来たる11月25日に公開予定の映画『グリーン・ナイト』は,中英語テキスト Sir Gawain and the Green Knight (『ガウェイン卿と緑の騎士』;sggk)の本格的な翻案作品です.その字幕監修を,岡本広毅先生(立命館大学)が担当されています.その岡本先生と来週 Voicy 生放送で対談することになっていますので,ぜひお聴きください.詳しくは「#4885. 「英語ヴァナキュラー談義(岡本広毅&堀田隆一)」のお知らせ(9月20日(火)14:50--15:50 に Voicy 生放送)」 ([2022-09-11-1]) をご参照ください.
今回は生放送に先立って,SGGK の中英語原文を少し紹介しておきたいと思います.この作品は,Chaucer などと同時代の14世紀後半のものとされる写本 British Library MS Cotton Nero A.x にのみ現存する 2530行,101スタンザからなる作者不明の韻文テキストです.いわゆるアーサー王物というジャンルの作品です.同写本には,他に Pearl, Cleanness, Patience という作品が収められています.中英語の中西部方言で書かれています.各スタンザは,頭韻を踏む12--37の長詩行の後に,5行の "bob and wheel" と呼ばれる ababa 型の短い脚韻行が続くという形式になっています.
今回は,冒頭に近い ll. 130--50 より,緑の騎士が登場する印象的なシーンを覗いてみることにしましょう.Andrew and Waldron 版からの引用です.
Now wyl I of hor seruise say yow no more,
For vch wyȝe may wel wit no wont þat þer were.
Anoþer noyse ful newe neȝed biliue,
Þat þe lude myȝt haf leue liflode to cach;
For vneþe watz þe noyce not a whyle sesed,
And þe fyrst cource in þe court kyndely serued,
Þer hales in at þe halle dor an aghlich mayster,
On þe most on þe molde on mesure hyghe;
Fro þe swyre to þe swange so sware and so þik,
And his lyndes and hys lymes so longe and so grete,
Half-etayn in erde I hope þat he were,
Bot mon most I algate mynn hym to bene,
And þat þe myriest in his muckel þat myȝt ride;
For of bak and of brest al were his bodi sturne,
Both his wombe and his wast were worthily smale,
And alle his fetures folȝande in forme, þat he hade,
Ful clene.
For wonder of his hwe men hade,
Set in his semblaunt sene;
He ferde, as freke were fade,
And oueral enker grene.
Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の本日の放送「#473. 『ガウェイン卿と緑の騎士』より緑の騎士が登場するシーンを中英語原文で読み上げます」で,この中英語原文を読み上げていますので,合わせてお聴きください.
意味を確認するために Bantock の現代韻文訳より,同じ ll. 130--50 の箇所を引用します.
I've told you enough about the tables there
For you to guess how gorgeous that feast was.
But now another new uproar quickly approached,
That stirred Aurthur's spirit so strongly he started to eat.
For, just as the joyful music was fading away
And the first of the festive dishes was duly being served,
The doors crashed open wide with a terrible din
And a hideous giant charged boldly into the hall!
His body was strong and so broad from neck to waist,
And his legs and arms and thighs so long and thick,
He might have been half a giant and half a man,
But if a man, the biggest of all on this earth
That ever rode on horse; and most handsome too;
For though his breast and back were broad and stout,
His waist was slender and his belly lithe and slim,
And all of his features followed this twofold form ---
Both lust and lean!
By his colouring the court was amazed,
The most staggering sight they had seen,
For the body of that bold knight blazed
Head to foot with flaming bright green!
日本語訳としては,池上より (p. 9) 引用します.
さて食事のもてなしの様子をこれ以上語るのはもうやめておこう,何ひとつ欠けるものがなかったことは誰でもよく分ることだから.突然,また別の新たな音楽が聞こえてきたので,これでどうやら王も食事がとれるのではないかと思われた.そのトランペットの音が途絶え,最初の料理が宮廷内にきちんと出し終えたとたん,そこへ大広間の入り口から恐ろしい形相の騎士が勢いよく乗り込んできた.背丈がこの世で最も高い男であった.首から腰までひどく角張りずんぐりとし,腰部と手足は非常に長くてがっしりしており,この男は現世の半巨人ではないかと思ったが,しかしとにかく一番大柄な人間であり,馬に乗れる者の姿かっこうとしては最も端麗な人物だと言っておこう.彼の身体では背中と胸がものすごく逞しく,腹と腰はともに程よくほっそりして,身体の他の部分もすべて同じように姿かたちの均整がよくとれ,
格好がよかった.
彼の容貌にはっきり見えた
彼の色にみなびっくり仰天した.彼は大胆な(恐ろしい妖精の)戦士のように振舞い,
全身色あざやかな緑であった.
・ Andrew, Malcolm and Ronald Waldron, eds. The Poems of the Pearl Manuscript. 3rd ed. Exeter: U of Exeter P, 2002.
・ Bantock, Gavin, trans. Sir Gawain & the Green Knight . Pearl: Two Middle-English Poems. Brimstone P, 2018.
・ 池上 忠弘(訳) 『「ガウェイン」詩人 サー・ガウェインと緑の騎士』 専修大学出版局,2009年.
昨日の記事「#4885. 「英語ヴァナキュラー談義(岡本広毅&堀田隆一)」のお知らせ(9月20日(火)14:50--15:50 に Voicy 生放送)」 ([2022-09-11-1]) に引き続き,もう1つ Voicy 生放送のご案内です.
9月21日(水)の 16:00--17:00 に,熊本学園大学の矢冨弘先生と堀田隆一とで「英語に関する素朴な疑問 千本ノック」をライヴでお届けします.事前に一般の方々から寄せられてきた英語に関する素朴な疑問に,2人(+α)が主に英語史の観点から次々と回答する,という企画です.
「正しい解答を与える」などというエラそうなことはまったく考えていません(そんなことは不可能です!).むしろ,ノックを受ける側ですから「しどろもどろながらも回答の練習をする」くらいのものに終わると思います.
ただ,企画を通じて「楽しく英語史する」雰囲気が伝わればよいなと思っています.むしろ一緒に質問への回答を考えてみませんか? 奮って生放送にご参加ください.
・ 生放送へのリンクはこちらです
・ 皆様が日々抱いている英語に関する疑問をこちらのフォームよりお寄せください(疑問が寄せられてこないと企画そのものが成り立ちませんで・・・)
・ 生放送時の投げ込み質問にもなるべく対応できればと思っています
・ 生放送の収録は後日アーカイヴとして一般公開もする予定です
回答者の1人となる矢冨弘先生は,近代英語期の歴史社会言語学ほかを専門とされており,YouTube での講義やブログを含めウェブ上でも積極的に活動されています.heldio にも1度ご出演いただいています.今年の4月7日に「#311. 矢冨弘先生との対談 グラスゴー大学話しを1つ」と題して対談しました.
今回の「千本ノック」は,khelf(慶應英語史フォーラム)主催の khelf-conference-2022 という小集会(←実質的には夏の「ゼミ合宿」)の一環として企画されているものです.9月20日,21日の両日にかけて開催される集会で,各日 Voicy の生放送が企画されています.2つの生放送企画について詳しくはこちらの特設ページをご覧ください.また,両企画は以下でもご案内していますので是非お聴きください.
khelf-conference-2022 に関係する各種セッションについては,khelf 公式ツイッターアカウント @khelf_keio でも広報しています.そちらもフォローのほどよろしくお願いいたします.
(後記 2022/09/22(Thu):上記の生放送は予定通りに終了しました.以下のアーカイヴ配信よりお聴きください.)
標記の通り,9月20日(火)14:50--15:50 に,岡本広毅先生(立命館大学)と堀田隆一による Voicy 生放送「英語ヴァナキュラー談義」が予定されています.ご都合が合いましたら,奮って生聴取のほどよろしくお願いいたします.
