hellog〜英語史ブログ

#4907. 副詞の no は形容詞比較級と相性がよいし,もっといえば the の仲間ではないか![negative][comparison][adverb][adjective][article]

2022-10-03

 「#1904. 形容詞の no と副詞の no は異なる語源」 ([2014-07-14-1]) でみたように,副詞の no の起源をたどると原義は "never" に近い.副詞の no といえば yes/nono を挙げれば通りがよさそうだが,先の記事の例文で示したとおり,別の使い方もある.
 例えば Their way of life is no different from ours.I am no good at tennis. のような,特定の形容詞が叙述的に用いられる場合に,それを否定する副詞 no が用いられることがある.しかし,これはきわめて慣用的な例であり,どんな叙述形容詞を否定する際にも no が用いられるわけではない.
 典型的な副詞としての no の用例は,形容詞の比較級と絡むものが多い.no better, no longer, no more などの例から,すぐに理解できるだろう.これらは実質的な意味としては as good, as short, as little と同等となる点が重要である.
 no といえば no one, no problem, no way のように形容詞として用いられる場合があり,むしろ形容詞の比較級と結びつく副詞としての no の兼任については,言われてハッとする向きもあるかもしれない.しかし,この点でさらなる驚きをもって気づかされるのは,the というすぐれて形容詞(冠詞)的な語が,やはり形容詞の比較級とタッグを組んで「その分だけ」の意味で副詞的に用いられることとの平行関係である.詳しくは「#811. the + 比較級 + for/because」 ([2011-07-17-1]),「#812. The sooner the better」 ([2011-07-18-1]) を参照されたい.
 このことに気づかせてくれたのは,Quirk et al. (§10.58) のきわめて短いコメントである.

Except for a few fixed phrases (no good, no different), the adverb no modifies adjectives only when they are comparatives (by inflection or by periphrasis): no worse, no tastier, no better behaved, no more awkward, no less intelligent. (Compare the positive with the: He is the worse for it.)


 nothe は平行的なのか! この視点はありそうでなかった.

 ・ Quirk, Randolph, Sidney Greenbaum, Geoffrey Leech, and Jan Svartvik. A Comprehensive Grammar of the English Language. London: Longman, 1985.

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