今週末,9月7日(土)の15:15?18:30に,朝日カルチャーセンター新宿教室にて「英語の歴史と語源・3 ローマ帝国の植民地」と題する講演を行ないます.講座「英語の歴史と語源」の第3回となりますが,過去2回と同様,皆さんとの活気ある議論を楽しみにしています.ご関心のある方は,こちらよりお申し込みください.今回の趣旨は以下の通りです.
紀元前後,ブリテン島の大半はローマ帝国の版図に組み込まれました.この時代にはブリテン島はいまだケルトの島であり,英語が話される土地ではありませんでした.しかし,ローマ帝国から文明の言語としてもたらされたラテン語は,ケルト語を経由して,後にやってくる英語にも影響を与えたほか,当時大陸にいたアングロサクソン人にも直接,語彙的な影響を及ぼしました.英語にみられるラテン語単語の遺産を覗いてみましょう.
英語のラテン語との関係は,ヨーロッパ諸言語の例に洩れず,英語が英語となる前の紀元前から続く「腐れ縁」です.両言語は同じ印欧語族の親戚筋であるとはいえ,ゲルマン語派とイタリック語派という異なる派閥に属するために,血のつながりは決して濃くはありません.しかし,いってみれば知人としてあまりに長い間付き合ってきたために,英語はラテン語なしでは自らを表現できないほどまでにラテン語を自らの一部として取り込むに至りました.
したがってラテン語の影響は英語史を通じて続いていくわけですが,今回はブリテン島がローマ帝国の植民地となった前後の時代,つまり英語史上,最初にラテン語のインパクトが確認される時代(英語そのものはブリテン島ではなくいまだ大陸で用いられた時代ではありますが)に焦点を当て,英語とラテン語の「馴れ初め」を紹介します.その上で「馴れ初め」後の関係の展開についても述べる予定です.
今回の講演と関連して「#1437. 古英語期以前に借用されたラテン語の例」 ([2013-04-03-1]),「#1945. 古英語期以前のラテン語借用の時代別分類」 ([2014-08-24-1]),「#2578. ケルト語を通じて英語へ借用された一握りのラテン単語」 ([2016-05-18-1]),「#3440. ローマ軍の残した -chester, -caster, -cester の地名とその分布」 ([2018-09-27-1]),「#3454. なぜイングランドにラテン語の地名があまり残らなかったのか?」 ([2018-10-11-1]) などの記事をご覧ください.
今週末8月31日(土)の14時?17時,および翌日9月1日(日)の10時?12時に,広島慶友会にて「英語史から見る現代英語」と題する2回の講演を行ないます.場所は,広島YMCA国際文化センター3号館3階です.公式の案内はこちらです.
大雑把な演題ではありますが,初日の土曜日は,英語に関する様々な素朴な疑問を具体的に取り上げ,英語史の観点から解決していくという趣旨で話しを進める予定です.講演の後半には,参加している皆さんからの疑問を受け付け,一緒に議論していくということも考えています.関連して,同趣旨の本ブログ記事「#3677. 英語に関する「素朴な疑問」を集めてみました」 ([2019-05-22-1]),あるいは sobokunagimon の各記事もご覧ください.
2日目の日曜日のセッションは,英語の方言について考えます.そもそも方言とは何か,言語と方言とはどう異なるのかという話しから始め,日本語の諸方言を参照しつつ,イングランドで話されている現代英語の地域方言をのぞいてみます.言語・方言の死,方言差別,世界の様々な英語,世界語としての英語のもつ求心力と遠心力などの話題に触れながら,英語の枠内にとどまらず,広く言語・方言の多様性について考えていきたいと思います.この議論を通じて,私たちが日々学び,用いている標準英語が,現代世界においてどのような立ち位置にあるか,よく分かるようになると思います.今後の英語との付き合い方を考える上で参考になるはずです.こちらの話題に関しては,dialect や world_englishes などの記事を参照ください.
8月14日に,『英語教育』(大修館書店)の9月号が発売されました.英語史連載「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ」の第6回となる今回の話題は,「なぜ一般動詞の疑問文・否定文には do が現われるのか」です.この do の使用は,英語統語論上の大いなる謎といってよいものですが,歴史的にみても,なぜこのような統語表現(do 迂言法と呼びます)が出現したのかについては様々な仮説があり,今なお熱い議論の対象になっています.
「#3732. 講座「英語の歴史と語源」の第2回「ケルトの島」のご案内」 ([2019-07-16-1]) で紹介したように,7月27日(土)15:15?18:30に朝日カルチャーセンター新宿教室にて,「英語の歴史と語源・2 ケルトの島」を開講しました.今回も多くの方々に参加していただき,休み時間も議論が止まらないほど盛り上がりました.ありがとうございます. *
今回は (1) ケルトとは何か,(2) 英語にみられるケルト的要素,(3) 英語文化の基層としてのケルト,という3点を中心に,英語とケルトの歴史的な関係について様々な角度から迫ってみました.スライド資料をこちらに置いておきます.
次回の第3回は9月7日(土)15:15?18:30に,「英語の歴史と語源・3 ローマ帝国の植民地」と題してお話しする予定です.
