hellog〜英語史ブログ     ChangeLog 最新     カテゴリ最新     前ページ 1 2 3 次ページ / page 2 (3)

notice - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2019-06-25 07:36

2018-03-05 Mon

#3234. 「言語と人間」研究会 (HLC) の春期セミナーで標準英語の発達について話しました [notice][academic_conference][standardisation][slide][ame_bre][etymological_respelling][3sp][sociolinguistics][history_of_linguistics][link]

 [2018-02-12-1]の記事で通知したように,昨日3月4日に桜美林大学四谷キャンパスにて「言語と人間」研究会 (HLC)春期セミナーの一環として,「『良い英語』としての標準英語の発達―語彙,綴字,文法を通時的・複線的に追う―」と題するお話しをさせていただきました.足を運んでくださった方々,主催者の方々に,御礼申し上げます.私にとっても英語の標準化について考え直すよい機会となりました.
 スライド資料を用いて話し,その資料は上記の研究会ホームページ上に置かせてもらいましたが,資料へのリンクをこちらからも張っておきます.スライド内からは本ブログ内外へ多数のリンクを張り巡らせていますので,リンク集としてもどうぞ.

   1. 「言語と人間」研究会 (HLC) 第43回春季セミナー 「ことばにとって『良さ』とは何か」「良い英語」としての標準英語の発達--- 語彙,綴字,文法を通時的・複線的に追う---
   2. 序論:標準英語を相対化する視点
   3.  標準英語 (Standard English) とは?
   4.   標準英語=「良い英語」
   5.   標準英語を相対化する視点の出現
   6.  言語学の様々な分野と方法論の発達
   7.   20世紀後半〜21世紀初頭の言語学の関心の推移
   8. 標準英語の形成の歴史
   9.   標準語に軸足をおいた Blake の英語史時代区分
   10.   英語の標準化サイク
   11.  部門別の標準形成の概要
   12.  Milroy and Milroy による標準化の7段階
   13.   Haugen による標準化の4段階
   14. ケース・スタディ (1) 語彙 -- autumn vs fall
   15.  両語の歴史
   16. ケース・スタディ (2) 綴字 -- 語源的綴字 (etymological spelling)
   17.  debt の場合
   18.  語源的綴字の例
   19.  フランス語でも語源的スペリングが・・・
   20.  その後の発音の「追随」:fault の場合
   21.  語源的綴字が出現した歴史的背景
   22.  EEBO Corpus で目下調査中
   23. ケース・スタディ (3) 文法 -- 3単現の -s
   24.  古英語の動詞の屈折:lufian (to love) の場合
   25.  中英語の屈折
   26.  中英語から初期近代英語にかけての諸問題
   27. 諸問題の意義
   28.  標準化と3単現の -s
   29.  3つのケーススタディを振り返って
   30. 結論
   31. 主要参考文献

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2018-02-21 Wed

#3222. 第2回 HiSoPra* 研究会で英語史における標準化について話します [notice][academic_conference][historical_pragmatics][sociolinguistics][standardisation][hisopra]

 昨年の3月14日に立ち上げられ,学習院大学で開催された歴史社会言語学・歴史語用論の研究会 HiSoPra* (= HIstorical SOciolinguistics and PRAgmatics) の第2回が,来る3月13日に同じく学習院大学にて開かれる予定です.プログラム等の詳細はこちらの案内 (PDF)をご覧ください.
 昨年の第1回研究会については,私も討論に参加させていただいた経緯から,本ブログ上で「#2883. HiSoPra* に参加して (1)」 ([2017-03-19-1]),「#2884. HiSoPra* に参加して (2)」 ([2017-03-20-1]) にて会の様子を報告しました.今度の第2回でも,「スタンダードの形成 ―個別言語の歴史を対照して見えてくるもの☆」と題するシンポジウムで,英語の標準化の過程に関して少しお話しさせていただくことになりました.諸言語のスタンダード形成の歴史を比較対照して,フロアの方々と議論しながら知見を深め合うという趣旨です.議論に先立って,日本語について東京大学名誉教授の野村剛史先生に講演していただき,その後を受ける形で堀田が英語について,そして学習院大学の高田博行先生がドイツ語について,話題を提供するという構成になっています.3言語(プラスα)における標準化の過程を,いわば歴史対照言語学的にみるという試みですが,企画の話し合いの段階から,実に興味深い言語間の異同ポイントが複数あると判明し,本番が楽しみです.その他,研究発表や研究報告も予定されています.
 英語の標準化に関する話題は,本ブログでも standardisation の諸記事で書きためてきました.今回の企画を契機に,改めて考えて行く予定です.

Referrer (Inside): [2018-03-15-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2018-02-12 Mon

#3213. 「言語と人間」研究会 (HLC) の春期セミナーで標準英語の発達について話します [notice][academic_conference][standardisation]

 来る3月3日(土)と4日(日)に桜美林大学四谷キャンパスにて開催される「言語と人間」研究会 (HLC)春期セミナーにおいて,「『良い英語』としての標準英語の発達―語彙,綴字,文法を通時的・複線的に追う―」と題するお話しをさせていただくことになりました.プログラム (PDF) はこちらです.
 標準英語の発達を一般的に概説するというよりは,後期中英語から近代英語にかけての語彙,綴字,文法に関する個別で具体的な事例を取り上げ,現代標準英語で定着している形式が,いかなる歴史的過程を経て「良い」ものとして選ばれ,採用されてきたかを覗き見するという趣旨です.今回のセミナーのメイン・テーマが「ことばにとって『良さ』 とは何か」ということで,かっこ付きの「良さ」を具現するといえる標準(英)語のメイキングに光を当てようと考えた次第です.また,通時的な研究への導入という点も意識して,話しを構成するつもりです.
 要旨として作成した文章を,以下に掲載しておきます.まだ少々時間があるので,関連する調査を進めていく予定です・・・.

 私たちが英語について語るとき,暗黙の前提として「標準英語」を念頭においているのが普通だろう.標準英語は「良い英語」でもあるから,対象として最もふさわしい変種であるにちがいないはずだと.しかし,標準英語とは何かと具体的に考えていくと,明快な答えを出すことは難しい.標準英語は非標準英語との対比により規定されるといってよく,その非標準英語は過去から現在に至るまで常に変化と変異を繰り返しつつ様々な形で存在してきたのである.また,標準英語自身も,そのような複数の変種のなかから現われてきた歴史上の産物だった.標準英語=「良い英語」という暗黙の前提の根拠を探るには,通時的で複線的な視点をとる必要がある.
 本講義の序論では,標準英語を相対化する視点の概略を,20世紀以降の言語学史に照らして示す.20世紀半ばまでの言語学は共時的理論が主であり,考察の対象となる言語変種はほぼ常に標準変種だった.しかし,20世紀後半から21世紀にかけて,社会言語学や語用論といった諸変種の存在を前提とする言語学が徐々に盛んとなり,多種多様な言語資料を扱うことのできる電子コーパスとその技術の普及も追い風となって,variationism と呼ばれる複線的な言語観が立ち現れてきた.英語学・英語史においても標準英語が相対化される契機が生じたのである.近年,英語史の分野では現代に近い(後期)近代英語期の研究が著しく活気を帯びてきているが,それはこのような過去数十年間の言語学の様々な潮流が合流した結果とみることができる.
 近年,標準英語を相対化できるようになってきたということは,裏を返せば,それまで標準英語が絶対視される風潮があったということである.では,そのような絶大な威信をもつ標準英語は,いつ,どこで,どのように,なぜ出現したのだろうか.標準英語の起源・形成・発達の歴史はひどく曲がりくねっており,記述も一筋縄ではいかないが,後期古英語のウェストサクソン方言に基づく緩い書き言葉標準の形成から,初期中英語における標準英語の完全なる崩壊と後期中英語における新たな標準英語の形成への胎動を経由して,近代英語期に数々の問題を抱えながらも,私たちの知る標準英語が発達してきた歴史を概観する.
 続いて,語彙,綴字,文法の各部門から英語の標準化に関わる具体的な事例を,主として近代英語期より取り上げ,標準英語の歴史がいかに込み入っており,複線的な視点で読み解く必要があるかを示す.語彙については,イギリス英語とアメリカ英語においてそれぞれ「秋」を表わす標準的な語となった autumn と fall の「物別れ」の経緯を追う.綴字の問題としては,doubt の <b> のような「黙字」の挿入を取り上げ,当時の歴史社会言語学上の舞台裏について考察する.文法の話題としては,標準英語における3単現の -s の定着に関わる諸問題を検討し,非標準変種における発達と比較しながら,この文法問題に新たな視点を提供したい.
 最後に,以上の議論を踏まえ,現代の標準英語が言語学的な産物である以上に歴史社会言語学的な産物であること,そして後者の意味においてのみ「良い英語」であることを確認する.全体として,標準英語やそれを構成する個々の言語項を眺める際に,通時的・複線的な視点をとることで新たな発見が得られる可能性を示したい.

