昨日の記事「#5442. 『ライトハウス英和辞典 第7版』の付録「つづり字と発音解説」」 ([2024-03-21-1]) で,「吹く」を意味する動詞 blow の現代英語での活用とその発音に触れた.とりわけ blew と綴って /bluː/ と発音する件に注意を促した.この問題をめぐって,ここ数日間の Voicy heldio でも取り上げてきたので,ぜひ聴取していただければ.
・ 「#1023. new は「ニュー」か「ヌー」か? --- 音変化と語彙拡散」
・ 「#1025. blow - blew 「ブルー」 - blown」
・ 「#1026. なぜ now と know は発音が違うの?」
blow は古英語においては強変化動詞第7類に属する動詞だった.同じ第7類に属し比較されるべき動詞として know, grow, throw が挙げられる.各々,現代英語で know - knew - known; grow - grew - grown; throw - threw - thrown のように blow とよく似た活用を示す.この4動詞について,古英語での4主要形をまとめておこう(4主要形など古英語強変化動詞の詳細については「#2217. 古英語強変化動詞の類型のまとめ」 ([2015-05-23-1]) や「#42. 古英語には過去形の語幹が二種類あった」 ([2009-06-09-1]) を参照).
不定詞 | 第1過去 | 第2過去 | 過去分詞 | |
---|---|---|---|---|
"blow" | blāwan | blēow | blēowon | blāwen |
"know" | cnā_wan | cnēow | cnēowon | cnāwen |
"grow" | grōwan | grēow | grēowon | grōwen |
"throw" | þrāwan | þrēow | þrēowon | þrōwen |
今朝の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の配信回は「#1022. トートロジー --- khelf 会長,青木くんの研究テーマ」です.言語における tautology とは何か? "A is A" のような一見無意味な形式がなぜ存在し,なぜしばしば有意味となり得るのか? この問題については,khelf(慶應英語史フォーラム)会長の青木輝さんとともに今後ゆっくりと検討していく予定ですが,今回はその頭出しという趣旨での配信でした.ぜひお聴きいただければ.
トートロジーについては,hellog では「#4851. tautology」 ([2022-08-08-1]) としてすでに導入しています.今回は英語辞書から英語のトートロジーの事例をいくつか集めてみました.
・ a beginner who has just started
・ free gift
・ He lives alone by himself.
・ hear with one's ears
・ helpful assistance
・ necessary essentials
・ new innovation
・ real truth
・ She is dumb and can not speak.
・ speak all at once together
・ the modern university of today
・ The money should be adequate enough.
・ They spoke in turn, one after the other.
・ This candidate will win or not win.
・ very excellent
・ widow woman
論理,意味,語用,形式などの観点から様々に分類できそうです.ものによっては periphrasis (迂言法),pleonasm (冗語法),redundancy (冗長),repetition (繰り返し)などと呼び変えるほうが適切な事例もありそうです.また,言葉遊び (word_play) とも関係してきそうです.
言語によってトートロジーの種類は異なるのか? 個別言語におけるトートロジーの起源と発達は? トートロジーの言語的機能は? 謎が謎を呼ぶ,深掘りしがいのあるテーマです.
寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』(研究社,1997年)の推し活を本格的に始めて8ヶ月ほどが経ちます.この期間に様々な媒体でこの辞典を推薦し,話題にしてきました.推し活に加わる方も周囲に増えてきており,喜ばしい限りです.この辺りで推し活履歴を振り返っておきたいと思います.以下,KDEE (= The Kenkyusha Dictionary of English Etymology) の略称も適宜用います (cf. kdee) .
・ 2023年7月18日 「ゆる言語学ラジオ」にお招きいただいて収録した YouTube 回「英単語帳の語源を全部知るために,研究者を呼びました【ターゲット1900 with 堀田先生】#247」が配信される.49分30秒辺りから堀田による KDEE の激推しがスタート.その後の数日間,KDEE がオンラインで入手しにくくなるという事態が発生したとか.
・ 2023年7月27日 Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」 にて「#787. 寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』(研究社,1997年)のスゴさをご紹介 --- 田辺春美先生との対談」を配信し,制作にも携わられた田辺春美先生(成蹊大学)とともに KDEE の実力を語る.ちなみに,この回は2023年の heldio 配信回のリスナー投票で第8位に入った.
・ 2023年8月1日 「研究社note」より「『英語語源辞典』と活版印刷裏話」と題する記事が公開される(研究社編集部の N. A. さんが元研究社印刷社長の小酒井英一郎さんにインタビューして執筆された記事).
・ 2023年8月2日 hellog にて「#5210. 世界最強の英語語源辞典 --- 寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』(研究社,1997年)」 ([2023-08-02-1]) が公開される.
・ 2023年9月6日 heldio にて「#828. 『英語語源辞典』(研究社,1997年)ってスゴい --- 研究社会議室での対談 (1)」が配信され,画期的なインタビューシリーズ3部作の開始となる.ちなみに,この回は2023年の heldio 配信回のリスナー投票で第5位に入った.
・ 2023年9月12日 heldio にて「#834. 『英語語源辞典』(研究社,1997年)ってスゴい --- 研究社会議室での対談 (2)」が配信される.
・ 2023年9月20日 heldio にて「#842. 『英語語源辞典』(研究社,1997年)ってスゴい --- 研究社会議室での対談 (3)」が配信される.
・ 2023年9月22日 hellog にて「#5261. 研究社会議室での3回にわたる『英語語源辞典』をめぐるインタビューが完結」 ([2023-09-22-1]) が公開される.
・ 2023年10月23日 heldio にて「#875. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (1) --- 藤原くんと foot を語る」が配信され,藤原郁弥さんとの画期的なシリーズの幕開きとなる.ちなみに,この回は2023年の heldio 配信回のリスナー投票で第2位に入った.
・ 2023年10月26日 heldio にて「#878. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (2) --- 藤原くんと foot を語る」が配信される.
・ 2023年11月8日 heldio にて「#891. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (3) --- khelf 藤原くんと marble を語る第1弾」が配信される.ちなみに,この回は2023年の heldio 配信回のリスナー投票で第9位に入った.
・ 2023年11月11日 heldio にて「#894. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (4) --- khelf 藤原くんと marble を語る第2弾」が配信される.