1. 英語の歴史と語源・2 「ケルトの島」
2. 第2回 ケルトの島
3. 目次
4. 1. ケルトとは何か
5. 「ケルト」という語を巡って
6. ケルト人の大遠征(紀元前1千年紀後半)
7. ケルト語派の系統図
8. ブリテン島におけるケルト世界の縮小
9. 各々のケルト語について
10. 2. 英語にみられるケルト的要素
11. 借用語は少数にとどまる (#3680)
12. アイルランド語からの借用語の年代別分布
13. 借用の間接的な経路
14. アングロサクソン人とケルト人の関係
15. 固有名詞に残る(前)ケルト語要素
16. 語彙以外への影響
17. アイルランド語からアイルランド英語へ,そしてアメリカ英語へ
18. 3. 英語文化の基層としてのケルト
19. 『リンディスファーン福音書』 (The Lindisfarne Gospels)
20. 『ケルズの書』 (The Book of Kells) (#3680)
21. アーサー王物語
22. 分かち書きの発生
23. まとめ
24. 参考文献
7月14日に,『英語教育』(大修館書店)の8月号が発売されました.英語史連載記事「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ」の第5回「なぜ英語は語順が厳格に決まっているのか」が掲載されています.ご一読ください.
標題の問いに端的に答えるならば, (1) 古英語の屈折が言語内的な理由で中英語期にかけて衰退するとともに,(2) 言語外的な理由,つまりイングランドに来襲したヴァイキングの母語である古ノルド語との接触を通じて,屈折の衰退が促進されたから,となります.
これについては,拙著『英語史で解きほぐす英語の誤解 --- 納得して英語を学ぶために』(中央大学出版部,2011年)の第5章第4節でも論じましたので,そちらもご参照ください.言語は,そのような社会的な要因によって大きく様変わりすることがあり得るのです.
関連して,以下の記事もどうぞ.
・ 「#1170. 古ノルド語との言語接触と屈折の衰退」 ([2012-07-10-1])
・ 「#3131. 連載第11回「なぜ英語はSVOの語順なのか?(前編)」」 ([2017-11-22-1])
・ 「#3160. 連載第12回「なぜ英語はSVOの語順なのか?(後編)」」 ([2017-12-21-1])
・ 堀田 隆一 「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ 第5回 なぜ英語は語順が厳格に決まっているのか」『英語教育』2019年8月号,大修館書店,2019年7月14日.62--63頁.
・ 堀田 隆一 『英語史で解きほぐす英語の誤解 --- 納得して英語を学ぶために』 中央大学出版部,2011年.
昨日の記事「#3731. 講座「英語の歴史と語源」の第1回「インドヨーロッパ祖語の故郷」を終えました」 ([2019-07-15-1]) に続き,朝日カルチャーセンター新宿教室で始まっている講座「英語の歴史と語源」のお知らせです.次回の第2回は,7月27日(土)15:15?18:30に,「英語の歴史と語源・2 ケルトの島」と題して,古代から現代までのブリテン(諸)島におけるケルト諸語と英語の関係史に迫る予定です.ご関心のある方は,こちらよりお申し込みください.
英語(文化)におけるケルト語(文化)の影響は,決して小さくありません.表面的にはそれほど目立って見えませんが,ここかしこに地味な形で見出すことができます.伝統的な見解によれば,アングロサクソン人は,5世紀以降,ブリテン島の先住民であるブリトン人などケルト諸族を一掃したと一般にいわれますが,ブリテン島の基層であるケルト的なものは,中世,近代を経て現在に至るまでイギリスの言語や文化のなかに色濃く残っています.英語地名しかり,英語語彙しかり,さらに場合によっては英文法にすらインパクトを及ぼしています.
また,近代のイギリス帝国主義や現代世界における英語の覇権を考える際にも,アングロサクソンが,最も近場の異質世界であるケルト世界をいかに攻略し,いかに付き合ってきたのかをみることは,英語の現在と未来を読み解く上でも重要なポイントとなります.本講座で「ケルトの島」をキーワードに据えて,3千年というスパンで英語のあり方を改めて考えていきたいと思います.
これまで書いてきたケルト関連の記事としては celtic をご覧ください.
「#3687. 講座「英語の歴史と語源」が始まります」 ([2019-06-01-1]) で紹介しましたが,一昨日の7月13日(土),朝日カルチャーセンター新宿教室にて,講座「英語の歴史と語源」の初回「インドヨーロッパ祖語の故郷」が開講されました.これまでの講座では受講者は多くて10数名というところでしたが,今回は予想外に大勢の(30名を越える)受講者の方々に参加いただきました.おかげさまで後半には多くの質問やコメントも出て,活発な会となりました.ありがとうございます.英語史のおもしろさを伝えるためのシリーズですので,初回として関心をもってもらえたならば幸いです. *
初回はインド=ヨーロッパ語族の話しが中心でしたが,同語族のなかでの英語の位置づけを確認し,英語のなかに印欧祖語の遺産を多く見出すことができたかと思います.講座で使用したスライド資料をこちらに置いておきますので,復習等にご活用ください.
