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2月20日,白水社の月刊誌『ふらんす』2025年3月号が刊行されました.今年度,毎月,同誌で連載記事「英語史で眺めるフランス語」を寄稿してきましたが,今回が最終回となります.過去号ではフランス語から英語への影響に注目してきましたが,最後は英語からフランス語への影響という逆流現象に光を当てて締めたいと思います.タイトルは「フランス語に入った英単語」です.以下に各節の概要を示します.
1. 英語からフランス語への語彙借用
英語からフランス語への語彙の流入は,18世紀以降に顕著になってきます.当時の社会的・文化的背景と照らし合わせて,語彙借用を見ていきましょう.政治・経済・スポーツ・技術といった分野の単語が英語からフランス語へ借用され,定着しました.
2. 18世紀のイギリスへの関心
フランスでは18世紀にイギリスの政治・商業・運輸・生活様式に対する関心が高まりました.その影響で bill, committee, jockey などの英単語がフランス語に取り入れられました.budget という借用語にとりわけ注目します.
3. 19世紀の英語からの影響
19世紀になると,フランス語は英語からの影響に警戒感を示す一方で,政治・商業・ジャーナリズム・スポーツの分野の語彙を英語から多く借用し,日常に定着させました.例えば interview や ticket といった単語がフランス語に流入しています.
4. 21世紀,腐れ縁は続いていくのか?
英仏語の関係は千年以上にわたる腐れ縁です.グローバル化が進む現代では,英語の影響がさらに拡大し,インターネットやソーシャルメディアを通じてフランス語に浸透し続けています.今後も英語からの語彙借用は継続していくのではないでしょうか.
最後に触れたように,英仏語の言語交流,とりわけ語彙交流は今後も続いていく可能性が高いと考えています.そこには苦い歴史もありましたが,良くも悪くも強い靱帯で結ばれた仲間です.両言語の今後の関係にもアンテナを張っていきたいと思います.連載記事をお読みいただいた皆さんも,ぜひご一緒に見守っていきましょう!
過去号についての hellog 記事は furansu_rensai にまとまっていますので,1年間にわたる英語とフランス語の歴史の旅を,ぜひ振り返っていただければ.1年間のお付き合い,ありがとうございました.
・ 堀田 隆一 「英語史で眺めるフランス語 第12回 近代のフランス借用語」『ふらんす』2025年3月号,白水社,2025年2月20日.52--53頁.
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