Referrer (Inside): [2018-03-05-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2017-12-21 Thu

#3160. 連載第12回「なぜ英語はSVOの語順なのか?(後編)」 [link][notice][word_order][syntax][inflection][rensai][sobokunagimon][old_norse][contact][gsr][causation][language_change]

 昨日12月20日付けで,英語史連載企画「現代英語を英語史の視点から考える」の第12回の記事「なぜ英語はSVOの語順なのか?(後編)」が公開されました.
 前編の最後では,標題の疑問を「なぜ英語は屈折重視型から語順重視型の言語へと切り替わり,その際になぜ基本語順はSVOとされたのか?」という疑問へとパラフレーズしました.後半ではいよいよこの問いに本格的に迫りますが,楽しく読めるように5W1Hのミステリー仕立てで話しを展開しました.

言語変化にかかわらずあらゆる歴史現象の究極の問いは Why です.その究極の答えに近づくためには,先にそれ以外の4W1Hをしっかり押さえ,証拠を積み上げておく必要があります.その上で,総合的に Why への解答を提案するという順序が自然です.今回は,この英文法史上最も劇的な変化を1つの事件と見立て,その5W1Hにミステリー仕立てで迫りたいと思います.


 連載記事で展開した説明は仮説です.有力な仮説ではありますが,歴史上の事柄ですから絶対的な説明を提示することはほぼ不可能と言わざるを得ません.それは今回の疑問に限りません.しかし,言語変化を論じる際に,事実をよく調べ,その事実に反しない形で因果関係のストーリーを組み立てることは可能です.今回の説明も,その試みの1つとして理解していただければと思います.以下,連載記事からの引用です.

言語変化は決して偶然生じるわけではないことがわかったかと思います.言語変化の背後には言語内的・外的な諸要因が複合的に作用しており,確かにその一つひとつを突き止めることは難しいのですが,What, When, Where, Who, How の答えを着実に追い求めていけば,最後には究極の問い Why にも接近することができるのです.


 今回で連載記事としては最終回となります.これからも本ブログやその他の媒体で,英語の素朴な疑問にこだわっていきたいと思いますので.今後ともよろしくお願い申し上げます.

Referrer (Inside): [2019-05-22-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2017-12-06 Wed

#3145. 今,後期近代英語の研究がおもしろい [lmode][notice]

 私は後期近代英語の専門家ではないのですが,縁あって2017年度の『ヴィクトリア朝文化研究』(第15号)に,「Late Modern English 研究の潮流」と題するエッセイを寄稿する機会をいただきました(日本ヴィクトリア朝文化研究学会の会長の川端康雄先生,編集委員長の田中裕介先生,ありがとうございました).
 特に濃い内容ではないのですが,読みやすい文章となるようには心がけましたので,英語史の専門家ならずとも,英文学や英国史を専門とする方々にも何とか届く文章になっているとは思います.以下のようなセクションで書きました.

 1. 後期近代英語研究のブームきたる
 2. なぜ従来 LModE の評価が低かったのか
 3. なぜ今 LModE なのか
 4. どのような研究がなされているか
 5. LModE 研究とこれからの英語史

 実のところ,LModE のブームもすでに決して新しくないとも言えるほどに,英語史の分野は著しく発展しています.私の周辺でも LModE の研究を志す人は少なくありません.LModE は,確かに現代英語とその未来を考える際に,いろいろな点で魅力的な時代ではあります.今回のエッセイでは,このブームには理由があることを論じたわけですが,その最大のポイントとして指摘したのは20世紀後半からの社会言語学とコーパス言語学の発展でした.

社会言語学とコーパス言語学の発展により,英語史研究者にとって研究すべきことと研究できることが一気に増えた。そして,その効果が他の時代よりも強く感じられたのが LModE だったのである。


 詳細は,当エッセイをご覧ください.締めくくりの文章は,以下の通りです.

LModE は,しばらくの間,英語史研究に新鮮なエネルギーを注ぎ続けてくれるだろう。筆者は主に中世英語を専門としているが,時代に取り残されないよう LModE にアップデートしなければ,と感じる次第である。


 ・ 堀田 隆一 「Late Modern English 研究の潮流」 『ヴィクトリア朝文化研究』 第15号,2017年.207--16頁.

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2017-11-30 Thu

#3139. 講座「スペリングでたどる英語の歴史」のお知らせ [notice][spelling][spelling_pronunciation_gap][hel_education][asacul][sobokunagimon]

 来年2018年の1月から3月にかけて,朝日カルチャーセンター新宿教室にて5回にわたる講座「スペリングでたどる英語の歴史」を開講します.
 このテーマを掲げたのは,去る9月に Simon Horobin 著 Does Spelling Matter? の拙訳書『スペリングの英語史』が出版されたこともありますし,先立つ4月に開講した「#2911. 英語史講座第1回「綴字と発音の関係を探る――なぜ doubt に <b> があるのか?」」 ([2017-04-16-1]) でも関心をもたれる方が多かったからです.そして,何よりもこのテーマは,英語史を通観するのにとても優れた視点なのです.スペリングの歴史を通じて,文字論はもとより音韻論,形態論,言語接触,社会言語学,語用論といった多様な角度から,英語史を概観することができます.関心のある方は,是非どうぞ.
 関連して,拙著『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史』「第2章 発音と綴字に関する素朴な疑問」,および拙著『英語史で解きほぐす英語の誤解 --- 納得して英語を学ぶために』「第6章 英語は日本語と比べて文字体系が単純である」もご参照ください.
 本講座の趣旨と各回で扱う予定の内容は次の通りです.

多くの学習者にとって,英語のスペリングは,不規則で例外ばかりの暗記を強いる存在と映ります.なぜ knight や doubt というスペリングには,発音しない <k>, <gh>, <b> のような文字があるのでしょうか.なぜ color と colour,center と centre のような,不要とも思える代替スペリングがあるのでしょうか.しかし,不合理に思われるこれらのスペリングの各々にも,なぜそのようなスペリングになっているかという歴史的な理由が「誇張ではなく」100%存在するのです.本講座では,英語のたどってきた1500年以上の歴史を参照しながら,個々の単語のスペリングの「なぜ?」に納得のゆく説明を施します.