1. 英語の歴史と語源・1 「インドヨーロッパ祖語の故郷」
2. シリーズ「英語の歴史と語源」の趣旨
3. 第1回 インドヨーロッパ祖語の故郷
4. 要点
5. 目次
6. 1. インド=ヨーロッパ語としての英語
7. 印欧祖語の故郷
8. 印欧語族の系統図
9. 語派の分布図
10. 印欧語族の10語派
11. ゲルマン語派の系統図と分布図
12. 2. 印欧語比較言語学
13. 再建 (reconstruction)
14. 再建の例 (1): *ped- "foot"
15. 再建の例 (2): *snusós "daughter-in-law"
16. 比較言語学の精密さ
17. 印欧祖語のその他の特徴
18. 3. 英語にみられる印欧祖語の遺産
19. ゲルマン祖語までにしか遡れない単語
20. 車輪クルクル,回るサイクル
21. 車輪 (wheel) があれば荷車 (wagon) もあった
22. guest と host
23. 4. サラダボウルな英語語彙
24. 英語語彙の規模と種類の豊富さ
25. 英語語彙にまつわる数値
26. 英語と周辺の印欧諸語の関係
27. 英語語彙の3層構造
28. (参考)日本語語彙の3層構造
29. 日英語彙史比較
30. まとめ
31. シリーズの今後
32. 推薦図書
33. 参考文献(辞典類)
34. 参考文献(その他)
6月14日に,『英語教育』(大修館書店)の7月号が発売されました.英語史連載記事「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ」の第4回目として拙論「なぜ比較級の作り方に -er と more の2種類があるのか」が掲載されています.是非ご覧ください.
形容詞・副詞の比較表現については,本ブログでも (comparison) の各記事で扱ってきました.以下に,今回の連載記事にとりわけ関連の深いブログ記事のリンクを張っておきますので,あわせて読んでいただければ,-er と more に関する棲み分けの謎について理解が深まると思います.
・ 「#3617. -er/-est か more/most か? --- 比較級・最上級の作り方」 ([2019-03-23-1])
・ 「#3032. 屈折比較と句比較の競合の略史」 ([2017-08-15-1])
・ 「#456. 比較の -er, -est は屈折か否か」 ([2010-07-27-1])
・ 「#2346. more, most を用いた句比較の発達」 ([2015-09-29-1])
・ 「#403. 流れに逆らっている比較級形成の歴史」 ([2010-06-04-1])
・ 「#2347. 句比較の発達におけるフランス語,ラテン語の影響について」 ([2015-09-30-1])
・ 「#3349. 後期近代英語期における形容詞比較の屈折形 vs 迂言形の決定要因」 ([2018-06-28-1])
・ 「#3619. Lowth がダメ出しした2重比較級と過剰最上級」 ([2019-03-25-1])
・ 「#3618. Johnson による比較級・最上級の作り方の規則」 ([2019-03-24-1])
・ 「#3615. 初期近代英語の2重比較級・最上級は大言壮語にすぎない?」 ([2019-03-21-1])
・ 堀田 隆一 「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ 第4回 なぜ比較級の作り方に -er と more の2種類があるのか」『英語教育』2019年7月号,大修館書店,2019年6月14日.62--63頁.
過去2日間の記事で,語源を活用した学習法を紹介してきた(「#3696. ボキャビルのための「最も役に立つ25の語のパーツ」」 ([2019-06-10-1]) と「#3697. 印欧語根 *spek- に由来する英単語を探る」 ([2019-06-11-1]) ).中田氏による近著『英単語学習の科学』の第11章「語源で覚える英単語」でも「語源学習法」の効用が説かれている.
英単語は出現頻度によって,(1) 高頻度語,(2) 中頻度語,(3) 低頻度語の3つのグループに分類できます.中頻度語と低頻度語は,リーディングやリスニングにおける出現頻度があまり高くないため,文脈から自然に習得することは困難であり,意図的に学習することが欠かせません.中頻度語と低頻度語を覚えるには,その多く(約3分の2)がラテン語・ギリシア語起源であるため「語源学習法」が有効です.また,学術分野で頻度が高い英単語を集めた Academic Word List (Coxhead, 2000) の約90%もラテン語・ギリシア語起源なので,語源学習法が役に立ちます.(73)
特に中級以上の英語学習者にとって,語源学習法が有効である理由が説得力をもって示されている.中田は,章末において語源学習法のポイントを次のようにまとめている.
・ 英単語をパーツに分解し,パーツの意味を組み立ててその単語の意味を理解する学習法を「語源学習法」と呼ぶ.語源学習法は特に,中頻度語・低頻度語および学術的な英単語の学習に効果的である.
・ 語源学習法には,(1) 単語の長期的な記憶保持が可能になる,(2) 未知語の意味を推測するヒントになる,(3) 単語の体系的・効率的な学習が可能になる,といった利点がある.
・ 既知語やカタカナ語を手がかりにして,数多くの語のパーツを効率的に学習できる.特に,「最も役に立つ25の語のパーツ」は重要.
中田はさらに別の箇所で「無味乾燥になりがちな単語学習を,興味深い発見の連続に変えてくれる」 (75--76) とも述べている.
さらにもう2点ほど地味な利点を付け加えておきたい.1つは,語種の判別ができるようになることだ.主としてラテン語・ギリシア語からなる「パーツ」を多数学ぶことによって,初見の単語でも,ラテン語・ギリシア語のみならずフランス語,スペイン語,イタリア語などを含めたロマンス系諸語からの借用語であるのか,あるいはゲルマン系の本来語であるのか,ある程度判別できるようになる.借用語か本来語かという違いは,語感の形式・略式の差異ともおよそ連動するし,強勢位置に関する規則とも関係してくるので,語種を大雑把にでも判別できることには実用的な意味がある.
