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voicy - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2024-11-05 09:35

2023-05-23 Tue

#5139. 英語史において「ケルト語仮説」が取り沙汰されてきた言語項 [celtic_hypothesis][contact][borrowing][substratum_theory][syntax][be][progressive][do-periphrasis][nptr][th][vowel][voicy][heldio]

 英語史における「ケルト語仮説」 (celtic_hypothesis) について,これまでいくつかの記事で取り上げてきた.

 ・ 「#689. Northern Personal Pronoun Rule と英文法におけるケルト語の影響」 ([2011-03-17-1])
 ・ 「#1254. 中英語の話し言葉の言語変化は書き言葉の伝統に掻き消されているか?」 ([2012-10-02-1])
 ・ 「#1342. 基層言語影響説への批判」 ([2012-12-29-1])
 ・ 「#1851. 再帰代名詞 oneself の由来についての諸説」 ([2014-05-22-1])
 ・ 「#3754. ケルト語からの構造的借用,いわゆる「ケルト語仮説」について」 ([2019-08-07-1])
 ・ 「#3755. 「ケルト語仮説」の問題点と解決案」 ([2019-08-08-1])
 ・ 「#3969. ラテン語,古ノルド語,ケルト語,フランス語が英語に及ぼした影響を比較する」 ([2020-03-09-1])
 ・ 「#4528. イギリス諸島の周辺地域に残る3つの発音」 ([2021-09-19-1])
 ・ 「#4595. 強調構文に関する「ケルト語仮説」」 ([2021-11-25-1])
 ・ 「#5129. 進行形に関する「ケルト語仮説」」 ([2023-05-13-1])

 近年の「ケルト語仮説」では,(主に語彙以外の)特定の言語項がケルト諸語から英語へ移動した可能性について検討が進められてきた.Hickey (505) によりケルト語の影響が取り沙汰されてきた言語項を一覧してみよう.ただし,各項目について,注目されている地域・変種や文献に現われるタイミングなどはバラバラであること,また言語接触によらず言語内的な要因のみで説明もし得るものがあることなど,一覧の読み方には注意が必要である.

Table 3. Possible transfer features from Celtic (Brythonic) to English

1.Lack of external possessor constructionMorphosyntactic
2Twofold paradigm of to be 
3.Progressive verb forms 
4.Periphrastic do 
5.Northern subject rule 
6.Retention of dental fricativesPhonological
7.Unrounding of front vowels 



 1 は,英語で My head is sore. のように体の部位などに関して所有格で表現し,The head is sore. のように冠詞を用いない用法を指す.
 2 は,古英語(主にウェストサクソン方言)において be 動詞が,母音あるいは s- で始まる系列と,b- で始まる系列の2種類の系列が併存していた状況を指す.
 3 は,「#5129. 進行形に関する「ケルト語仮説」」 ([2023-05-13-1]) を参照.
 4 は,「#486. 迂言的 do の発達」 ([2010-08-26-1]),「#3755. 「ケルト語仮説」の問題点と解決案」 ([2019-08-08-1]) を参照.
 5 は,「#689. Northern Personal Pronoun Rule と英文法におけるケルト語の影響」 ([2011-03-17-1]) を参照.
 6 は,th = [θ] という比較的稀な子音が現代まで残っている事実を指す.
 7 は,古英語に円唇前舌母音 [y, ø] があったことを指す.

 今回の Hickey の一覧と類似するリストについては「#3754. ケルト語からの構造的借用,いわゆる「ケルト語仮説」について」 ([2019-08-07-1]) も参照.
 関連して,Voicy heldio より「#715. ケルト語仮説」もどうぞ.



 ・ Hickey, Raymond. "Early English and the Celtic Hypothesis." Chapter 38 of The Oxford Handbook of the History of English. Ed. Terttu Nevalainen and Elizabeth Closs Traugott. New York: OUP, 2012. 497--507.

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2023-05-21 Sun

#5137. heldio 「#716. 英語史を学ぶなら音声学もしっかり学ぼう」の収録の様子を動画撮影しました --- 英語史情報発信の活性化のために [voicy][heldio][heltube][phonetics][phonology][hel_education][youtube]

 毎朝6時に配信している Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の5月17日分の放送回として「#716. 英語史を学ぶなら音声学もしっかり学ぼう」をお届けしました.このブログや heldio などを通して英語史に関心を抱き,もう一歩深く入り込んでみたいという方は,ぜひ音声学 (phonetics) と音韻論 (phonology) を学んでいただければと思います.



 上記放送回で,英語史を学ぶに当たって音声学も一緒に学びたい理由として4点を挙げました.以下,箇条書きしておきますので復習してください.

 (1) 話し言葉こそが universal だから
 (2) 現在と過去を行き来するために
 (3) 音の変化が文法の変化をもたらしたから
 (4) 話し言葉と書き言葉との関係を押さえるために

 hellog と heldio の関連記事・放送回を3点ほど掲げておきます.

 ・ hellog 「#4231. 英語史のための音声学・音韻論の入門書」 ([2020-11-26-1])
 ・ heldio 「#712. ハヒフヘホ --- khelf メンバーと学ぶコトバの「音」入門」
 ・ heldio 「#703. 母音「あいうえお」入門 --- ゆる言語学ラジオ(著)『言語沼』にインスピレーションを受けて」

 さて,今日のこの記事の主眼は「英語史を学ぶなら音声学も一緒に」を改めて叫ぶことではありません.上記 heldio 放送回 #716 の収録の様子を動画として撮影したので,それをご覧くださいという宣伝です.これは Voicy 収録の様子をただお見せしたいというわけではなく,学術・教育の情報発信の手段として Voicy のような音声メディアが優れていることを,潜在的発信者の方々に伝えたかったからです.YouTube などの動画メディアは制作に相当な手間暇がかかりますが,音声メディアであれば,ずっと優れたタイパやコスパで情報を発信できます.
 上記 heldio 放送回 #716 は,3チャプター合計で14分51秒ほど私が実際に話して収録しています.この収録の様子の一部始終を動画撮影してみたのですが,heldio 収録には含まれない前口上,チャプター間の一服,締めの言葉をすべて含め,動画撮影の総時間は21分20秒でした.この後,放送回やチャプターのタイトル付け,ハッシュタグ付け,リンク貼り,配信予約などの作業が続きますが,それでもプラス5分程度です.つまり,15分弱の1回の放送回の制作にかかる実質的な時間は,20分ほどだということです.もし YouTube で同じコンテンツを制作しようとすると,かりに最小限の編集で済ませるにせよ,20分という時間では無理でしょう.少なくとも2,3倍の時間はかかります.
 以下がその動画「heldio 2023年5月17日放送回の収録の様子」です(YouTube 版はこちらからどうぞ).



 音声メディアなどを通じて英語史の情報を発信する方が増えてくれるとよいなと思っています.ぜひ参考になれば.(なお,以前にも一度「#4815. Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の収録の様子です」 ([2022-07-03-1]) として heldio 収録の様子をお届けしています.)

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2023-05-16 Tue

#5132. なぜ be going to は未来を意味するの? --- 「文法化」という観点から素朴な疑問に迫る [sobokunagimon][tense][future][grammaticalisation][reanalysis][metanalysis][syntax][semantics][auxiliary_verb][khelf][voicy][heldio][hel_contents_50_2023][notice]

 標題は多くの英語学習者が抱いたことのある疑問ではないでしょうか?
 目下 khelf(慶應英語史フォーラム)では「英語史コンテンツ50」企画が開催されています.4月13日より始めて,休日を除く毎日,khelf メンバーによる英語史コンテンツが1つずつ公開されてきています.コンテンツ公開情報は日々 khelf の公式ツイッターアカウント @khelf_keio からもお知らせしていますので,ぜひフォローいただき,リマインダーとしてご利用ください.
 さて,標題の疑問について4月22日に公開されたコンテンツ「#9. なぜ be going to は未来を意味するの?」を紹介します.


