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adverb - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2020-07-10 09:32

2011-07-12 Tue

#806. what with A and what with B [interrogative_pronoun][adverb][idiom]

 what with A and (what with) B という構文がある.文頭や文末で「AやらBやら(の理由)で」と(通常よくない)理由を列挙するのに用いられる.いくつかの辞書では "spoken" や "informal" とレーベルが与えられている.以下に例文を挙げるが,最後の例のように,and で列挙されないケースもあるようだ.

- What with the wind and the rain, the game was spoiled.
- What with drink and (what with) fright he did not know much about the facts.
- What with storms and all, his return was put off.
- What with one thing and another, I never get any work done.
- What with the cold weather and my bad leg, I haven't been out for weeks.
- She couldn't get to sleep, what with all the shooting and shouting.
- They've been under a lot of stress, what with Joe losing his job and all.
- I'm very tired, what with travelling all day yesterday and having a disturbed night.
- The police are having a difficult time, what with all the drugs and violence on our streets.
- What with the freezing temperatures, they nearly died.

 『ランダムハウス英和辞典』ではこの what は副詞として「《with を伴って》いくぶんは,ひとつには,…やら(…やら)で.」と解説がつけられている.要するにこの what は "partly" 「いくぶん,部分的に」ほどの意味を表わしていると考えてよい.では,この副詞用法の what の起源は何か.
 それは不定代名詞としての用法に遡る.疑問代名詞の what は,古くから「何か」 "something" の意の不定代名詞としても用いられていた.この不定代名詞用法の名残は「あることを教えてあげるよ」を意味する現代の慣用表現 I'll tell you what.You know what? に見られる.この "something" に相当する語法が副詞として転用され,「いくぶん,多少なりとも」の意味を生じさせた.現代の不定代名詞 something 自体も,以下の例文に見られるように副詞的な用法を発達させてきているので,比較できるだろう.

- The song sounded something like this.
- The sermon lasted something over an hour.
- He was snoring something terrible last night

 OED の "what" D. II. 2. (b) によると,with だけでなくかつては for とも構文をなしたようだが,現在では後者は行なわれていない.細江 (114--15) の例文と注も参照.

 ・ 細江 逸記 『英文法汎論』3版 泰文堂,1926年.

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2011-06-19 Sun

#783. 副詞 home は名詞の副詞的対格から [adverbial_accusative][case][adverb]

 現代英語の名詞には副詞的目的格という用法がある.目的格は歴史的な対格を指すので,この用法は副詞的対格 (adverbial accusative) とも呼ばれる.名詞(句)が副詞(句)として用いられる副詞的目的格の使用例は枚挙にいとまがないが,典型的な例を少数挙げると以下のようなものがある(赤字が副詞的目的格におかれている名詞(句)).

- It's fine today.
- Come this way.
- They walked ten miles.
- We are united to each other heart and soul.
- What the hell is all this?

 現代英語で当たり前のように副詞的に使われている go home も起源をたどれば名詞 home の目的格にすぎない.古英語 hām は男性強変化名詞であり,単数主格と単数対格が同形のために形態上は区別がつけられないが,And hiȝ cyrdon ealle ham "And they all returned home" などにおいて,明らかに方向を示す対格として用いられている.
 このような home が副詞として解釈され,近代期には「家へ(帰る)」という方向の意味から「家に(いる)」という位置の意味へと拡大していった.さらに,「本拠地へ,納まるべき所へ」から「ねらった所へ,まともに」の意味が生じ,drive a nail homeThe spear struck home to the lion's heart. などの表現が生み出された.現代の成句 bring sth home to sbcome home to sb における「痛切に」の含意もこの延長線上にある.

- It suddenly came home to him that he was never going to see Julie again.
- The sight of his pale face brought home to me how ill he really was.

 上に挙げた一つ目の成句 came home to him を統語分析すると,一方では home が副詞として,他方では to him が前置詞句としてそれぞれ came を修飾するとして解されるかもしれない.しかし,成句の意味と home の歴史的な意味と用法を考慮すると,むしろ to himhome という名詞に与格として「彼(にとって)の(理解の)核心」ほどの意でかかってゆき,home が方向を表わす副詞的対格として came にかかってゆくと解釈するほうが,成句の表わす意味を理解しやすい.

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2010-07-27 Tue

#456. 比較の -er, -est は屈折か否か [adjective][adverb][comparison][inflection]

 現代英語で形容詞や副詞の比較級,最上級を作るのに,(1) -er, -est を接尾辞として付加する方法と,(2) more, most という語を前置する方法の,大きく分けて二通りがありうる.
 一般に (1) を屈折 ( inflection ),(2) を迂言 ( periphrasis ) と呼ぶが,Kytö は (1) は実際には屈折は関わっていないという (123).そこでは議論は省略されているが,-er, -est を屈折でないとする根拠は,おそらく (a) すべての形容詞・副詞が比較を作るわけではなく,(b) ある種の形容詞・副詞は迂言的にしか比較級,最上級を作れず,(c) さらにある種の形容詞・副詞は迂言でも接尾辞付加でも作れる,などと分布がばらけているので,-er, -est の付加を,「文法的に必須である」ことを要諦とする「屈折」とみなすのはふさわしくないということなのではないか.
 一方で,Carstairs-McCarthy によると -er, -est は屈折と呼ぶべきだという.