もう1つは,借用元の言語も当然ながら学びやすくなるということだ.とりわけ第2外国語としてフランス語なりスペイン語なりのロマンス系諸語を学んでいるのであれば,英語学習と合わせて一石二鳥の成果を得られる.
最近では,語源学習法に基づいた英単語集として,清水健二・すずきひろし(著)『英単語の語源図鑑』(かんき出版,2018年)が広く読まれているようだ.なお,私もこの7月より朝日カルチャーセンター新宿教室にて「英語の歴史と語源」と題するシリーズ講座を開始する予定(cf. 「#3687. 講座「英語の歴史と語源」が始まります」 ([2019-06-01-1])).こちらはボキャビルそのものを主たる目標としているわけではないものの,その知識は当然ながらボキャビルのためにも役立つはずである.
なお,上の第1引用にある Academic Word List については,「#612. Academic Word List」 ([2010-12-30-1]) と「#613. Academic Word List に含まれる本来語の割合」 ([2010-12-31-1]) も参照.
・ 中田 達也 『英単語学習の科学』 研究社,2019年.
この夏,朝日カルチャーセンター新宿教室にて「英語の歴史と語源」と題するシリーズ講座が始まります.全12回ほどの予定となるシリーズで,1年ほどかけてゆっくりペースで進めていく企画です.完全なスケジュールは決まっていませんが,最初の3回分については確定しており,受付も開始しています.以下をご覧ください
・ 7月13日(土)15:15?18:30 「英語の歴史と語源・1 インドヨーロッパ祖語の故郷」
・ 7月27日(土)15:15?18:30 「英語の歴史と語源・2 ケルトの島」
・ 9月7日(土)15:15?18:30 「英語の歴史と語源・3 ローマ帝国の植民地」
まずは初回の7月13日の案内を,以下に掲載しておきます.
シリーズ「英語の歴史と語源」では,英語という言語がたどってきた波乱に富んだ紆余曲折の歴史を,世界史的な大事件と関連づけながら追っていきます.言語の歴史には文法や発音の歴史も含まれますが,本シリーズでとりわけ注目するのは語源,つまり単語の起源です.著名な事件と単語の起源とを結びつけながら,主にイギリスを舞台とする英語の歴史物語を,全12 回にわたり,つむいでいきます.
1 インドヨーロッパ祖語の故郷(7月13日)
シリーズの初回では,英語の究極の祖先というべきインドヨーロッパ祖語に焦点を当てます.英語はもとよりフランス語,スペイン語,ドイツ語,ロシア語,ヒンディー語などを含む巨大なインドヨーロッパ語族は,紀元前4千年頃の南ロシアのステップ地方に起源をもつとされます.実際,私たちの知る多くの英単語の語源が,この太古の時代にまでさかのぼります.6千年という時間を超えて受け継がれてきた数々の単語について,その由来をひもといて行きましょう.
これまでも英語史関連の講座をいくつか開いてきましたが,今回はとりわけ単語・語源に注目して,英語の歴史を辿っていく予定です.「シリーズ」とはいえ,単発での参加ももちろん可能ですので,ご関心のある方は是非どうぞ.シリーズの全体像につていは,こちらのチラシもご覧ください.
『英語教育』の6月号が発売されました.英語史連載記事「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ」の第3回目となる「なぜ不規則な動詞活用があるのか」が掲載されています.是非ご一読ください.
日常的な単語ほど不規則な振る舞いを示すというのは,言語にみられる普遍的な性質です.これは英語の動詞の過去・過去分詞形についてもいえます.大多数の動詞は規則的な語尾 -ed を付して過去・過去分詞形を作りますが,日常的な少数の動詞は,buy -- bought -- bought, cut -- cut -- cut, go -- went -- gone, sing -- sang -- sung, write -- wrote -- written などのように個別に暗記しなければならない不規則な変化を示します.今回の連載記事では,これら不規則な動詞活用の歴史をたどります.そして,「不規則」動詞の多くは歴史的には「規則」動詞であり,その逆もまた真なり,という驚くべき真実が明らかになります.
動詞の不規則変化については,本ブログでも関連記事を書きためてきましたので,以下をご参照ください.
・ 「#3339. 現代英語の基本的な不規則動詞一覧」 ([2018-06-18-1])
・ 「#178. 動詞の規則活用化の略歴」 ([2009-10-22-1])
・ 「#527. 不規則変化動詞の規則化の速度は頻度指標の2乗に反比例する?」 ([2010-10-06-1])
・ 「#528. 次に規則化する動詞は wed !?」 ([2010-10-07-1])
・ 「#1287. 動詞の強弱移行と頻度」 ([2012-11-04-1])
・ 「#3135. -ed の起源」 ([2017-11-26-1])
・ 「#3345. 弱変化動詞の導入は類型論上の革命である」 ([2018-06-24-1])
・ 「#3385. 中英語に弱強移行した動詞」 ([2018-08-03-1])
・ 「#492. 近代英語期の強変化動詞過去形の揺れ」 ([2010-09-01-1])
・ 「#1854. 無変化活用の動詞 set -- set -- set, etc.」 ([2014-05-25-1])
・ 「#1858. 無変化活用の動詞 set -- set -- set, etc. (2)」 ([2014-05-29-1])
・ 「#2200. なぜ *haves, *haved ではなく has, had なのか」 ([2015-05-06-1])
・ 「#1345. read -- read -- read の活用」 ([2013-01-01-1])
・ 「#2084. drink--drank--drunk と win--won--won」 ([2015-01-10-1])
・ 「#2210. think -- thought -- thought の活用」 ([2015-05-16-1])
・ 「#2225. hear -- heard -- heard」 ([2015-05-31-1])
・ 「#3490. dreamt から dreamed へ」 ([2018-11-16-1])
・ 「#439. come -- came -- come なのに welcome -- welcomed -- welcomed なのはなぜか」 ([2010-07-10-1])
・ 「#43. なぜ go の過去形が went になるか」 ([2009-06-10-1])
・ 「#1482. なぜ go の過去形が went になるか (2)」 ([2013-05-18-1])
・ 「#764. 現代英語動詞活用の3つの分類法」 ([2011-05-31-1])
連載のバックナンバーとして,第1回記事「なぜ3単現に -s をつけるのか」と第2回記事「なぜ不規則な複数形があるのか」の案内もご覧ください.
