hellog〜英語史ブログ

#894. shortening の分類 (2)[word_formation][graphemics][punctuation][spelling_pronunciation][shortening]

2011-10-08

 昨日の記事「#893. shortening の分類 (1)」 ([2011-10-07-1]) に引き続いての話題.Heller and Macris は,音韻上の短化と書記上の短化の相互関係について論じている.例えば,absent without official leaveAWOL /ˈeɪwɑl/ へと短化する過程には,音韻・書記の観点から次の4段階が認められる.

 1. 書記上の短化( A.W.O.L; 発音は absent without official leave のまま)
 2. 音韻上の短化(アルファベット読みで /ˈeɪ ˈdʌbljuː ˈoʊ ˈɛl/ )
 3. 書記上の短化(ピリオドが落ち,AWOL へ)
 4. 音韻上の短化(語として /ˈeɪwɑl/ )

 音韻と書記はこのように循環的に作用し,短化が進んで行くものと考えられる.ただし,この4段階の過程は必ずしも順調に推移するとは限らない.互いの短化が反映されなかったり,過程が途中で止まるということもあり得る.Heller and Macris は,shortening の音韻と書記に関するこの問題を考慮に入れながら,昨日紹介した類型に加えて,もう1つ別次元の類型を提示している (208) .音韻上の短化が,書記上にどのように反映されているか,いないかという基準である.

 A. No mark: he is (for /hiz/)
 B. Abbreviation points (for orthographical shortenings only): C.O.D. (when still read cash on delivery)
 C. Apostrophes (usually the orthographical marks reflecting the earlier phonological shortenings): o'clock

 昨日と今日の記事で概説してきたような詳細で精密な shortening の分類は,ともすれば分類のための分類と取り違えられる恐れがあるが,共時的な形態分析のみならず通時的な英語の研究にとっても重要である.次の点を指摘しておきたい.

 (1) 論理的な分類は,分析に明確な基準を与え,観察を研ぎ澄ませてくれると同時に見落としを防いでくれる役割をもつ.
 (2) 論理的な基準に則れば,共時的変異と通時的変化のタイプが言語によって異なっているのか,共通の傾向があるのかを確かめることができる.
 (3) 英語などの個別言語に限定しても,統一基準によって,shortening の質と量が通時的にどう変化してきたのかを明らかにすることができる.その変化は音韻変化や書記変化とどのように連動しているのか,あるいは連動していないのか,という問題にも迫ることができる.

 ・ Heller, L. G. and James Macris. "A Typology of Shortening Devices." American Speech 43 (1968): 201--08.

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