・ 2023年11月14日 heldio にて「#897. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (5) --- khelf 藤原くんと marble を語る第3弾」が配信される.
・ 2023年12月15日 heldio にて「#928. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (6) --- khelf 藤原くんと2重語 compute/count を語る」が配信される.
・ 2024年1月6日 Voicy プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪」 (helwa) にて「【英語史の輪 #77】umisio さんと『英語語源辞典』で England と English を精読する」が配信される.heidio/helwa リスナーの umisio さんとの差しでの KDEE 熟読会.
・ 2024年1月9日 umisio さんにより上記熟読会の手書きノートが note 上に公開される.
・ 2024年1月19日 heldio/helwa リスナーの lacolaco さんが note にて「英語語源辞典通読ノート」と題するマガジンを公開し始める.前代未聞の企画.これまでに11本の記事があり,すでに animal にまで到達している.
・ 2024年1月25日 helwa にて「【英語史の輪 #85】「『英語語源辞典』を読む(飲む)会」を画策しています」として,KDEE オンライン読書会の企画案が堀田により初めて提案される.その後,初回が2月20日に実施されることになった.
・ 2024年1月31日 heldio にて「#975. 『英語語源辞典』の収録語彙」が公開される.
・ 2024年2月2日 heldio にて「#977. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (7) --- khelf 藤原くんと同音異義語 bank の項を精読する」が配信される.
・ 2024年2月3日 heldio にて「#978. 『英語語源辞典』の語義・初出年代 --- khelf 藤原くんと凡例を読もう」が配信される.凡例を熟読するという稀代な企画がスタート.
・ 2024年2月20日 helwa のオンラインオフ会にて「『英語語源辞典』を漫然と読む/飲む」企画が初めて実現する.
・ 2024年2月22日 helwa にて「【英語史の輪 #97】「置換」か「駆逐」か」が配信される.この配信回では,上記オンラインオフ会で話題となった KDEE 中の「駆逐」という用語が議論された.
・ 2024年3月4日 khelf による『英語史新聞』第8号が発行され,その第1面にて「『英語語源辞典』を使ってみよう」という記事(藤原郁弥さん執筆)が公開される.
・ 2024年3月5日 hellog にて「#5426. 『英語史新聞』第8号が発行されました」 ([2024-03-05-1]) が公開され,改めて KDEE が言及される.
・ 2024年3月12日 helwa にて「【英語史の輪 #105】近代英語と中英語の anigh に直接の関連はない? --- lacolaco さんも二度見した『英語語源辞典』の記述」が配信される.
以上がこの8ヶ月間の KDEE 推し活履歴です.今後の主立った予定を2点挙げておきます.
・ 本日2024年3月15日の夕方,helwa のオンラインオフ会にて「『英語語源辞典』を漫然と読む/飲む」企画の第2回が開催される予定です.
・ 新年度4月より朝日カルチャーセンター新宿教室にてシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」が開講される予定です.毎月1回のペースで指定土曜日に開催されます.KDEE 以外の英語語源辞典も参照しますが,メインはもちろん KDEE.なお,2018年にも『英語語源辞典』に注目しつつ朝カルで英語語源講座を開いたことがあります(cf. 「#3381. 講座「歴史から学ぶ英単語の語源」」 ([2018-07-30-1])).
皆さんも,ぜひ KDEE 推し活にご参加ください!
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』 研究社,1997年.
昨秋より khelf(慶應英語史フォーラム)の企画として,一般の方々にも参加していただきつつ展開してきた「変なアルファベット表」がついに完成しました.先週の3月4日,khelf より『英語史新聞』第8号が発行されましたが,その第4面に「変なアルファベット表」が掲載されています.
英語の綴字と発音の乖離 (spelling_pronunciation_gap) の問題を逆手にとって,それをダシにして遊んでしまおうという企画でした.イラスト付きアルファベット表に A から Z の各文字で始まる単語が掲げられていますが,いずれの単語も発音との関係で何かしら「変な」語頭綴字を示しています.英語初学者にとっては「意地悪な」,したがって「大人の」アルファベット表ということになります.
昨秋の本企画発足以来,khelf では担当班を組織し,主に Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」で進捗状況をお伝えするなど発信に努めてきました.まず,一般の方々に呼びかけて,各文字で始まる「変な」単語の候補をお寄せいただきました.その後,khelf で取りまとめた後に,各文字で始まる単語の候補のなかから,最も「変な」単語を決めていただくための投票を呼びかけました.N の単語については決選投票にまでもつれ込むことになりました.企画を進める過程で,そもそも綴字の(不)規則とは何なのかという本質的な問題にぶつかるなどしましたが,最終的には上記の通り「変なアルファベット表」が仕上がりました.各単語のイラストも khelf オリジナルの制作ですので,ぜひご注目ください.一般公募と一般投票という形で皆さんにご協力いただいた企画として,ここに完成の旨を報告し,改めて感謝申し上げます.
『英語史新聞』第8号の第4面には,「変なアルファベット表」のほか,投票結果なども掲載されています.次点候補の単語なども挙げられていますので,そちらも眺めながら綴字と発音の乖離という問題に思いを巡らせていただければと思います.
これまで「変なアルファベット表」企画に関するコンテンツを,heldio, helwa, hellog, YouTube などで様々に公開してきました.以下に一覧しておきます.特に heldio では,「変なアルファベット表」の公開後も,表に掲載されている各単語と関連する話題をお届けしています.向こう数日の配信回にもご期待ください.