・ 堀田 隆一 「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ 第3回 なぜ不規則な動詞活用があるのか」『英語教育』2019年6月号,大修館書店,2019年5月13日.62--63頁.
本年度前期,東京言語研究所の理論言語学講座の「史的言語学」部門は,本ブログの執筆者,堀田隆一が担当することになっています.講座概要 (PDF) で「英語史の概説を通じて,歴史的・通時的な言語の見方を身につける」と銘打っている通り,英語史と歴史言語学の入門講座です.概要に書いた文章を繰り返しますと,
英語という言語の特徴を理解するためには,それがたどってきた歴史を学ぶことが不可欠です.英語の起源はどこにあるのか,英語に見られる不規則性は何に由来するのか,英語は将来どうなってゆくのか,などの現代的な問題に歴史的・通時的な視点からアプローチすることで,多面的な英語観,言語観を形成することが本講義の目標です.
ということになります.
5月14日(火)から毎週火曜日19:00?20:40の枠で10回の講義を予定していますので,関心のある方は東京言語研究所の HP よりお申込みください.申込みの締切は5月9日(木)となっています.また,第1週の始まる直前の5月12日(日)の13:00より,開講式および前期の面接ガイダンスが予定されています.
なお,先週末の4月21日(土)には同研究所で,単発の春期講座「英語史の視点から英語を眺める」を開かせていただきました(cf. 「#3633. 4月21日(日),東京言語研究所の春期講座で「英語史の視点から英語を眺める」を話します」 ([2019-04-08-1])).レギュラー講座でもよろしくお願いいたします.
本ブログは,今回をもって3650番目を数えることになりました.毎日1つの記事ということで続けてきましたので,(閏年の計算云々は別にして)ほぼ10年間続けてきたことになります.続けてこられたのは,ひとえに英語史に関心を寄せる読者のみなさんのおかげです.ありがとうございます.
10年前にブログを始めたのは,私の「英語史」の講義を受講していた大学生に,講義の補足情報を提供するためだったのですが,その後受講学生以外にも読者が少しずつ広がっていき,今では英語学習者,英語教師,そして英語学などを専攻する大学院生や研究者の方にも閲覧してもらっているようです.
毎日の執筆ですし,おのずから校正も甘くなってしまうので内容や形式について不十分なところがありますが,引用や参照においては典拠を明示するなど,みなさんが各々の話題について確認したり,さらに調べたりできるようには心がけてきました.
実はブログ執筆を通じていちばん恩恵を被っているのは執筆者自身であるということは,恐らく誰も信じないことかと思います(そうでないと続くわけがないのです)が,これは本当です.本ブログに基づいて英語史の書籍も複数出版しましたし,学術論文も出してきました.これらのいろいろなポジティヴな効用は,開始当時はまったく想定外でした.また,自分で書いたことを忘れてしまっている記事も多いので,ブログをセルフ検索して改めて学ぶ頻度でいえば,多分誰にも負けていないのではないかと思います(一日に何度キーワードを検索しているだろうか・・・).
いずれにせよ,これからも続けていくつもりです.ここ数日は年度初めということもあり,学生から寄せられた「素朴な疑問」をなるべく多く取り上げることにしています.実際には,多くが「素朴」な疑問などではなく,かなり高度だったりしますが,それでも英語学習の際に,あるいは英語教育の現場で,何気なく,ふと生じる疑問,これまであえて問うてこなかった疑問を,親しみやすく「素朴な疑問」と呼び続けることにしたいと思います.そして,それを取っ掛かりにして英語史の世界へ足を踏み入れていただき,その魅力に気付いてもらえればと思っています.これからも,どうぞよろしくお願いいたします.
最近多く読まれている記事のランキングは,こちらからどうぞ.
『英語教育』の英語史連載記事「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ」が,前回の4月号より始まっています.昨日発売された5月号では,第2回の記事として「なぜ不規則な複数形があるのか」という素朴な疑問を取りあげています.是非ご一読ください.
名詞複数形の歴史は,私のズバリの専門分野です(博士論文のタイトルは The Development of the Nominal Plural Forms in Early Middle English でした).そんなこともあり,本ブログでも複数形の話題は plural の記事で様々に取りあげてきました.今回の連載記事の内容ととりわけ関係するブログ記事へのリンクを以下に張っておきます.