「#9. なぜ be going to は未来を意味するの?」



 さらに,先日このコンテンツの heldio 版を作りました.コンテンツ作成者との対談という形で,この素朴な疑問に迫っています.「#711. なぜ be going to は未来を意味するの?」として配信しています.ぜひお聴きください.



 コンテンツでも放送でも触れているように,キーワードは文法化 (grammaticalisation) です.英語史研究でも非常に重要な概念・用語ですので,ぜひ注目してください.本ブログでも多くの記事で取り上げてきたので,いくつか挙げてみます.

 ・ 「#417. 文法化とは?」 ([2010-06-18-1])
 ・ 「#1972. Meillet の文法化」([2014-09-20-1])
 ・ 「#1974. 文法化研究の発展と拡大 (1)」 ([2014-09-22-1])
 ・ 「#1975. 文法化研究の発展と拡大 (2)」 ([2014-09-23-1])
 ・ 「#3281. Hopper and Traugott による文法化の定義と本質」 ([2018-04-21-1])
 ・ 「#5124 Oxford Bibliographies による文法化研究の概要」 ([2023-05-08-1])

 とりわけ be going to に関する文法化の議論と関連して,以下を参照.

 ・ 「#2317. 英語における未来時制の発達」 ([2015-08-31-1])
 ・ 「#3272. 文法化の2つのメカニズム」 ([2018-04-12-1])
 ・ 「#4844. 未来表現の発生パターン」 ([2022-08-01-1])
 ・ 「#3273. Lehman による文法化の尺度,6点」 ([2018-04-13-1])

 文法化に関する入門書としては「#2144. 冠詞の発達と機能範疇の創発」 ([2015-03-11-1]) で紹介した保坂道雄著『文法化する英語』(開拓社,2014年)がお薦めです.

 ・ 保坂 道雄 『文法化する英語』 開拓社,2014年.

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2023-05-15 Mon

#5131. この2週間ほどの khelf メンバーの heldio 出演回のまとめ [khelf][hel_education][voicy][heldio][link]

khelf logo    khelf banner
(このロゴとバナーは khelf メンバーが作成)


 今月の初めから GW を経て昨日に至るまで,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」では,khelf(慶應英語史フォーラム)のメンバーが入れ替わり立ち替わり出演して,対談やら討論やらを繰り広げてきました.heldio への khelf メンバー出演回の一覧は,Voicy の検索機能を利用してこちらからアクセスできるのですが,必ずしもきれいに出力されないようなので,この5月の出演回12回分の一覧については,以下に時系列でまとめておきます.

 ・ 「#698. 先生,アルファベットの歴史を教えてください! --- 寺澤志帆さんとの対談」(2023/04/29放送)
 ・ 「#699. 4月28日に「英語に関する素朴な疑問千本ノック(矢冨&堀田&まさにゃん)」を生放送でお届けしました」(2023/04/30放送)
 ・ 「#700. consumption の p はどこから? --- 藤原郁弥さんの再登場」(2023/05/01放送)
 ・ 「#701. なぜ「日本人」は Japan-ese なの?の深掘り回 --- 青木輝さんとの対談」(2023/05/02放送)
 ・ 「#702. いいネーミングとは? --- 五所万実さん,藤原郁弥さん,まさにゃんとの対談」(2023/05/03放送)
 ・ 「#704. なぜ日本語には擬音語・擬態語が多いのか? --- 森田まさにゃん,五所さん,藤原くんと音象徴を語る爆笑回」(2023/05/05放送)
 ・ 「#706. 爆笑・語源バトル with まさにゃん&藤原くん」(2023/05/07放送)
 ・ 「#707. 先生,なんで doubt には発音しないのに <b> が入ってるんですか? --- 寺澤志帆さんとの対談」(2023/05/08放送)
 ・ 「#710. 激論!時代区分 --- 青木くん,寺澤さん,藤原くんとの対談」(2023/05/11放送)
 ・ 「#711. なぜ be going to は未来を意味するの? --- khelf 広報の渡邉さんとの対談」(2023/05/12放送)
 ・ 「#712. ハヒフヘホ --- khelf メンバーと学ぶコトバの「音」入門 」(2023/05/13放送)
 ・ 「#713. 英語史上の学説対立を khelf メンバー5人で語る」(2023/05/14放送)

 すべてがお薦めなのですが,あえて私が2点を選ぶとすれば,次のものでしょうか(難しすぎるチョイス!).



 これからも khelf 対談を企画していきます.応援よろしくお願いいたします.

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2023-05-14 Sun

#5130. 「ゆる言語学ラジオ」周りの話題とリンク集 [youtube][yurugengogakuradio][notice][heldio][voicy][note][link]

 5月6日,9日の2回にわたり YouTube チャンネル「ゆる言語学ラジオ」 (yurugengogakuradio) にお邪魔してきました.英単語の語源や綴字について,ゆるい「喜怒哀楽」の観点から,雑談しました.パーソナリティのお二人,堀元さんと水野さんには,たいへんお世話になりました.

 ・ 第1弾 「#227. 歴史言語学者が語源について語ったら,喜怒哀楽が爆発した【喜怒哀楽単語1】」(5月6日)
 ・ 第2弾 「#228. 「英語史の専門家が through の綴りを数えたら515通りあった話【喜怒哀楽単語2】」(5月9日)



 これまで「ゆる言語学ラジオ」の監修,出演,関連するコンテンツの公表を重ねてきました.「hellog~英語史ブログ」「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」note「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」などで雑多に取り上げてきましたが,この辺りで時系列にリンクをまとめておきたいと思います.