・ heldio 「#872. 変なアルファベット表を作ろうと思っています --- khelf 企画」
・ heldio 「#873. スペリングの規則と反則 --- 「変なアルファベット表」企画に寄せて」
・ heldio 「#887. khelf 寺澤志帆さんと「変なアルファベット表」企画の中間報告」
・ heldio 「#924. 今週は「変なアルファベット表」のための投票週間です」
・ heldio 「#933. 「変なアルファベット表」の投票は済ませましたか? --- khelf 寺澤さんと投票の呼びかけ」
・ heldio 「#966. 「変なアルファベット表」の n- の単語のための決選投票 --- khelf 寺澤志帆さんからの呼びかけ」
・ heldio 「#1011. 「変なアルファベット表」の完成と公開 with 寺澤志帆さん」
・ heldio 「#1015. cello --- 「変なアルファベット表」からの話題」
・ heldio 「#1016. schedule の発音は「スケジュール」か「シェデュール」か? --- 「変なアルファベット表」の S の項目より」
・ helwa (有料配信) 「【英語史の輪 #42】変なアルファベット表を作る企画」
・ helwa (有料配信) 「【英語史の輪 #43】変なアルファベット表企画への反響」
・ hellog 「#5303. 『英語史新聞』第7号が発行されました」 ([2023-11-03-1])
・ hellog 「#5341. 今週は「変なアルファベット表」企画の投票週間です」 ([2023-12-11-1])
・ hellog 「#5426. 『英語史新聞』第8号が発行されました」 ([2024-03-05-1])
・ YouTube 「いのほた言語学チャンネル」 「#185. eye はもっとへんなつづりだった!!三文字規則が生み出した現象たち?---へんなアルファベット表向け単語大募集!」
英語史では,指示詞 that が定冠詞 the から分岐して独立した語であることが知られている.古英語の定冠詞(起源的には指示詞であり,まだ現代の定冠詞としての用法が強固に確立してはいなかったが,便宜上このように呼んでおく)の se は性・数・格に応じて屈折し,様々な形態を取った.そのなかで中性,単数,主格・対格の形態が þæt だった.これが現代英語の指示詞 that の形態上の祖先である.この古英語の事情に鑑みると,that は the の1形態にすぎないということになる.
では,なぜその後 that は the の仲間グループから抜け出し,独立した指示詞として発達したのだろうか.古英語から中英語にかけて,定冠詞の様々な屈折形態は the という同一形態へと水平化していいった.この流れが続けば,the の1屈折形にすぎない that もやがて消えゆく運命ではあった.ところが,that は指示詞という別の機能を獲得し,消えゆく運命から脱することができたのである.正確にいえば,もとの the 自身にも指示詞の機能はあったところに,その指示詞の機能を the から奪うようにして that が独立した,ということだ.つまり,指示詞 that の機能上の祖先は the に内在していたことになる.その後,既存の「近称」の指示詞 this との棲み分けが順調に進み,that は「遠称」の指示詞として確立するに至った.
Fertig (37--38) は,この一連の言語変化を外適応 (exaptation) の事例として紹介している.
A simple example can be seen in the modern survival of two singular forms from the Old English demonstrative paradigm: the and that. The contrast between these two forms originally reflected a gender distinction; that (OE þæt) was an exclusively neuter form, while the predecessors of the were non-neuter. One would expect one of these forms to have been lost with the collapse of grammatical gender. They survived by being redeployed for the distinction between definite article (the) and demonstrative (that).
指示詞 that の発達と関連して,以下の heldio と hellog のコンテンツを参照.
・ heldio 「#493. 指示詞 this, that, these, those の語源」
・ hellog 「#154. 古英語の決定詞 se の屈折」 ([2009-09-28-1])
・ hellog 「#156. 古英語の se の品詞は何か」 ([2009-09-30-1])
・ Fertig, David. Analogy and Morphological Change. Edinburgh: Edinburgh UP, 2013.
一昨日,専修大学生田キャンパスにて英語史フェスティバル「helフェス」 (helfest) を開催しました.専修大学,法政大学,慶應義塾大学 (khelf) を中心とした複数大学合同の対面イベントで,開催校の専修大学の菊地翔太先生には,たいへんお世話になりました.イベントのメニューは,各大学からの代表者による卒業論文発表,修士論文発表,菊地先生による講演,英語史クイズ(heldio 生放送)などでした.ちなみに,夜はもちろん懇親会の1次会と2次会で盛り上がったことは言うまでもありません(その辺りの話題は,昨晩の Voicy でのプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪」 (helwa) の配信回「【英語史の輪 #102】helフェス2024報告」にて雑談風にお話ししています).
さて,メニューの1つである「英語史クイズ」 (helquiz) は,先日の記事「#5425. 本日の午後4時から「英語史クイズ」生放送 --- その前に過去の「英語史クイズ」で復習を!」[2024-03-04-1] で予告したとおり,heldio 生放送としてお届けしました.生放送の開始時間は予定時刻の午後4時から大幅に遅れてしまい,お待ちいただいたリスナーの方々にはご迷惑をおかけしましたが,何とかライヴ収録はできたようです.生放送を収録したものを,今朝の heldio で「#1010. 英語史クイズ in hel フェス(生放送のアーカイヴ)」として配信しました.本編は42分ほどの音声です.お時間のあるときに,じっくりお聴きください.
出題者は,矢冨弘さん(熊本学園大学),「まさにゃん」こと森田真登さん(武蔵野学院大学),小河舜さん(フェリス女学院大学ほか)の3名です.生放送のMCは,小河舜さん,青木輝さん,Kさん,疋田くんの4名です.
会場では,質問をスクリーン上にスライドで示しながら6問のクイズを出題しました.今回は,アーカイヴ音声配信をお聴きの皆さんのために,そちらのテキストを取り出し,以下に示します.正解と解説はこちらには示しませんので,配信回そのものをお聴きいただければ.
Þt ge sin eowres fæder bearn þe on heofonum ys. Se þe deð þæt hys sunne up aspringð ofer þa godan & ofer þa yfelan.
(1) glorify
(2) make
(3) offer
(4) perform
【Q5. 「小河先生からの挑戦状」 27分55秒から】
以下は全てイングランドに現存する地名である.以下の中で古ノルド語に由来する要素を含む地名はどれか.
(1) Nasty (Hertfordshire)
(2) Whitby (North Yorkshire)
(3) Melbourn (Cambridgeshire)
(4) Canterbury (Kent)
【Q6. 「まさにゃんからの挑戦状」 32分14秒から】
動詞 forbid の後ろには何が来る? 辞書を見ると,例えば regard であれば,その訳語とともに [regard A as B] などのようにその動詞の後ろにどのような構造が来るか記載されていることが多い.では「禁止をする」という意味をもつ動詞 forbid について「<人>に〜することを禁ずる」という訳語とともに,動詞の後ろにどのような構造がくると書かれるいるか答えなさい.もしも複数ある場合は,すべて答えること.ただし,参照するのは,1993年に出版された「ジーニアス英和辞典(改訂版)第2版に相当する」とする.なお,ジーニアス英和辞典はその後も改訂を繰り返し,現在は第6版がでている.