・ 「#946. 名詞複数形の歴史の概要」 ([2011-11-29-1])
・ 「#146. child の複数形が children なわけ」 ([2009-09-20-1])
・ 「#157. foot の複数はなぜ feet か」 ([2009-10-01-1])
・ 「#12. How many carp!」 ([2009-05-11-1])
・ 「#337. egges or eyren」 ([2010-03-30-1])
・ 「#3298. なぜ wolf の複数形が wolves なのか? (1)」 ([2018-05-08-1])
・ 「#3588. -o で終わる名詞の複数形語尾 --- pianos か potatoes か?」 ([2019-02-22-1])
・ 「#3586. 外来複数形」 ([2019-02-20-1])
英語の複数形の歴史というテーマについても,まだまだ研究すべきことが残っています.英語史は奥が深いです.
2017年に連載した「現代英語を英語史の視点から考える」の第1回「「ことばを通時的にみる 」とは?」でも複数形の歴史を扱いましたので,そちらも是非ご一読ください.
・ 堀田 隆一 「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ 第2回 なぜ不規則な複数形があるのか」『英語教育』2019年5月号,大修館書店,2019年4月12日.62--63頁.
大学でも新年度が本格的に始まりました.今期私が担当する英語史関連の授業で,2016年に研究社より出版された拙著『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史』を指定テキスト(あるいは参考テキスト)としているので,年度初めに趣旨と内容を簡単に紹介しておきます.
本書の出版後に研究社のウェブサイト上に特設されたコンパニオン・サイトの本書のねらいにも詳しく書きましたが,なぜ皆さんに本書を読んでいただきたいのか,改めてここで強調しておきたいと思います.それは,
英語の「素朴な疑問」に「英語史」の視点から答えていくことを通じて,英語教員をはじめとする英語にかかわる多くの方々に,英語の「新しい見方」を提案し,「目から鱗が落ちる」体験を味わってもらいたいからです.
具体的には,以下の5つのねらいがあります.
1. 誰もが抱く英語の「素朴な疑問」に,納得のいく解答を与えます
2. 新たに生じる「素朴な疑問」にも対応できる,体系的な知識の必要性を説きます
3. 学問分野「英語史」の魅力を伝えます
4. 英語,英語学習,英語教育に対する「新しい見方」を提案します
5. 歴史的な視点から,英語について「目から鱗が落ちる」体験を提供します
本書で取り上げている話題の多くは日々書きためている本ブログの記事が元になっていますので,ブログ読者にとっては内容的にも文体的にもデジャヴュ感があるかもしれません.目次一覧はこちらに挙げてあるので繰り返しませんが,多くの人が興味をもちそうなタイトルを引き抜いておきます.
・ なぜ *a apple ではなく an apple なのか?
・ なぜ名詞は récord なのに動詞は recórd なのか?
・ なぜ often の t を発音する人がいるのか?
・ なぜ five に対して fifth なのか?
・ なぜ name は「ナメ」ではなく「ネイム」と発音されるのか?
・ なぜ debt, doubt には発音しない <b> があるのか?
・ なぜ3単現に -s を付けるのか?
・ なぜ *foots, *childs ではなく feet, children なのか?
・ sometimes の -s 語尾は何を表わすのか?
・ なぜ不規則動詞があるのか?
・ なぜ -ly を付けると副詞になるのか?
・ なぜ未来を表わすのに will を用いるのか?
・ なぜ If I were a bird となるのか?
・ なぜ英語には主語が必要なのか?
・ なぜ *I you love ではなく I love you なのか?
・ なぜ May the Queen live long! はこの語順なのか?
・ なぜ Help me! とは叫ぶが Aid me! とは叫ばないのか?
・ なぜ Assist me! とはなおさら叫ばないのか?
・ なぜ1つの単語に様々な意味があるのか?
・ なぜ単語の意味が昔と今で違うのか?
・ 英語の新語はどのように作られるのか?
・ なぜアメリカ英語では r をそり舌で発音するのか?
・ アメリカ英語はイギリス英語よりも「新しい」のか?
・ なぜ黒人英語は標準英語と異なっているのか?
・ なぜ船・国名を she で受けるのか?
・ なぜ単数の they が使われるようになってきたのか?
本書を読み,英語史の魅力に目覚めたら,ぜひ上記のコンパニオン・サイト上で2017年1月から12月にかけて連載された,本書の拡大版・発展版というべき「現代英語を英語史の視点から考える」企画の記事12本もオンラインでご一読ください.次のラインナップです.
・ 第1回 「ことばを通時的に見る」とは?(2017/01/20)
・ 第2回 なぜ3単現に -s を付けるのか?(2017/02/20)
・ 第3回 なぜ英語は母音を表記するのが苦手なのか?(2017/03/21)
・ 第4回 イギリス英語の autumn とアメリカ英語の fall (2017/04/20)
・ 第5回 alive の歴史言語学 (2017/05/22)
・ 第6回 なぜ英語語彙に3層構造があるのか?(2017/06/20)
・ 第7回 接尾辞 -ish の歴史的展開 (2017/07/20)
・ 第8回 なぜ「グリムの法則」が英語史上重要なのか (2017/08/21)
・ 第9回 なぜ try が tried となり,die が dying となるのか? (2017/09/20)
・ 第10回 なぜ you は「あなた」でもあり「あなたがた」でもあるのか? (2017/10/20)
・ 第11回 なぜ英語は SVO の語順なのか?(前編) (2017/11/20)
・ 第12回 なぜ英語は SVO の語順なのか?(後編) (2017/12/20) ・
・ 堀田 隆一 『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』 研究社,2016年.
