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japanese - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2024-10-08 11:22

2010-03-28 Sun

#335. 日本語語彙の三層構造 [lexicology][japanese][kanji][loan_word][lexical_stratification]

 昨日の記事[2010-03-27-1]で,類義語の豊富さに関しては英語は他言語と比べても異例だと述べた.しかし,もっと異例なことに,英語と日本語はこの点でよく似ているのである.英語では,アングロサクソン語(本来語),フランス語,ラテン・ギリシャ語の三層構造をなしているが,日本語では,和語(本来語),漢語,西洋語の三層構造をなしている.日本語の例(思いつき)を見てみよう.

和語漢語西洋語
おおうなばら(大海原)大洋オーシャン
おかね(お金)金銭マネー
およぎ(泳ぎ)水泳スイミング
おんなのこ(女の子)女子ギャル
かみのけ(髪の毛)毛髪ヘアー
かわや(厠)便所トイレ
くすりや(薬屋)薬局ドラッグストア
くるま(車)乗用車カー
さくらんぼ桜桃チェリー
たたかい(戦い)戦闘バトル
たまご(卵)鶏卵エッグ
ひとつ(一つ)ワン
ひるめし(昼飯)昼食ランチ
やど(宿)旅館ホテル


 英語の下層を構成する本来語と同様,和語はもっとも庶民的である.暖かく懐かしい響きがあり,感情に直接うったえかける力がある.「一,二,三」と数えるよりも,「ひとつ,ふたつ,みっつ」のほうが暖かく優しい.この階層の語彙は日常会話に頻出するが,学術論文にはあまり現れない類の語彙である.
 学術論文などに代表される文語を主なフィールドとするのが,中層の漢語である.いや,学術論文ほどお堅くなくても日本語のあらゆる文章において漢語がなければ大変に不便である.本記事のここまでの文章だけでも,表中の語を除き,34種類の漢語がのべ50回も使用されている.漢語は日常会話でも頻度は低くない.この点,英語の中層を担うフランス語起源の語彙と機能がよく似ている.
 上層を構成する西洋語は,主に英語由来のものが多い.英語の上層を担当するラテン・ギリシャ語由来の語彙の register のレベルが文字通りに上層であるのに対して,日本語の上層の西洋語は必ずしもお高い響きはない.むしろ,横文字は軽い響きがあると言われることすらある.この点で,上層に関しては英語と日本語の役割は異なっているようである.ただし,成長著しい科学や情報の分野では,英語の専門用語に対する日本語の訳語を作るのが追いつかず,そのまま英語を採用することも広く行われている.この場合,西洋語は専門性の響きを帯びるため,上層と呼ぶにふさわしいとも言える.
 日本語では,各階層に対応する文字種がおよそ決まっているのが特徴である.和語はひらがな,あるいは漢字かな交じりで,漢語は漢字で,西洋語はカタカナ(あるいは最近はアルファベットそのままのケースもある)でというように,視覚的にも明確に区別される.
 英語と日本語で各階層の機能に若干の差があることは認めるにせよ,ともにこれだけ明確な語彙の三層構造をもっているということは,稀なる偶然である.いや,もしかすると偶然以上のものがあるのかもしれない.歴史的に大陸からの影響を多く受けてきたのは,島国であるからこその特徴といえるかもしれない.

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2010-03-11 Thu

#318. 地下に潜った英語と潜らなかった日本語 [japanese][me][sociolinguistics][reestablishment_of_english]

