昨年出版された安藤聡(著)『英文学者がつぶやく英語と英国文化をめぐる無駄話』(平凡社)を読了した.英語(文化)史を中心とした教養のエッセイ集である.
本書の2つめのエッセイの題が「最も長い英単語」である (24--31) .本ブログでも関連する記事を3本書いてきた.
・ 「#63. 塵肺症は英語で最も重い病気?」 ([2009-06-30-1]) より pneumonoultramicroscopicsilicovolcanoconiosis
・ 「#2797. floccinaucinihilipilification」 ([2016-12-23-1])
・ 「#391. antidisestablishmentarianism 「反国教会廃止主義」」 ([2010-05-23-1])
この3つの語は当該のエッセイでも触れられているが,もう1つ私の知らなかった長大な語が挙げられていたので,オォっとなった.supercalifragilisticexpialidocious という34文字からなる無意味な語である.OED によると "A nonsense word, originally used esp. by children, and typically expressing excited approbation: fantastic, fabulous." と説明がある.1931年が初出だが,1964年のディズニー映画『メリー・ポピンズ』のなかで呪文として用いられ有名になった語ということだ.
同エッセイでは,特別部門での最長英単語も紹介されている.例えば固有名詞部門としてウェイルズの地名 Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwllllantysiliogogogoch は58文字からなる.2つの村が合併して両方の名前が接続されたために,このようなことになったらしい.読み方は不明で,そもそも英単語なのかというと怪しいところがあり,アレではある.
同じ文字を繰り返さない pangram 的な最長英単語の部門としては,dermatoglyphics 「掌紋学」と uncopyrightable 「版権を取ることが出来ない」がそれぞれ15文字で最長語候補となる.pangram については「#1007. Veldt jynx grimps waqf zho buck.」 ([2012-01-29-1]) を参照.
Shakespeare が用いた最長単語の部門としては,『恋の骨折り損』より honorificabilitudinitatibus 「名誉を受けるに値する」が挙げられている.
最後に,語頭と語末の間に1マイルもの距離がある smiles が最長英単語であるというのは古典的なジョークである.
英語好きにぜひお勧めしたいエッセイ集.
・ 安藤 聡 『英文学者がつぶやく英語と英国文化をめぐる無駄話』 平凡社,2022年.
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