・ 生放送へのリンクはこちらです
・ 事前に対談へのご質問や取り上げて欲しいトピックなどがありましたらこちらのフォームから自由にお寄せください
・ 生放送時の投げ込み質問にもなるべく対応できればと思っています
・ 生放送の収録は後日アーカイヴとして一般公開もする予定です
本ブログの音声版・姉妹版である Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」 では,これまでも様々な対談を行なってきました.今回は khelf(慶應英語史フォーラム)主催の khelf-conference-2022 という小集会(←有り体にいえば夏の「ゼミ合宿」です)の一環として,立命館大学の岡本広毅先生をお招きしてのライヴ対談となります.
岡本先生とはすでに heldio で2度ほど対談しています.今度の「英語ヴァナキュラー談義」は,過去2回の対談(とりわけ2回目の対談)の延長線上にある議論ですので,ぜひ過去回を改めてお聴きいただければと思います.
・ 「#173. 立命館大学,岡本広毅先生との対談:国際英語とは何か?」 (2021/11/20)
・ 「#386. 岡本広毅先生との雑談:サイモン・ホロビンの英語史本について語る」 (2022/06/21)
そもそも「ヴァナキュラー」とは何かというところから始め,それが英語史上どのような意義をもつのか,なぜ今それを考える必要があるのか,など縦横無尽に雑談を繰り広げたいと思っています.関連して,以下の hellog 記事もご参照ください.
・ 「#4804. vernacular とは何か?」 ([2022-06-22-1])
・ 「#4809. OED で vernacular の語義を確かめる」 ([2022-06-27-1])
・ 「#4812. vernacular が初出した1601年前後の時代背景」 ([2022-06-30-1])
・ 「#4814. vernacular をキーワードとして英語史を眺めなおすとおもしろそう!」 ([2022-07-02-1])
岡本広毅先生は,11月25日より公開される映画『グリーン・ナイト』の字幕監修も担当されています.『ガウェイン卿と緑の騎士』 (Sir Gawain and the Green Knight) の翻案作品ですが,この作品のヴァナキュラー性や字幕監修裏話なども含めてぜひお話しを伺いたいと思います.私も対談を楽しみにしています.本作品の映像制作・配給会社 Transformer および,特設ツイッターもご訪問ください.
khelf-conference-2022 では,上記対談の翌日9月21日(水)にも別の Voicy 生放送企画が予定されています.両日の生放送企画について詳しくはこちらの特設ページをご覧ください.また,両企画は以下でもご案内していますので是非お聴きください.
khelf-conference-2022 に関係する各種セッションについては,khelf 公式ツイッターアカウント @khelf_keio でも広報していますので,そちらもご覧ください.
ちょうど1ヶ月後のことになりますが,2022年10月1日(土)15:30--18:45に,朝日カルチャーセンター新宿教室にて全4回のシリーズ「英語の歴史と世界英語」の第3回講座「英米の英語方言」を開講します.対面・オンラインのハイブリッド講座として開講される予定です.ご関心のある方は,ぜひ参加をご検討ください.シリーズ講座ではありますが,毎回独立した講座となっていますので,第1回,第2回に参加されていない方もご安心ください.詳細とお申し込みはこちらの公式ページよりどうぞ.第3回講座の概要は以下の通りです.
現代の「世界英語」を構成するさまざまな変種は,英語の諸方言とみることができます.実際,英語の歴史において方言は常に多様な形で存在し続けてきており,決して現代に特有の現象ではありません.アメリカ英語にも多くの方言が,イギリス英語にはさらに多くの方言がありましたし,今もあります.つまり「世界英語」は,歴史的な英語諸方言の延長線上にある現象なのです.英米方言,および諸方言の対極にある標準語の役割にも注目します.
21世紀の世界英語 (World Englishes) も,英語史を通じて存在し続けてきた英語諸方言も,様々な英語の集合体という点では変わりありません.多様性が展開する舞台こそ,狭いブリテン島から広い地球へと拡がってきましたが,本質的に新しいことが生じているわけではありません.現代世界で英語に生じている出来事は,歴史的には必ずしも特別なものではないのです.
とはいえ,もちろんすべてが同じわけでもありません.そのような異同を考えることで,現代の世界英語現象の特殊性をも浮き彫りにしていきたいと思います.かつての英語の多様性を振り返るに当たって,2大英語国である英米の諸方言に焦点を当てます.
第3回講座についてもう少し詳しく知りたい方は,予告編として Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」を通じて「#454. 朝カル講座の第3回「英語の歴史と世界英語 --- 英米の英語方言」」を配信していますので,そちらをお聴きください.
シリーズ講座の第1回,第2回については,以下の hellog や heldio でも取り上げています.こちらも参考までにどうぞ.
・ hellog 「#4775. 講座「英語の歴史と世界英語 --- 世界英語入門」のシリーズが始まります」 ([2022-05-24-1])
・ heldio 「#356. 世界英語入門 --- 朝カル新宿教室で「英語の歴史と世界英語」のシリーズが始まります」 (2022/05/22)
・ heldio 「#378. 朝カルで「世界英語入門」を開講しました!」 (2022/06/13)
・ hellog 「#4813. 朝カル講座の第2回「英語の歴史と世界英語 --- いかにして英語は拡大したのか」のご案内」 ([2022-07-01-1])
・ heldio 「#393. 朝カル講座の第2回「英語の歴史と世界英語 --- いかにして英語は拡大したのか」」 (2022/06/28)
この「hellog~英語史ブログ」では,定期的に読者の皆さんに英語史の学びを奨励してきました.この夏の間に英語(学)の学びを深め,そこから英語史にも関心が湧き始めたという方もいるかと思いますので,このタイミングで改めて英語史の学びをお薦めしたいと思います.ちなみに本ブログの執筆者(堀田隆一)が何者かについてはこちらのプロフィールをご覧ください.
これまで hellog や Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の両メディアを中心に,「英語史のすすめ」に関するコンテンツを蓄積してきました.以下にカテゴリー別にリンクを整理しておきます.各カテゴリー内部では,およそ重要な順にコンテンツを並べていますので,上から順に聴取・閲覧していくと効果的かと思います.