 [2009-09-05-1]の記事で,英語の復権について述べた.1066年のノルマン人の征服 ( Norman Conquest ) 以降,1362年辺りにいたるまで,イングランドでは公の場で英語が用いられることはほぼなかった.確かに初期中英語期と呼ばれるこの時期にも英語で書かれた文書は存在するが,あくまで非公的文書である.文学的にもあまり洗練されていないと評価されることが多い.公用語フランス語のくびきのもとで,庶民の言語である英語はまさに地下に潜っていたのである.
 さて,日本語史をみてみると,平安初期に一見すると英語と似通った事情があった.日本語で書かれた文学は,『万葉集』の作られたと考えられる760年頃から,勅撰の『古今集』の作られた905年までのあいだに空白がある.この時代は漢文が全盛の時代で,男性貴族が『凌雲集』『経国集』『文華秀麗集』などの漢詩集を著し,漢文の秀才振りを示した.公の書の最たるものである『日本書紀』『日本後記』『続日本後記』『文徳実録』『三大実録』などの国史も,すべて漢文で書かれていた.書き言葉でみる限り,日本全体があたかも漢語に乗っ取られたかのような様相を呈していたのである.土着の言語が公の書き言葉としてほとんど現れてこない点で,時代こそ異なれ,英語と日本語の状況は似ているように見える.
 しかし,大きく異なる点がある.日本では,ある意味でもっとも公的な意味合いを帯びた文章が,漢語文ではなく,紛れもない日本語文として記されていたのである.天皇の祝詞(のりと)である.祝詞は天皇によって口頭で読み上げられる大和言葉である.いくら貴族が競って漢文を書こうが,日本の公世界の頂点たる天皇の口から発せられた言葉は日本語そのものであった.祝詞の文章は宣命体という形式で書かれており,そこでは漢字が中心であることは間違いないが,助詞・助動詞の類が万葉仮名で示され,語順も日本語そのものである.漢字文ではあるが,紛れもない日本語の文章である.日本では,天皇をはじめ貴族の話し言葉が日本語だったことは疑いをいれない.それに対して,中世初期のイギリスでは,王侯貴族の日常的な話し言葉は英語ではなくフランス語だった.
 当時の両国で,社会的地位の高い言語(日本では漢語,イギリスではフランス語)を上層言語,低い言語(日本では日本語,イギリスではフランス語)を下層言語と呼ぶことにすると,当時の状況は以下の表のようにまとめられる.

 日本イギリス
庶民の話し言葉下層下層
公の書き言葉上層上層
王侯貴族の話し言葉下層上層


 日本とイギリスの状況が一見共通しているように見えるのは上二段のゆえである.だが,最下段の「王侯貴族の話し言葉」では対照をなす.この違いを一言でいえば,当時のイギリスの言語状況は王朝の征服の結果として生じたものだが,日本の言語状況は征服によるものではなく,あくまで中国からの甚大な文化的な影響によるものだったということだろう.日本語は,英語と同じ意味で「地下に潜った」わけではない.

 ・ 渡部 昇一 『アングロサクソンと日本人』 新潮社〈新潮選書〉,1987年.72--75頁.
 ・ 山口 仲美 『日本語の歴史』 岩波書店〈岩波新書〉,2006年. 54, 71--72頁.

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2010-02-17 Wed

#296. 外来宗教が英語と日本語に与えた言語的影響 [japanese][hybrid][loan_word][latin][christianity][alphabet][religion][buddhism][hebrew]