以上,英語史クイズをお楽しみください!
日々,英語史を広める英語史活動(hel活)を展開していますが,その1つの形式として「英語史クイズ」 (hel_herald) なるものがあります.その名の通りのクイズ企画です.
本日午後4時から Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて「英語史クイズ」の生放送をお届けする予定です.本日は朝から晩まで,菊地翔太先生より専修大学生田キャンパスに会場をご用意いただき「helフェス」 (helfest) を開催する予定です.その中の1コーナーとして「英語史クイズ」イベントを午後4時から予定しており,すでに講師陣による出題のスタンバイが完了しています.
ぜひ都合のつく方々は午後4時からの「英語史クイズ生放送」をライヴでお聴きください.たっぷり1時間ほどお届けします.会場もライヴですが,heldio をお聴きの皆さんもぜひライヴで回答,意見,質問,コメント,突っ込み等を「お便り」で投げ込んでていただけると盛り上がるかと思います.
英語史クイズはこれまでも頻繁に開催してきたわけではありませんが,hellog の関連記事でいえば次の3つほどが挙がります.
・ 「#4831. 『英語史新聞』2022年7月号外 --- クイズの解答です」 ([2022-07-19-1])
・ 「#5059. heldio 初の「英語史クイズ」」 ([2023-03-04-1])
・ 「#5087. 「英語史クイズ with まさにゃん」 in Voicy heldio とクイズ問題の関連記事」 ([2023-04-01-1])
英語史クイズは,主に Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の企画として音声配信してきた経緯があります.今夕のイベントに先立って,ぜひ過去回を復習しておいていただければと思います.
・ 「#642. heldio 初の「英語史クイズ」」(2023/03/04配信)
・ 「#669. 英語史クイズ with まさにゃん」(2023/03/31配信)
・ 「#670. 英語史クイズ with まさにゃん(続編)」(2023/04/01配信)
ぜひ皆さんライヴでご参加を! (都合がつかない方のために,後日アーカイヴ配信もする予定です.)
NewsPicks 上で岡本広毅先生(立命館大学)が連載している「RPGで知る西洋の歴史」の最新記事が公開されています.「ダンジョンと〈ゴシック〉への入り口---商人トルネコが覗いた闇」です.
RPG 好きには「ダンジョン」 (dungeon) の響きはたまらないのではないでしょうか.その意味は「地下牢」?「洞窟」?「塔」? なぜ RPG にはダンジョンが付きものなの? ゴシック・ロマンスとの関係は? このような問いに答えてくれる文化史・文学史の記事です.
記事でも言及されていますが,英単語 dungeon は古フランス語 donjon を借用したものです(1300年頃).古フランス語での原義は「主君の塔」ほどでしたが,それが後に牢獄として利用された背景から,「牢獄」,とりわけ「地下牢」の意味を発達させました.さらには RPG 的な「未知なる危険の潜む空間」(上記記事を参照)という語義にまで発展してきました.文化史的に味わうべき意味変化 (semantic_change) の好例ですね.
さて,古フランス語 donjon は,さらに遡ると中世ラテン語の dominiōnem に行き着き,これは古典ラテン語の dominium に対応します.「君主の地位;統治権;領地」を意味しました.このラテン単語が直接英語に取り込まれたのが dominion 「領土;支配権」です.つまり,dungeon と dominion は2重語 (doublet) ということになります.
関連する話題は,以下の hellog や heldio のコンテンツで取り上げていますので,ぜひどうぞ.
・ hellog 「#3899. ラテン語 domus (家)の語根ネットワーク」 ([2019-12-30-1])
・ hellog 「#3898. danger, dangerous の意味変化」 ([2019-12-29-1])
・ heldio 「#118. danger のもともとの意味は「権力」」
・ heldio 「#273. 「支配権」 ― 今だから知っておきたい danger の原義」
・ hellog 「#1953. Stern による意味変化の7分類 (2)」 ([2014-09-01-1])
毎朝6時に,本ブログの姉妹版ともいえる音声ブログ Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」を配信しています.2024年の heldio のテーマは言語変化 (language_change) です.大きなテーマなので取り上げていく話題も多岐にわたりますが,避けて通れないものの1つに文法化 (grammaticalisation) があります.本ブログでも「#417. 文法化とは?」 ([2010-06-18-1]) を始めとして,多くの記事で注目してきました.
先週,heldio にて5日連続で文法化の超入門となる話題をお届けしました.結果的に文法化の導入シリーズとなりました.こちらにリンクをまとめておきます.
・ 「#988. ぎゅうぎゅうの単語とすかすかの単語 --- 内容語と機能語」
・ 「#989. 内容語と機能語のそれぞれの特徴を比較する」
・ 「#990. 文法化とは何か?」
・ 「#991. while の文法化」
・ 「#992. while の文法化(続き)」
(以下,後記)
・ 「#1001. 英語の文法化について知りたいなら --- 保坂道雄(著)『文法化する英語』(開拓社,2014年)」
・ 「#1003. There is an apple on the table. --- 主語はどれ?」
(後記,ここまで)
5回の話しはスムーズにつながっているので,順に聴いていただくとよいと思います.手っ取り早く聴きたいという方は,中心回となる「#990. 文法化とは何か?」だけでもシリーズの大枠はつかめると思います.
もっと本格的に文法化を学びたいという方は,本ブログの grammaticalisation の各記事をご覧ください.特に重要な記事をいくつか挙げておきます.