 ・ 2023年1月10日,「ゆる言語学ラジオ」監修回 (1) 「#193. ghoti と書いてフィッシュと読む?英語学ジョークを徹底解剖【発音1】」
 ・ 2023年1月13日,hellog 記事 「#5009. なぜバーナード・ショーの綴字ネタ「ghoti = fish」は強引に感じられるのか?」 ([2023-01-13-1])
 ・ 2023年1月14日,「ゆる言語学ラジオ」監修回 (2) 「#194. フランスかぶれ・悪筆・懐古厨.綴りの変遷理由が意外すぎる.【発音2】」
 ・ 2023年1月15日,hellog 記事 「#5011. 英語綴字史は「フランスかぶれ・悪筆・懐古厨」!? by ゆる言語学ラジオ」 ([2023-01-15-1])
 ・ 2023年1月15日,note 記事 「「ゆる言語学ラジオ」の ghoti 回にまつわる堀田リンク集」
 ・ 2023年1月16日,heldio 放送回 「#595. heah/hih/high --- 「ゆる言語学ラジオ」から飛び出した通時的パラダイム」
 ・ 2023年4月19日,井上堀田 YouTube の水野さんゲスト回 (1) 「#120. ゆる言語学ラジオ・水野太貴さんにお越しいただきました!」
 ・ 2023年4月20日,heldio 放送回 「#689. 『言語沼』 --- ゆる言語学ラジオから飛び出した言語本」
 ・ 2023年4月21日,hellog 記事 「#5107. 堀元 見・水野 太貴(著)『言語オタクが友だちに700日間語り続けて引きずり込んだ 言語沼』(あさ出版,2023年)」 ([2023-04-21-1])
 ・ 2023年4月21日,note 記事 「「ゆる言語学ラジオ」水野さんのゲスト出演で井上堀田 YouTube が爆上がりしています(2023年4月21日)」
 ・ 2023年4月26日,井上堀田 YouTube の水野さんゲスト回 (2) 「#122. ゆる言語学ラジオ・水野太貴さん登場!第2弾・語に始まって語に終わる」(4月26日)
 ・ 2023年4月28日,hellog 記事 「#5114. 井上・堀田の YouTube --- ゆる言語学ラジオ・水野太貴さんのゲスト回第2弾」 ([2023-04-28-1])
 ・ 2023年5月3日,井上堀田 YouTube の水野さんゲスト回 (3) 「#124. ゆる言語学ラジオ・水野太貴さん登場!第3弾・ゆる言語学ラジオはゆるくない!」
 ・ 2023年5月4日,hellog 記事 「#5120. 井上・堀田の YouTube --- ゆる言語学ラジオ・水野太貴さんのゲスト回第3弾」 ([2023-05-04-1])
 ・ 2023年5月4日,heldio 放送回 「#703. 母音「あいうえお」入門 --- ゆる言語学ラジオ(著)『言語沼』にインスピレーションを受けて」
 ・ 2023年5月6日,hellog 記事 「#5122. 本日公開の「ゆる言語学ラジオ」に初ゲスト出演しています」 ([2023-05-06-1])
 ・ 2023年5月6日,heldio 放送回 「#705. ゆる言語学ラジオにお招きいただき初めて出演することに!」
 ・ 2023年5月6日,note 記事 「ゆる言井堀コラボ ー 「ゆる言語学ラジオ」×「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」×「Voicy 英語の語源が身につくラジオ (heldio)」」
 ・ 2023年5月6日,「ゆる言語学ラジオ」出演回 (1) 「#227. 歴史言語学者が語源について語ったら,喜怒哀楽が爆発した【喜怒哀楽単語1】」
 ・ 2023年5月9日,hellog 記事 「#5125. 「ゆる言語学ラジオ」初出演回で話題となった縦棒16連発の単語 --- unmummied」 ([2023-05-09-1])
 ・ 2023年5月9日,「ゆる言語学ラジオ」出演回 (2) 「#228. 「英語史の専門家が through の綴りを数えたら515通りあった話【喜怒哀楽単語2】」
 ・ 2023年5月9日,note 記事 「「ゆる言語学ラジオ」から飛んでこられた方に贈る ~ 堀田隆一の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」人気放送回50選」
 ・ 2023年5月10日,hellog 記事 「#5126. 「ゆる言語学ラジオ」出演第2回で話題となった515通りの through の怪」 ([2023-05-10-1])
 ・ 2023年5月10日,井上堀田 YouTube の水野さんゲスト回 (4) 「#126. ゆる言語学ラジオ・水野太貴さん登場!第4弾・水野さんから見たこのチャンネル?」
 ・ 2023年5月11日,hellog 記事 「#5127. 井上・堀田の YouTube --- ゆる言語学ラジオ・水野太貴さんのゲスト回第4弾(最終回)」 ([2023-05-11-1])

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2023-05-10 Wed

#5126. 「ゆる言語学ラジオ」出演第2回で話題となった515通りの through の怪 [youtube][yurugengogakuradio][notice][heldio][voicy][link][spelling][through]


 「ゆる言語学ラジオ」からこちらの「hellog~英語史ブログ」に飛んでこられた皆さん,ぜひ

   (1) 本ブログのアクセス・ランキングのトップ500記事,および
   (2) note 記事,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の人気放送回50選
   (3) note 記事,「ゆる言井堀コラボ ー 「ゆる言語学ラジオ」×「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」×「Voicy 英語の語源が身につくラジオ (heldio)」」

をご覧ください.



 昨日5月9日(火)に,言語界隈では怪物的な YouTube/Podcast チャンネル「ゆる言語学ラジオ」の最新回がアップされました.英語史の観点から興味深い英単語を紹介する回の第2弾で,前回の第1弾に引き続き,出演させていただいています.「英語史の専門家が through の綴りを数えたら515通りあった話【喜怒哀楽単語2】#228」です.ご覧ください.



 今回もっとも注目してもらいたいのは,中英語期(1100--1500年)に through のスペリングが515通りあったという衝撃の事実です.このトピックについては私は機会のあるたびに他の様々なメディアで発信してきましたが,おそらく皆さんの目には狂気の沙汰のように映るのではないかと思います.
 ここで浮かんでくる疑問は,なぜ同じ単語なのにこれほど多くのスペリングが用いられていたのか,不便で仕方がないではないか,というものです.当然の疑問ですね.現代の常識からは考えられない状況ですが,しかし,当時は当時なりの事情があったのです.これについて今朝の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」でお話ししました.ぜひ「#709. なぜ同一単語に多くのスペリングが存在し得たのか? --- 「ゆる言語学ラジオ」出演第2回で話題となった515通りの through の怪」をお聴きください.



 いやはや,現代英語は through (と省略綴字の thru くらいに)にまとまっていて,ありがたいですね.

Referrer (Inside): [2023-05-14-1]

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2023-05-09 Tue

#5125. 「ゆる言語学ラジオ」初出演回で話題となった縦棒16連発の単語 --- unmummied [youtube][yurugengogakuradio][notice][heldio][voicy][link][note][minim][spelling]


 「ゆる言語学ラジオ」からこちらの「hellog~英語史ブログ」に飛んでこられた皆さん,ぜひ

   (1) 本ブログのアクセス・ランキングのトップ500記事,および
   (2) note 記事,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の人気放送回50選
   (3) note 記事,「ゆる言井堀コラボ ー 「ゆる言語学ラジオ」×「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」×「Voicy 英語の語源が身につくラジオ (heldio)」」

をご覧ください.



 先日5月6日(土)に,人気 YouTube チャンネル「ゆる言語学ラジオ」に初出演させていただきました.パーソナリティの堀元さんと水野さんに挟まれて,英語史の観点からオモシロイ英単語をいくつか取り上げています.「歴史言語学者が語源について語ったら,喜怒哀楽が爆発した【喜怒哀楽単語1】#227」です.



 この記念すべき初出演回に合わせて,当日,3つほど関連するコンテンツを発信しました.「ゆる言語学ラジオ」との馴れ初めその他の雑談風の話題が多いですが,ご関心のある方はぜひどうぞ.

 (1) 本ブログの記事 「#5122. 本日公開の「ゆる言語学ラジオ」に初ゲスト出演しています」 ([2023-05-06-1])
 (2) Voicy heldio 放送回 「#705. ゆる言語学ラジオにお招きいただき初めて出演することに!」
 (3) note 記事 「ゆる言井堀コラボ ー 「ゆる言語学ラジオ」×「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」×「Voicy 英語の語源が身につくラジオ (heldio)」」

 さて,上記の初出演回では <i, n, m, u> などの縦棒 (minim) で主として構成される「怒れる」単語として unmummied を紹介しました.元ネタは本ブログの「#4134. unmummied --- 縦棒で綴っていたら大変なことになっていた単語の王者」 ([2020-08-21-1]) で取り上げています.英語史では,縦棒に関する驚きの話題は尽きませんが,今朝の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」でいくつか話していますので,ぜひお聴きいただければ.「#708. unmummied --- 「ゆる言語学ラジオ」初出演回で話題となった縦棒16連発を記録した単語」です.



 本日5月9日(火)中に「ゆる言語学ラジオ」の最新回として上記の続編が配信される予定です.英語史の立場からみて,さらに凄まじい単語を多く挙げています.公開されましたら,ぜひそちらもご視聴いただければと思います.

Referrer (Inside): [2024-01-01-1] [2023-05-14-1]

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2023-05-07 Sun

#5123. 「単語の語源を言い当てる」とは何か? --- 本日開幕した「語源バトル」のルールをめぐって [etymology][voicy][heldio][khelf][masanyan][fujiwarakun][folk_etymology][word_formation][loan_word][hellog_entry_set]

 GW も最終日ですが,この連休中は Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて様々な対談企画を展開してきました.この余韻は GW 後も向こう1週間ほど続く予定ですので,どうぞお付き合い下さい.
 今朝の heldio では,khelf(慶應英語史フォーラム)のメンバー2人とともに軽いノリで英単語の語源 (etymology) をめぐる遊びを披露しています.「#706. 爆笑・語源バトル with まさにゃん&藤原くん」です.30分超の放送回となりますので,お時間のあるときにどうぞ.



