ヨーロッパ史の入門として優れた著書.岩波ジュニア新書にて2巻ものとして執筆されているが,各々を独立して読むこともできる.今回注目するのはその第1巻で,太古の印欧語族の時代からフランス革命前夜までが概説される.限られた紙幅のなかで,ヨーロッパ史の古代,中世,初期近代がここまで要領よくまとめられるものかと驚嘆する.大事なことしか書かれていない,という読後感だ.
以下,本書の目次を挙げておく.英語史の学びのお供にどうぞ.
まえがき --- ヨーロッパとは何だろうか
第1章 ヨーロッパの誕生 --- 古代ギリシャ・ローマの遺産(古代)
自然と地理
人種と民族
印欧語族とヨーロッパ諸言語
アルファベットの発明
ギリシャの位相
ローマ帝国とヨーロッパ
バルバロイについて
キリスト教の誕生と普及
古代末期の司教と聖人の役割
第2章 ロマネスク世界とヨーロッパの確立 --- 中世前半
原型としてのフランク王国
アンビバレントな「他者」としてのイスラーム教徒
フェーデの時代と「平和」の工夫
「キリスト教世界」の形成
辺境の役割
紀元一〇〇〇年の飛躍とロマネスク世界
ビザンツ帝国はヨーロッパか
十字軍とは何だったのか
封建制と領主制
第3章 統合と集中へ --- 後期中世の教会・都市・王国(中世後半)
学問の発展と俗語使用
騎士と騎士道
盛期中世から後期中世の文化
正統と異端
ユダヤ教徒キリスト教
都市のヨーロッパと商業発展
教皇・皇帝,国王・諸侯
第4章 近代への胎動 --- 地理上の「発見」とルネサンス・宗教改革(15~17世紀)
中世末期の光と影
スペイン・ポルトガルの海外進出と価格革命
カトリック布教の氏名
ルネサンス文化の輝き
プロテスタンティズムの登場
国民国家形成の努力と宗教戦争
印刷術の衝撃
女性受難の時代
宗派体制化と社会的規律化
争い合うヨーロッパ諸国
絶対主義と海外植民地
科学革命と自然法
バロックと古典主義
文献案内
あとがき
ヨーロッパ史年表/事項・人名索引
・ 池上 俊一 『ヨーロッパ史入門 原形から近代への胎動』 岩波書店〈岩波ジュニア新書〉,2021年.
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