・ 「#1972. Meillet の文法化」 ([2014-09-20-1])
・ 「#1974. 文法化研究の発展と拡大 (1)」 ([2014-09-22-1])
・ 「#1975. 文法化研究の発展と拡大 (2)」 ([2014-09-23-1])
・ 「#2575. 言語変化の一方向性」 ([2016-05-15-1])
・ 「#2576. 脱文法化と語彙化」 ([2016-05-16-1])
・ 「#3273. Lehman による文法化の尺度,6点」 ([2018-04-13-1])
・ 「#3272. 文法化の2つのメカニズム」 ([2018-04-12-1])
・ 「#3281. Hopper and Traugott による文法化の定義と本質」 ([2018-04-21-1])
・ 「#5124. Oxford Bibliographies による文法化研究の概要」 ([2023-05-08-1])
去る2月6日(火)午後4時半より Voicy heldio にて「#983. B&Cの第42節「文法性」の対談精読実況生中継 with 金田拓さんと小河舜さん」を生放送でお届けしました.Baugh and Cable による英語史の古典的名著 A History of the English Language (第6版)を原書で精読するシリーズの一環です.今回は特別ゲストとして金田拓さん(帝京科学大学)と小河舜さん(フェリス女学院大学ほか)をお招きして,対談精読実況生中継としてお届けしました.上記は,昨日の通常配信でアーカイヴとして公開したものです.60分間の長丁場ですが,ぜひお時間のあるときにお聴きください.
2月5日(月)には,この hellog 上でも予告編となる記事「#5397. 文法上の「性」を考える --- Baugh and Cable の英語史より」 ([2024-02-05-1]) を公開しました.そちらの記事では今回注目した第42節 "Grammatical Gender" の原文を掲載していますので,それを眺めながらお聴きいただければと思います.そこからは,英語史における性 (gender) の話題に注目した重要な記事へのリンクも張っています.
早々に配信を聴いてくださったコアリスナーの umisio さんが,まとめノートを作ってこちらのページで公開されています.ぜひ予習・復習のおともにご参照ください.
heldio で B&C の英語史を精読するシリーズのバックナンバー一覧は「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1]) でまとめています.全264節ある本の第42節にようやくたどり着いたところですので,まだまだ序盤戦です.皆さんには後追いでかまいませんので,このオンライン精読シリーズにご参加いただければ.まずは以下のテキストを入手してください!
・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.
「歴史の父」こと古代ギリシア歴史家ヘロドトス (Herodotus, B.C. 485?--425?) の手になる著『歴史』に,言語創成 (origin_of_language) に関する有名な話が記されている.古代エジプト第26王朝の初代の王であるプサンメティコス1世 (Psammetichus [Psamtik], B.C. 664--610) が,最も古い言語は何かを明らかにするために,新生児を用いてある実験をした,という言い伝えである.これについて,Perseus Digital Library のテキストコレクションより,Herodotus, The Histories (ed. A. D. Godley) の第2巻の第2章(英訳版)を引用する.
Now before Psammetichus became king of Egypt, the Egyptians believed that they were the oldest people on earth. But ever since Psammetichus became king and wished to find out which people were the oldest, they have believed that the Phrygians were older than they, and they than everybody else. Psammetichus, when he was in no way able to learn by inquiry which people had first come into being, devised a plan by which he took two newborn children of the common people and gave them to a shepherd to bring up among his flocks. He gave instructions that no one was to speak a word in their hearing; they were to stay by themselves in a lonely hut, and in due time the shepherd was to bring goats and give the children their milk and do everything else necessary. Psammetichus did this, and gave these instructions, because he wanted to hear what speech would first come from the children, when they were past the age of indistinct babbling. And he had his wish; for one day, when the shepherd had done as he was told for two years, both children ran to him stretching out their hands and calling "Bekos!" as he opened the door and entered. When he first heard this, he kept quiet about it; but when, coming often and paying careful attention, he kept hearing this same word, he told his master at last and brought the children into the king's presence as required. Psammetichus then heard them himself, and asked to what language the word "Bekos" belonged; he found it to be a Phrygian word, signifying bread. Reasoning from this, the Egyptians acknowledged that the Phrygians were older than they. This is the story which I heard from the priests of Hephaestus' temple at Memphis; the Greeks say among many foolish things that Psammetichus had the children reared by women whose tongues he had cut out.
現代の観点からは1つの逸話にすぎないように思われるかもしれないが,言語の創成についてはいまだに分からないことが多いという事実は踏まえておく必要がある.もっと有名なもう1つの言い伝えは,言わずとしれた聖書の記述である.これについては「#2946. 聖書にみる言語の創成と拡散」 ([2017-05-21-1]) を参照.
関連して「#4612. 言語の起源と発達を巡る諸問題」 ([2021-12-12-1]),「#4614. 言語の起源と発達を巡る諸説の昔と今」 ([2021-12-14-1]) も挙げておきたい.
ちなみに,昨日の Voicy heldio にて関連する話題を取り上げた.「#980. 赤ちゃんは無言語状態で育てられても言語を習得できるのか? --- 目白大学の学生から寄せてもらった素朴な疑問」をお聴きいただければ.
昨年7月より週1,2回のペースで Baugh and Cable の英語史の古典的名著 A History of the English Language (第6版)を原書で精読する Voicy 「英語の語源が身につくラジオ」 (heldio) でのシリーズ企画を進めています.1回200円の有料配信となっていますが第1チャプターに関してはいつでも試聴可です.またときどきテキストも公開しながら無料の一般配信も行なっています.これまでのバックナンバーは「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1]) にまとめてありますので,ご確認ください.
今までに41節をカバーしてきました.目下,古英語を扱う第3章に入っています.次回取り上げる第42節 "Grammatical Gender" は,古英語の名詞に確認される文法上の「性」,すなわち文法性 (gender) に着目します.以下に同節のテキストを掲載しておきます(できれば本書を入手していただくのがベストです).
42. Grammatical Gender. As in Indo-European languages generally, the gender of Old English nouns is not dependent on considerations of sex. Although nouns designating males are often masculine, and those indicating females feminine, those indicating neuter objects are not necessarily neuter. Stān (stone) is masculine, and mōna (moon) is masculine, but sunne (sun) is feminine, as in German. In French, the corresponding words have just the opposite genders: pierre (stone) and lune (moon) are feminine, while soleil (sun) is masculine. Often the gender of Old English nouns is quite illogical. Words like mægden (girl), wīf (wife), bearn (child, son), and cild (child), which we should expect to be feminine or masculine, are in fact neuter, while wīfmann (woman) is masculine because the second element of the compound is masculine. The simplicity of Modern English gender has already been pointed out as one of the chief assets of the language. How so desirable a change was brought about will be shown later.