 お聴きになれば分かる通り,今回の「語源バトル」は,ゲームそのものを実施したというよりは,ゲームのルール作りに着手したというのが正確なところです.単語の語源とはいったい何か? 「単語の語源を言い当てる」とは,結局何を答えればよいのか? ゲームのルール作りを念頭に考えてみると,問題が具体的に挙がってくるのが良いところです.放送中にもいくつかの問題点が持ち上がりました.

 ・ 何段階もの借用を経てきた単語について,直近の借用元言語を答えるべきか,その前段階の借用元言語を答えるべきか,あるいは究極の祖語(しばしば印欧祖語)を答えるべきか.
 ・ 借用語について,ラテン語からか,フランス語からか,という問いはしばしば解決が困難である.「ラテン系」などととして逃げることは,どこまで妥当か.(cf. こちらの記事セット)
 ・ taking のような語形については,語幹 take と屈折語尾 -ing の語源をそれぞれ答える必要があるのか.
 ・ 複合語や派生語の場合,構成する各形態素について語源を明らかにする必要があるのか.
 ・ UK のような省略語の語源とは,展開した United Kingdom が答えとなるのか.あるいは,Unite, -ed, King, -dom の各々の語源を答える必要があるのか.

 その他,思いつくままに問題点を挙げてみると,ルール作りがなかなか厄介な仕事であることが分かってきます.

 ・ 本来語という答えは多くなりそうだが,本来語とは何か.
 ・ 語源説が揺れている単語(実際にかなり多いと思われる)の回答は何になるのか.
 ・ 固有名詞の語源とは何か.
 ・ 語源と語形成は何がどう異なるのか.
 ・ 民間語源 (folk_etymology) と学者語源は区別する必要があるのか.

 これらは結局のところ「単語の語源とは何か」というメタな問いを発していることにほかなりません.この問いを議論するに当たって,まず「#3847. etymon」 ([2019-11-08-1]) を参照していただければと思います.
 以下,「語源バトル」に出演した2人の HP へのリンクを張っておきます.

 ・ 「まさにゃん」こと森田真登さん(武蔵野学院大学): https://note.com/masanyan_frisian/n/n01938cbedec6
 ・ 藤原郁弥さん(慶應義塾大学大学院生): https://sites.google.com/view/drevneanglijskij-jazyk/home

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2023-05-06 Sat

#5122. 本日公開の「ゆる言語学ラジオ」に初ゲスト出演しています [youtube][yurugengogakuradio][notice][heldio][voicy][link][note]

 水野太貴さんと堀元見さんがパーソナリティを務める YouTube/Podcast の人気チャンネル「ゆる言語学ラジオ」の最新動画が,本日アップされました.今回から5月9日(火)の次回にかけての2回にわたり,私,堀田隆一がゲストとして出演し,お2人のトークに絡む形で英単語の語源の話しなどをしています.タイトルは「歴史言語学者が語源について語ったら,喜怒哀楽が爆発した【喜怒哀楽単語1】#227」です.



 こちらの回の収録は3月下旬のことでした.そのときの収録裏話や「ゆる言語学ラジオ」さんとの馴れ初め(?)なども含めて,今朝の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて独り語りしています.皆さんに楽しくお聴きいただけるのではないかと.「#705. ゆる言語学ラジオにお招きいただき初めて出演することに!」です.



 「ゆる言語学ラジオ」ファンの方々には,私がやはり本日アップした note 記事「ゆる言井堀コラボ ー 「ゆる言語学ラジオ」×「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」×「Voicy 英語の語源が身につくラジオ (heldio)」」もご一読いただければと思います.



 「ゆる言語学ラジオ」最新回で私が提供した話題のうち cow/beef/butter/buffalounmummied については,本ブログでも取り上げてきています.関心をもった方は以下 hellog 記事や heldio 放送回で理解を深めていただければと思います.

 ・ heldio 「#335. cow と beef と butter が同語根って冗談ですか?」
 ・ hellog 「#1151. 多くの謎を解き明かす軟口蓋唇音」 ([2012-06-21-1])
 ・ hellog「#4134. unmummied --- 縦棒で綴っていたら大変なことになっていた単語の王者」 ([2020-08-21-1])

 「ゆる言語学ラジオ」は YouTube で18.8万人,Podcast で3万人のフォロワーを擁する言語界隈では怪物のようなチャンネルです.今回このビッグチャンネルにお呼びいただきまして,これを機に英語史というマイナーな分野の存在が,少しでも多くの視聴者の方々に知られるようになればと期待しています.水野さん,堀元さん,ありがとうございました!
 「ゆる言語学ラジオ」は,実は Voicy 版もあります.その点では同業者(?)ですね.このたびの最新回はこちらから聴取できます.



 なお Voicy 放送は,以下からダウンロードできるアプリ(無料)を使うとより快適に聴取できますので,ぜひご利用ください.

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2023-05-05 Fri

#5121. 音象徴は言語学では周辺的な位置づけ [link][sound_symbolism][phonaesthesia][onomatopoeia][japanese][contrastive_linguistics][voicy][heldio][khelf][goshosan][masanyan][fujiwarakun][youtube]

 この GW は,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて khelf(慶應英語史フォーラム)協賛の対談企画を展開しています.日々 khelf メンバーが入れ替り立ち替り現われ,落ち着いて対談したり,あるいはパーティのように賑やかに盛り上がったりしています.
 heldio は毎朝6時に更新していますが,今朝公開された最新回は「#704. なぜ日本語には擬音語・擬態語が多いのか? --- 森田まさにゃん,五所さん,藤原くんと音象徴を語る爆笑回」です.音象徴 (sound_symbolism) をめぐって4人が賑やかに雑談しています.



 この回は,一昨日の放送回「#702. いいネーミングとは? --- 五所万実さん,藤原郁弥さん,まさにゃんとの対談」の続編でもありますので,ぜひそちらもお聴きください.
 今回取り上げた音象徴は,常に人気のある話題です.日本語生活においてオノマトペ (onomatopoeia) はとても身近ですし,日常的な商標などに反映されている音のイメージの話題も関心を引きます.しかし,音象徴は,その話題性の高さとは裏腹に,言語学においては周辺的な存在とみられることが多いのです.なぜかというと,音「象徴」という呼び名が示唆するとおり,そこに意味があるのかないのかよく分からない,微妙な位置づけだからです.普遍的なような,それでいて恣意的なような・・・.
 音象徴について本ブログでも様々に取り上げてきましたが,今回は heldio 対談という形で,この魅力的な話題に4人で再訪した次第です.
 以下に,今回の出演者3名のプロフィールページへのリンクを張っておきます.

 ・ 五所万実さん(目白大学): https://researchmap.jp/mamg
 ・ 「まさにゃん」こと森田真登さん(武蔵野学院大学): https://note.com/masanyan_frisian/n/n01938cbedec6
 ・ 藤原郁弥さん(慶應義塾大学大学院生): https://sites.google.com/view/drevneanglijskij-jazyk/home

 雑談の最後に触れられている,まさにゃんによる YouTube チャンネル「まさにゃんチャンネル【英語史】」の2.4万回再生を誇る人気動画「語源で学ぶ英単語?【st, fl, sw, sp, gl】」では,英語における音象徴の興味深い事例が取り上げられています.ぜひこちらもご視聴ください.


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2023-05-04 Thu

#5120. 井上・堀田の YouTube --- ゆる言語学ラジオ・水野太貴さんのゲスト回第3弾 [youtube][yurugengogakuradio][notice][heldio][voicy][link]

 昨日5月3日(水)の夕方6時に,「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」の最新回が公開されました.今回は,コトバをテーマとする YouTube/Podcast の人気トーク・チャンネル『ゆる言語学ラジオ』のパーソナリティの1人,水野太貴さんをゲストとしてお迎えしています(もう1人のパーソナリティは堀元見さんです).水野さんとの飲み会対談シリーズも第3弾となりました.「#124. ゆる言語学ラジオ・水野太貴さん登場!第3弾・ゆる言語学ラジオはゆるくない!」です.過去の2回と合わせてご覧ください.水野さんとの対談シリーズは来週まで続きます.