1. 総論;アルファベットの起源と英語のスペリング
2. 英語初のアルファベット表記 --- 古英語のスペリング
3. 515通りの through --- 中英語のスペリング
4. doubt の <b> --- 近代英語のスペリング
5. color か colour か? --- アメリカのスペリング


 英語のスペリングの理不尽さに「納得のゆく説明」を与えると述べていますが,これは「実用的で役に立つ説明」と同一ではありません.しかし,中長期的にみれば「納得のゆく説明」こそが重要であると考えています.

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2017-11-22 Wed

#3131. 連載第11回「なぜ英語はSVOの語順なのか?(前編)」 [link][notice][word_order][syntax][typology][world_languages][inflection][japanese][rensai][sobokunagimon]

 11月20日付けで,英語史連載企画「現代英語を英語史の視点から考える」の第11回の記事「なぜ英語はSVOの語順なのか?(前編)」が公開されました.英語の語順に関する大きめの話題なので,2回にわたって連載する予定です.今回はその前編となります.
 前編の概要は以下の通りです.日本語と英語における S, V, O の3要素の語順の違いを取っ掛かりとして,言語における「基本語順」に注目します.言語類型論の知見によれば,世界の諸言語における基本語順を調べると,実は日本語型の SOV が最も多く,次いで現代英語型の SVO が多いという分布が明らかとなります.ところが,英語も古英語まで遡ると,SVO のほか,SOV, VSO など様々な語順が可能でした.つまり,現代的な語順決め打ちではなく,比較的自由な語順が許されていたのです.それは,名詞,形容詞,冠詞,動詞などの語尾を変化させる「屈折」 の働きにより,文中のどの要素が主語であるか,目的語であるか等が明確に示され得たからです.語順に頼らずとも,別の手段が用意されていたということになります.要素間の統語関係を標示するのに語順をもってするか,屈折をもってするかは確かに大きな違いではありますが,いずれが優れている,劣っているかという問題にはなりません.現に英語は歴史の過程で語順の比較的自由な言語から SVO 決め打ちの言語へとシフトしてきたわけですが,そのシフト自体を優劣の観点から評価することはできないのです.
 前編の最後では,「なぜ英語はSVOの語順なのか?」という素朴な疑問を,通時的な視点から「なぜ英語は屈折重視型から語順重視型の言語へと切り替わり,その際になぜ基本語順はSVOとされたのか?」とパラフレーズしました.この疑問の答えについては,来月公開の後編にご期待ください.
 SOV, SVO などの語順に関しては,「#137. 世界の言語の基本語順」 ([2009-09-11-1]),「#3124. 基本語順の類型論 (1)」 ([2017-11-15-1]),「#3125. 基本語順の類型論 (2)」 ([2017-11-16-1]),「#3128. 基本語順の類型論 (3)」 ([2017-11-19-1]),「#3129. 基本語順の類型論 (4)」 ([2017-11-20-1]) の記事もどうぞ.

Referrer (Inside): [2019-05-22-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2017-10-21 Sat

#3099. 連載第10回「なぜ you は「あなた」でもあり「あなたがた」でもあるのか?」 [link][notice][personal_pronoun][number][t/v_distinction][category][rensai][sobokunagimon]

 昨日10月20日付けで,英語史連載企画「現代英語を英語史の視点から考える」の第10回の記事「なぜ you は「あなた」でもあり「あなたがた」でもあるのか?」が公開されました.
 本文でも述べているように,この素朴な疑問にも「驚くべき歴史的背景が隠されて」おり,解説を通じて「英語史のダイナミズム」を感じられると思います.2人称代名詞を巡る諸問題については,これまでも本ブログで書きためてきました.以下に関連記事へのリンクを張りますので,どうぞご覧ください.

[ 各時代,各変種の人称代名詞体系 ]
 
 ・ 「#180. 古英語の人称代名詞の非対称性」 ([2009-10-24-1])
 ・ 「#181. Chaucer の人称代名詞体系」 ([2009-10-25-1])
 ・ 「#196. 現代英語の人称代名詞体系」 ([2009-11-09-1])
 ・ 「#529. 現代非標準変種の2人称複数代名詞」 ([2010-10-08-1])
 ・ 「#333. イングランド北部に生き残る thou」 ([2010-03-26-1])

[ 文法範疇とフェチ ]

 ・ 「#1449. 言語における「範疇」」 ([2013-04-15-1])
 ・ 「#2853. 言語における性と人間の分類フェチ」 ([2017-02-17-1])

[ 親称と敬称の対立 (t/v_distinction) ]

 ・ 「#167. 世界の言語の T/V distinction」 ([2009-10-11-1])
 ・ 「#185. 英語史とドイツ語史における T/V distinction」 ([2009-10-29-1])
 ・ 「#1033. 日本語の敬語とヨーロッパ諸語の T/V distinction」 ([2012-02-24-1])
 ・ 「#1059. 権力重視から仲間意識重視へ推移してきた T/V distinction」 ([2012-03-21-1])
 ・ 「#1126. ヨーロッパの主要言語における T/V distinction の起源」 ([2012-05-27-1])
 ・ 「#1552. T/V distinction と face」 ([2013-07-27-1])
 ・ 「#2107. ドイツ語の T/V distinction の略史」 ([2015-02-02-1])

[ thou, ye, you の競合 ]

 ・ 「#673. Burnley's you and thou」 ([2011-03-01-1])
 ・ 「#1127. なぜ thou ではなく you が一般化したか?」 ([2012-05-28-1])
 ・ 「#1336. なぜ thou ではなく you が一般化したか? (2)」 ([2012-12-23-1])
 ・ 「#1865. 神に対して thou を用いるのはなぜか」 ([2014-06-05-1])
 ・ 「#291. 二人称代名詞 thou の消失の動詞語尾への影響」 ([2010-02-12-1])
 ・ 「#2320. 17世紀中の thou の衰退」 ([2015-09-03-1])
 ・ 「#800. you による ye の置換と phonaesthesia」 ([2011-07-06-1])
 ・ 「#781. How d'ye do?」 ([2011-06-17-1])

[ 敬称の you の名残り ]

 ・ 「#440. 現代に残る敬称の you」 ([2010-07-11-1])
 ・ 「#1952. 「陛下」と Your Majesty にみられる敬意」 ([2014-08-31-1])
 ・ 「#3095. Your Grace, Your Highness, Your Majesty」 ([2017-10-17-1])

[ you の発音と綴字 ]

 ・ 「#2077. you の発音の歴史」 ([2015-01-03-1])
 ・ 「#2234. <you> の綴字」 ([2015-06-09-1])

Referrer (Inside): [2019-05-22-1] [2017-11-27-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2017-10-03 Tue

#3081. 日本の英語学習者のための『スペリングの英語史』の読み方 [notice][toc][spelling][hel][review]

 拙訳『スペリングの英語史』について,もちろん好きなように読んでいただけば,それだけで嬉しいわけでして,実におせっかいな記事のタイトルなのですが,原著 Horobin, Simon. Does Spelling Matter? Oxford: OUP, 2013. の日本人読者の1人として,また英語の学習者・研究者の1人として,次のようなことを考えながら読み,訳してきたということを文章に残しておきたいと思いました.ポイントは3点あります.