文法性に関する話題は hellog でも gender のタグを付した多くの記事で取り上げてきました.そのなかから特に重要な記事へのリンクを以下に張っておきます.
・ 「#25. 古英語の名詞屈折(1)」 ([2009-05-23-1])
・ 「#26. 古英語の名詞屈折(2)」 ([2009-05-24-1])
・ 「#28. 古英語に自然性はなかったか?」 ([2009-05-26-1])
・ 「#487. 主な印欧諸語の文法性」 ([2010-08-27-1])
・ 「#1135. 印欧祖語の文法性の起源」 ([2012-06-05-1])
・ 「#2853. 言語における性と人間の分類フェチ」 ([2017-02-17-1])
・ 「#3293. 古英語の名詞の性の例」 ([2018-05-03-1])
・ 「#4039. 言語における性とはフェチである」 ([2020-05-18-1])
・ 「#4040. 「言語に反映されている人間の分類フェチ」の記事セット」 ([2020-05-19-1])
・ 「#4182. 「言語と性」のテーマの広さ」 ([2020-10-08-1])
・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.
3週間後の2月24日(土)の 15:30--18:45 に,朝日カルチャーセンター新宿教室にてシリーズ講座「文字と綴字の英語史」の第4回となる「近代英語の綴字 --- 標準化を目指して」が開講されます.
今回の講座は,全4回のシリーズの第4回となります.シリーズのラインナップは以下の通りです.
・ 第1回 文字の起源と発達 --- アルファベットの拡がり(春・4月29日)
・ 第2回 古英語の綴字 --- ローマ字の手なずけ(夏・7月29日)
・ 第3回 中英語の綴字 --- 標準なき繁栄(秋・10月7日)
・ 第4回 近代英語の綴字 --- 標準化を目指して(冬・2月24日)
今度の第4回については,先日 Voicy heldio にて「#971. 近代英語の綴字 --- 2月24日(土)の朝カルのシリーズ講座第4回に向けて」として概要を紹介していますので,お聴きいただければ幸いです.
これまでの3回の講座では,英語綴字の標準化の前史を眺めてきました.今回はいよいよ近現代における標準化の実態に迫ります.まず,15世紀の Chancery Standard に始まり,16世紀末から17世紀にかけての Shakespeare,『欽定訳聖書』,初期の英語辞書の時代を経て,18--19世紀の辞書完成に至るまでの時期に注目し,英単語の綴字の揺れと変遷を追います.その後,アメリカ英語の綴字,そして現代の綴字改革の動きまでをフォローして,現代英語の綴字の課題について論じる予定です.各時代の英単語の綴字の具体例を示しながら解説しますので,迷子になることはありません.
本講座にご関心のある方は,ぜひこちらのページよりお申し込みください.講座当日は,対面のほかオンラインでの参加も可能です.また,参加登録されますと,開講後1週間「見逃し配信」を視聴できます.ご都合のよい方法でご参加いただければと思います.シリーズ講座ではありますが,各回の内容は独立していますので,今回のみの単発のご参加でもまったく問題ありません.なお,講座で用いる資料は,当日,参加者の皆様に電子的に配布される予定です.
本シリーズと関連して,以下の hellog 記事,および Voicy heldio 配信回もご参照ください.
[ 第1回 文字の起源と発達 --- アルファベットの拡がり ]
・ heldio 「#668. 朝カル講座の新シリーズ「文字と綴字の英語史」が4月29日より始まります」(2023年3月30日)
・ hellog 「#5088. 朝カル講座の新シリーズ「文字と綴字の英語史」が4月29日より始まります」 ([2023-04-02-1])
・ hellog 「#5119. 朝カル講座の新シリーズ「文字と綴字の英語史」の第1回を終えました」 ([2023-05-03-1])
[ 第2回 古英語の綴字 --- ローマ字の手なずけ ]
・ hellog 「#5194. 7月29日(土),朝カルのシリーズ講座「文字と綴字の英語史」の第2回「古英語の綴字 --- ローマ字の手なずけ」」 ([2023-07-17-1])
・ heldio 「#778. 古英語の文字 --- 7月29日(土)の朝カルのシリーズ講座第2回に向けて」(2023年7月18日)
・ hellog 「#5207. 朝カルのシリーズ講座「文字と綴字の英語史」の第2回「古英語の綴字 --- ローマ字の手なずけ」を終えました」 ([2023-07-30-1])
[ 第3回 中英語の綴字 --- 標準なき繁栄 ]
・ hellog 「#5263. 10月7日(土),朝カルのシリーズ講座「文字と綴字の英語史」の第3回「中英語の綴字 --- 標準なき繁栄」」 ([2023-09-24-1])
・ heldio 「#848. 中英語の標準なき綴字 --- 10月7日(土)の朝カルのシリーズ講座第3回に向けて」(2023年9月26日)
[ 第4回 近代英語の綴字 --- 標準化を目指して ]
・ heldio 「#971. 近代英語の綴字 --- 2月24日(土)の朝カルのシリーズ講座第4回に向けて」(2024年1月27日)
多くの方々のご参加をお待ちしております.
Fertig (76) は "Analogical non-change" と題する節のなかで,英語の規則的な複数形を作る -s を題材にして,類推作用 (analogy) の役割について独特な視点から論じている.
. . . stasis over time can be just as interesting a historical phenomenon as change (Janda and Joseph 2003: 83, 86). Although accounts of analogy rarely call attention to the fact, there are a number of examples in the literature where the mechanisms of morphological change are invoked to account for an absence of overt change, i.e. for the survival of an element, construction or distinction. Saussure (1995 [1916]: 236--7) reminds us that analogy2 is just as much responsible for the lack of change in the inflection of most forms that have always belonged to dominant, regular classes as it is for change in other, primarily irregular items. English speakers, for example, form the plural of dozens of nouns such as stone, eel, oath, comb, stool, etc. essentially the same way they were formed in Old English, not because each of these plurals has been transmitted perfectly across all the generations, but rather primarily because analogy2 yields exactly the same results as if the forms had been transmitted perfectly. These nouns all belong to the dominant class that formed their plurals with -as in Old English so even if English speakers never memorize any of them and always rely on analogy2 to recreate them, they continue to come up with the same forms that were used in the past.