[ まずは英語史の学びのモチベーションアップから! ]
・ heldio 「#444. 英語史を学ぶとこんなに良いことがある!」 (2022/08/18)
・ hellog 「#4728. 2022年度「英語史」講義の初回 --- 慶應義塾大学文学部英米文学専攻の必修科目「英語史」が始まります」 ([2022-04-07-1])
・ hellog 「#4729. ぜひ英語史学習・教育のために hellog の活用を!(2022年度版)」 ([2022-04-08-1])
・ hellog 「#4556. 英語史の世界にようこそ」 ([2021-10-17-1])
・ heldio 「#139. 英語史の世界にようこそ」 (2021/10/17)
・ hellog 「#24. なぜ英語史を学ぶか」 ([2009-05-22-1])
・ heldio 「#112. 英語史って何のため?」 (2021/09/21)
・ hellog 「#4361. 英語史は「英語の歴史」というよりも「英語と歴史」」 ([2021-04-05-1])
・ hellog 「#1199. なぜ英語史を学ぶか (2)」 ([2012-08-08-1])
・ hellog 「#1200. なぜ英語史を学ぶか (3)」 ([2012-08-09-1])
・ hellog 「#1367. なぜ英語史を学ぶか (4)」 ([2013-01-23-1])
・ hellog 「#2984. なぜ英語史を学ぶか (5)」 ([2017-06-28-1])
・ hellog 「#4021. なぜ英語史を学ぶか --- 私的回答」 ([2020-04-30-1])
・ hellog 「#3641. 英語史のすゝめ (1) --- 英語史は教養的な学問領域」 ([2019-04-16-1])
・ hellog 「#3642. 英語史のすゝめ (2) --- 英語史は教養的な学問領域」 ([2019-04-17-1])
・ hellog 「#4073. 地獄の英語史からホテルの英語史へ」 ([2020-06-21-1])
[ 英語史入門の文献案内 ]
・ hellog 「#4727. 英語史概説書等の書誌(2022年度版)」 ([2022-04-06-1])
・ hellog 「#4557. 「英語史への招待:入門書10選」」 ([2021-10-18-1])
・ heldio 「#140. 対談 英語史の入門書」 (2021/10/18)
・ hellog 「#4731. 『英語史新聞』新年度号外! --- 英語で書かれた英語史概説書3冊を紹介」 ([2022-04-10-1])
・ heldio 「#313. 泉類尚貴先生との対談 手に取って欲しい原書の英語史概説書3冊」 (2022/04/09)
・ hellog 「#3636. 年度初めに拙著『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史』を紹介」 ([2019-04-11-1])
・ heldio 「#315. 和田忍先生との対談 Baugh and Cable の英語史概説書を語る」 (2022/04/10)
・ hellog 「#4133. OED による英語史概説」 ([2020-08-20-1])
[ かつて英語史に入門した「先輩」からのコメント ]
・ hellog 「#2470. 2015年度,英語史の授業を通じて何を学びましたか?」 ([2016-01-31-1])
・ hellog 「#3566. 2018年度,英語史の授業を通じて何を学びましたか?」 ([2019-01-31-1])
・ hellog 「#3922. 2019年度,英語史の授業を通じて何を学びましたか?」 ([2020-01-22-1])
・ hellog 「#4661. 2021年度,英語史の授業を通じて何を学びましたか?」 ([2022-01-30-1])
[ とりわけ語源に関心がある方へ ]
・ hellog 「#3546. 英語史や語源から英単語を学びたいなら,これが基本知識」 ([2019-01-11-1])
・ hellog 「#3698. 語源学習法のすゝめ」 ([2019-06-12-1])
・ hellog 「#4360. 英単語の語源を調べたい/学びたいときには」 ([2021-04-04-1])
・ hellog 「#3381. 講座「歴史から学ぶ英単語の語源」」 ([2018-07-30-1])
・ hellog 「#600. 英語語源辞書の書誌」 ([2010-12-18-1])
[ とりわけ英語教育に関心がある方へ ]
・ heldio 「#310. 山本史歩子先生との対談 英語教員を目指す大学生への英語史のすすめ」 (2022/04/06)
・ hellog 「#4619. 「英語史教育」とは?」 ([2021-12-19-1])
・ hellog 「#4329. 「英語史の知見を活かした英語教育」について参考文献をいくつか」 ([2021-03-04-1])
[ とりわけフランス語学習に関心がある方へ ]
・ heldio 「#327. 新年度にフランス語を学び始めている皆さんへ,英語史を合わせて学ぶと絶対に学びがおもしろくなると約束します!」 (2022/04/23)
・ heldio 「#329. フランス語を学び始めるならば,ぜひ英語史概説も合わせて!」 (2022/04/25)
・ heldio 「#368. 英語とフランス語で似ている単語がある場合の5つのパターン」 (2022/06/03)
・ hellog 「#4787. 英語とフランス語の間には似ている単語がたくさんあります」 ([2022-06-05-1])
・ heldio 「#370. 英語語彙のなかのフランス借用語の割合は? --- リスナーさんからの質問」 (2022/06/05)
・ heldio 「#26. 英語語彙の1/3はフランス語!」 (2021/06/27)
語用論 (pragmatics) は,意味論 (semantics) とともに,言葉の意味を研究する領域ですが,言葉そのものの意味というよりも話者の意味・意図に注目します.辞書的な意味ではなく,話者が言葉を使っている現場において立ち現われてくる生の意味です.会話においては,話し手と聞き手は語用論的に高度な意味作用をライヴで取り交わしているのです.
語用論は英語学でも発展の著しい領域で話題は豊富ですが,Day 5 では「協調の原理」と「会話の含意」に絞って語用論の考え方の基本を概説します.
1. 協調の原理 (cooperative_principle)
1.1 「#1122. 協調の原理」 ([2012-05-23-1])
1.2 「#1133. 協調の原理の合理性」 ([2012-06-03-1])
1.3 「#1134. 協調の原理が破られるとき」 ([2012-06-04-1])
1.4 「#4851. tautology」 ([2022-08-08-1])
2. 会話の含意 (conversational implicature)
2.1 「#1976. 会話的含意とその他の様々な含意」 ([2014-09-24-1])
2.2 「#3402. presupposition trigger のタイプ」 ([2018-08-20-1])
2.3 「#3403. presupposition の3つの特性」 ([2018-08-21-1])
6. 本日の復習は heldio 「#452. 協調の原理」,およびこちらの記事セットより
言葉の意味とは何か? 言語学者や哲学者を悩ませ続けてきた問題です.音声や形態は耳に聞こえたり目に見えたりする具体物で,分析しやすいのですが,意味は頭のなかに収まっている抽象物で,容易に分析できません.言語は意味を伝え合う道具だとすれば,意味こそを最も深く理解したいところですが,意味の研究(=意味論 (semantics))は言語学史のなかでも最も立ち後れています(cf. 「#1686. 言語学的意味論の略史」 ([2013-12-08-1])).
しかし,昨今,意味を巡る探究は急速に深まってきています(cf. 「#4697. よくぞ言語学に戻ってきた意味研究!」 ([2022-03-07-1])).意味論には様々なアプローチがありますが,大きく伝統的意味論と認知意味論があります.スクーリングの Day 4 では,両者の概要を学びます.
1. 意味とは何か?
1.1 「#1782. 意味の意味」 ([2014-03-14-1])
1.2 「#2795. 「意味=指示対象」説の問題点」 ([2016-12-21-1])
1.3 「#2794. 「意味=定義」説の問題点」 ([2016-12-20-1])
1.4 「#1990. 様々な種類の意味」 ([2014-10-08-1])
1.5 「#2278. 意味の曖昧性」 ([2015-07-23-1])
2. 伝統的意味論
2.1 「#1968. 語の意味の成分分析」 ([2014-09-16-1])
2.2 「#1800. 様々な反対語」 ([2014-04-01-1])
2.3 「#1962. 概念階層」 ([2014-09-10-1])
2.4 「#4667. 可算名詞と不可算名詞とは何なのか? --- 語彙意味論による分析」 ([2022-02-05-1])
2.5 「#4863. 動詞の意味を分析する3つの観点」 ([2022-08-20-1])
3. 認知意味論
3.1 「#1961. 基本レベル範疇」 ([2014-09-09-1])
3.2 「#1964. プロトタイプ」 ([2014-09-12-1])
3.3 「#1957. 伝統的意味論と認知意味論における概念」 ([2014-09-05-1])
3.4 「#2406. metonymy」 ([2015-11-28-1])
3.5 「#2496. metaphor と metonymy」 ([2016-02-26-1])
3.6 「#2548. 概念メタファー」 ([2016-04-18-1])
4. 本日の復習は heldio 「#451. 意味といっても様々な意味がある」,およびこちらの記事セットより
「英語学」スクーリングの Day 3 では,英語の統語論 (syntax) に注目します.1950年代後半に Noam Chomsky が現われて以来,それまではさほど注目されていなかった統語論研究が,とみに活発化しました.生成文法 (generative_grammar) が一世を風靡すると,次いでそのアンチとして George Lakoff と Ronald W. Langacker が主導する形で1980年代後半より認知文法が興隆しましたが,統語論はそこでも注目され続けました(cf. 「#3532. 認知言語学成立の系譜」 ([2018-12-28-1])).
とりわけ英語は「語順の言語」なので統語論は重要です.英語統語論という膨大な領域を短時間で一望しようとするのも無理があるのですが,具体的な問題の扱いを通じて統語論の力を味わってみたいと思います.