 ・ 第1弾 「#120. ゆる言語学ラジオ・水野太貴さんにお越しいただきました!」(4月19日)
 ・ 第2弾 「#122. ゆる言語学ラジオ・水野太貴さん登場!第2弾・語に始まって語に終わる」(4月26日)
 ・ 第3弾 「#124. ゆる言語学ラジオ・水野太貴さん登場!第3弾・ゆる言語学ラジオはゆるくない!」(5月3日)

 ゆる言語学ラジオのお二人による初の著書『言語オタクが友だちに700日間語り続けて引きずり込んだ 言語沼』(あさ出版,2023年)が好評発売中です.先日 Voicy heldio にて 「#689. 『言語沼』 --- ゆる言語学ラジオから飛び出した言語本」と題して本書を音声で紹介しましたので,そちらもお聴きください.


堀元 見・水野 太貴 『言語オタクが友だちに700日間語り続けて引きずり込んだ 言語沼』 あさ出版,2023年.



 そして,今朝の Voicy heldio でも,『言語沼』でなされている母音に関する紙上トークにインスピレーションを受け,「#703. 母音「あいうえお」入門 --- ゆる言語学ラジオ(著)『言語沼』にインスピレーションを受けてを配信しています.音声学入門の入門としてお聴きいただければ.



 なお,明後日5月6日(土)に公開予定の『ゆる言語学ラジオ』の最新回では,今度は私のほうがゲストとして出演させていただくことになっています.ぜひそちらもご期待いただければと.

Referrer (Inside): [2024-01-01-1] [2023-05-14-1]

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2023-05-02 Tue

#5118. Japan-ese の語尾を深掘りする by khelf 新会長 [aokikun][voicy][heldio][khelf][colloquia][link][demonym][suffix][onomastics]

 皆さん,なぜ Japan には -ese という語尾がつくのか,気になりますよね? *Japan-ian でもなく *Japan-ish でもなく,英語では Japan-ese ということになっています.
 この問題に英語史あるいは英語歴史言語学の観点から踏み込んでみると,魅惑的かつ複雑なパズルが展開しています.khelf(慶應英語史フォーラム)の新会長の青木輝さんが,この問題に分け入っています.
 今朝の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」では,青木さんとの対談でこの対談を深掘りしています.「#701. なぜ「日本人」は Japan-ese なの?の深掘り回 --- 青木輝さんとの対談」をお聴きください.



 この対談のベースとなっているのは,『コロキア』 (Colloquia) の論文として公表されている以下のものです.

 ・ Aoki, Hikaru. "Why Japan-ese and Not Japan-ian?: Historical Relations between Demonymic Suffixes and Country Names." Colloquia 43 (2022): 85--102.

 この論文に基づいて,青木さんは khelf 活動を通じて,たびたび研究成果を公開してきています.

 ・ 『英語史新聞』第5号の第1面の記事「人々の名称の謎を追う --- なぜ X-ish という呼び名はイギリス周辺に多いのか --- なぜ X-ish という呼び名はイギリス周辺に多いのか ---」
 ・ heldio 「#680. なぜ「日本人」は Japanian などではなく Japanese なの? --- 青木輝さんとの対談
 ・ heldio 「#683. なぜ English のように -ish のつく呼び名はイギリス周辺に多いの? --- 青木輝さんとの対談」

Referrer (Inside): [2024-01-07-1]

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2023-05-01 Mon

#5117. 語中音添加についてのコンテンツを紹介 [voicy][heldio][start_up_hel_2023][hel_contents_50_2023][phonetics][phonology][sound_change][consonant][epenthesis][khelf][panopto][youtube][heltube][fujiwarakun]

 この GW 中は毎日のように Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて khelf(慶應英語史フォーラム)メンバーとの対談回をお届けしています.一方,khelf では「英語史コンテンツ50」も開催中です.そこで両者を掛け合わせた形でコンテンツの紹介をするのもおもしろそうだ思い,先日「#5115. アルファベットの起源と発達についての2つのコンテンツ」 ([2023-04-29-1]) を紹介しました.
 今回も英語史コンテンツと heldio を引っかけた話題です.4月20日に大学院生により公開されたコンテンツ「#7. consumption の p はどこから?」に注目します.


「#7. consumption の p はどこから?」



 今回,このコンテンツの heldio 版を作りました.作成者の藤原郁弥さんとの対談回です.「#700. consumption の p はどこから? --- 藤原郁弥さんの再登場」として配信していますので,ぜひお聴きください.発音に関する話題なのでラジオとの相性は抜群です.



 コンテンツや対談で触れられている語中音添加 (epenthesis) は,古今東西でよく生じる音変化の1種です.今回の consumption, assumption, resumption の /p/ のほかに epenthesis が関わる英単語を挙げてみます.

 ・ September, November, December, number の /b/
 ・ Hampshire, Thompson, empty の /p/
 ・ passenger, messenger, nightingale の /n/

 そのほか she の語形の起源をめぐる仮説の1つでは,epenthesis の関与が議論されています(cf. 「#4769. she の語源説 --- Laing and Lass による "Yod Epenthesis" 説の紹介」 ([2022-05-18-1])).
 epenthesis と関連するその他の音変化については「#739. glide, prosthesis, epenthesis, paragoge」 ([2011-05-06-1]) もご参照ください.
 対談中に私が披露した「両唇をくっつけずに /m/ を発音する裏技」は,ラジオでは通じにくかったので,こちらの動画を作成しましたのでご覧ください(YouTube 版はこちら).音声学的に味わっていただければ.

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2023-04-30 Sun

#5116. 4月28日の heldio 生放送「英語に関する素朴な疑問千本ノック(矢冨&堀田&まさにゃん)」のまとめ [senbonknock][voicy][heldio][notice][hel_education][sobokunagimon][khelf][masanyan]

 一昨日の4月28日の午後3時過ぎより約60分間,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の生放送で「英語に関する素朴な疑問千本ノック(矢冨&堀田&まさにゃん)」を khelf 協賛でお届けしました.今回も多くの方にライヴで聴いていただき,さらに投げ込み質問も多数いただきました.難問・珍問が続出し,うまく回答できないものもありましたが,出演者とギャラリー一同,たいへん勉強になりました.聴いていただいたリスナーの皆さんにも,英語史の面白さと難しさを感じていただけたのではないでしょうか.
 生放送を収録したものを,今朝レギュラー放送として公開しました.「#699. 4月28日に「英語に関する素朴な疑問千本ノック(矢冨&堀田&まさにゃん)」を生放送でお届けしました」です.



 全体で17の質問に回答し,ときにギャラリーにも加わってもらい議論となりましたが,楽しかったです.適度な緊張と興奮がやめられませんね.各質問の分秒を一覧しておきます.ちなみに,いまや heldio 名物となった「まさにゃん暴走」は12:41辺りから始まる第5問目「kid と child が同じ意味なのはなぜ?」の回答中でお聴きになれます.