 [2009-05-30-1]の記事で,6世紀にブリテン島にもたらされたキリスト教が,アングロサクソン人と英語に多大な影響を与えたことを見た.キリスト教は,布教の媒体であったラテン語とともに英語の語彙に深く入り込んだだけでなく,英語に alphabet という文字体系をもたらしもした.6世紀のキリスト教の伝来は,英語文化史的にも最重要の事件だったとみてよい.
 興味深いことに,同じ頃,ユーラシア大陸の反対側でも似たような出来事が起こっていた.6世紀半ば,大陸から日本へ仏教という外来宗教がもたらされた.仏教文化を伝える媒体は漢語(漢字)だった.日本語は,漢字という文字体系を受け入れ,仏教関連語彙として「法師(ほふし)」「香(かう)」「餓鬼(がき)」「布施(ふせ)」「檀越(だにをち)」などを受容した.『万葉集』には漢語は上記のものなど少数しか見られないが,和歌が主に大和言葉を使って歌われるものであることを考えれば,実際にはより多くの漢語が奈良時代までに日本語に入っていたと考えられる.和語接辞と漢語基体を混在させた「を(男)餓鬼」「め(女)餓鬼」などの混種語 ( hybrid ) がみられることからも,相当程度に漢語が日本語語彙に組み込まれていたことが想像される.
 丁寧に比較検討すれば,英語と日本語とでは文字や語彙の受容の仕方の詳細は異なっているだろう.しかし,大陸の宗教とそれに付随する文字文化を受け入れ,純度の高いネイティブな語彙体系に外来要素を持ち込み始めたのが,両言語においてほぼ同時期であることは注目に値する.その後,両言語の歴史で外来語が次々と受け入れられてゆくという共通点を考え合わせると,ますます比較する価値がありそうだ.
 また,上に挙げた「餓鬼(がき)」「布施(ふせ)」「檀越(だにをち)」などの仏教用語が究極的には梵語 ( Sanskrit ) という印欧語族の言語にさかのぼるのもおもしろい.英語に借用されたキリスト教用語もラテン語 ( Latin ) やギリシャ語 ( Greek ) という印欧語族の言語の語彙であるから,根っことしては互いに近いことになる.(もっとも,究極的にはキリスト教用語の多くは非印欧語であるヘブライ語 ( Hebrew ) にさかのぼる).偶然の符合ではあるが,英語と日本語における外来宗教の言語的影響を比べてみるといろいろと発見がありそうだ.

 ・山口 仲美 『日本語の歴史』 岩波書店〈岩波新書〉,2006年. 40--42頁.

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2009-10-11 Sun

#167. 世界の言語の T/V distinction [pragmatics][personal_pronoun][japanese][typology][deixis][t/v_distinction]

 日本語に呼びかけや指示のために用いる適切な二人称単数代名詞が欠けていることは,多くの日本語話者が,意識するにせよしないにせよ,日常的に体験していることである.「あなた」ではよそよそしく,「君」ではきざっぽく,「おまえ」では角が立つ,「そちら」や「お宅」もどうもふさわしくない.日本語話者は,日々,判断の難しいケースに遭遇し,何とか乗り切るということを繰り返している.多くの場合にとる戦略は,二人称代単数名詞を使わないですませる,という逃げの手である.その点,現代英語は,you 一語でことが足りる.なので,この問題に関する限り,日本語母語話者にとって英語は楽だな,便利だなと感じる.
 だが,英語も中英語にさかのぼると,二種類の二人称単数代名詞があった.自分より下位・同位の者に対して用いる thou と,自分よりも上位の者に対して用いる you である.もっとさかのぼって古英語では,両者の使い分けは単純に数の問題であり,前者は二人称単数(あなた一人),後者は二人称複数(あなたがた複数)を指した.しかし,中英語になって,二人称代名詞には話し手と聞き手の社会的直示性 ( social deixis ) の情報が埋め込まれることになった.その後,近代英語では thou がほぼなくなってしまい,社会的直示性の対立も解消され,現代英語に至っている.
 中英語の時代にあった thouyou に相当する社会的直示性の対立は,現代の多くのヨーロッパ語に見られ,フランス語の tu / vous の例から,一般に T/V distinction と呼ばれる.T が下位,V が上位の二人称代名詞を指す.
 さて,二人称表現における日本語と現代英語の差は,世界の言語の類型から考えても,確かに大きいようである.Helmbrecht によると,世界の言語は二人称単数代名詞の社会的直示性の観点から大きく4タイプに分けられる.

 (1) 現代英語のような T/V distinction のない言語
 (2) フランス語や中英語のような T/V distinction の二分法をもつ言語
 (3) ヒンディー語のような T と V の間に複数の段階が認められる多分法をもつ言語
 (4) 日本語のような,二人称単数代名詞の使用をできるだけ避けようとする言語

 (1)?(3) は social deixis の区別が粗いか細かいかという程度の問題だが,(4) は (3) のように多分法のリソースをもっているにもかかわらず,その区別を利用しないようにするという超越的なカテゴリーである.類型論的にみても,現代英語と日本語の差は相当に大きいといえる.