1. 生成文法
1.1 統語ツリーを描く
1.2 「#1820. c-command」 ([2014-04-21-1])
1.3 「#2136. 3単現の -s の生成文法による分析」 ([2015-03-03-1])
1.4 「#4860. 生成文法での受動文の作られ方」 ([2022-08-17-1])
2. 機能的構文論
2.1 情報構造と冠詞: 「#3831. なぜ英語には冠詞があるのですか?」 ([2019-10-23-1])
2.2 「#4641. 副詞句のデフォルトの順序 --- 観点,過程,空間,時間,付随」 ([2022-01-10-1])
2.3 「#4864. 相互動詞と視点」 ([2022-08-21-1])
3. 英語の語順とその歴史: 「#4527. 英語の語順の歴史が概観できる論考を紹介」 ([2021-09-18-1])
4. 本日の復習は heldio 「#450. 英語学・英語史と統語論」,およびこちらの記事セットより
「英語学」スクーリングの Day 2 です.いよいよ本格的に中身に入っていきますが,今日のキーワードは2重分節 (double_articulation),音素 (phoneme),形態素 (morphology) です.「語とは何か?」という抜き差しならない議論でも盛り上げたいと思います.開口一番の早口言葉はネタです(笑).
1. 英語の早口言葉: 「#3093. 早口言葉と tongue twisters」 ([2017-10-15-1])
2. 音声学,音韻論,形態論
2.1 2重分節: 「#767. 言語の二重分節」 ([2011-06-03-1])
2.2 形態素と音素 (morpheme vs phoneme)
2.3 音素と音 (phoneme vs phone): 音韻論と音声学の違い
3. 音素
3.1 母音: 「#19. 母音四辺形」 ([2009-05-17-1])
3.2 子音: 「#1813. IPA の肺気流による子音の分類」 ([2014-04-14-1])
3.3 英語と日本語の音素: 「#1021. 英語と日本語の音素の種類と数」 ([2012-02-12-1])
3.4 韻律 (prosody): 様々な韻律的特徴
4. 形態素
3.1 語の定義を巡って: 語とは何か?
3.2 屈折形態論と派生形態論: 「#2653. 形態論を構成する部門」 ([2016-08-01-1])
3.3 複合語を巡って: 様々な複合語
5. 本日の復習は heldio 「#449. 言語の2重分節とは何か?」,およびこちらの記事セットより
今週(月)~(土)の午前中は,慶應義塾大学通信教育課程にて「英語学」の夏期スクーリングが対面で開講されます.1コマ105分の授業を計12回という短期決戦の集中講義です.ということで,今週は hellog や heldio の話題も概ね集中講義と連動させる形にし,「英語学入門ウィーク」をお届けしようと思います.集中講義の初日は受講者の顔を眺めながら空気作りをしつつ,以下のような導入的なメニューを展開する予定です.受講される方,どうぞよろしくお願いします.そうでない方も,まだであれば英語学を学び始めてはいかがでしょうか.
1. 英語学の入門書
・ 三原 健一・高見 健一(編著),窪薗 晴夫・竝木 崇康・小野 尚久・杉本 孝司・吉村 あき子(著)『日英対照 英語学の基礎』 くろしお出版,2013年. *
・ 井上 逸兵 『グローバルコミュニケーションのための英語学概論』 慶應義塾大学出版会,2015年.
・ 平賀 正子 『ベーシック新しい英語学概論』 ひつじ書房,2016年.
・ 長谷川 瑞穂(編著),大井 恭子・木全 睦子・森田 彰・高尾 享幸(著) 『はじめての英語学 改訂版』 研究社,2014年.
・ 安藤 貞雄・澤田 治美 『英語学入門』 開拓社,2001年.
・ その他「#4727. 英語史概説書等の書誌(2022年度版)」 ([2022-04-06-1]) を参照
2. 堀田が提供する英語学・英語史に関するウェブリソース
・ 「hellog~英語史ブログ」: http://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog/
・ Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」: https://voicy.jp/channel/1950
・ YouTube 「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」: https://www.youtube.com/channel/UCth3mYbOZ9WsYgPQa0pxhvw
・ 詳しくはこちらのプロフィール (note)を参照: https://note.com/chariderryu/n/na772fcace491
3. 英語に関する素朴な疑問から始める「英語学」
・ 「#1093. 英語に関する素朴な疑問を募集」 ([2012-04-24-1])
・ 「#1442. (英語)社会言語学に関する素朴な疑問を募集」 ([2013-04-08-1])
4. 英語学・言語学の6つの基本構成部門
・ 音声学 (phonetics)
・ 音韻論 (phonology)
・ 形態論 (morphology)
・ 統語論 (syntax)
・ 意味論 (semantics)
・ 語用論 (pragmatics)
5. 本日の復習は heldio 「#448. 言語学の6つの基本構成部門」(14分程度),およびこちらの記事セットより
半年ほど前の2月26日に YouTube にて「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」を開設し,毎週水・日曜日の午後6時に新作を配信してきました.本ブログの読者の皆さんの中にも,視聴していただいている方がいると思います.ここまで応援ありがとうございます(cf. 「#4689. YouTube で「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」を開設しました」 ([2022-02-27-1])).
このたび記念すべき第50回に達しましたので,今回と次回は通常回とは異なり,2人でのダラダラおしゃべり飲み会をそのまま配信するということをやってみます.さほど英語学・言語学的な中身にはなっていない雑談回ですので,夏休みのひとときという趣旨でゆるリとご覧ください.「閲覧注意!ただ飲んでしゃべってます.50回記念雑談回<前編>」です.
最後に登場してくる「まさにゃん」は,日本初の古英語系 YouTube チャンネルである「まさにゃんチャンネル」を配信しています.とりわけ「毎日古英語」シリーズは,古英語初学者向けの導入シリーズとなっていますので,どうぞご覧ください.とりわけ昨日アップされた新作動画「毎日古英語 【中間テスト!】」は,まさにゃん渾身の(?)企画です.ぜひ受験してみてください(←私はすでに受験しました).遊び心がありながらも真面目なチャンネルです.
まさにゃんは khelf(慶應英語史フォーラム)の会長でもあり,本ブログおよび Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にもたびたび登場しています.以下をご訪問ください.
・ hellog 「#4005. オンラインの「まさにゃんチャンネル」 --- 英語史の観点から英単語を学ぶ」 ([2020-04-14-1])
・ hellog 「#4566. heldio で古英語期と古英語を手短かに紹介しています(10分×2回)」 ([2021-10-27-1])
・ hellog 「#4740. 古英語入門のためのオンラインリソース」 ([2022-04-19-1])
・ heldio 「#149. 対談 「毎日古英語」のまさにゃんと,古英語ってどんな言語?」(2021年10月27日)
・ heldio 「#307. khelf 会長「まさにゃん」による『英語史新聞』の紹介」(2022年4月3日)
・ heldio 「#308. khelf 会長「まさにゃん」による「英語史コンテンツ50」の紹介」(2022年4月4日)
・ heldio 「#309. khelf 会長「まさにゃん」による「第一回古英語模試」」(2022年4月5日)
・ heldio 「#437. まさにゃんとの対談 ― メガフェップスとは何なの?」 (2022年8月11日)
今後も「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」では,英語学・言語学が身近に感じられてくるような話題をお届けしていきます.引き続きよろしくお願いいたします.
Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」より,即席カテゴリー別にお薦め放送回をピックアップしてみました.お盆休み中の日曜日のお暇つぶしに,どうぞお聴きください.英語史の魅力にハマるかもしれません.ちなみに heldio 全放送の一覧はこちらよりどうぞ.
