hellog〜英語史ブログ

#1022. 英語の各音素の生起頻度[phoneme][frequency][statistics]

2012-02-13

 昨日の記事「#1021. 英語と日本語の音素の種類と数」 ([2012-02-12-1]) で,音素一覧を掲げた.では,英語の音素のなかでもっとも多く使われる音素は何だろうか.そして,もっとも使われないのは何だろうか.
 その統計をとった研究がある.Fry, D. B. "The Frequency of Occurrence of Speech Sounds in Southern English." Archives Néerlandaises de Phonétique Expérimentale 20 (1947) で出された統計が Crystal (239, 242) に掲載されているので,ここに再掲する.一定の長さの談話における延べ音素で数えたものである.

1234567891011121314151617181920    total
/iː//ɪ//e//æ//ʌ//ɑː//ɒ//ɔː//ʊ//uː//ɜː//ə//eɪ//aɪ//ɔɪ//əʊ//aʊ, ɑʊ//ɪə//eə//ʊə/     
1.658.332.971.451.750.791.371.240.861.130.5210.741.711.830.141.510.610.210.340.06    39.21
212223242526272829303132333435363738394041424344 
/p//b//t//d//k//g//ʧ//ʤ//f//v//θ//ð//s//z//ʃ//ʒ//h//m//n//ŋ//l//r//w//j/ 
1.781.976.425.143.091.050.410.601.792.000.373.564.812.460.960.101.463.227.581.153.663.512.810.8860.78


 母音が39.21%,子音が60.78%.頻度の高い順にソートすると,以下のようになる.
 /ə/ (10.74), /ɪ/ (8.33), /n/ (7.58), /t/ (6.42), /d/ (5.14), /s/ (4.81), /l/ (3.66), /ð/ (3.56), /r/ (3.51), /m/ (3.22), /k/ (3.09), /e/ (2.97), /w/ (2.81), /z/ (2.46), /v/ (2.00), /b/ (1.97), /aɪ/ (1.83), /f/ (1.79), /p/ (1.78), /ʌ/ (1.75), /eɪ/ (1.71), /iː/ (1.65), /əʊ/ (1.51), /h/ (1.46), /æ/ (1.45), /ɒ/ (1.37), /ɔː/ (1.24), /ŋ/ (1.15), /uː/ (1.13), /g/ (1.05), /ʃ/ (0.96), /j/ (0.88), /ʊ/ (0.86), /ɑː/ (0.79), /aʊ, ɑʊ/ (0.61), /ʤ/ (0.60), /ɜː/ (0.52), /ʧ/ (0.41), /θ/ (0.37), /eə/ (0.34), /ɪə/ (0.21), /ɔɪ/ (0.14), /ʒ/ (0.10), /ʊə/ (0.06).
 上位9音素までが,弛緩母音あるいは歯・歯茎を用いる音である.最下位の2重母音や摩擦音も覚えておきたい.音声変化を考える上で,このように音素別の頻度を頭に入れておくと役立つことがあるだろう.主要なものだけでも音節別の頻度でこのようなランキング表はないだろうか.

(後記 2012/04/22(Sun):石橋 幸太郎 編 『現代英語学辞典』の "Frequency of occurrence of phonemes" (323--24) に類似した他の統計値あり.)

 ・ Crystal, David. The English Language. 2nd ed. London: Penguin, 2002.

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