 (1) 01:13 --- なぜ am は I の後ろにしか来ないのですか?
 (2) 04:33 --- なぜ I am Japanese. となり I am a Japanese. とは言わないのですか?
 (3) 07:46 --- なぜ未来の確定したことは現在形で表現できるのですか?
 (4) 10:28 --- 現在と過去は動詞の語尾で示せますが未来は語尾で示せないのはなぜ?
 (5) 12:41 --- kid と child が同じ意味なのはなぜ?(cf. この問いでは,いまや heldio 名物となった「まさにゃん暴走」を聴けます)
 (6) 18:56 --- honest や hour の h を発音しないのはなぜ?(cf. 先日の「#5108. 4月20日の heldio 生放送「英語に関する素朴な疑問 千本ノック」のまとめ」の (3) で回答を試みています)
 (7) 20:54 --- an historical というつながりを見たことがありますが a ではないのですか?
 (8) 22:34 --- leaf の複数形は leaves ですが,belief の複数形は beliefs です.なぜですか?
 (9) 25:48 --- so は短いのに意味が多すぎます.なぜですか?
 (10) 30:49 --- 英文法は誰が定めたのですか,あるいはどのように成立したのですか?
 (11) 33:30 --- is も am も過去形ではともに was になるのはなぜですか?
 (12) 38:21 --- なぜ不定詞には for ではなく to がつくのですか? 他の前置詞ではダメだったのですか?
 (13) 41:08 --- なぜ使役では能動態だと原形不定詞を,受動態では to 不定詞を用いるのですか?
 (14) 44:29 --- なぜ自動詞と他動詞は分かれたのですか?
 (15) 49:45 --- It is fine today. ではなく Today is fine. というと不自然なのはなぜですか?
 (16) 52:42 --- baggage と luggage の綴字が似ているのは歴史的に関係があるからですか?
 (17) 53:57 --- 英語史上の最大の学説対立があれば教えてください.

 過去の「千本ノック」回については「#5005. 過去17回の heldio 「千本ノック」の一覧」 ([2023-01-09-1]) あるいは senbonknock をご覧ください.

Referrer (Inside): [2023-01-09-1]

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2023-04-29 Sat

#5115. アルファベットの起源と発達についての2つのコンテンツ [voicy][heldio][start_up_hel_2023][hel_contents_50_2023][alphabet][grammatology][etruscan][greek][latin][history][khelf]

 4月も終わりに近づき,GW が始まりました.この新年度,khelf(慶應英語史フォーラム)では「英語史スタートアップ」企画 (cat:start_up_hel_2023) の一環として「英語史コンテンツ50」を開催中です.コツコツとコンテンツが積み上がり,すでに14本が公開されています.連休中は休止しますが,これからもまだまだ続きます.
 今日はこれまでのストックのなかから,アルファベットの歴史に関する大学院生のコンテンツを紹介しましょう.4月19日に公開された「#6. <b> と <d> は紛らわしい!」です.タイトルからは想像できないかもしれませんが,コンテンツの前半はアルファベットの起源と発達,とりわけローマ字の歴史に焦点が当てられています.


「#6. <b> と <d> は紛らわしい!」



 このたび,同コンテンツを作成者との対談という形でラジオ化しました.Voicy [「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」より「#698. 先生,アルファベットの歴史を教えてください! --- 寺澤志帆さんとの対談」として配信していますので,そちらを合わせてお聴きください.



 本ブログよりアルファベットの歴史に関する記事としては以下を参照ください.

 ・ 「#423. アルファベットの歴史」 ([2010-06-24-1])
 ・ 「#490. アルファベットの起源は North Semitic よりも前に遡る?」 ([2010-08-30-1])
 ・ 「#2888. 文字史におけるフェニキア文字の重要性」 ([2017-03-24-1])
 ・ 「#1849. アルファベットの系統図」 ([2014-05-20-1])

Referrer (Inside): [2023-05-01-1]

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2023-04-28 Fri

#5114. 井上・堀田の YouTube --- ゆる言語学ラジオ・水野太貴さんのゲスト回第2弾 [youtube][yurugengogakuradio][notice][heldio][voicy][note][link]

 GW直前ということで肩の力を抜いて「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」のお知らせをいたします.
 昨年の2月26日に,慶應義塾大学文学部英米文学専攻の同僚である井上逸兵氏とともに YouTube チャンネルを始めました.水・日曜日のそれぞれ午後6時に新作動画を公開しています.最近は水曜日の回は「飲み会回」となっていますが,先週と今週の水曜日には,人気 YouTube/Podcast チャンネル『ゆる言語学ラジオ』のパーソナリティの1人,水野太貴さんにゲスト出演していただいています(もう1人は堀元見さんです).3人で言語(愛)について気楽におしゃべりしていますので,ぜひご覧ください.

 ・ 第1弾 「#120. ゆる言語学ラジオ・水野太貴さんにお越しいただきました!」(4月19日)
 ・ 第2弾 「#122. ゆる言語学ラジオ・水野太貴さん登場!第2弾・語に始まって語に終わる」(4月26日)



 売れっ子の水野さんが初めて出演された先週の水曜日の第1弾の折りには,あまりの視聴回数の伸びに,井上氏とともに驚きました.あまりの驚きに,noteにて「「ゆる言語学ラジオ」水野さんのゲスト出演で井上堀田 YouTube が爆上がりしています(2023年4月21日)」を書いてしまったほどです.
 さて,ゆる言語学ラジオのお二人による初の著書『言語オタクが友だちに700日間語り続けて引きずり込んだ 言語沼』(あさ出版,2023年)が今月上旬に出版されています.この新著をご献本いただきまして,先日 Voicy heldio にて 「#689. 『言語沼』 --- ゆる言語学ラジオから飛び出した言語本」と題してお話ししています.ぜひお聴きください.
 その他,ゆる言語学ラジオと関連して次のような記事も書いてきましたので,よろしければどうぞ.

 ・ 「#5009. なぜバーナード・ショーの綴字ネタ「ghoti = fish」は強引に感じられるのか?」 ([2023-01-13-1])
 ・ 「#5011. 英語綴字史は「フランスかぶれ・悪筆・懐古厨」!? by ゆる言語学ラジオ」 ([2023-01-15-1])
 ・ note 「「ゆる言語学ラジオ」の ghoti 回にまつわる堀田リンク集」
 ・ 「#5107. 堀元 見・水野 太貴(著)『言語オタクが友だちに700日間語り続けて引きずり込んだ 言語沼』(あさ出版,2023年)」 ([2023-04-21-1])

 YouTube での水野さんとの「飲み会回」は,来週以降も続きます!

Referrer (Inside): [2023-05-14-1]

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2023-04-27 Thu

#5113. 「英語史を学ぶとこんなに良いことがある!」放送回への反響 [voicy][heldio][hel_education]

 新年度の始まりとともに,英語史の学びを促す「hel活」に精を出しています.英語の学習に力を入れている人々は多数いる一方,英語史を学ぼうとする人々は一握りです.多くの人々にとって,英語史を学ぶ意義が自明ではないからだろうと思います.
 そこで,この4月には様々な機会を捉えて,昨年の夏に私が Voicy heldio で語った「#444. 英語史を学ぶとこんなに良いことがある!」を聴いてもらっています.本ブログをお読みの皆さんも,ぜひお聴きいただければ.



 大学の授業を通じて多くの学生に聴いてもらいました.たくさん感想を寄せてもらいましたので,その一部を抜粋して示します.上記放送を聴取するにあたって,そして英語(史)を学ぶにあたって,参考になれば.

英語史を学ぶことの意義として,「役に立つ」と「価値がある」の大きく2種類の動機があるというお話に関して,これは大学の学問全てに共通していえることだと感じました.


私は教職習得を目指しており,今年教育実習に行く身なので,英語史がどのように教育に役に立つかを取り上げてもらえたことは,大変うれしく思いました.


英語史という一見遠回りに感じられるが,体系的な知識を得ることで,その知識をさまざまな角度で応用することが可能になり,英語を深く理解する近道であると感じた.


挙げられていた7つの利点のうち,私は知的好奇心が満たされる,という点が興味深かった.疑問を押し殺したまま知識を積み上げるだけでは,つまらないという感情に繋がってしまい,何の役に立つのかという批判に変わってしまうため,好奇心を満たすことというのは,特に大切な事であるように感じた.


通時的な視点と共時的な視点が大事であり,この2つの中で多くの人は共時的な視点で物事をとらえていると知った.また,その中で通時的な視点を持てるようになると世界の見方が変わり,他の人と違う視点に立てるということを知り,ぜひ自分も通時的に物事をとらえられるようになりたいと感じた.