[ 人気回 ]
・ 「#1. なぜ A pen なのに AN apple なの?」 (2021/06/02)
・ 「#406. 常識は非常識,非常識は常識 ― 私の海外体験の最大の成果」 (2022/07/11)
・ 「#299. 曜日名の語源」 (2022/03/26)
・ 「#321. 古英語をちょっとだけ音読 マタイ伝「岩の上に家を建てる」寓話より」 (2022/04/17)
・ 「#326. どうして古英語の発音がわかるのですか?」 (2022/04/22)
・ 「#271. ウクライナ(語)について」 (2022/02/26)
・ 「#327. 新年度にフランス語を学び始めている皆さんへ,英語史を合わせて学ぶと絶対に学びがおもしろくなると約束します!」 (2022/04/23)
・ 「#343. 前置詞とは何?なぜこんなにいろいろあるの?」 (2022/05/09)
・ 「#358. 英語のスペリングを研究しているのにスペリングが下手になってきまして」 (2022/05/24)
・ 「#300. なぜ Wednesday には読まない d があるの?」 (2022/03/27)
[ 素朴な疑問にひたすら答える「千本ノック」シリーズ ]
・ 「#341. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック」 (2022/05/07)
・ 「#342. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック --- 続き」 (2022/05/08)
・ 「#350. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック --- Part 3」 (2022/05/16)
・ 「#351. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック --- Part 4」 (2022/05/17)
・ 「#360. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック --- Part 5」 (2022/05/26)
・ 「#369. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック --- Part 6」 (2022/06/04)
・ 「#390. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック --- Part 7」 (2022/06/25)
・ 「#391. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック --- Part 8」 (2022/06/26)
・ 「#398. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック --- Part 9」 (2022/07/03)
・ 「#415. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック --- Part 10」 (2022/07/20)
・ 「#416. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック --- Part 11」 (2022/07/21)
[ 対談シリーズ ]
・ 「#108. 『英語の思考法』(ちくま新書)の著者,井上逸兵先生との対談」 (2021/09/17)
・ 「#140. 対談 英語史の入門書」 (2021/10/18)
・ 「#141. 対談 英語史×国際英語」 (2021/10/19)
・ 「#144. 対談 井上逸兵先生と「英語新書ブーム」を語る」 (2021/10/22)
・ 「#149. 対談 「毎日古英語」のまさにゃんと,古英語ってどんな言語?」 (2021/10/27)
・ 「#173. 立命館大学,岡本広毅先生との対談:国際英語とは何か?」 (2021/11/20)
・ 「#179. 和田忍先生との対談:ヴァイキングの活動と英語文献作成の関係」 (2021/11/26)
・ 「#180. 和田忍先生との対談2:ヴァイキングと英語史」 (2021/11/27)
・ 「#306. 市川誠先生との対談 長万部はイングランドか!?」 (2022/04/02)
・ 「#310. 山本史歩子先生との対談 英語教員を目指す大学生への英語史のすすめ」 (2022/04/06)
・ 「#311. 矢冨弘先生との対談 グラスゴー大学話しを1つ」 (2022/04/07)
・ 「#312. 古田直肇先生との対談 標準英語幻想について語る」 (2022/04/08)
・ 「#313. 泉類尚貴先生との対談 手に取って欲しい原書の英語史概説書3冊」 (2022/04/09)
・ 「#314. 唐澤一友先生との対談 今なぜ世界英語への関心が高まっているのか?」 (2022/04/09)
・ 「#315. 和田忍先生との対談 Baugh and Cable の英語史概説書を語る」 (2022/04/10)
・ 「#316. 井上逸兵先生との対談 YouTube を始めて1月半になりますが」 (2022/04/12)
・ 「#320. 田辺春美先生との対談 かつても英語史のラジオ番組があった!?」 (2022/04/16)
・ 「#323. 中山匡美先生との対談 singular "they" は19世紀でも普通に使われていた!」 (2022/04/19)
・ 「#349. 市川誠先生との対談 「ウスター」と「カステラ」,「レスター」と「リア王」」 (2022/05/15)
・ 「#386. 岡本広毅先生との雑談:サイモン・ホロビンの英語史本について語る」 (2022/06/21)
・ 「#404. 編者鼎談『言語の標準化を考える ― 日中英独仏「対照言語史」の試み』」 (2022/07/09)
・ 「#423. 寺澤盾先生との対談 英語の標準化の歴史と未来を考える」 (2022/07/28)
・ 「#427. 編者鼎談第2弾『言語の標準化を考える』 ― 60分生放送を収録しました」 (2022/08/01)
・ 「#437. まさにゃんとの対談 ― メガフェップスとは何なの?」 (2022/08/11)
[ Voicy のトークテーマに参加した放送(たいてい普段とは異なるテイストの回となっています) ]
・ 「#358. 英語のスペリングを研究しているのにスペリングが下手になってきまして」 (2022/05/24)
・ 「#366. 才能を引き出すための "education" 「教育」の本来の意味は?」 (2022/06/01)
・ 「#367. 私の息抜き・気晴らし (disport) は運動 (sport) です ― これも2重語」 (2022/06/02)
・ 「#372. 環境にいいこと "eco-friendly" ― 家庭から始めましょうかね」 (2022/06/07)
・ 「#373. みんなのお金の話≒みんなの言葉の話!?」 (2022/06/08)
・ 「#388. 暗号技術と言語学」 (2022/06/23)
・ 「#389. 2022年上半期の英語史活動(hel活)」 (2022/06/24)
・ 「#392. "familiar stranger" は撞着語法 (oxymoron)」 (2022/06/27)
・ 「#394. 小球 (ballot) を投票して大気球 (balloon) へ」 (2022/06/29)
・ 「#395. NFT「非代替性トークン」の原義は「正式には使えないお印」」 (2022/06/30)
・ 「#399. 英語学習は「毒を食わば皿まで」で行こう!」 (2022/07/04)
・ 「#406. 常識は非常識,非常識は常識 ― 私の海外体験の最大の成果」 (2022/07/11)
・ 「#414. 声でも英語史の話題を広く長くお届けしたい ー 私が Voicy を始めた理由」 (2022/07/19)
・ 「#430. nomad 「遊牧民」の原義」 (2022/08/04)
・ 「#431. 「hellog~英語史ブログ」を辞めることができません!」 (2022/08/05)
[ 近著『言語の標準化を考える』関連 ]
・ 「#361. 『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』の読みどころ」 (2022/05/27)
・ 「#363. 『言語の標準化を考える』より英語標準化の2本の論考を紹介します」 (2022/05/29)
・ 「#397. 言葉のスタンダードとは何か? --- 『言語の標準化を考える』へのコメントをお寄せください!」 (2022/07/02)
・ 「#404. 編者鼎談『言語の標準化を考える ― 日中英独仏「対照言語史」の試み』」 (2022/07/09)
・ 「#423. 寺澤盾先生との対談 英語の標準化の歴史と未来を考える」 (2022/07/28)
・ 「#426. 本日午前11:00より「言語の標準化」鼎談を生放送 ― 標準化は実は身近な話題です!」 (2022/07/31)
・ 「#427. 編者鼎談第2弾『言語の標準化を考える』 ― 60分生放送を収録しました」 (2022/08/01)
[ 「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」と引っかけた話題 ]
・ 「#272. 井上逸兵先生と YouTube を開始,そして二重否定の話し」 (2022/02/27)
・ 「#316. 井上逸兵先生との対談 YouTube を始めて1月半になりますが」 (2022/04/12)
・ 「#364. YouTube での「go/went 合い言葉説」への反応を受けまして」 (2022/05/30)
[ 英語史を学ぼうと思ったら ]
・ 「#112. 英語史って何のため?」 (2021/09/21)
・ 「#139. 英語史の世界にようこそ」 (2021/10/17)
・ 「#140. 対談 英語史の入門書」 (2021/10/18)
・ 「#303. 私の英語史関連の活動 2021年度から2022年度へ」 (2022/03/30)
・ 「#313. 泉類尚貴先生との対談 手に取って欲しい原書の英語史概説書3冊」 (2022/04/09)
・ 「#315. 和田忍先生との対談 Baugh and Cable の英語史概説書を語る」 (2022/04/10)
・ 「#327. 新年度にフランス語を学び始めている皆さんへ,英語史を合わせて学ぶと絶対に学びがおもしろくなると約束します!」 (2022/04/23)
・ 「#329. フランス語を学び始めるならば,ぜひ英語史概説も合わせて!」 (2022/04/25)
ほか「#4806. 2022年上半期によく聴かれた放送 --- Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」より」 ([2022-06-24-1]) の人気放送一覧もどうぞ.
heldio のチャンネルでは,皆さんからのご感想,ご意見,ご質問をお寄せいただいています.チャンネルで取り上げてほしいトピックなども歓迎です,Voicy のコメント機能,あるいはチャンネルプロフィールにリンクを張っている専用フォームを通じて,お寄せください.