 ・ Huang, Yan. Pragmatics. Oxford: OUP, 2007. 166--68.
 ・ Helmbrecht, Johannes. "Politeness Distinctions in Second Person Pronouns." Deictic Conceptualisation of Space, Time and Person. Ed. Friedrich Lenz. 2003. 185--221.

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2009-09-26 Sat

#152. 現代英語の5特徴に対する異論 [pde_characteristic][japanese]

 昨日の記事[2009-09-25-1]では,広く受け入れられている現代英語の5特徴を挙げた.

 (1) Cosmopolitan Vocabulary
 (2) Inflectional Simplicity
 (3) Natural Gender
 (4) Idiomatic Expressions
 (5) Spelling-Pronunciation Gap

 見事にえり抜かれた五つの特徴だと評価したばかりだが,あえて異論を唱えてみたい.この現代英語の5特徴は,いったい何と比較して浮かび上がってくる特徴なのだろうか.特徴とは,比較によってしか得られない.とすると,比較対象があるはずである.
 その比較対象は昔の英語か大陸のヨーロッパ諸語ではないかと推測される.例として,古英語と現代標準ドイツ語を想定してみよう.
 (1) いずれの言語も,現代英語に比較すれば,その語彙は借用語にそれほど依存していない.(2) いずれの言語も,現代英語より屈折がずっと発達している.(3) いずれの言語も,文法性 ( Grammatical Gender ) を有している.(4) いずれの言語も,程度の問題ではあるが,現代英語に比較して慣用表現が少ないように思われる.(ただ,この点は何らかの方法で比較計測する必要はあるだろう.)(5) いずれの言語も,現代英語に比べれば,ずっと綴字と発音の関係は密接であり,安定している.
 このように,仮に比較対象を古英語やドイツ語にとると,確かに現代英語の5特徴が浮き彫りになる.
 だが,現代英語や英語史を日本語母語話者という立場で学んでいる者にとっては,この現代英語の5特徴はあまりに印欧語中心の発想に基づいてはいまいか,という疑念が生じる.この5特徴は,現代日本語を比較対象にとると,たちどころに無特徴になってしまう.
 (1) 日本語は英語に負けず劣らず借用語によって成り立っている.中国語に由来する漢字や漢熟語がその最たる例だが,現代日本語では,350もの言語から語彙を借用している英語から多くの語彙を借用しているので,結果的に現代英語と同じくらい Cosmopolitan Vocabulary を有しているということもできる.
 (2) 日本語にはそもそも印欧語でいう「屈折」に相当するものはない.動詞や形容詞などの活用を「屈折」とみなすのであれば確かにそれは存在するが,例えば古英語の屈折と比べてみると,その複雑さはしれている.
 (3) 日本語には過去にも現在にも文法性 ( Grammatical Gender ) は存在しない.なので,Natural Gender が現代英語の特徴だといったところで,それは日本語にも当てはまるので,強い主張とはなりえない.
 (4) 日本語母語話者の印象としては,現代英語に比べて日本語の慣用表現が貧弱だとは,とうてい思えない.もっとも,この点については,ある言語の慣用表現の豊富さを計るにはどうすればよいのかを考える必要はある.
 (5) 綴字と発音の乖離については,日本語の漢字を思い浮かべれば,英語の不規則性などかわいいものである.例えば,「日本」「初日」「他日」「朝日」「旗日」「春日」において「日」はすべて異なる音に対応する.これを考えれば,psychology の <p> をなぜ読まないかなどという問題は,かわいすぎて問題にならない.
 以上,Baugh and Cable などで喧伝されている現代英語の5特徴は,あくまで印欧語の視点から述べたものであって,日本語など世界の諸言語の視点から述べれば「特徴」でも何でもないということになる可能性があることを示した.

