ノック」シリーズ全体はこちらからお聴きいただけます.学びはすべて疑問から始まりますね.ぜひ素朴な疑問に関心を持ち続けていただければと.
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