Voicy 放送は以下からダウンロードできるアプリ(無料)を使うとより快適に聴取できます.また,フォローしていただきますと,毎朝,更新通知が届くようになります.ぜひ Voicy アプリをご利用ください.hellog も heldio も引き続きよろしくお願いいたします.
・ 高田 博行・田中 牧郎・堀田 隆一(編著)『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』 大修館,2022年.
8月3日に更新された YouTube 「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」の最新回,第46弾は「Macy's は -'s なのに Harrods にはアポストロフィがないわけ」です.' (apostrophe) の使用をめぐる共時的・通時的混乱に焦点を当てました.
アポストロフィつながりで緩く関連する話題として,今朝の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」では「#432. なぜ短縮形 that's はあるのに *this's はないの?」という素朴な疑問を取り上げました.こちらもお聴きください.
さらに,所有格の 's に関するとりとめのない話題を,『徹底例解ロイヤル英文法』を参照しつつ,ここに追加したいと思います.s を付けずにアポストロフィだけを単語の末尾に付けて所有格を表わすケースがいくつかあるのです.1つは複数形の -s がすでに付いているケースです.a girls' school や birds' nests のような例です.
次に,複数形ではなくとも綴字上 -s で終わる単語(典型的には固有名詞)を所有格にする場合には, -'s ではなく -' のみを付けることが多いです.Socrates' death, Achilles' tendon, Moses' prophecy のような例です.Columbus' discovery, Dickens' novels, Venus' flower basket なども類例なのですが,こちらは -'s ヴァージョンも可能ということで,ややこしい.
また,for ---'s sake のフレーズでは,当該の名詞が [s] の発音で終わっているときには -'s の代わりに -' が好まれます.for convenience' sake, for goodness' sake, for appearance' sake のごとくです.
アポストロフィの些事というよりも混乱の極みといったほうがよいですね.アポストロフィについては以下の記事もご参照ください.
・ 「#198. its の起源」 ([2009-11-11-1])
・ 「#3889. ネイティブがよく間違えるスペリング」 ([2019-12-20-1])
・ 「#582. apostrophe」 ([2010-11-30-1])
・ 「#3869. ヨーロッパ諸言語が初期近代英語の書き言葉に及ぼした影響」 ([2019-11-30-1])
・ 「#1772. greengrocer's apostrophe」 ([2014-03-04-1])
・ 「#3892. greengrocer's apostrophe (2)」 ([2019-12-23-1])
・ 「#3656. kings' のような複数所有格のアポストロフィの後には何が省略されているのですか?」 ([2019-05-01-1])
・ 「#3661. 複数所有格のアポストロフィの後に何かが省略されているかのように感じるのは自然」 ([2019-05-06-1])
・ 「#4755. アポストロフィはいずれ使われなくなる?」 ([2022-05-04-1])
・ 綿貫 陽(改訂・著);宮川幸久, 須貝猛敏, 高松尚弘(共著) 『徹底例解ロイヤル英文法』 旺文社,2000年.
「2」を表わすラテン語に由来する接頭辞 bi- を付した標題の単語は,両義的でややこしい.bi- が week に係ると解釈するならば「2週間(に1度)」だが,weekly に係るとするならば「(1週間に)2度」となる.同じ両義性の問題は bimonthly, biyearly, biannual などにも当てはまる.
このややこしい単語の問題については,私の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」のリスナーの方に指摘していただいた(ありがとうございます!).昨日 Voicy で配信した「#429. イギリス英語 fortnight 「2週間」の語誌」でも触れているので,ぜひそちらもお聞きください.
biweekly, bimonthly などの語の両義性については,語法辞書でも必ず指摘されており,どうやら悪名高い問題のようだ.3点ほど引用してみよう.
bi-. This prefix, which was first used in contexts of time (biweekly, bimonthly, biyearly, etc.) in the 19C., is a cause of endless confusion. Each compound can mean 'occurring or continuing for two ---', 'appearing every two ---', or 'occurring twice a ---'. Because ambiguity is usually present, and cannot be resolved by the devising of rules, it is always better to use unambiguous equivalents, e.g. twice a week, twice-weekly; every two weeks, fortnightly; twice-yearly; every two years; etc. (Fowler's Modern English Usage)
bimonthly means either 'twice a month' or 'every two months'. Similarly, biweekly is either 'twice a week' or 'every fortnight'. It is therefore probably safer to spell it out as 'twice a month', 'fortnightly', etc. Semi-monthly and semi-weekly can only mean 'twice a month/week'. (Usage and Abusage)
bimonthly, semimonthly, biannual, biennial 多くの評論家や文法家が bimonthly を「2か月に1回の」の意味で,semimonthly を「月に2回の」の意味で用いるべきだと主張している.例えば,Morris & Morris (1985) は,調査をした166名のうち書き言葉では92%が,話し言葉で91%が,これらの2つの語を同じように使うことに反対しているとしている.しかし,実際には semimonthly という語はあまり使われず,bimonthly がどちらの意味にも使われる傾向がある(semiweekly, biweekly についても同じ): A bimonthly magazine is issued six times a year.---SFID (隔月間の雑誌は年6回発行される)/The bimonthly meetings are on the first and third Wednesdays of each month.---Ibid. (月2回の会合は,各月の第1と第3の水曜日に行なわれる).ちなみに Peters (2004) では,semimonthly を用いるべきだとする.
なお,biannual は「年2回の」の意味で,「2年に1回の」の意味では biennial を用いるが [Wood-Flavell-Flavell (1990)],意味が混同されることがあり,biannnual が biennial の意で用いられることがある [Peters (2004)].この混乱を避けるために,WDEU では biannual の代わりに semiannual を用いることをすすめている.『現代英語語法辞典』
語法辞書を参照しているうちに,参照前よりもずっと混乱してきた.実に迷惑な単語だなぁ.
関連して,接頭辞 bi- については「#538. monokini と trikini」 ([2010-10-17-1]) も参照.
・ Burchfield, Robert, ed. Fowler's Modern English Usage. Rev. 3rd ed. Oxford: OUP, 1998.
・ Partridge, Eric. Usage and Abusage. 3rd ed. Rev. Janet Whitcut. London: Penguin Books, 1999.
・ 小西 友七 編 『現代英語語法辞典』 三省堂,2006年.
一昨日7月31日(日)の11:00~12:00に,表記の通り Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて,近刊書『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』(大修館,2022年)の編者3名による対談生放送をお届けしました.
事前にリスナーの方々よりいただいていた質問にも答える形で議論を展開しましたが,日曜日午前中にもかかわらず全体として48名の方々に生で参加いただきました.ありがとうございます.
録音したものを,鼎談の翌朝に「#427. 編者鼎談第2弾『言語の標準化を考える』 ― 60分生放送を収録しました」として昨日公開しました.対照言語史的な風味の詰まった議論となりました.60分の長丁場ですので,ぜひお時間のあるときにお聴きいただければ幸いです.
生放送の司会としての緊張感はありましたが,実のところたいへん議論を楽しめましたし,勉強になりました.今回の対談を通じて「言語の標準化」および「対照言語史」という話題のおもしろさが皆様に伝われば,と思っています.
本ブログを講読している皆様も,ぜひ上記をお聴きいただいた上で,ご意見やご質問がありましたら,Voicy のコメント機能などを経由してコメントいただければ幸いです.