英語史を学ぶことに関して,言葉との新しい付き合い方,見方を提案するものだという考えが印象に残りました.


すぐに役に立つとは限らないが,それでも何かに偶然結びつくかもしれない「価値がある」知識や知見を身につけておくことが,AI にはない人間ならではの価値をこれからも維持する方法の一つになると私は感じた.


私も英語を学ぶ理由があまり分からなく,ただ,学校や親から言われたから英語の勉強する,という理由で英語の学んできた.しかし,今日の放送を聴いてみたら,その理由が明らかに私の頭の中に入り,英語学習への意欲が高くなった.


実は私は英語の教員免許(中高両方)をとりたいと考えて,教職課程に登録しています.なので,英語史を学ぶ意味が学習・教育のためにもなる,という話を聞いて,これからもしっかりと学んでいこうという気持ちになりました.


英語史を学ぶモチベーションの7つを学んだ.その中でも私が最も惹かれたものは,「発想法としての通時的視点を身につけることが出来る」というものだ.英語史を学ぶ意義は全て英語に関わると今まで考えていたが,この放送を聞き,英語や,そもそも言語という概念を超えて,ものの見方としての通時的視点が身につくということは非常に興味深いと思った.身につける機会が少ない,またはそもそも多くの人が身につけることすら試みない,通時的視点を,英語と歴史を通じて,今後学んでいきたいと考えた.


英語科と歴史科は平行線でまじわることがないけれど,英語史では交わるどころか接点が多いという点にとても興味を持ちました.


言葉が楽しい=日常生活が楽しめるというのにすごく共感を覚えました.


物事を共時的・通時的な観点で捉えることで鍛えられた視点の切り替え方は普遍性がある.物事を別の視点から捉えることで打開できることは多々あると経験的に言えるため,その能力を育むことができるのは実は非常に優れた点ではないだろうかと思われる.


英語史を学ぶことが,役に立つ以上に価値があるということに気付けたので本当に良かった.私は最近,教員になりたいということもあり,挙げられていた7点のうち 1--3 について深く実感した.しかし,このことは裏を返せば英語史を学んで得られることの真髄にまでは到達していないということでもあると思うので,これからさらに英語史を学んでいくにつれて,英語史の奥深さにより一層のめり込んでいけたらと思う.


自身の母語が当の英語でないからこそ,母語話者の視座からでは近くて見えにくかった,あるいは見えなかった事象をキャッチできる,という話は心強く,大きなモチベーションにつながりました.


英語史を学ぶモチベーションに関して,この学問を学ぶことによって新しいものの見方に出会えるというところに魅力を感じた.多くの視点を獲得するほど,世界の捉え方が多様になり,未知の気づきを得れる.このことこそ学ぶことの大切さであると考える.


英語史を学ぶことによるメリットについての感想ですが,非常に熱い気持ちになりました.確かになぜ私が英語の勉強するかと言えば,実用性と言うものを求めている事は間違いないのですが,そうではない部分に価値を見出し,それに向かって取り組む先生の考え方は,非常に私も共感するところが多いのです.

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2023-04-25 Tue

#5111. チョーサーによるブルトン・レ「地方地主の話の序」を読む [chaucer][canterbury_tales][franklins_tale][breton_lai][me_text][celtic][breton][voicy][heldio][me_text][literature][brittany_exhibition]

 今回は Geoffrey Chaucer (1340?--1400) の傑作 The Canterbury Tales より The Franklin's Tale 「地方地主の話の序」を読んでみたい.
 この作品は,ブルターニュ地方が舞台となっている.ブルターニュといえば,ブリテン島のケルト人の一派が,5--6世紀にアングロサクソン人による侵攻から逃れ,イギリス海峡を南に越えてたどり着いたフランス側の土地である.その地には現在もブルトン人が住んでおり,ブルトン語 (Breton) を話している.
 ブルトン人たちは Breton lai (ブルトン・レ)と呼ばれる短い物語詩のジャンルを生み出し,そのジャンルは海峡の両側に伝わっている.フランス側では Marie de France (c. 1160--1215) がフランス語で書いた作品が有名だが,ブリテン島側でも翻案作品が著わされた.今回のチョーサーによる「地方地主の話」は,その1つである.
 「地方地主の話の序」の中英語原文を The Riverside Chaucer より,日本語訳を『カンタベリ物語 共同新訳版』より引用する.

          THE FRANKLIN'S PROLOGUE
          
          Prologe of the Frankeleyns Tale.

l. 709   Thise olde gentil Britouns in hir dayes
710Of diverse aventures maden layes,
711Rymeyed in hir firste Briton tonge,
712Whiche layes with hir instrumentz they songe
713Or elles redden hem for hir plesaunce;
714And oon of hem have I in remembraunce,
715Which I shal seyn with good wyl as I kan.
716   But, sires, by cause I am a burel man,
717At my bigynnyng first I yow biseche,
718Have me excused of my rude speche.
719I lerned nevere rethorik, certeyn;
720Thyng that I speke, it moot be bare and pleyn.
721I sleep nevere on the Mount of Pernaso,
722Ne lerned Marcus Tullius Scithero.
723Colours ne knowe I none, withouten drede,
724But swiche colours as growen in the mede,
725Or elles swiche as men dye or peynte.
726Colours of rethoryk been to me queynte;
727My spirit feeleth noght of swich mateere.
728But if yow list, my tale shul ye heere.


 地方地主の話の序

 今は昔,雅びなブルターニュの人たちは,さまざまなできごとを歌に詠み,いにしえのケルトの言葉で技をこらし,楽器に合わせて歌ったり,読み語りを楽しんだりしておりました.そのような話をひとつ覚えていますので,微力を尽くしてお話ししたいと思っております.
 けれども,何しろ学がないもので,乱暴な言葉遣いをお許しいただくよう,まずは皆さんにお願いします.まったく,修辞学なんぞ習ったこともなく,あからさまな話し方しかできんのです.パルナッソス山で眠ったこともなければ,マルクス・トゥリウス・キケロを学んだこともない.言葉のあやなどさっぱりで,目もあやな野の花や,染めたり織ったりのあやしか知らんのです.語りのあやは解らんし,その類のセンスも持ちあわせておらん.でも,よろしければ話をお聞き下さい.


 なお,上記の中英語原文を今朝の Voicy heldio で読み上げている.中英語に関心がある方,読解に挑戦してみたいと思う方は,ぜひ「#694. チョーサーによるブルトン・レ「地方地主の話の序」を原文で味わってみませんか?」をお聴きください.



 ・ Benson, Larry D., ed. The Riverside Chaucer. 3rd ed. Oxford: OUP, 1987.
 ・ ジェフリー・チョーサー(著),池上 忠弘(監訳) 『カンタベリ物語 共同新訳版』 悠書館,2021年.
 ・ 池上 昌・堀田 隆一・狩野 晃一 「チョーサーの英語」 『チョーサー巡礼 古典の遺産と中世の新しい息吹に導かれて』(池上 忠弘(企画),狩野 晃一(編)) 悠書館,2022年.93--124頁.

Referrer (Inside): [2024-01-01-1]

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2023-04-24 Mon

#5110. 国立西洋美術館「憧憬の地 ブルターニュ展」訪問に向けての予習 [museum][seminar][khelf][celtic][breton][voicy][heldio][breton_lai][contact][literature][linguistic_imperialism][language_death][brittany_exhibition]

 目下,東京・上野の国立西洋美術館にて「憧憬の地 ブルターニュ ー モネ,ゴーガン,黒田清輝らが見た異郷」展覧会が開催中です.開催期間は3月18日から6月11日までとなっています.