Referrer (Inside): [2010-01-20-1] [2009-09-27-1]

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2009-09-16 Wed

#142. 英語に借用された日本語の分布 [japanese][loan_word][loan_translation][waseieigo]

 英語に借用された日本語の数は意外と多いことは,[2009-08-31-1], [2009-06-12-1]で少しだけ触れた.英語に入った日本語だけを収集した辞書があり,眺めているとおもしろい.特に意味が歪んで英語化しているものなどは,どうしてそうなったのかと首をかしげざるを得ない.
 この辞書には,全体の語数が明記されていなかったので,手作業で数えてみた.見出し行にある異綴りや異表現は抜き,全部で820語が確認された.アルファベット順に数えたものをグラフ化してみた.(数値データはこのページのHTMLソースを参照.)

Japanese Loanwords by Initial Letter

 このなかで,"L" で始まる単語が気になった.もともとは日本語の単語だったのだから,"L" で始まるとはどういうことか.調べてみると,"L" で始まる3例のうちの一つは,love hotel だった.なるほど,和製英語が英語へ逆輸入されたケースである.
 他の2例は linked verse 「連歌」と low profile 「低姿勢の,控えめな」だが,これらはそれぞれ日本語表現の翻訳借用 ( loan translation or calque ) であって,普通にいうところの借用とは異なる.だが,日本語の表現の発想が英語に借用されたというのは,まさに言語接触のたまものである.

 ・ Toshie M. Evans, ed. A Dictionary of Japanese Loanwords. Westport, Conn.: Greenwood, 1997.

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2009-08-31 Mon

#126. 7言語による英語への影響の比較 [contact][flemish][dutch][japanese]

 Gelderen (102) に,Celtic, Latin, Scandinavian, French, Dutch/Flemish の5言語が英語に与えた影響の比較表がある.これに,もう一つ Greek を加えて,6言語による影響の比較表を掲げる.

 vocabularymorphologysyntax
Celticyesnopossibly
Latinyessomewhatno
Scandinavianyesyesyes
Frenchvery muchyesminimal
Dutch/Flemishminimalnono
Greekyessomewhatno


 [2009-08-16-1]の記事でフランス語と古ノルド語による影響を様々な視点から比較したのとは異なり,分野ごとへの影響を大雑把に示した表にすぎないが,いくつかの興味深いポイントが見えてくる.一般の英語史概説ではあまり扱われない項目,あるいは問題意識を呼び覚ましてくれる項目に目が止まった.

 ・ケルト語の統語への影響の "possibly" が気になる
 ・ラテン語の統語への影響が "no" というのは本当か
 ・オランダ語・フラマン語による英語への影響を,ラテン語やフランス語などと同列に比較するという視点そのものが斬新

 オランダ語・フラマン語については,従来,英語への影響という視点がフィーチャーされることはあまりなかった.確かに英語史概説書で語彙の借用の話題として軽く取り上げられることはあるが,あくまでマイナーな話題としてである.著者の Gelderen がオランダ人であり,多分にひいき目はあるだろうが,こうしたニッチな領域に関心が向けられるというのは,英語史の視点を豊かにしてくれるという点で歓迎すべきである.
 上の文章を書いているうちに,ぜひとも日本語を含めたくなった.

 vocabularymorphologysyntax
Celticyesnopossibly
Latinyessomewhatno
Scandinavianyesyesyes
Frenchvery muchyesminimal
Dutch/Flemishminimalnono
Greekyessomewhatno
Japanesesomewhatnono


 [2009-06-12-1]の記事で,「過去50年で,英語への借用語の約8%が日本語から」と紹介したので,"minimal" でなく "somewhat" としてみたが,この判断はいかがだろうか.

 ・Gelderen, Elly van. A History of the English Language. Amsterdam, John Benjamins, 2006.

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