昨日の記事「#6205. Scots の歴史に注目すべき理由」 ([2026-04-23-1]) を受けて,今後 Scots の歴史についての話題を展開していくのに先だち,Scots の標準的な時代区分 (periodisation) を挙げておきたい.以下は,McClure (46) が,Scots 史研究の伝統を受け継ぎつつ掲げている区分である.
| Old English | to 1100 |
| Old Scots | to 1700 |
| Pre-literary Scots | to 1375 |
| Early Scots | to 1450 |
| Middle Scots | 1450--1700 |
| Early Middle Scots | 1450--1550 |
| Late Middle Scots | 1550--1700 |
| Modern Scots | 1700 onwards |
まず,注目すべきは,Scots の歴史は,イングランドにおける古英語 (Old English) とルーツを同じくすることだ.より詳しくいえば,古英語のノーサンブリア方言とルーツを一にする.したがって,Scots 史の時代区分の最初に Old "English" が含まれているのは,不思議なことではない.そして,1066年のノルマン征服を契機として1100年に置かれることが多い,伝統的な「英語史」における古英語の終点も,Scots 史は共有している.
Scots 史では,その後1700年までを Older Scots,それ以降を Modern Scots と大きく2分する.Older Scots は600年間と長く,その中で下位区分が設けられることになる.1375年辺りで Scots で書かれた文献が本格的に現われてくるという外的条件により,この年より前は Pre-literary Scots の時代と呼ばれる.実際にはこの時代にも文献は少なからずあるのだが,文献のジャンルが限られているという点で,その後の時代とは区別しておきたいという事情が背景にある.
1375年から1450年にかけての Early Scots の時代は,期間としては短いが,この言語変種が文学的に華々しく展開した時代である.その後,1550年までの Early Middle Scots の時代においても,イングランド変種から独立した言語的発達を遂げたが,後に続く Late Middle Scots の時代になると,イングランドの標準的な変種に急速に同化していくことになった.1700年近くになると,書き言葉においては,かつての Scots の面影が稀なほどにまでなっている.
1700年以降の Modern Scots は,それまで Scots が持っていた社会言語学的自律性や規範を失い,その役割は,イングランドの英語変種の土台の上にスコットランド色を追加したというべき変種から発達した "Scottish standard English" に取って代わられることになった.喩えていえば,Modern Scots は Middle English のように,社会言語学的には標準や求心力のない言語変種へと退行していったことになる.
このように,Scots 史は,おおよそ外面史上の考慮により時代区分されているとみてよい.
・ McClure, J. Derrick. "English in Scotland."
The Cambridge History of the English Language. Vol. 5. Ed. Burchfield R. Cambridge: CUP, 1994. 23--93.
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