hellog〜英語史ブログ

#304. OED 制作プロジェクトののろし[oed][lexicography]

2010-02-25

 今日の記事は『オックスフォード英語大辞典物語』より.1857年6月,The Philological Society of London のメンバーであった Herbert Coleridge, Frederick Furnivall, Richard Chenevix Trench の三人が,それまでに英語世界で出版されていた辞書の問題点を議論した.彼らはただちに Unregistered Words Committee 「未収録語委員会」を設立して議論と調査の場を設け,同年11月には Trench が従来の辞書の問題点として次の7項目を公表した (68--71).これが,以降70余年にわたって続く,いや現在にまで続く The Oxford English Dictionary 制作プロジェクトののろしとなった.

 (1) 廃語が十分に記録されていない
 (2) 単語の家族(語群)が気まぐれにしか含まれてない
 (3) 初出例などの語史に関する記述が十分に過去にさかのぼれていない
 (4) 単語の重要な全体的意味と個別的意味が頻繁に見のがされている
 (5) 見かけ上の同義語どうしを区別することに注意が払われていない
 (6) 記述に重複が多く,重要な記述が犠牲になっている
 (7) 例文収集のために閲読されるべき文献の多くが読まれていない

 これを発表した時点では, Trench も周囲の同僚たちもこのプロジェクトが質量ともにどれほどの規模のものになるかは想像できなかったろう.まさか70年以上かかるとは予想もしなかったにちがいない.1928年の OED の完成は,「辞書は歴史の記念碑である.一つの見地から見た一国の歴史である」とする Trench の信念の結実にほかならない (72).
 上記の7項目は,逆にいえば,それまでの辞書にはない OED の特徴にもつながる.OED の歴史については,History of the Oxford English Dictionary も参照.

 ・サイモン・ウィンチェスター 『オックスフォード英語大辞典物語』 刈部 恒徳訳,研究社,2004年.

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