 1つ目は,本書が日本の英語学習者にスペリング学習に際しての知識を与えてくれるということです.とはいうものの,著者は意外なことに,序章の最後で,本書はスペリング学習に役立つ実用書ではないことを示唆しています.そのような目的で本書を手に取った読者がいたとすれば,おそらく幻滅するだろうと.確かに,本書で英語のスペリングの波乱の歴史を知ってしまうと,むしろなぜ現在のスペリングがこれほど無秩序であり,少数の規則で説明しきれないのかがよくわかってしまいます.言語的には英語のスペリングのすべてを説明づけられるような少数の規則はないといってよく,それに気づいた読者は,英語のスペリングを学習する上での絶対的な便法はやはりないのか,と悲観的に結論づけざるをえないかのようです.
 しかし,著者は(そして訳者も)英語のスペリングがそこまで無秩序で不規則だとは考えていません.おそらく,スペリングの規則というものがあるとすれば,スペリングの歴史全体がその規則であるという立場をとっています.現在のスペリングだけを観察して,そこから何らかの規則を抽出しようとしても,たちどころに例外や不規則が現われてしまい,むしろ最初から個別に扱ったほうがよかった,という結果になりがちです.しかし,スペリングの歴史をたどってみると,確かに無数の込み入った事情はあったけれども,その事情のひとつひとつは多くの場合納得して理解できるものだとわかります.余計な文字をスペリングに挿入したルネサンスの衒学者の気持ちも説明されればわかりますし,ノア・ウェブスターがスペリング改革を提案した理由も,アメリカ独立の時代背景を考慮すれば腑に落ちます.このような個々の歴史的な事情を指して「規則」とは通常呼びませんが,「e の前の音節の母音字は長い発音で読む」のような無機質な規則に比べれば,ずっと人間的で有機的な「規則」と言えないでしょうか.このような歴史に起因する「規則」は必然的に雑多ではありますが,それにより現在のスペリングの大多数が説明できるのです.歴史を学ぶことは遠回りのようでいて,しばしば最も納得のゆく方法です.本書では,便法としての規則は必ずしも得られなくとも,納得のゆく説明は得られます.説得力,それが本書のもつ最大の価値です.
 また,歴史こそが規則であるという著者のスタンスは,著者のスペリング改革に対する懐疑的で批判的な立場とも符合します.完全に表音的なスペリングへ改革してしまうと,スペリングの表面から歴史という規則の痕跡が消し去られてしまうからです.

 本書が日本の読者にとってもつもう1つの意義は,英語の書記体系を鑑として,私たちの母語である日本語の書記体系について再考を促してくれる点にあります.読者は本書を読みながら,英語のスペリングと比較対照させつつ日本語の書記体系にも思いを馳せるでしょう.日本語は珍しく唯一絶対の正書法がない言語といわれます(cf. 「#2392. 厳しい正書法の英語と緩い正書法の日本語」 ([2015-11-14-1]),「#2409. 漢字平仮名交じり文の自由さと複雑さ」 ([2015-12-01-1])).ニャーニャー鳴く動物を表記せよと言われれば,「猫」「ネコ」「ねこ」「neko」のいずれも可能です.もちろん用いる文字種が指定されれば1つの書き方に定まりますが,原則としてどの文字種を用いるかは書き手に委ねられています.書き手のその時の気分によって,求められている文章の格式によって,想定される読み手が誰かによって,あるいはまったくのランダムで,自由に書き分けることが許されます.ここには,書き手の選択の自由があり,正書法上の「遊び」があります.
 本書の第4章で触れられるように,1100年から1500年の英語,中英語では同じ単語でも書き手個人ごとに異なるスペリングがあり,さらに個人においても複数の異綴りを用いるのが普通でした.ここにも「遊び」があったのです.日本語と中英語では「遊び」の質も量も異なり,一概に比較できませんが,書き手に選択の自由が与えられていることは共通しています.正確に発音を表わすことが重要な場合,単語の意味が同定できさえすればよい場合,書き手が気分を伝えたい場合,読み手に対して気遣いする場合など,様々なシーンで,書き手は書き方を選ぶことができます.文字は言葉の発音や意味などを伝える手段であると同時に,使用者が自らの気分やアイデンティティを伝える手段でもあります.確かに唯一絶対の正書法は,広域にわたる公共のコミュニケーションのためには是非とも必要でしょう.しかし,公表を前提としない個人的な買い物リストのメモ書きや,字数制限のあるツイッターの文章を含めたあらゆる書き言葉の機会において,常に唯一絶対の正書法に従わなければならないとすれば,いかにも息苦しいし,書き手の個性を消し去ることにならないでしょうか.
 後期古英語の標準的なスペリング体系のもとではそれほど許されなかった「遊び」が,中英語期にはいきいきと展開しましたが,続く近代英語期には再び制限を加えられていきました.このような歴史を学ぶことは,いまだ「遊び」を保持している日本語書記体系の現在と未来を考え,議論する上で貴重な洞察を与えてくれます.英語のスペリング改革史においてほとんどの提案が失敗に終わったという事実も,日本語の書記体系の行く末を考える上で示唆的です.逆に日本語の立場から英語をみると,日本語は1つのモデルケースということになるかもしれません.というのは,著者は英語について「1つの正書法」 (the orthography) ではなく「複数の正書法」 (orthographies) の可能性を探っている節があるからです,

 本書の3つ目の意義は,文字にも歴史があるという当たり前の事実を再認識させてくれる点にあります.本書は,現在ある文字や言葉は,それがたどってきた歴史の産物であるという事実を改めて教えてくれます.文字という小さな単位を入り口に,言葉の歴史という広い世界へと案内してくれる書だと思います.英語に関する読み物にとどまっておらず,言葉に関する教養の詰まった本となっています.この点は,一般読者だけではなく,言葉を専門とする言語学者や英語学者に対しても力説しておきたいポイントです.
 20世紀の言語研究では,歴史的視点が欠如していました.また,音声を重視するあまり,文字が軽んじられてきました.つまり,スペリングの歴史という話題は,20世紀の主流派の言語研究において,最も軽視されてきたテーマの1つといってよいでしょう.本書を通じて,一般読者と専門の言語学者が,文字の言語学および歴史的な視点をもった言語学のおもしろさと価値を再認識してくれることに期待したいと思います.

 ・ Horobin, Simon. Does Spelling Matter? Oxford: OUP, 2013.
 ・ サイモン・ホロビン(著),堀田 隆一(訳) 『スペリングの英語史』 早川書房,2017年.

does_spelling_matter_front_cover_small

Referrer (Inside): [2017-10-07-1] [2017-10-05-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2017-10-02 Mon

#3080. 『スペリングの英語史』の章ごとの概要 [notice][toc][spelling][hel]

 昨日の記事「#3079. 拙訳『スペリングの英語史』が出版されました」 ([2017-10-01-1]) で拙訳書の目次を挙げた.今回は章ごとの概要を示しつつ,『スペリングの英語史』のガイドとしたい.事実上,英語スペリング史の概略となっている.

 1. 「序章」.正書法(正しいスペリング)を巡る近年の議論を参照しながら,多くの人が当然視する唯一絶対のスペリングは本当に必要なのかという問題提起がなされる.たとえば,元アメリカ合衆国副大統領ダン・クウェールの potato 事件に象徴されるように,スペリングを1文字間違えるだけで社会的制裁が加えられるような現代の風潮は異常ではないかと.このような問題の背景には,英語のスペリングが無秩序で不規則であるという世間一般の評価がある.有意義な議論のためには,英語のスペリングの歴史を知っておくことが重要である.

 2. 「種々の書記体系」.人類の文字の起源から説き起こし,世界各地の書記体系を紹介しつつ,文字と意味あるいは文字と発音の関係について理論的に考察する.中世ヨーロッパの文字理論を援用し,またベル考案の視話法や『指輪物語』の架空の文字に言及しながら,英語表記に用いられているローマン・アルファベットが原則として表音的な性質をもちつつも,必ずしも理想的な表音文字としては機能していないことを指摘し,英語のスペリング体系が発音との間にギャップを示す「深い正書法」であると説く.最後に,スペリングが言語において最も規制の対象となりやすい側面であることを指摘しつつ,標準的なスペリング体系のもつ社会的役割を論じる.