Fertig は,言語の変化のみならず言語の無変化の背景にも関心を寄せる論者である.「#4228. 歴史言語学は「なぜ変化したか」だけでなく「なぜ変化しなかったか」をも問う」 ([2020-11-23-1]) でも,Fertig からの重要な指摘を引用している.言語の無変化にも意義があるという議論については「#2115. 言語維持と言語変化への抵抗」 ([2015-02-10-1]),「#2208. 英語の動詞に未来形の屈折がないのはなぜか?」 ([2015-05-14-1]),「#2220. 中英語の中部・北部方言で語頭摩擦音有声化が起こらなかった理由」 ([2015-05-26-1]),「#2574. 「常に変異があり,常に変化が起こっている」」 ([2016-05-14-1]) も参照されたい.
今年の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の主題は言語変化 (language) だが,同様に言語無変化も取り上げていきたい.新年の2回の配信回もぜひお聴きください.
・ 「#945. なぜ言語は変化するのか?」 (2024/01/01)
・ 「#947. なぜ言語は変化しないのか?」 (2024/01/03)
・ Fertig, David. Analogy and Morphological Change. Edinburgh: Edinburgh UP, 2013.
年末の12月29日,『World Englishes 入門』を紹介する Voicy heldio のシリーズ企画の一環として,インド英語をご専門とする榎木薗先生(元中京大学)との対談回として「#942. 著者と語る『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年) --- 榎木薗鉄也先生とのインドの英語をめぐる対談」を配信しました.
その後,榎木薗鉄也先生とは肩の凝らないアフタートークも収録しまして,このたび「#954. インド英語を語る --- 榎木薗鉄也先生との対談」として公開しました.30分超の対談回ですが,お聴きになるとますますインド英語が身近になり,インド英語に関心を抱くのではないかと思います.
榎木薗先生は40年の研究歴をもつ筋金入りのインド英語通で,昨年には『インド英語のリスニング〈新装版〉』(研究社)も出版されています.
グローバルサウスの盟主としてのインドの国際的な存在感は高まっており,インドの人々の話す英語もまた国際的な認知度が上がっています.日本では英米変種のブランドとしての地位が確立しており,インド英語はあくまで二流という位置づけで捉えられてきた経緯がありますが,21世紀が進むにつれ,従来のそのような捉え方は変わってくるかもしれません.今後インド英語とその地位の変化については,英語史的にも目が離せません.ぜひ「英語」ではなく「世界英語」 (world_englishes) という広い枠組みで,英語(変種)を眺めてみてください.皆さんの英語世界,さらに言語世界が,ぐんと拡がるはずです.
・ 大石 晴美(編) 『World Englishes 入門』 昭和堂,2023年.
一昨日の heldio で「#955. 妙な英文で味わうアナロジー(および関連する過程)」を配信した.本ブログでも同じ話題をカバーしておきたい.
「#4229. Fertig による analogy の定義」 ([2020-11-24-1]) や「#5336. Fertig による analogy の本格的研究書の目次」 ([2023-12-06-1]) で紹介した Fertig の analogy に関する研究書の冒頭は,次のような英文の例示で飾られる.
A book about analogy and morphological change? That is so not what I was expecting. I never imaginated there'd ever be such a book. I guess I had another thing coming. Who'd of thunk it?
この英文には類推 (analogy) およびそれと関連する言語革新の過程を示す事例が4つ(あるいは5つ)含まれている.すべてが類推の事例,あるいは類推に似ている事例である.それぞれを解説する1節も引用しておきたい.
The short paragraph above contains at least four recognizable examples of some of the different kinds of innovations that we will be exploring in this book. That is so not . . . is an example of analogical change in syntax. Until recently, the intensifier so could only be used directly before an adjective or adverb. Now some speakers regularly use it in other syntactic contexts, such as before the negative particle not. This change can be attributed to the analogy of other intensifiers such as really . . . . The next sentence contains the verb imaginate, which sounds very odd to many English speakers today but has been around since 1541. It means the same thing as the much more common and older verb imagine and may have been created by backformation from the noun imagination, on the analogical model of pairs like speculation--speculate, dedication--dedicate, etc. The fourth sentence contains an altered version of the familiar expression to have another think coming, meaning 'to be seriously mistaken about something'. For at least a century, English speakers/learners have sometimes mistaken the word think in this expression for thing. This kind of change is called folk etymology. It occurs when speakers identify one element in an expression with a different, often historically unrelated element. The word of (for 've) in the final sentence of the paragraph could also be considered folk etymology. Finally, thunk is obviously an innovative past-participle form corresponding to standard thought. It is based on analogical models such as sink--sank--sunk or stick--stuck.
ここから太字表記のものも含めいくつかキーワードと拾うと,innovations, analogical change, backformation, analogical model, folk_etymology などが挙がってくる.Fertig の本では,これらの用語や概念が丁寧に議論されていく.言語における類推(作用)の研究の必読書である.
・ Fertig, David. Analogy and Morphological Change. Edinburgh: Edinburgh UP, 2013.
毎朝6時にお届けしている Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の2024年の大テーマは「言語変化」 (language_change) です.この「hellog~英語史ブログ」でも長きにわたって注目してきたトピックですが,音声メディア heldio も用いて,より広く「なぜコトバは変化するのか」という魅力的な話題をお届けしていきたいと思います.よろしくお願いいたします.
heldio チャンネルは2021年6月2日に開設し,2年7ヶ月ほどの間,毎朝英語史に関するお話しをお届けしてきました.heldio 開設2周年に当たる2023年6月2日には,有料版となるプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」もオープンしました(こちらは毎週火木土の午後6時に配信しています).
私はブログや Voicy 等のメディアを通じて「英語史をお茶の間に」広げていくことをモットーとしていますが,「hel活」(英語史活動)を推進してゆく「助っ人」にも囲まれるようになりました.感謝に堪えません.そのhel活助っ人のごく一部にすぎませんが,以下にご紹介します.
・ khelf(慶應英語史フォーラム)のメンバー:「hel活」の最大の応援団体です.『英語史新聞』を季刊で刊行しています.HP での広報のほか,X(旧ツイッター)アカウント @khelf_keio からも日々元気にhel活中.
