目次シリーズの一環として,昨年出版された包括的な日本語史概説書,沖森卓也(著)『日本語史大全』を取り上げたい.文庫でありながら教科書的という印象で,記述は淡々としている.時代別に章立てされているが,各章の内部では分野別の記述がなされており,各章の該当節を拾っていけば,分野ごとの縦の流れも押さえられるように構成されている.したがって,目次を追っていくだけで日本語史の全体像が理解できる仕組みとなっている.以下に目次を再現しよう.
ちなみに英語史概説書の目次は「#2089. Baugh and Cable の英語史概説書の目次」 ([2015-01-15-1]),「#2050. Knowles の英語史概説書の目次」 ([2014-12-07-1]),「#2038. Fennell の英語史概説書の目次」 ([2014-11-25-1]),「#2007. Gramley の英語史概説書の目次」 ([2014-10-25-1]) を参照.
はじめに
歴史を知る意義
日本語史の対象と方法
話しことばの歴史
日本語史の時代区分
分野別の記述
日本語史へのいざない
第一章 古代前期――奈良時代まで
1 総説――古代語が確立する
古代前期とその言語
「万葉仮名文書」に口語の一端を見る
2 文字表記――日本語が漢字で書かれる
漢字の伝来
稲荷山古墳鉄剣銘
万葉仮名
漢字の音
字音の構造
音仮名の用法
訓の成立
訓と和化漢文
仮名文の原形
3 音韻――区別される音節の数が多い
上代特殊仮名遣
母音と子音
母音調和
頭音法則
母音交替
イ段乙類音とエ段音
連濁
音節構造とアクセント
4 語彙――固有語が用いられる
和語とは固有語か
和語と音節数
代名詞の語彙
動詞の語構成
形容詞の語構成
漢語
待遇表現の語彙
雅俗・男女差
方言
忌詞
5 文法――古代語法が形成される
動詞の活用
活用タイプの所属語
動詞活用の起源
命令形の由来
未然形と連用形の機能
連用形の由来
未然形の由来
終止形の由来
連体形の由来
連体形と已然形の類似点
已然形の用法
已然形の由来
上一段活用の由来
形容詞の活用
形容詞の活用の由来
ク語法
ミ語法
態の助動詞
推量の助動詞
過去・完了・継続の助動詞
断定・否定の助動詞
尊敬の助動詞
格助詞
接続助詞
副助詞
係助詞
終助詞
間投助詞
第二章 古代後期――平安時代
1 総説――古代語が完成する
古代後期とその言語
漢文と仮名文
『源氏物語』に古典語を見る
階級と地域
2 文字表記――仮名が成立する
漢文の訓読
訓点の方法
片仮名の成立
草仮名
平仮名の成立
仮名の起源
句読点と濁点
3 音韻――音節が複雑に発達する
上代特殊仮名遣の崩壊
母音と子音
音韻の混同
「あめつち」と「たゐに」
いろは歌
五十音図
漢字音
声点とアクセント
名詞のアクセント
動詞のアクセント
形容詞その他のアクセント
4 語彙――漢語の使用が漸増する
代名詞の語彙
多彩な形容動詞語彙
和語と漢語
漢語の日本語化
混種語
和文語と漢文訓読語
待遇表現の語彙
丁寧語の発生
漢和字書の誕生
5 文法――古典文法が完成する
動詞の活用
形容詞・形容動詞の活用
音便
音便発生の理由
態の助動詞
推量の助動詞
その他の助動詞
格助詞
接続助詞
副助詞・係助詞
終助詞
間投助詞
第三章 中世前期――院政鎌倉時代
1 総説――古代語が瓦解する
中世前期とその言語
口語の変化に着目する
『徒然草』に当時の口語を垣間見る
2 文字表記――仮名の使用が促される
東鑑体
真名本が生まれる
漢字の字体と書風
仮名で和語を書く
仮名使用の広がり
片仮名の使用者層
片仮名の字体
促音・撥音の表記
定家仮名遣
3 音韻――音韻が整理されていく
イとヰ,エとヱ
直音と拗音