本年度前期,東京言語研究所の理論言語学講座の「史的言語学」部門を担当することになりました.講座概要 (PDF) で「英語史の概説を通じて,歴史的・通時的な言語の見方を身につける」と銘打っている通り,英語史と歴史言語学の入門講座です.5月14日(火)から毎週火曜日19:00?20:40の枠で10回の講義を予定しています.
また,5月からの講座開始に先立ち,英語史分野の導入という意味合いも込めて,来たる4月21日(日)の10:00?11:20に,単発の春期講座として,標題の通り「英語史の視点から英語を眺める」と題する話しをします.概要はこちら (PDF) に掲載されていますが,以下に再現します.
何年か英語を学んでいると,学び始めの頃に抱いていたような素朴な疑問が忘れ去られてしまうことが多いものです.なぜ A は「ア」ではなく「エイ」と読むのか,なぜ go の過去形は went なのか,なぜ動詞の3単現には -s がつくのか,英語とフランス語・ドイツ語はどのような関係にあるのか,なぜ英語は世界語となりえたのか等々.このような素朴な疑問を改めて思い起こし,あえて引っかかってゆき,まじめに考察するのが,歴史言語学の観点からみる英語学 --- 英語史 --- という分野です.
狙いとしては,4点を掲げます.(1) 現代英語の疑問点に歴史的な視点からアプローチする,(2) 英語史の概略を知る,(3) 英語学・言語学の考え方を学ぶ,(4) 歴史を通じて幅広い柔軟な英語観を形成する.
本講義では,素朴な疑問と英語史の相性の良さについて考察した後,英語史を概観します.続けて,綴字,発音,文法,語彙,英語方言やその他に関する素朴な疑問を取り上げながら,英語史的なものの見方・考え方を紹介します.
年度初めですし,まずは英語史という分野の楽しさを伝えることを最大の目標にします.
春期講座自体は4月20日(土),21日(日)の両日の開講で,2日間で全体として16の講座が用意されています.受講の申込締切日も迫ってきていますので,参加希望の方は東京言語研究所の HPよりお申込みください.
来たる3月28日(木)の13:30より,学習院大学において歴史社会言語学・歴史語用論の研究会,HiSoPra* (= HIstorical SOciolinguistics and PRAgmatics) の第3回大会が開催されます.プログラム等の詳細はこちらの案内 (PDF) をご覧ください.今回の目玉は「諸言語の標準化における普遍性と個別性 ―〈対照言語史〉の提唱」と題する特別企画です.私も司会として薄く参加させていただきますが,3名の素晴らしすぎる登壇者による鼎談です(はっきりいって鼻血が出そうな面々です).
鼎談のほかにも,もちろん研究発表や懇親会もあり,充実の時間となるはずです.英語史関係としては片見彰夫先生(青山学院大学)によるご発表があります.
対照言語史,歴史言語学,社会言語学,英語史,日本語史,類型論,対照言語学,言語の標準化などの分野のいずれか(あるいはすべて)に関心のある方々にとっては,貴重な機会になることと思います.参加は登録制となっていますが,上記の案内に記載の方法で3月25日までにメールにてお名前等をお知らせするという簡単な手続きとなっていますので,ぜひお気軽に(しかし刮目して)ご参加ください(参加費500円は必要です).
過去の第1回,第2回 HiSoPra* 研究会については,「#2883. HiSoPra* に参加して (1)」 ([2017-03-19-1]) と「#2884. HiSoPra* に参加して (2)」 ([2017-03-20-1]) など hisopra の各記事もご参照ください.以下,今回の研究会のプログラム(簡易版)を転記します.詳しくは上記の案内をどうぞ.
第3回 「HiSoPra*研究会(歴史社会言語学・歴史語用論研究会)」のご案内
日時:2019年3月28日(木),13:30?17:50(開場は12:45?)
場所:学習院大学 北2号館(文学部研究棟)10階,大会議室(http://www.gakushuin.ac.jp/mejiro.html の15番の建物)
参加費:500円(資料代等)
総合司会:小野寺典子(青山学院大学),森 勇太(関西大学)
13:30-13:40 (総合司会者による) 導入
13:40-14:25 《研究発表》
朱 冰(関西学院大学 常勤講師):「中国語における禁止表現から接続詞への変化」
司会:堀江 薫(名古屋大学)
14:35-15:20 《研究発表》
片見彰夫(青山学院大学 准教授):「イギリス宗教散文における指示的発話行為の変遷」
司会: 堀田隆一(慶應義塾大学)
15:50-17:50 特別企画 《鼎談》
「諸言語の標準化における普遍性と個別性 ―〈対照言語史〉の提唱」
田中克彦(一橋大学 名誉教授)
寺澤 盾(東京大学 教授)
田中牧郎(明治大学 教授)
司会:高田博行(学習院大学),堀田隆一(慶應義塾大学)
本鼎談では,モンゴル語,ロシア語,英語,日本語という個別の言語の歴史を専門とされる3人の言語学者の先生方に登壇願い,社会の近代化に伴い各言語が辿ってきた標準化の歴史に関してお話しいただきます.個別言語の歴史を対照することによって,標準化のタイミングと型,綴字の固定化や話しことばと書きことばとの関係等に関して言語間の相違のほかに,言語の違いを超えた共通性が浮かび上がってくると思われます.言語史研究者が新たな知見を得て,従来とはひと味もふた味も違った切り口で各個別言語史を捉え直す契機のひとつになれば幸いです.
