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1月23日,白水社の月刊誌『ふらんす』2025年2月号が刊行されました.今年度,同誌で連載記事「英語史で眺めるフランス語」を寄稿していますが,今回は第11回「近代のフランス借用語」です.
1. 近代にフランス単語が借用された背景
フランス語からの借用は中英語期以降も継続的に行われ,特に17--18世紀にはフランス語がヨーロッパの知的共通語としての地位を確立した.この時期,イングランドではフランス借用語への反感も一部で示されたものの,受け入れの大きな阻害要因とはならなかった.
2. フランス語らしさをとどめる近代の借用語
近代の借用語は原語の形をほぼ保持したまま定着し,多くは貴族的・知的な印象を持つ単語群だった.また,借用時期の違いは単語の強勢パターンにも反映され,中世以前は第1音節,近代以降はフランス語本来の位置に強勢が置かれる傾向があった.
3. ロマンス諸語からの借用の窓口としてのフランス語
フランス語は直接の借用元としてだけでなく,イタリア語やスペイン語など他のロマンス諸語からの語彙を英語に導入する窓口としても機能した.ただし,ロマンス諸語は語形が似ているため,借用語の由来を特定することが難しい場合もある.近代英語期のフランス語借用は,18世紀以降,特に料理やファッション,文化・芸術分野で顕著となり,これらの借用語は既存の英語の語彙に新たなニュアンスを加えた.
4. 20世紀以降のフランス借用語
20世紀以降も garage や montage など多くの語が借用され続けており,21世紀に入ってからも parkour のような新しい借用語が登場している.約千年にわたるフランス語と英語の語彙的な関係は,今後も継続していくと予想される.
さらに詳しくは,直接『ふらんす』2月号を手に取ってお読みいただければと思います.過去10回の連載記事は hellog 記事群 furansu_rensai で紹介してきましたので,そちらもご参照ください.
これまで11回にわたって,千年以上にわたる英語の仏語との言語接触の歴史を眺めてきました.次号はいよいよ最終回となります.お楽しみに!
・ 堀田 隆一 「英語史で眺めるフランス語 第11回 近代のフランス借用語」『ふらんす』2025年2月号,白水社,2025年1月23日.52--53頁.
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