 3. 「起源」.6世紀末に英語にローマン・アルファベットがもたらされる以前からアングロサクソン世界で用いられていた,もう1つのアルファベット体系,ルーン文字が紹介される.最古の英文は,実にルーン文字で書かれていたのである.やがてローマン・アルファベットがルーン文字に取って代わったが,文字の種類や書体は現在われわれが見慣れているものと若干異なっていた.古英語アルファベットの示す文字と発音の関係は,それに先立つラテン文字,エトルリア文字,ギリシア文字などから受け継いだものと,古英語での改変を反映したものの混合であり,古英語のスペリングもすでに複雑ではあったものの,後期古英語にはウェストサクソン方言を基盤とした標準的なスペリング体系が整えられていった.古英語のスペリングの実例が,聖書や『ベーオウルフ』からの引用により示される.

 4. 「侵略と改正」.1066年のノルマン征服により後期古英語の標準語が崩壊し,続く中英語期には多種多様な方言スペリングが花咲いた.これにより,through や such のような単語は,写字生の方言によってきわめて多様に(約500通りにも)綴られることになった.また,中英語期には,フランス語の習慣の影響を受けて書体やスペリングに少なからぬ改変が加えられた.初期中英語には,標準的なスペリングらしきものが芽生えた証拠もあるが,それらは特定の個人や集団に限定されており,真の標準とはなりえなかった.しかし,後期中英語になると現代に連なる標準的なスペリングの原型が徐々に現れだした.このような自由奔放で変異に満ちた中英語のスペリングは,唯一絶対のスペリングを当然視する現代のスペリング観に真っ向から対立するものである.

 5. 「ルネサンスと改革」.初期近代英語期は,異綴りが減少し,標準的なスペリング体系が形成されていく時代である.人々がスペリングの問題を意識するようになり,特にスペリング改革者,教育関係者,印刷業者が各々の思惑のもとにスペリングのあり方を論じ,実践した.ルネサンスの衒学者たちは,ラテン語の語源を反映するスペリングを好み,たとえば doubt のスペリングに b を挿入し保存すること主張した.理想主義的な理論家たちは,文字と発音の関係が緊密であるべきことを説き,新たな文字や記号を導入する過激なスペリング改革を提案した.もっと穏健な論者たちは,従来から行なわれてきたスペリングの慣習を,必ずしも合理的でなくとも許容し,定着させようと努力した.結果的に,穏健派のリチャード・マルカスターの提案が後世のスペリングに影響を与えることとなった.

 6. 「スペリングの固定化」.18世紀は,スペリングをはじめ英語を固定化することに腐心した時代だった.スウィフトによる英語アカデミー設立の試みは失敗したものの,1755年にはジョンソンが後世に多大な影響を及ぼすことになる『英語辞典』を世に送り出し,標準的なスペリングを事実上確定させた.しかし,スウィフトやジョンソンも,印刷された公の文書においてこそ標準的なスペリングを用いていたものの,私信などの手書き文書においては非標準的なスペリングも用いており,個人のなかでもいまだ異綴りが見られた.続けて,19世紀後半から20世紀前半にかけての『オックスフォード英語辞典』 (OED) の編者マレーやブラッドリーのスペリングに対する姿勢が概説され,20世紀の「カット・スペリング」「規則化英語」「ショー・アルファベット」「初等教育アルファベット」といったスペリング改革案やスペリング教育法の試みが批判的に紹介される.

 7. 「アメリカ式スペリング」.ノア・ウェブスターによるスペリング改革の奮闘が叙述される.この英語史上稀なスペリング改革の成功の背景には,提案内容が colour を color に変えるなど穏健なものであったこと,スペリング本が商業的に成功したこと,そして新生アメリカに対する国民の愛国心がおおいに関与していたことが指摘される.そのほか,アメリカにおけるスペリング競技会の人気振りやトウェインのスペリング観に言及するとともに,アメリカの単純化スペリング委員会の検討したスペリング改革案について,規範的発音を前提とする誤った言語観に基づいているとして批判を加えている.

 8. 「スペリングの現在と未来」.近年の携帯メールにみられる省略スペリングの話題が取り上げられる.著者は,省略スペリングの使用者が使い分けをわきまえていることを示す調査結果や,中世にも同様の省略スペリングが常用されていた事実を挙げながら,省略スペリングが多くの人が心配しているように教育水準が下がっている証拠ともならなければ,規範的なスペリングがないがしろにされている証拠ともならないと反論する.綴り間違いに不寛容な態度を示す現代の風潮を批判し,英語のスペリングは英語がたどってきた豊かな歴史の証人であり,今あるがままに保存し尊重すべきであると述べて本書を結ぶ.

 以上,現代英語のスペリングが壮大な歴史の上に成り立っていることがわかるだろう.

 ・ Horobin, Simon. Does Spelling Matter? Oxford: OUP, 2013.
 ・ サイモン・ホロビン(著),堀田 隆一(訳) 『スペリングの英語史』 早川書房,2017年.

does_spelling_matter_front_cover_small

Referrer (Inside): [2018-12-17-1] [2017-10-06-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2017-10-01 Sun

#3079. 拙訳『スペリングの英語史』が出版されました [notice][spelling][spelling_pronunciation_gap][history][hel_education][toc][link]

 9月20日付で,拙訳『スペリングの英語史』が早川書房より出版されました.原著は本ブログで何度も参照・引用している Horobin, Simon. Does Spelling Matter? Oxford: OUP, 2013. です.本ブログを読まれている方,そして英語スペリングの諸問題に関心をもっているすべての方に,おもしろく読んでもらえる内容です.

does_spelling_matter_front_cover
サイモン・ホロビン(著),堀田隆一(訳) 『スペリングの英語史』 早川書房,2017年.302頁.ISBN: 978-4152097040.定価2700円(税別).



 「本書をただのスペリングの本だと思ったら大間違いである.ここには,英語史,英文学をはじめ,英語の教養がぎっしりと詰まっている」との推薦文を,東大の斎藤兆史先生より寄せていただきました.また,本書の帯に「オックスフォード大学英語学教授による,スペリングの謎に切り込む名解説」という売り文句がありますが,訳者も英語のスペリングに関する読ませる本としては最高のものであると確信しています(もう1冊の読ませるスペリング本として,Crystal, David. Spell It Out: The Singular Story of English Spelling. London: Profile Books, 2012. も薦めます).
 本書には,このスペリングやあのスペリングの背景にこんな歴史的な事件が関与していたのか,と驚くエピソードが満載です.例えば・・・

 ・ 合衆国副大統領の政治生命の懸かった,potato のスペリングをめぐる醜聞
 ・ 『指輪物語』のトールキンは,独自のアルファベット体系を考案し,それで日記をつけていた
 ・ 最古の英文はローマ字ではなくルーン文字で書かれていた
 ・ 中英語期には such の異なるスペリングが500種類もあった
 ・ ルネサンス期のラテン語かぶれの知識人が,doubt の <b> のような妙なスペリングの癖を生み出した
 ・ シェイクスピア『リア王』で語られる,英語における <z> の文字の冷遇
 ・ Smith さんか,Smythe さんか,はたまた Psmith さんか --- 名前のスペリングへのこだわり
 ・ みずからの遺産を理想的なアルファベット考案の賞金にあてた劇作家バーナード・ショー
 ・ ウェブスターがアメリカ式スペリングの改革に成功したのは,独立の愛国心とベストセラー『スペリング教本』の商業的成功ゆえ
 ・ 電子メールに溢れる省略スペリングは,英語の堕落の現われか,言語的創造力のたまものか

 本書の目次は,以下の通りとなっています.