18:30-20:30 懇親会:会費4000円(学生は2500円),会場はJR目白駅すぐ
3月30日(土)の15:00?18:15に,朝日カルチャーセンター新宿教室にて,「英語の歴史」と題するシリーズ講座の最後となる第3弾として「英語史で解く英語の素朴な疑問」を開講します.以下,お知らせの文章です.
何年も英語を学んでいると,学び始めの頃に抱いていたような素朴な疑問が忘れ去られてしまうことが多いものです.なぜ A は「ア」ではなく「エイ」と読むのか,なぜ go の過去形は went なのか,なぜ動詞の3 単現には -s がつくのか等々.このような素朴な疑問を改めて思い起こし,あえて引っかかってゆき,大まじめに考察するのが,英語史という分野です.素朴な疑問を次々と氷解させていく英語史の力にご期待ください.
1. 素朴な疑問と英語史の相性の良さ
2. 英語史概略
3. 綴字と発音に関する素朴な疑問
4. 語形に関する素朴な疑問
5. 文法に関する素朴な疑問
6. 語彙に関する素朴な疑問
7. 英語方言その他に関する素朴な疑問
英語学習・教育に携わる方々であれば,これまで必ず直面してきたはずの数々の「素朴な疑問」に英語史の観点からスパッと切り込んでいきます.3時間たっぷりの講座のなかで,ナルホドと何度も膝を打つ機会があるはずです.冒頭に英語史の概観もおこないますので,英語史という分野に接するのが初めてであっても心配ありません.皆さんの「素朴な疑問」も持ち寄りつつ,楽しみに参加してもらえればと思います.
なお,おかげさまで前回の「#3606. 講座「北欧ヴァイキングと英語」」 ([2019-03-12-1]) は(狭い教室とはいえ)満席となりまして,嬉しいかぎりですが,希望して受講できなかった方もおられたようです.どうぞ早めにお申し込みください.
昨日発売の大修館書店『英語教育』2019年4月号より,「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ」と題する連載を開始しました.同誌の昨年9月号に,同じ趣旨で単発の記事を寄稿させていただきましたが,その延長編というようなシリーズになります(cf. 「#3396. 『英語教育』9月号に「素朴な疑問に答えるための英語史のツボ」が掲載されました」 ([2018-08-14-1])) .
初回となる4月号の話題は「第1回 なぜ3単現に -s をつけるのか」です.2ページという誌面に,この問題のエッセンスを煎じ詰めて書きました.また,導入の節では,連載開始の挨拶かたがた「英語史を学ぶメリット」を力説しました.ぜひご一読ください.初回ならではの力みには目をつぶっていただき,今後ともよろしくお願い致します.
連載のタイトルに「英語指導の引き出しを増やす」と前置きしてある通り,また『英語教育』という雑誌の記事であることから,当然ながらまず第一に英語の先生を読者として念頭においていますが,一般の英語学習者や英語学の学生の読者も意識して執筆していますので,英語の教育・学習に関係する方々に広く読んでもらえればと思います.
英語史の「ツボ」という連載タイトルですが,『広辞苑』によれば「ツボ」とは「急所.要点.かんどころ」の意.毎回この意味をとりわけ強く意識して執筆していきます.よろしくどうぞ.
・ 堀田 隆一 「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ 第1回 なぜ3単現に -s をつけるのか」『英語教育』2019年4月号,大修館書店,2019年3月14日.62--63頁.
とある経緯により,今週末の1月19日(土)の15時より慶應義塾大学三田キャンパス(南校舎446番教室)にて,日本語用論学会関東地区の講演会にてお話しすることになっています.タイトルは「英語の may 祈願文の起源と発達」です.事前申込不要,参加費無料ですので,ご関心の向きはお運びください.
May the Force be with you! (フォースが共にあらんことを!)に代表される may を用いた祈願文の歴史については,ここ数年間,関心を持ち続けてきました.拙著『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』(研究社,2016年)の4.5節でも取り上げましたし,本ブログでも「#1867. May the Queen live long! の語順」 ([2014-06-07-1]),「#2256. 祈願を表わす may の初例」 ([2015-07-01-1]),「#2484. 「may 祈願文ができるまで」」 ([2016-02-14-1]) など optative の各記事で話題にしてきた通りです.
なぜよりによって may という助動詞が用いられているのか,なぜ VS 語順になる必要があるのかなど,共時的に謎が多い問題なのですが,通時的にみるとある程度は理由が分かってきます.しかし,通時的にみても依然として不明な部分が多々残っており,研究の余地があります.本格的に調べてみようと思い立ったのは比較的最近ですので,今度の講演会ではこれまでに分かっていることをまとめたり,目下考えているところをお話しするということになりますが,この不可思議で魅力的な構文について,語用論的な視点も含めつつ議論してみたいと思っています.
自身の拙い発表の宣伝はしにくいのですが,慶應大学文学部の同僚であり,日本語用論学会関東地区を仕切られている井上逸兵先生からのプッシュもあり紹介してみました.ちなみに井上先生は,昨年12月1--2日に開催の日本語用論学会第21回全国大会の2日目に行なわれた第1回 語用論グランプリにて,なんと総合優勝されました.強者です.こちらの右下の勝利の写真を参照.
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