先日の7月28日(木)には「#4840. 「寺澤盾先生との対談 英語の標準化の歴史と未来を考える」in Voicy」 ([2022-07-28-1]) として,本書の執筆者の1人でもある寺澤盾先生とも対談しています.こちらの音声もぜひお聴きください.
その他,この hellog でも本書に関連する記事を多く書いてきました.まとめてこちらからご覧いただければと思います.
目下,最も広く読まれている英語史の本といえば,寺澤盾先生の『英語の歴史―過去から未来への物語 』(中公新書)かと思います.
このたび,寺澤先生(東京大学名誉教授,青山学院大学教授)に,この Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にご出演いただけることになりました! その実といえば,昨日,私が青山学院大学の寺澤研究室に押しかけて,お話をうかがったという次第にすぎないのですが(^^;; 1時間近くにわたる長編となりましたので,時間のあるときにゆっくりお聴きください! 収録中に青学の振鈴(賛美歌ベース)なども入り,貴重な音源となっています(笑).
昨日の記事「#4839. 英語標準化の様相は1900年を境に変わった」 ([2022-07-27-1]) で紹介したとおり,寺澤先生には『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』(大修館,2022年)の第7章に寄稿していただきました.
今回の Voicy 対談も,前半はこの第7章に基づきます.ただし,後半は本書で触れていない発展編の議論となっています.日本人にとって,これからの英語学習・教育はどうあるべきか,21世紀の英語の標準化の目指すべき方向は何なのかについて,寺澤先生のご意見を伺いました.
収録の前後を合わせて数時間,久しぶりに寺澤先生とおしゃべりさせていただきましたが,おおいにインスピレーションを受けて帰ってきました.本当に楽しかったです.寺澤先生,お付き合いいただきまして,ありがとうございました!
・ 寺澤 盾 『英語の歴史:過去から未来への物語』 中公新書,2008年.
標題についてお知らせです.hellog の音声版として毎朝6時にお届けしている音声メディア Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」 を通じて,1週間後の7月31日(日)午前11:00--12:00に「生放送」で『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』(大修館,2022年)の編者3人によるトークをお届けする予定です.ブラウザからウェブ上で聴くこともできますが,Voicy アプリから聴いていただけますと生放送中にコメントできる機能などが利用可能となりますのでお薦めです.なお,生放送の内容は録音し,後日 Voicy チャンネル内で公開する予定です.
放送当日までに(あるいは放送時にでも!)お寄せいただいたご質問やご意見に対しまして,編者3名ができるだけ反応したいと思っておりますので,ぜひお寄せください.Voicy アプリを経由してこちらからお送りいただくか,あるいはこちらの Google Forms を通じてご投稿いただく形でも結構です.Voicy アプリ(無料)を利用して本チャンネルフォローしていただきますと,生放送開始の通知が届いたり事前・放送中の「お便り」機能を使えたりできるようになりますので,ぜひフォローのほどよろしくお願いいたします.以下,改めてコメント投稿のお願いです(すでにコメントをいただいた方におかれましては,ありがとうございます.追加もいつでもどうぞ!).
・ 高田 博行・田中 牧郎・堀田 隆一(編著)『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』 大修館,2022年.
こちらの近刊書とそのテーマである「言語の標準化」と「対照言語史」について,編者3名が2022年7月8日(金)および7月31日(日)に2回ほど鼎談し,音声収録することになっています(後日 Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて公開予定).
そこで,各回の編者鼎談に先立って,英語,日本語,その他の個別言語,あるいは言語一般に関心をもつ方々から,ご質問,ご意見,ご感想などを,こちらのフォームよりお寄せいただければと思います.
本書を手に取ったことのある方,すでに読んだという方は実際には少ないかと思いますので,特に本書の内容を前提とせずに「言語の標準化」や「対照言語史」というキーワードから思いつく質問等を自由に投げていただければと思います.本書をすでに読んでいただいた方には,本書のご感想などをいただけますと嬉しいです.ちなみに,編者3名はそれぞれドイツ語史,日本語史,英語史を専門領域としています.鼎談では,例えば次のような事項を念頭におしゃべりする予定です.
・ ことばの標準化って何だろう?
・ 標準英語はいつできたの?
・ 日本語の「標準語」と「共通語」は違う?
・ 「対照言語史」って聞き慣れないけれど,いったい何?
・ ○○語と△△語の標準化の似ている点,異なる点は?
・ 本書のレイアウト上の売りである「多方向ツッコミ」とは?
・ 本書の出版企画の母体となった研究会で行なってきたこととは?
以上,よろしくお願いいたします.
31日の生放送に登場する編者3名を改めて紹介しておきますと,高田博行(学習院大学),田中牧郎(明治大学),堀田隆一(慶應義塾大学)となります.同じメンバーによる編者鼎談第1弾は,同じ Voicy チャンネルを通じて7月9日に公開しており,以下よりお聴きいただけます.
第1弾はややフォーマルな雰囲気でしたが,今度の第2弾(生放送)では,もう少しインフォーマルにおしゃべりしたいと思っています.
本書『言語の標準化を考える』については,hellog でもすでに何度か案内しています.こちらの記事セットを先にご一読いただきますと,31日の生放送も楽しく聴くことができるかと思います.
なお,7月14日に出版された『英語教育』の8月号にて,本書の広告および書評 (70) が掲載されています.書評者は成蹊大学教授の田辺春美先生です.こちらもぜひ手に取ってご覧ください.
1週間前に「#4816. 今週末『言語の標準化を考える』の編者3人で対談します」 ([2022-07-04-1]) としてお知らせした通り,7月8日(金)に,新刊書 高田 博行・田中 牧郎・堀田 隆一(編著)『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』 大修館,2022年 の編者3人が顔を合わせ,本書を紹介する対談を行ないました.
対談は音声収録し,7月9日(土)の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて公開しましたので,こちらでご案内します.「#404. 編者鼎談『言語の標準化を考える ― 日中英独仏「対照言語史」の試み』」です.対談本体の収録は約30分間で,本書の狙いや概要をじっくりご紹介できたかと思います.
今回の鼎談の前に,一般の方々より専用のメッセージフォームを通じて,本書やそのテーマに関連してご意見,ご感想,ご質問等を寄せていただいていました.鼎談中に,そちらのメッセージを参照しながら議論を展開する予定でおり,その準備もしていたのですが,思いのほか本書紹介のみで多くの時間を費やしてしまい,そこに至らずに終了してしまいました.
そこで,詳細は未定ですが近日中に第2回編者鼎談を開催することになりました.今回の第1回鼎談をお聴きになり本書(のテーマ)に関心を持たれた/高められた方におかれましては,こちらのメッセージフォームを通じて,ぜひご意見,ご感想,ご質問等をいただければと思います.いただいたコメントを第2回鼎談に活かせればと考えています.
本書と関連して,これまでも以下の通り情報を発信してきました.あわせてご訪問ください.
・ hellog 「#4776. 初の対照言語史の本が出版されました 『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』」 ([2022-05-25-1])
・ hellog 「#4784. 『言語の標準化を考える』は執筆者間の多方向ツッコミが見所です」 ([2022-06-02-1]) を参照されたい.
・ hellog 「#4794. 英語の標準化 vs 英語の世界諸変種化」 ([2022-06-12-1])
・ hellog 「#4816. 今週末『言語の標準化を考える』の編者3人で対談します」 ([2022-07-04-1])
・ heldio 「#361. 『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』の読みどころ」
・ heldio 「#363. 『言語の標準化を考える』より英語標準化の2本の論考を紹介します」
・ heldio 「#397. 言葉のスタンダードとは何か? --- 『言語の標準化を考える』へのコメントをお寄せください!」
・ YouTube 「堀田隆一の新刊で語る,ことばの「標準化」【井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル # 28 】」(「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」より)
一昨日,YouTube 「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」の第38弾が公開されました.「え?それも外来語? 英語ネイティヴたちも(たぶん)知らない借用語たち」です.
