昨日の記事 ([2025-08-06-1]) では,日本語における接続詞 (conjunction) について統語論的,形式的な観点から見たが,今回は同じ『日本語文法大辞典』 (387) に依拠して,意味論的な観点から考えてみよう.
意味上から見た接続詞の機能,つまり先行表現の内容をどのようなものとして受けて,後行する表現にどのように関係づけながら接続するかについては,種々の説が出されているが,次のように類別するのが穏当であろう.
まず,前件を条件としその帰結として後件が成立すると関係づける「条件接続」と,条件と帰結の関係がなく,単に前件に加えて後件を接続する「列叙接続」とに大別する.「条件接続」は,前件の論理的必然としての帰結,つまり前件の事柄の自然な脈略に沿うありようが後件であることを示す「順態接続」(順接)と,前件の論理的必然としての帰結に矛盾して,つまり自然な脈略のありように逆らって後件が成立することを表す「逆態接続」(逆接)と,前件の成立したことが前提となって後件の成立することを表す「前提接続」とに分けられる.そして,これらのそれぞれは,前件の事態を既に成立したとして受けることを表す「確定条件」と,前件の事態が仮に成立したとして後件に続ける「仮定条件」とに分けられる.「列叙接続」には,二つ以上の事柄を,空間的に並べて述べる「並列的接続」と時間的順序にならべれ述べる「累加」,二つ以上の事柄の中から一つを選択することを示す「選択」,先行する事柄を別のことばで述べる「同列」,先行する事柄の理由などを述べる「解説」,先行する事柄とは視点を変えて述べることを示す「転換」がある.これらをまとめて示し,語例と文例とあげると,次のようである.
〔A〕条件接続
(1)順態接続(順接)
(ア)確定条件 だから,それで,従って,ゆえに
(イ)仮定条件 それなら,さらば,だとしたら
(2)逆態接続(逆接)
(ア)確定条件 しかし,けれども,だが,しかるに,されど,されども,ところが
(イ)仮定条件 だとしても
(3)前提接続
(ア)確定条件 そこで,すると
(イ)仮定条件 だとすると
〔B〕列叙接続
(1)順態接続(順接) 従って,ゆえに
(2)逆態接続(逆接) ところが,でも,そのくせ,にもかかわらず
(3)前提接続 と,で
(4)並列 及び,並びに,また,かつ
(5)累加 そして,ついで,それから,更に
(6)選択 それとも,あるいは,もしくは,又は
(7)同列 つまり,すなわち,例えば,要するに,要は
(8)解説 なぜなら,というのは,但し,もっとも
(9)転換 さて,ところで,では
以上は日本語の接続詞の意味論的分類になるが,これをそのまま英語の接続詞に応用するとどのようになるだろうか.効果的な分類につながるのか,あるいは事情が異なるのか.やや異なるようにも思われるが,参考にはなるだろう.
・ 山口 明穂・秋本 守英(編) 『日本語文法大辞典』 明治書院,2001年.
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