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「#5763. 品詞とは何か? --- ただの「語類」と呼んではダメか」 ([2025-02-05-1]) と「#5765. 品詞とは何か? --- Bloomfield の見解」 ([2025-02-07-1]) で品詞論を紹介してきた.今回は『新英語学辞典』の parts of speech の項を参照しながら,英語の伝統的な8品詞の分類基準について考えてみる.
英語の伝統的な8品詞は,意味,機能,形態の3つの分類基準がごちゃ混ぜになった分類であり,理論的には問題があるとされる.まず,名詞,形容詞,動詞,間投詞については,主に意味的な基準で分けられているといってよい.もちろん意味的な基準といっても微妙なケースはいくらでもある.英語で white は,日本語では「白」という名詞にも,「白い」という形容詞にも相当し,意味的には互いに限りなく近い.同様に,分詞は形容詞と動詞の合いの子といってよいが,合いの子からみればいずれにも意味的に近い.さらに,以上4品詞の分類については形態的な基準も少なからず関わっており,意味的な基準だけで語れるわけではない.間投詞は他と比べて意味的な自律性があるといえそうだが,これもまだ検討の余地があるかもしれない.
一方,代名詞,副詞,接続詞は機能的な基準による分類だ.ただし,言語において「機能的」とのラベルはカバーする範囲が非常に広い.かりに「統語的」と狭めておけば,それなりに説明できるかもしれないが,グレーゾーンは残る.副詞や接続詞は統語的に決定できそうだが,代名詞は統語論的機能と同時に語用論的機能も帯びており,「機能的」のカバー範囲をもっと広めに設定しておく必要があるようにも思われる.
最後に前置詞はどうだろうか.基本的には統語的な機能の観点からの分類といってよさそうだが,意味的な考慮が入っていないとはいえない.like や worth は後ろに「目的語」らしきものをとる点で統語的には前置詞的な振る舞いを示すが,比較的中身のある語彙的意味をもっている点では形容詞ぽい.
品詞間の境目が明確でないという問題自体は古くからあり,個々の論点が指摘されてきたが,それ以前に3つの分類基準が複雑にオーバーラップしているという本質的な課題を抱えているのである.
・ 大塚 高信,中島 文雄(監修) 『新英語学辞典』 研究社,1982年.
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最終更新時間: 2025-02-22 08:49
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