The justification for saying that comparative and superlative forms of adjectives belong to inflectional rather than to derivational morphology is that there are some grammatical contexts in which comparative or superlative adjectives are unavoidable, anything else (even if semantically appropriate) being ill-formed: (41)

 問題は,屈折と呼び得るためには,すべての関連する語において文法的に必須でなければいけないのか,あるいはその部分集合において文法的に必須であればよいのかという点である.例えば,次の文で pretty を用いようとするならば文法的に prettier にしなければならない.

This girl is prettier/*pretty than that girl.

 この文脈では,-er は文法的に必須であるから屈折と呼んで差し支えないように思われる.しかし,beautiful を用いるのであれば,more による迂言法でなければならない.

This girl is more beautiful/*beautifuler/*beautiful than that girl.

 ここでは -er は文法的に必須でないどころか文法的に容認されないわけで,このように pretty か beautiful かなど語を選ぶようでは屈折といえないのではないかというのが Kytö の理屈だろう.
 ある語が -er をとるのか more をとるのかの区別が明確につけられるのであれば,その限りにおいて,ある語群においては -er 付加が文法的に必須ということになり,屈折と呼びうることになるのかもしれない.しかし,明確な区別がないのは[2010-06-04-1]でも述べたとおりである.屈折と呼べるかどうかは,理論的に難しい問題のようだ.

 ・ Kytö, Merja. " 'The best and most excellentest way': The Rivalling Forms of Adjective Comparison in Late Middle and Early Modern English." Words: Proceedings of an International Symposium, Lund, 25--26 August 1995, Organized under the Auspices of the Royal Academy of Letters, History and Antiquities and Sponsored by the Foundation Natur och Kultur, Publishers. Ed. Jan Svartvik. Stockholm: Kungl. Vitterhets Historie och Antikvitets Akademien, 1996. 123--44.
 ・ Carstairs-McCarthy, Andrew. An Introduction to English Morphology. Edinburgh: Edinburgh UP, 2002. 134.

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2009-06-07 Sun

#40. 接尾辞 -ly は副詞語尾か? [suffix][adverb][adjective][old_norse]

 現代英語では, -ly が形容詞から副詞を作る典型的な接尾辞であることはよく知られている.nice - nicelyquick - quicklyterrible - terribly の類である.非常に生産的であり,原則としてどの形容詞にも付きうる.
 ところが,-ly は実際には名詞から形容詞を作る接尾辞として機能することもある.例えば,beastlycowardlyfatherlyfriendlyknightlyrascallyscholarlywomanly など.時間を表す,dailyhourlyweeklyyearly も同様である.副詞接辞にも形容詞接辞にもなりうるこの -ly とはいったい何なのだろうか.語源を探ってみよう.
 古英語の対応する接尾辞は -līċ である.līċ は単体としては「形,体」を意味する名詞である.これは現代英語の like 「〜のような,〜に似た」の語源でもある.-līċ が接尾辞として他の名詞に付くと,「(名詞)の形態をした,(名詞)のような」という形容詞的意味が生じた.現代英語では,-like の付く形容詞も存在するが,成り立ちとしては -ly とまったく同じだということがわかるだろう(例:businesslikechildlikelifelike).実際,形容詞語尾としての -like は -ly 以上に生産的であり,事実上どんな名詞にも付き得て,形容詞を作ることができる(例:doglikejerry-likesphinxlike).
 以上で,-ly ( < OE -līċ ) がまず最初に形容詞語尾であることが分かっただろう.それでは,副詞語尾としての -ly はどこから来たのか.古英語では,形容詞は与格に屈折させると副詞機能を果たすことができた(see [2009-06-06-1]).-līċ の付く形容詞の与格形は,語尾に <e> を付加するだけの -līċe であった.ところが,中英語期にかけて起こった語尾音の消失により,与格語尾の <e> が落ち,結果的に形容詞語尾の -līċ と同形になってしまった.さらに,恐らく古ノルド語の対応する形態 -lig- の影響により,中英語後期までに -līċ の最後の子音が弱化・消失し,現在のような -ly の形に落ち着いた.
 以上みてきたように,現代英語の -ly という接尾辞は,語源的には古英語の形容詞接辞 -līċ と副詞接辞 -līċe の両方に対応する形態である.中英語期にこの形態が確立してからは,形容詞接辞としてよりも副詞接辞としての役割のほうが大きくなり,大量の -ly 副詞が生まれた.そのような事情で 現代英語の -ly は典型的な副詞語尾とみなされることが多いわけだが,順序としては,まず形容詞語尾としての役割が先にあったことを押さえておく必要があるだろう.

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