#529. 現代非標準変種の2人称複数代名詞[personal_pronoun][ame][dialect][t/v_distinction]


 人称代名詞体系の変遷については,古英語 ([2009-10-24-1]),中英語 (Chaucer) ([2009-10-25-1]),現代英語 ([2009-11-09-1]) で屈折表を掲げてきた.2人称代名詞に焦点を当てると,古英語では þū 「あなた」(単数)と ȝē 「あなたがた」(複数)が形態上,完全に区別されていた.中英語でも同様に thou / ye と単複の区別がつけられていたが,その上に [2009-10-11-1], [2009-10-29-1]で触れたような T/V distinction (親称と敬称)の区別も覆いかぶさり,語用論的に複雑な使い分けの様相を呈した.しかし,近代英語以降は数の区別も語用論上の区別も一気に解消され,標準語では you が唯一の2人称代名詞となった.便利なのか不便なのかよく分からないが,現在では単複の区別も敬称・親称の区別もつけない you 一辺倒である.
 ただ,これは標準英語に限った話しである.非標準変種を考慮に入れれば,現代英語でも規則的に単複の区別をつけるような代名詞体系が発達している.[2010-03-05-1], [2010-03-06-1]で言及したように,単数の you に対して複数の諸形態が頻用される頻用される変種がある.以下のような形態が確認されている.

 ・ yous(e): many parts of North America (esp. New York City and Boston), Ireland, parts of Britain (e.g. Liverpool, Glasgow), Australia, New Zealand
 ・ you-uns: upper Southern USA (western Pennsylvania and the Appalachians)
 ・ you-all, y'all: Southern US
 ・ you guys, youse guys: in a spoken variety (newer innovations than the other dialectal forms)
 ・ you folks, you people: in a more formal variety

 American Heritage Dictionary of the English Dictionary のコラムがこの辺の事情をコンパクトにまとめてくれている.

 ・ Crystal, David. The Cambridge Encyclopedia of the English Language. 2nd ed. Cambridge: CUP, 2003. 210.
 ・ Svartvik, Jan and Geoffrey Leech. English: One Tongue, Many Voices. Basingstoke: Palgrave Macmillan, 2006. 168--69.
 ・ 寺澤 盾 『英語の歴史』 中央公論新社〈中公新書〉,2008年. 125頁.

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