 日本版への序文
 図一覧
 発音記号
 1 序章
 2 種々の書記体系
 3 起源
 4 侵略と改正
 5 ルネサンスと改革
 6 スペリングの固定化
 7 アメリカ式スペリング
 8 スペリングの現在と未来
 読書案内
 参考文献
 訳者あとがき
 語句索引



 原著の著者ついて,簡単に紹介しておきます.サイモン・ホロビン氏はオックスフォード大学モードリン・カレッジ・フェローの英語学教授です.英語史・中世英語英文学を専門としており,以下のような主要著書を世に送り出してきました.まさに気鋭の英語史研究者です.

 ・ Horobin, Simon and Jeremy Smith. An Introduction to Middle English. Edinburgh: Edinburgh UP, 2002.
 ・ Horobin, Simon. The Language of the Chaucer Tradition. Cambridge: Brewer, 2003.
 ・ Horobin, Simon. Chaucer's Language. 1st ed. Basingstoke: Palgrave Macmillan, 2006. 2nd ed. 2012.
 ・ Horobin, Simon. Studying the History of Early English. Basingstoke: Palgrave Macmillan, 2009.
 ・ Horobin, Simon. How English Became English: A Short History of a Global Language. Oxford: OUP, 2016.

 また,最近はあまり更新されていないようですが,著者は2012年から Spelling Trouble という英語のスペリングの話題を提供するブログで,いくつかの記事を書いています.
 ちなみに個人的なことをいえば,訳者はグラスゴー大学に留学し2005年に博士号を取得しましたが,当時,著者はグラスゴー大学で教鞭を執っており,訳者の学位審査官の1人でもありました.あのときもお世話になり,このたびもお世話になり,という経緯です.さらに,2年前の2014年12月には,本書にインスピレーションを受けて開催したシンポジウムに著者を招き,英語のスペリングについて一緒に議論する機会をもつことができました(cf. 「#2053. 日本中世英語英文学会第30回大会のシンポジウム "Does Spelling Matter in Pre-Standardised Middle English?" を終えて」 ([2014-12-10-1])).
 間違いなく英語のスペリングがよく分かるようになります.『スペリングの英語史』を是非ご一読ください.

 ・ Horobin, Simon. Does Spelling Matter? Oxford: OUP, 2013.
 ・ サイモン・ホロビン(著),堀田 隆一(訳) 『スペリングの英語史』 早川書房,2017年.

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2017-07-21 Fri

#3007. 連載第7回「接尾辞 -ish の歴史的展開」 [notice][suffix][productivity][rensai]

 昨日付けで,英語史連載企画「現代英語を英語史の視点から考える」の第7回の記事「接尾辞 -ish の歴史的展開」が公開されました.
 今回の話題は,普段注目されることの少ない小さな接尾辞の知られざる歴史です.-ish のような目立たない接尾辞1つを取ってみても,豊かな歴史が詰まっていることを示めそうとしました.chaque mot a son histoire "every word has its own history" ([2012-10-21-1]) ならぬ,"every affix has its own history" というわけです.
 この考え方をさらに小さい単位へと延長すれば,"every phoneme has its own history" ともなりますし,これもまた真実です.言語を構成する大小あらゆる単位が常に変化と変異にさらされており,同時にそれらの無数の単位が共時的に秩序だった体系を構成しており,言語として機能しているというのは,驚くべきことではないでしょうか.
 連載記事のなかで触れた接辞の生産性 (productivity) については理論的に活発な議論が繰り広げられていますので,以下の関連記事をご覧ください.

 ・ 「#935. 語形成の生産性 (1)」 ([2011-11-18-1])
 ・ 「#936. 語形成の生産性 (2)」 ([2011-11-19-1])
 ・ 「#937. 語形成の生産性 (3)」 ([2011-11-20-1])
 ・ 「#938. 語形成の生産性 (4)」 ([2011-11-21-1])
 ・ 「#940. 語形成の生産性と創造性」 ([2011-11-23-1])
 ・ 「#2706. 接辞の生産性」 ([2016-09-23-1])

 今回の連載記事の内容は,「#133. 形容詞をつくる接尾辞 -ish の拡大の経路」 ([2009-09-07-1]) で簡略に紹介しているので,そちらもご覧ください.同接尾辞の詳細な歴史については,以下の拙論で論じていますので,専門的な関心のある方はご参照ください.

  "The Suffix -ish and Its Derogatory Connotation: An OED Based Historical Study." Journal of the Faculty of Letters: Language, Literature and Culture 108 (2011): 107--32.  *

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2017-06-21 Wed

#2977. 連載第6回「なぜ英語語彙に3層構造があるのか? --- ルネサンス期のラテン語かぶれとインク壺語論争」 [notice][link][loan_word][borrowing][lexicology][french][latin][lexical_stratification][japanese][inkhorn_term][rensai][sobokunagimon]

 昨日付けで,英語史連載企画「現代英語を英語史の視点から考える」の第6回の記事「なぜ英語語彙に3層構造があるのか? --- ルネサンス期のラテン語かぶれとインク壺語論争」が公開されました.
 今回の話は,英語語彙を学ぶ際の障壁ともなっている多数の類義語セットが,いかに構造をなしており,なぜそのような構造が存在するのかという素朴な疑問に,歴史的な観点から迫ったものです.背景には,英語が特定の時代の特定の社会的文脈のなかで特定の言語と接触してきた経緯があります.また,英語語彙史をひもといていくと,興味深いことに,日本語語彙史との平行性も見えてきます.対照言語学的な日英語比較においては,両言語の違いが強調される傾向がありますが,対照歴史言語学の観点からみると,こと語彙史に関する限り,両言語はとてもよく似ています.連載記事の後半では,この点を議論しています.
 英語語彙(と日本語語彙)の3層構造の話題については,拙著『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史』のの5.1節「なぜ Help me! とは叫ぶが Aid me! とは叫ばないのか?」と5.2節「なぜ Assist me! とはなおさら叫ばないのか?」でも扱っていますが,本ブログでも様々に議論してきたので,そのリンクを以下に張っておきます.合わせてご覧ください.また,同様の話題について「#1999. Chuo Online の記事「カタカナ語の氾濫問題を立体的に視る」」 ([2014-10-17-1]) で紹介した拙論もこちらからご覧ください.

 ・ 「#334. 英語語彙の三層構造」 ([2010-03-27-1])
 ・ 「#1296. 三層構造の例を追加」 ([2012-11-13-1])
 ・ 「#1960. 英語語彙のピラミッド構造」 ([2014-09-08-1])
 ・ 「#2072. 英語語彙の三層構造の是非」 ([2014-12-29-1])
 ・ 「#2279. 英語語彙の逆転二層構造」 ([2015-07-24-1])
 ・ 「#2643. 英語語彙の三層構造の神話?」 ([2016-07-22-1])
 ・ 「#387. trisociationtriset」 ([2010-05-19-1])

 ・ 「#1437. 古英語期以前に借用されたラテン語の例」 ([2013-04-03-1])
 ・ 「#32. 古英語期に借用されたラテン語」 ([2009-05-30-1])
 ・ 「#1945. 古英語期以前のラテン語借用の時代別分類」 ([2014-08-24-1])
 ・ 「#120. 意外と多かった中英語期のラテン借用語」 ([2009-08-25-1])
 ・ 「#1211. 中英語のラテン借用語の一覧」 ([2012-08-20-1])
 ・ 「#478. 初期近代英語期に湯水のように借りられては捨てられたラテン語」 ([2010-08-18-1])
 ・ 「#114. 初期近代英語の借用語の起源と割合」 ([2009-08-19-1])
 ・ 「#1226. 近代英語期における語彙増加の年代別分布」 ([2012-09-04-1])
 ・ 「#2162. OED によるフランス語・ラテン語からの借用語の推移」 ([2015-03-29-1])
 ・ 「#2385. OED による,古典語およびロマンス諸語からの借用語彙の統計 (2)」 ([2015-11-07-1])