・ heldio/helwa のリスナーの皆さん:日々の配信回へのコメント,SNS を通じての広報,企画回や生放送への参加,その他のhel活でお世話になっています.とりわけ最近注目すべきSNS上での活動としては:
- リスナーの umisio さんによる「2024年「英語史の輪#77」英語語源辞典を読む.ノート完成.」,および「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む(34)のノートを取ったどー」等
- リスナーの kitako さんによる「heldio瓦版2024年1号」
- 同じく kitako さんによるインスタグラムでの日々の heldio 配信回の紹介
が目を見張ります
・ heldio/helwa 対談出演者の研究者や学生の皆さんにもお世話になっています.特に出演回数の多い方々の一覧は,いずれ整理したいと思っています.当面は以下のお二方が独自にまとめられているものをどうぞ.
- 菊地翔太先生(専修大学)の HP
- 矢冨弘先生(熊本学園大学)の HP
・ そしてもちろん本ブログを毎日お読みいただいている皆さんにも感謝いたします.私の公式 X アカウント @chariderryu からも情報を発信していますので,ぜひフォローをお願い致します.
皆さんのhel活支援に感謝いたします.引き続き「英語史をお茶の間に」の応援をよろしくお願いします.今回と同趣旨の記事として「#5256. heldio/hel活応援リンク集」 ([2023-09-17-1]) もご覧いただければ.
「#5360. 社会言語学×名前学=社会名前学」 ([2023-12-30-1]) で紹介した "Names in Society" と題するハンドブック論文の結論部に,今後の社会名前学 (socio-onomastics) の見通しが記されている.その1節を引用する.
Socio-onomastic research has been carried out for over forty years now. In spite of the multifaceted research thus far, many areas have still hardly been touched upon. In the socio-onomastic study of place-names, rural names have been in focus for decades, but urban names still lack comprehensive research. So far we know very little about what place-names --- both official and unofficial --- are used in multi-layered and often multilingual urban environments. The same topic also concerns personal names: How are they used in multilingual contexts? Research into commercial names is still rather scarce due to the young age of the field, and socio-onomastic studies are few. One of the most interesting questions for the future is to investigate the attitudes and stances that people take towards commercial names and how people talk about commercial products and businesses in actual language use. (380--81)
最後の文で述べられているのは,まさに「商標言語学」 (trademark linguistics) である.「商標言語学」といえば,目下「名前プロジェクト」 (name_project) で一緒に研究している五所万実さん(目白大学)である.これまでも Voicy heldio その他に出演していただき,2023年のリスナー投票では,五所さんとの対談回の2つが第3位と第7位にランクインしている(「#5363. 2023年のリスナー投票による heldio の推し配信回ベスト10が決定!」 ([2024-01-02-1]) を参照).
・ 「#667. 五所万実さんとの対談 --- 商標言語学とは何か?」
・ 「#671. 五所万実さんとの対談 --- 商標の記号論的考察」
上記の通り,商標言語学は専門家によって社会名前学における前途有望な分野として見込まれており,今後要注目だ.
商標言語学および五所さんと関連して,以下の記事も参照.
・ 「#5078. 法言語学 (forensic linguistics)」 ([2023-03-23-1])
・ 「#5085. 五所万実さんとの Voicy 対談で「商標言語学」を導入しています」 ([2023-03-30-1])
・ 「#5092. 商標言語学と英語史・歴史言語学の接点」 ([2023-04-06-1])
・ Ainiala, Terhi. "Names in Society." Chapter 25 of The Oxford Handbook of Names and Naming. Ed. Carole Hough. Oxford: OUP, 2016. 371--81.
本ブログの姉妹版・音声版の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」では,有料ではありますが「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」と題するオンライン超精読回のシリーズを,この半年のあいだ,おおよそ定期的にお届けしています.バックナンバーは「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1]) をご覧ください.
昨日,最新回となる「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (34) The Names "England" and "English"」を配信しました.England と English という,英語史上きわめて重要な語の語源に迫る半ページ弱の文章を30分以上かけて解きほぐしています.
この回を配信した機会を逃さずに,本日午後6時より,Voicy プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」での配信となりますが,この話題と関連する生放送を「【英語史の輪 #77】新年会直前,『英語語源辞典』で England と English を精読する」と題してお届けする予定です.
寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』(研究社,1997)を手元に置いておられる方はそれを目の前に置き,そうでない方は今回のためにスキャンしたこちらの画像を参考に,ぜひ聞いていただけば幸いです.きわめて重要な単語の語源を深掘りしていきます.
こちらの helwa はプレミアム限定チャンネルですが,この1月より初月無料の試聴サービスを提供しています.日々 heldio の通常配信をお聴きの方々のなかには,プレミアム限定チャンネルは気になっていたけれど課金して参加するにはハードルが高い,まずはどんな雰囲気なのか試聴してみたい,という方もいらっしゃるかもしれません.ぜひこの1ヶ月のあいだ試聴していただき,続けてもよいと思った場合には2月以降もお付き合いいただければと思います.そうでなければ辞めていただくということで,まったくけっこうです.
余談ですが,上記の予約済の生放送のタイトルにも示されているとおり,helwa ではプレミアムリスナー限定のオンライン新年会を,生放送終了後の午後7時から開催予定です.
予習・復習のために,今回の話題と関連する hellog, heldio, その他のリソースとして以下を挙げておきます.
年末の12月29日,10月に昭和堂から出版された『World Englishes 入門』を紹介する Voicy heldio のシリーズ企画の一環として「#942. 著者と語る『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年) --- 榎木薗鉄也先生とのインドの英語をめぐる対談」を配信しました.榎木薗先生(元中京大学)は,本書の第4章「インドの英語」の著者の1人です(もう1方は加藤拓由先生).33分ほどの音声コンテンツとなっています.お時間のあるときにお聴きください.
今回ご紹介いただいた第4章「インドの英語」 (pp. 69--84) は,以下の構成となっています.章末には「研究テーマ」コーナーと参考文献が付されています.
・ 大石 晴美(編) 『World Englishes 入門』 昭和堂,2023年.
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