鼻濁音
連濁と連声
開合
促音と撥音
漢字音の日本語化
東国方言の音韻
4 語彙――漢語が一般化する
代名詞の語彙
和語と漢語
和漢の混淆
唐音とその漢語
武家詞
待遇表現の語彙
国語辞典の出現
5 文法――古代語法が衰退する
連体形の終止法
係り結びの消滅
二段活用の一段化
ラ変活用の消滅
形容詞活用の一本化
連体形活用語尾「る」の脱落
形容動詞の活用
接続詞
態の助動詞
「しむ」をめぐる混乱
推量の助動詞
過去・完了の助動詞
断定・否定の助動詞
願望・希望の助動詞
格助詞
接続助詞
副助詞
係助詞
終助詞・間投助詞
第四章 中世後期――室町時代
1 総説――近代語が胎動する
中世後期とその言語
外国語との交流
『天草本伊曽保物語』に口語の全容を見る
2 文字表記――文字の使用が広がる
キリシタン資料のローマ字つづり
印刷技術のもう一つの伝来
漢字
仮名
濁点・半濁点
3 音韻――現代語の発音に近づく
母音
子音
四つ仮名
連濁と連声
漢字音
4 語彙――外来語が登場する
代名詞の語彙
副詞の語彙
感動詞の語彙
現代語と異なる語形
漢語
ポルトガル語からの外来語
女房詞と武家詞
待遇表現の語彙
尊敬語
謙譲語
丁寧語
5 文法――近代語法が芽生える
二段活用の一段化の進行
動詞活用のヤ行化
動詞の命令形
可能動詞
テ形の発達
授受表現
形容詞
形容動詞
音便
形式名詞の「の」
態の助動詞
推量の助動詞
過去の助動詞とアスペクト
断定の助動詞
その他の助動詞
格助詞
接続助詞
副助詞・係助詞
終助詞・間投助詞
複合辞の増加
第五章 近世――江戸時代
1 総説――近代語が発達する
近世とその言語
上方語と江戸語
『浮世風呂』に江戸語の位相差を見る
2 文字表記――文字が庶民に普及する
文字の学習
近世の文体
漢字と仮名
契沖仮名遣
濁点・半濁点と句読点
3 音韻――現代語の音韻が確立する
母音
子音
合拗音の消滅
開合と四つの仮名の混同
江戸語の音韻的特色
4 語彙――漢語で訳語が造られる
代名詞の語彙
感動詞の語彙
階層によって異なる使用語彙
尊敬語
丁寧語
あそばせ詞
謙譲語ほか
女性語の発展
漢語の尊重
漢語による翻訳語
オランダ語からの外来語
5 文法――近代語法が整備される
動詞の活用
可能動詞
形容動詞
推量の助動詞
断定の助動詞
否定の助動詞
態の助動詞とアスペクト
格助詞
順接の接続助詞
逆接の接続助詞
その他の接続助詞
副助詞
終助詞
間投助詞
複合辞の発達
第六章 近代――明治時代
1 総説――共通語が普及する
近代とその言語
『あひゞき』に口語体の創出を見る
2 文字表記――文字施策が浸透する
漢字と訓
言文一致体
出版の大衆化
漢字の廃止論と制限論
国語施策と漢字制限
当用漢字と常用漢字
外来語の表記
ヘボン式と日本式のローマ字つづり
戦後のローマ字つづり
3 音韻――外来語が影響を与える
現代日本語の音韻
外来語の音韻
二拍名詞のアクセント
アクセントの型の対応
方言アクセントの系譜
三拍名詞のアクセント
東京アクセントの形成
4 語彙――漢語・外来語が急増する
新漢語の出現
『浮雲』の漢語
漢語の増加
『浮雲』の外来語
外来語の急増
現代語の語種
待遇表現の語彙
5 文法――現代語法が展開する
動詞の活用
形容詞・形容動詞
ラ抜きことば
助動詞
格助詞
接続助詞
副助詞
終助詞・間投助詞
東京語の文末表現
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参考文献
索引
・ 沖森 卓也 『日本語全史』 筑摩書房〈ちくま新書〉,2017年.
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