 ・ 「#576. inkhorn term と英語辞書」 ([2010-11-24-1])
 ・ 「#1408. インク壺語論争」 ([2013-03-05-1])
 ・ 「#1409. 生き残ったインク壺語,消えたインク壺語」 ([2013-03-06-1])
 ・ 「#1410. インク壺語批判と本来語回帰」 ([2013-03-07-1])
 ・ 「#1615. インク壺語を統合する試み,2種」 ([2013-09-28-1])
 ・ 「#609. 難語辞書の17世紀」 ([2010-12-27-1])

 ・ 「#335. 日本語語彙の三層構造」 ([2010-03-28-1])
 ・ 「#1630. インク壺語,カタカナ語,チンプン漢語」 ([2013-10-13-1])
 ・ 「#1629. 和製漢語」 ([2013-10-12-1])
 ・ 「#1067. 初期近代英語と現代日本語の語彙借用」 ([2012-03-29-1])
 ・ 「#296. 外来宗教が英語と日本語に与えた言語的影響」 ([2010-02-17-1])
 ・ 「#1526. 英語と日本語の語彙史対照表」 ([2013-07-01-1])

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2017-05-23 Tue

#2948. 連載第5回「alive の歴史言語学」 [notice][link][syntax][adjective][rensai][fricative_voicing]

 昨日付けで,英語史連載企画「現代英語を英語史の視点から考える」の第5回の記事「alive の歴史言語学」が公開されました.
 今回の主張は「一波動けば万波生ず」という言語変化のダイナミズムです.古英語から中英語にかけて生じた小さな音の弱化・消失が,形態,統語,綴字,語彙など,英語を構成する諸部門に少なからぬ影響を及ぼし,やや大げさにいうと「英語の体系を揺るがす」ほどの歴史的なインパクトをもった現象である,ということを説きました.英語史のダイナミックな魅力が伝われば,と思います.
 以下に,第5回の記事で触れた諸点に密接に関わる hellog 記事へのリンクを張っておきます.合わせて読むと,連載記事のほうもより面白く読めると思います.

 ・ 「#2723. 前置詞 on における n の脱落」 ([2016-10-10-1])
 ・ 「#1365. 古英語における自鳴音にはさまれた無声摩擦音の有声化」 ([2013-01-21-1])
 ・ 「#1080. なぜ five の序数詞は fifth なのか?」 ([2012-04-11-1])
 ・ 「#702. -ths の発音」 ([2011-03-30-1])
 ・ 「#374. <u> と <v> の分化 (2)」 ([2010-05-06-1])
 ・ 「#712. 独立した音節として発音される -ed 語尾をもつ過去分詞形容詞 (2)」 ([2011-04-09-1])
 ・ 「#1916. 限定用法と叙述用法で異なる形態をもつ形容詞」 ([2014-07-26-1])
 ・ 「#2435. eurhythmy あるいは "buffer hypothesis" の適用可能事例」 ([2015-12-27-1])
 ・ 「#2421. 現在分詞と動名詞の協働的発達」 ([2015-12-13-1])
 ・ 「#2422. 初期中英語における動名詞,現在分詞,不定詞の語尾の音韻形態的混同」 ([2015-12-14-1])
 ・ 「#2245. Meillet の "tout se tient" --- 体系としての言語」 ([2015-06-20-1])

Referrer (Inside): [2018-05-08-1] [2017-08-13-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2017-05-18 Thu

#2943. 英語の発音と綴りが一致しない理由は「見栄」と「惰性」? [notice][spelling][spelling_pronunciation_gap][etymological_respelling][link]

 先日,「英語の発音と綴字の乖離」の問題について,DMM英会話ブログさんにインタビューしていただき,記事にしてもらいました.昨日その記事がアップロードされたので,今日はそれを紹介がてら,関連する hellog 記事へのリンクを張っておきます.記事のタイトルは,ずばり「圧倒的腹落ち感!英語の発音と綴りが一致しない理由を専門家に聞きに行ったら,犯人は中世から近代にかけての「見栄」と「惰性」だった。」です.こちらからどうぞ.
 最大限に分かりやすい解説を目指し,話しをとことんまで簡略化しました.簡略化するあまり,細かな点では不正確,あるいは言葉足らずなところもあると思いますが,多くの英語学習者の方々に関心をもたれる話題に対して,英語史の観点からどのように迫れるのか,英語史的な見方の入り口を垣間見てもらえるように,との思いからです.趣旨を汲み取ってもらえればと思います.かる〜く,ゆる〜く読んで「腹落ち感」を味わってください.
 さて,本ブログでは「英語の発音と綴字の乖離」問題について,spelling_pronunciation_gap の多くの記事で論じてきました.今回のインタビュー記事では,debt になぜ発音しない <b> があるのか,といった語源的綴字 (etymological_respelling) の話題を主として取り上げました.インタビュー中に言及のある具体的な事例との関係では,特に以下の記事をご覧ください.

 ・ debt の <b> の謎:「#116. 語源かぶれの綴り字 --- etymological respelling」 ([2009-08-21-1])
 ・ 中英語の through の綴字に見られる混乱:「#53. 後期中英語期の through の綴りは515通り」 ([2009-06-20-1])
 ・ 15世紀の through の綴字の収束:「#193. 15世紀 Chancery Standard の through の異綴りは14通り」 ([2009-11-06-1])
 ・ 発音と綴字が別々に走っていた件:「#2292. 綴字と発音はロープでつながれた2艘のボート」 ([2015-08-06-1])
 ・ 不規則性・不合理性を保つことに意味がある!?:「#1482. なぜ go の過去形が went になるか (2)」 ([2013-05-18-1])

 1時間ほどのインタビューで上手に話し尽くせるようなテーマではありませんでしたが,読者のみなさんがこの問題に,また英語史という分野に関心を抱く機会となれば,私としては目的達成です.

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2017-04-21 Fri

#2916. 連載第4回「イギリス英語の autumn とアメリカ英語の fall --- 複線的思考のすすめ」 [notice][link][ame_bre][history][calendar][z][rensai][sobokunagimon]

 4月20日付で,英語史連載企画「現代英語を英語史の視点から考える」の第4回の記事「イギリス英語の autumn とアメリカ英語の fall --- 複線的思考のすすめ」が公開されました.
 今回は,拙著『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史』の6.1節「なぜアメリカ英語では r をそり舌で発音するのか?」および6.2節「アメリカ英語はイギリス英語よりも「新しい」のか?」で扱った英語の英米差について,具体的な単語のペア autumn vs fall を取り上げて,歴史的に深く解説しました.言語を単線的思考ではなく複線的思考で見直そう,というのが主旨です.
 英語の英米差は,英語史のなかでもとりわけ人気のある話題なので,本ブログでも ame_bre の多く取り上げてきました.今回の連載記事で取り上げた内容やツールに関わる本ブログ内記事としては,以下をご参照ください.