「憧憬の地 ブルターニュ ー モネ,ゴーガン,黒田清輝らが見た異郷」



 この開催の機会をとらえ,今学期の私のゼミでは「英語史とケルト,英語史とブルターニュ」をテーマとして,事前に予習した上で,5月末辺りに課外活動としてゼミの皆で展覧会を訪れる予定です.今後,本ブログでも Voicy heldio でも,関係する話題がチラホラ出てくるかと思います.本記事をお読みの皆さんも,ぜひブルターニュ(展)に関心を寄せていただければと.
 フランス北西部ブルターニュ地方では,ケルト語派のブルトン語 (Breton) が伝統的に話されています.ただし,地域の強大言語であるフランス語に押されているという事実があります.これはブリテン諸島の北や西のコーナーで,ケルト系諸語が英語に圧迫されているのと平行的な状況です.
 ケルト諸語の分布や歴史については「#774. ケルト語の分布」 ([2011-06-10-1]),「#778. P-Celtic と Q-Celtic」 ([2011-06-14-1]),「#779. Cornish と Manx」 ([2011-06-15-1]),「#3113. アングロサクソン人は本当にイングランドを素早く征服したのか?」 ([2017-11-04-1]),「#3761. ブリテンとブルターニュ」 ([2019-08-14-1]),「#4491. 1300年かかったイングランドの完全英語化」 ([2021-08-13-1]) を含む celtic の記事を参照してください.また,昨日の Voicy heldio では,関連して「#692. ケルト語派を紹介します」を配信しています.
 展覧会訪問までの「英語史とケルト,英語史とブルターニュ」のための予習事項は,主として以下の3点です.

 1. 歴史的にみる英語の拡大とケルト諸語の縮小
 2. 中英語で書かれたブルトン・レ (Breton lai)
 3. 英語とケルト語の言語接触

 今朝の Voicy heldio では,本記事と同様の内容でおしゃべりしています.「#693. 英語史とケルト,英語史とブルターニュ --- 国立西洋美術館の「憧憬の地 ブルターニュ展」訪問に向けて」です,ぜひお聴きください.



 国立西洋美術館の「憧憬の地 ブルターニュ展」,およびこれから1ヶ月ほど追いかけていく「英語史とケルト,英語史とブルターニュ」というテーマについて,ぜひご注目ください.

Referrer (Inside): [2024-01-01-1]

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2023-04-23 Sun

#5109. 「千本ノック」公開企画の意外な効用 [senbonknock][voicy][heldio][notice][hel_education][sobokunagimon][mond]

 昨日の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて,4月20日に質問者の学生が居合わせるなかで生放送収録した「英語に関する素朴な疑問 千本ノック」をアーカイヴとして配信しました.「#691. 4月20日に「英語に関する素朴な疑問 千本ノック」を heldio 生放送でお届けしました」をお聴きください(60分ほどの長さですので,お時間のあるときにとうぞ).



 英語学習者その他から英語に関する素朴な疑問を事前あるいは即興で寄せてもらい,それに対して私が英語史研究者の立場から回答するという試みは,様々な形でたびたび行なってきました.大学の授業や一般の講座でも行なってきましたし,本ブログでも sobokunagimon のタグのついた多くの記事で素朴な疑問に回答しています.また,知識共有サービス「Mond」でも,一般から寄せられた問いに専門的に答えてきました.ちょうど今朝も Mond にて than usually ならぬ than usual という表現についての疑問に回答したところです.
 そして,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」でも,1年ほど前に「#341. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック」を配信したのを皮切りに,ときに他の英語史研究者を回答者としてお招きする形で19回ほど千本ノック企画を公開してきました.19回の履歴は「#5005. 過去17回の heldio 「千本ノック」の一覧」 ([2023-01-09-1]) をご覧ください.
 とりわけ居合わせた学生などから直接に素朴な疑問を出してもらい,その場で回答するという,Voicy heldio 生放送でのスタイルは,新鮮で緊張感もあり私自身は好きなのですが,何よりも貴重なのは,その後に寄せられてくる反響のコメントです.今回の千本ノックが終わった後,学生たちに感想を書いてもらいました.いくつか紹介します(ただし,軽微な修正を含め文章に最小限の編集を施していることを断わっておきます).

質問によって多くのことに目を向けられるようになる気がした.他の人の疑問や,視点を知れたことで確かにと思うことや,そこから発展して疑問に思うことなどなど自分1人では思いつかないようなことをたくさん知れ,それこそがみんなで学習する意味なのだと改めて感じた.


今まで積んできた英語学習の中で,恐らくたくさんの疑問を抱えてきたはずだが,いざそれらの素朴な疑問を挙げるとなると,なかなか思い出すことができなかった.しかし,他の受講生の方の疑問を聞いていると,自身もかつて疑問に思ったな,と感じるものであったり,逆になるほど,そのような疑問もあったか,などというようなものもあり,とても新鮮に感じながら聞くことができた.


みんなが出してくれた疑問を聞いてみると,「確かに不思議だな」「そういえばなんでなんだろう」と感じるものばかりで,私もその回答を聞くことが楽しく,ワクワクしながら聞いていた.


同じ立場の人たちが英語に関する「素朴な疑問」をとても広い分野にわたって抱いていることが印象的だった.自分は質問を出すのに悩み,悩んだゆえに英語の学習過程で出会ったもののみのかなり範囲の狭い質問になってしまったが,今回の千本ノックで扱った質問は英語の学習という範囲のみに限らず日本で生活し英語と接する中で出てくるような質問ばかりだった.そうした小さな疑問を持ち追及することは意味のないことだと日常の中で無意識に思ってしまい出てこなかったのかもしれないと思い,改めてそのような質問が許される場と出会えたことはとても貴重だと感じた.


千本ノックのラジオでは,私が思いもつかなかった質問が次から次へと飛んでいて持っていなかった視点が沢山得られて驚きました.


千本ノックを聞いて,まず寄せられた質問の質の高さに驚きました.私は英語の素朴な疑問,と聞いて出すのに苦労したのですが,寄せられた質問を見るとすべて確かに疑問に思うことばかりでした.自分の中で当たり前になっていたり,「これはそういうものだから」と教えられたような事ばかりだったので新鮮だったと共に,私のような人間にこそ英語史の勉強が必要なのだろうと感じました.


千本ノックでは他の人たちがどんな疑問を抱いているのかを知ることができ自分もかつては抱いていたはずなのに忘れかけていたような疑問に再び出会うことができていい刺激になりました.疑問を他者と共有することは大切だと改めて認識させられました.


自分の中には無かった鋭い着眼点を含んだ質問が多く,文字通り素朴であることが凝り固まった自分の視点をほぐしてくれたような気がしました.


千本ノックは,自分一人では思いつかなかった疑問について考える貴重な機会になりました.また,自分が考えもしなかった疑問を他の学生が上げてくれていたので,新たな観点から英語の文構造を見ることができました.


いつもは目もくれない様々な「言葉」にもっと興味を持って,まるで地球を訪れてきたエーリアンのように常に好奇心を持って生きていきたいなと思いました.


今回の千本ノック後,友達と駅に向かって歩いていてマクドナルドの前を通り過ぎた時,同じタイミングで「あ!スコットランド!」と言って笑っていました(Mc の由来はスコットランドで,ケルト言語で息子という意味だと授業で聞いたので).


 さらに,Voicy のコメント欄でもリスナーさんより「本当によくこんないい質問が浮かぶなあと,聴いていて対抗心が湧きました」など類似のメッセージが複数届いています.
 これでお分かりかと思います.つまり,一見するとトリビアルに思われるような素朴な疑問を,皆で持ち寄り互いに鑑賞すること自体に価値があるということです.公開企画にすれば,それを広く皆で共有できるというメリットがあります.それに対する回答はそれとして重要ですが,二の次であるといってよいでしょう.
 千本ノック公開企画を始めた当初は,この効用に気づいていませんでしたが,最近になってようやく分かってきました.疑問を共有することは,さらなる知的刺激を生み出すのだと.
 千本ノック企画,これからも続けていきます(実際,次回は4月28日(金)の午後3時から生放送の予定です).

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