今回は古ノルド語 (Old Norse) という言語に注目しましたが,一般にはあまり知られていないかと思います.知っている方は,おそらく英語史を通じて知ったというケースが多いのではないでしょうか.英語史において古ノルド語は実は重要キャラです.歴史上,英語に多大な影響を及ぼしてきた言語であり,私見では英語史上もっとも重要な言語です.
そもそも古ノルド語という言語は何なのでしょうか.現在の北欧諸語(デンマーク語,スウェーデン語,ノルウェー語,アイスランド語など)の祖先です.今から千年ほど前に北欧のヴァイキングたちが話していた言語とイメージしてください.北ゲルマン語派に属し,西ゲルマン語派に属する英語とは,それなりに近い関係にあります.
古ノルド語を母語とする北欧のヴァイキングたちは,8世紀半ばから11世紀にかけてブリテン島を侵略しました.彼らはやがてイングランド北東部に定住し,先住の英語話者と深く交わりました.そのとき,言語的にも深く交わることになりました.結果として,英語に古ノルド語の要素が大量に流入することになったのです.
YouTube では,take, get, give, want, die, egg, bread, though, both,they など,英語語彙の核心に入り込んだ古ノルド語由来の単語に注目しました.しかし,古ノルド語の言語的影響の範囲は,語彙にとどまらず,語法や文法にまで及んでいるのです.英語史上きわめて希有なことです.
この hellog では,古ノルド語と英語の言語接触に関する話題は頻繁に取り上げてきました.関心をもった方は old_norse の記事群をお読みください.また,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」でも様々に話してきました.以下,とりわけ重要な記事・放送にリンクを張っておきますので,ぜひご訪問ください.
[ hellog 記事 ]
・ 「#3988. 講座「英語の歴史と語源」の第6回「ヴァイキングの侵攻」を終えました」 ([2020-03-28-1])
・ 「#2625. 古ノルド語からの借用語の日常性」 ([2016-07-04-1])
・ 「#340. 古ノルド語が英語に与えた影響の Jespersen 評」 ([2010-04-02-1])
・ 「#2693. 古ノルド語借用語の統計」 ([2016-09-10-1])
・ 「#3982. 古ノルド語借用語の音韻的特徴」 ([2020-03-22-1])
・ 「#170. guest と host」 ([2009-10-14-1])
・ 「#827. she の語源説」 ([2011-08-02-1])
・ 「#3999. want の英語史 --- 語源と意味変化」 ([2020-04-08-1])
・ 「#4000. want の英語史 --- 意味変化と語義蓄積」 ([2020-04-09-1])
・ 「#818. イングランドに残る古ノルド語地名」 ([2011-07-24-1])
・ 「#1938. 連結形 -by による地名形成は古ノルド語のものか?」 ([2014-08-17-1])
・ 「#1937. 連結形 -son による父称は古ノルド語由来」 ([2014-08-16-1])
・ 「#1253. 古ノルド語の影響があり得る言語項目」 ([2012-10-01-1])
・ 「#3987. 古ノルド語の影響があり得る言語項目 (2)」 ([2020-03-27-1])
・ 「#1167. 言語接触は平時ではなく戦時にこそ激しい」 ([2012-07-07-1])
・ 「#1170. 古ノルド語との言語接触と屈折の衰退」 ([2012-07-10-1])
・ 「#1179. 古ノルド語との接触と「弱い絆」」 ([2012-07-19-1])
・ 「#1182. 古ノルド語との言語接触はたいした事件ではない?」 ([2012-07-22-1])
・ 「#1183. 古ノルド語の影響の正当な評価を目指して」 ([2012-07-23-1])
・ 「#3986. 古英語と古ノルド語の接触の状況は多様で複雑だった」 ([2020-03-26-1])
・ 「#4454. 英語とイングランドはヴァイキングに2度襲われた」 ([2021-07-07-1])
・ 「#1149. The Aldbrough Sundial」 ([2012-06-19-1])
・ 「#3001. なぜ古英語は古ノルド語に置換されなかったのか?」 ([2017-07-15-1])
・ 「#3972. 古英語と古ノルド語の接触の結果は koineisation か?」 ([2020-03-12-1])
・ 「#2591. 古ノルド語はいつまでイングランドで使われていたか」 ([2016-05-31-1])
・ 「#3969. ラテン語,古ノルド語,ケルト語,フランス語が英語に及ぼした影響を比較する」 ([2020-03-09-1])
・ 「#4577. 英語と古ノルド語,ローマンケルト語とフランク語」 ([2021-11-07-1])
・ 「#3979. 古英語期に文証される古ノルド語からの借用語のサンプル」 ([2020-03-19-1])
・ 「#2869. 古ノルド語からの借用は古英語期であっても,その文証は中英語期」 ([2017-03-05-1])
・ 「#3263. なぜ古ノルド語からの借用語の多くが中英語期に初出するのか?」 ([2018-04-03-1])
・ 「#59. 英語史における古ノルド語の意義を教わった!」 ([2009-06-26-1])
[ heldio 放送 ]
・ 「#179. 和田忍先生との対談:ヴァイキングの活動と英語文献作成の関係」 (2021/11/26)
・ 「#180. 和田忍先生との対談2:ヴァイキングと英語史」 (2021/11/27)
・ 「#181. 古ノルド語からの借用語がなかったら英語は話せない!?」 (2021/11/28)
・ 「#182. egg 「卵」は古ノルド語からの借用語!」 (2021/11/29)
・ 「#105. want の原義は「欠けている」」 (2021/09/14)
・ 「#317. dream, bloom, dwell ー 意味を借りた「意味借用」」 (2022/04/13)
・ 「#155. ノルド人とノルマン人は違います」 (2021/11/02)
毎日この「hellog~英語史ブログ」と並行して,音声プラットフォーム Voicy を通じて英語史ブログの音声版である「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」を公開しています.
Voicy では毎週特定のテーマに沿ったトーク企画が組まれていますが,7月4日(月)から始まっている今週のテーマは「#みんなの語学学習法」です.集まってきた放送を聴いてみると,語学(学習)への態度や取り組み方は本当に十人十色なのだなと実感しました.ぜひ様々なパーソナリティの語学に対する思いを聴取してみてください.学習モチベーションが上がると思います.
私のチャンネルは「ハウツー・学習」→「語学」のジャンルに分類されているからかと思いますが,今週のテーマと関連して,注目パーソナリティの1人としてピックアップしていただきました(ありがとうございます!).
私自身,7月4日にこのテーマで話しをしています.「#399. 英語学習は「毒を食わば皿まで」で行こう!」をお聴きください.
このトークでは,以下の5点の英語学習のコツを挙げてみました.
1. 理想は低く(← 関連して Voicy パーソナリティで同時通訳者の田中慶子さんによる「「英語ができるようになりたい」という方に,まずお伝えしたいこと」も必聴です)
2. 読み書き能力は重要です
3. 単語力が最重要です
4. 辞書を味方につけよう
5. スキルだけじゃもったいない,プラスアルファで教養を!
特に強調したいのは5点目で,これは放送タイトルの「毒を食わば皿まで」の心を表わしたものです.語学学習は時間とエネルギー(とある程度のお金)がかかる厄介なものです.いわばネガティブに「毒」とみることもできるわけですが,どのみちある程度の「毒」を食わなければならないのであれば,さらに一歩進んで教養という「皿」まで食ってしまおう,という趣旨です.実際の皿は食べてもおいしくありませんが,語学の先にある教養の皿は実はおいしいです.
私の「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」は,単語の語源を話題にすることが多く,ボキャビルに役立つことも確かにあると思います.もちろんおおいに役立てていただければと思います.一方,真の狙いとしては語源の背後にある豊かな英語の歴史・文化を紹介する点にあります.ですので,そちらの観点から聴いていただいても,きっと面白いと思います.
毎朝6時更新のチャンネルです,関心のある方は,ぜひこちらからフォローしてくだい.フォローしていただきますと更新通知が届くようになります.これからも,よろしくお願いいたします!
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