 ・ 「#315. イギリス英語はアメリカ英語に比べて保守的か」 ([2010-03-08-1])
 ・ 「#1343. 英語の英米差を整理(主として発音と語彙)」 ([2012-12-30-1])
 ・ 「#1730. AmE-BrE 2006 Frequency Comparer」 ([2014-01-21-1])
 ・ 「#1739. AmE-BrE Diachronic Frequency Comparer」 ([2014-01-30-1])
 ・ 「#428. The Brown family of corpora の利用上の注意」 ([2010-06-29-1])
 ・ 「#964 z の文字の発音 (1)」 ([2011-12-17-1])
 ・ 「#965. z の文字の発音 (2)」 ([2011-12-18-1])
 ・ 「#2186. 研究社Webマガジンの記事「コーパスで探る英語の英米差 ―― 基礎編 ――」」 ([2015-04-22-1])

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2017-04-16 Sun

#2911. 英語史講座第1回「綴字と発音の関係を探る――なぜ doubt に <b> があるのか?」 [spelling_pronunciation_gap][notice][asacul]

 朝日カルチャーセンター新宿教室にて,この4月から6月にかけて「英語のなぜに答える」と題する英語史入門の講座を開講しています.昨日,4月15日に,第1回「綴字と発音の関係を探る――なぜ doubt に <b> があるのか?」を終えました.参考資料として紙媒体で配布したものの電子版 (PDF) を,こちらに置いておきますので,自由にご参照ください.本ブログ記事へのリンクもたくさん張っています.
 英語の綴字と発音の関係についてはいろいろと考えてきましたが,文字というものには,言語を表現する媒体としての共時的な機能と並んで,重層的な歴史を物語る通時的な機能というものが宿っているのではないか,と思っています.そして,この2つの機能は,ともに文字という媒体に否応なしに内在しているものではないかと.後者の機能は,文字にたまたまオマケとして付属しているものではなく,音声と異なり時空を超えることができるという,即ち歴史を担うことができるという文字の本質的特徴から必然的に湧き出てくる機能なのではないかと.「文字とは言語を表現する1つの媒体である」という,ごく自然に受け入れられそうな見解は,文字の半面を見ているにすぎず,反対の側面には,同じくらい豊かな通時態の世界が広がっているのではないかと.
 さて,英語史講座の第2回は5月13日に「文法の歴史をたどる――なぜ3単現に -s が付くのか?」と題して,第3回は6月10日に「語彙の多様性をひもとく――なぜ類義語が多いのか?」と題して,現代英語について歴史的観点から迫る予定です.英語史のおもしろさを,どんどん開拓していきたいと思います.

Referrer (Inside): [2017-11-30-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2017-03-23 Thu

#2887. 連載第3回「なぜ英語は母音を表記するのが苦手なのか?」 [notice][link][vowel][diphthong][consonant][alphabet][writing][grapheme][history][spelling_pronunciation_gap][grammatology][rensai][sobokunagimon]

 3月21日付で,英語史連載企画「現代英語を英語史の視点から考える」の第3回の記事「なぜ英語は母音を表記するのが苦手なのか?」が公開されました.今回は,拙著『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史』の第2章「発音と綴字に関する素朴な疑問」で取り上げた話題と関連して,特に「母音の表記の仕方」に注目し,掘り下げて考えています.現代英語の母音(音声)と母音字(綴字)の関係が複雑であることに関して,音韻論や文字史の観点から論じています.この問題の背景には,実に3千年を優に超える歴史物語があるという驚愕の事実を味わってもらえればと思います.
 以下に,第3回の記事と関連する本ブログ内の話題へのリンクを張っておきます.合わせてご参照ください.

 ・ 「#503. 現代英語の綴字は規則的か不規則的か」 ([2010-09-12-1])
 ・ 「#1024. 現代英語の綴字の不規則性あれこれ」 ([2012-02-15-1])
 ・ 「#2405. 綴字と発音の乖離 --- 英語綴字の不規則性の種類と歴史的要因の整理」 ([2015-11-27-1])
 ・ 「#1021. 英語と日本語の音素の種類と数」 ([2012-02-12-1])
 ・ 「#2515. 母音音素と母音文字素の対応表」 ([2016-03-16-1])
 ・ 「#1826. ローマ字は母音の長短を直接示すことができない」 ([2014-04-27-1])
 ・ 「#2092. アルファベットは母音を直接表わすのが苦手」 ([2015-01-18-1])
 ・ 「#1837. ローマ字とギリシア文字の字形の差異」 ([2014-05-08-1])
 ・ 「#423. アルファベットの歴史」 ([2010-06-24-1])
 ・ 「#1849. アルファベットの系統図」 ([2014-05-20-1])

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2017-02-21 Tue

#2857. 連載第2回「なぜ3単現に -s を付けるのか? ――変種という視点から」 [link][notice][3sp][3pp][conjugation][verb][inflection][variety][rensai][sobokunagimon]

 昨日2月20日に,英語史連載企画「現代英語を英語史の視点から考える」の第2回となる「なぜ3単現に -s を付けるのか? ――変種という視点から」が研究社のサイトにアップロードされました.3単現の -s に関しては,本ブログでも 3sp の各記事で書きためてきましたが,今回のものは「素朴な疑問」に答えるという趣旨でまとめたダイジェストとなっています.どうぞご覧ください.
 連載記事のなかでは触れませんでしたが,3単現の -s の問題に歴史的に迫るには,(3人称)複数現在に付く語尾,つまり「複現」の屈折の問題も平行的に考える必要があります.その趣旨から,本ブログでは「複現」についても 3pp というカテゴリーのもとで様々に論じてきました.合わせてご参照ください.
 また,今回の連載記事でも,拙著『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史』でも,詳しく取り上げませんでしたが,本来 -th をもっていた3単現語尾が初期近代英語期にかけて -s に置き換えられた経緯に関する問題があります.この問題も,英語史上,議論百出の興味深い問題です.議論を覗いてみたい方は,「#1855. アメリカ英語で先に進んでいた3単現の -th → -s」 ([2014-05-26-1]),「#1856. 動詞の直説法現在形語尾 -eth は17世紀前半には -s と発音されていた」 ([2014-05-27-1]),「#1857. 3単現の -th → -s の変化の原動力」 ([2014-05-28-1]),「#2141. 3単現の -th → -s の変化の概要」 ([2015-03-08-1]),「#2156. C16b--C17a の3単現の -th → -s の変化」 ([2015-03-23-1]) などをご覧ください.

Referrer (Inside): [2019-05-22-1] [2019-01-22-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2017-01-21 Sat

#2826. 連載記事「現代英語を英語史の視点から考える」を始めました [link][notice][diachrony][rensai][sobokunagimon]

 昨日1月20日付けで,「現代英語を英語史の視点から考える」と題する連載記事を開始しました.昨年,研究社より出版された拙著『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史』の関連企画としての連載寄稿です.拙著との連係を図りつつ,内容についての補足や応用的な話題を提供してゆく予定です.月に一度のペースとなりますが,そちらも本ブログとともによろしくお願いします.
 さて,初回の話題は,「ことばを通時的にみる 」とは?」 です.拙著の2.1.3 「共時的な説明と通時的な説明」で取り上げた問題を,詳しく,分かりやすく掘り下げました.具体例として,3.2節で扱った「なぜ *foots, *childs ではなく feet, children なのか?」という「不規則複数形」の事例を挙げています.共時的ではなく通時的な視点から言語を眺めてみると,これだけ見方が変わるのだ,ということを改めて主張しています.
 通時態 (diachrony) と共時態 (synchrony) については,本ブログでもいろいろと考えてきましたが,今回の記事にとりわけ関連する点についてはこちらの記事群をご一読ください.
 関連して,「#2764. 拙著『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史』が出版されました」 ([2016-11-20-1]) や「#2806. 『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史』の関連企画」 ([2017-01-01-1]) の記事もご参照を.

Referrer (Inside): [2019-05-22-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

Powered by WinChalow1.0rc4 based on chalow