昨日の記事[2010-01-02-1]に引き続き,正月でますますお酒が回ってきたので軽い話題をもう一つ.
IPA 「国際音標文字」の図が,The International Phonetic Association のサイトからPDFでダウンロードできる(直接にはこちら).A4用紙1枚に印刷できるので,昨日のOE Inflection Magic Sheetの裏面に印刷してみた.
ちなみに,[2009-05-17-1]でも紹介したが,PC上でIPAの発音記号を打ち込むにはこちらのサイトが便利である.
正月でお酒が回ってきたので軽い話題を一つ.
OE Inflection Magic Sheetから,非常にコンパクトにまとまった古英語の屈折表をPDFで落とすことができる(直接にはこちら).A4用紙1枚にカラーで印刷できるので,試験前のアンチョコとして申し分ない.名詞,形容詞,代名詞,動詞の主要な屈折が掲げられている. *
私は中英語の形態論を主な研究領域としているので古英語の屈折は熟知していなければならないはずなのだが,かなりの部分が記憶から抜け落ちてしまっている.新年でもあるし,改めて覚えなおすか・・・.せめて手帳に挟み込んでおくことにする.
「レディース」と答える人が圧倒的ではないだろうか.英語でも,men's wear に対して ladies' wear というのが一般的である.ところが,先日,ユニクロの日替わりセールの広告で「ウィメンズ 3Dスキニージーンズ 1,490円」なる文言を見つけた.
確かに,英語でも women's wear という表現はないではないし,むしろ mens' wear との対比が綴字上の eye rhyme として効果的に示されるという利点はあるかもしれない.ただ,[2009-12-06-1], [2009-12-07-1]で見たように,発音上は /mɛnz/ と /wɪmɪnz/ とでは韻を踏まない.
一方,日本語では,綴字上も発音上も見事に韻を踏む.「メンズ」に対して,「ウィメンズ」と発音が日本語化するからである.無標の ( unmarked ) 「レディース」ではなく,あえて有標の ( marked ) 「ウィメンズ」を使うというのは,ユニクロの差別化戦略だろうか?
英語の話しに戻るが,ladies' wear と women's wear のように二つ(以上)の variants があり,どちらの使用頻度がより高いかの見当をつけたい場合に便利なウェブツールがある.英文校正サイト [NativeChecker]は「Web上に蓄積されている膨大な英文テキストを基盤とした,英語のネイティブチェックシステム」で,自然な英語表現のチェックに威力を発揮する.入力された英語表現のヒット数によって,その頻度や自然度も計れるので,今回のような問題に活用できる.
これによると,ladies' wear のヒットは2,780,000件,women's wear のヒットは1,520,000件だった.前者のほうが,およそ倍近くの頻度を誇るようだ.およその見当付けとして活用したい.
Wovreはオーストラリア発の大学生コミュニティサイト.大学の授業の講義ノートのまとめサイトというか,試験直前のアンチョコ集というか,そのようなコンテンツを収集している.オーストラリアやニュージーランドの大学生が加盟(?)しているようで,英語史に関するものも二つ見つかった.
・Language Acquisition and Change --- History of English: 英語史を5分で総復習といった風.
・Language Change --- Timeline: 表の形式で英語史をざっくりと一望.
時代区分(periodisation)の観点からは,偶然にも上記二つの「英語史」はともに8区分である.ただし,英語がブリテン島に持ち込まれた5世紀以降だけを考えると,前者が7区分,後者が6区分である.前者では,16世紀以降はおよそ1世紀刻みの区分となっている.多かれ少なかれ時代区分は恣意的である以上,1世紀刻みというのは,むしろわかりやすい区分かもしれない.
いずれも試験前の大学生のために要点をまとめたという感じがよく出ている.授業を受けた学生なら「へぇ,便利」と思うに違いない.だが,当然ながらまとめアンチョコなので情報は断片的であり,決して体系的ではない.
良質なアンチョコを作るには,通史を記述するのと同じくらいのセンスが必要ではないだろうか.「英語史のアンチョコ」にはいつかトライしてみたい.
私は Shakespeare を専門とする者ではないが,英語史を研究していると Shakespeare にはいろいろなところでお世話になる.Shakespeare ともなればウェブ上の情報源はそれこそ無限に等しいものと思われるので,参照に便利なようにコメント付きで少数のリンクにまとめてみた.
・Open Source Shakespeare: http://www.opensourceshakespeare.org/
テキスト参照と検索に便利.advanced search も可能.検索結果の出力も見やすい.全体的に使いやすいインターフェース.
・The Complete Works of William Shakespeare: http://shakespeare.mit.edu/
HTML版の標準的 Shakespeare 全集.Title, Act, Scene がわかっている場合に参照しやすい.
・The Collected Works of Shakespeare: http://www.it.usyd.edu.au/~matty/Shakespeare/
HTML版の標準的 Shakespeare 全集.特にこちらの検索機能が有用.
・Mr. William Shakespeare and the Internet: http://shakespeare.palomar.edu/sitemap.htm
ハブサイト.ここを中心として,Shakespeare の世界へ飛べる.膨大なサイトなのであえてサイトマップへのリンク.
・Links to HTML Complete Works Sites: http://shakespeare.palomar.edu/works.htm#Collected
その他の HTML 化されたテキストへのリンク集.
・Shakespeare Search Tools: http://shakespeare.palomar.edu/searching.htm#Shsearch
その他の検索ツールへのリンク集.glossary へのリンクもあり.
試みに,上記の Open Source Shakespeare の検索により,worse と worser の使用頻度を調べてみた.worser はいわゆる二重比較級 ( double comparative ) の形態で,16?17世紀に特によく用いられたとされている.
検索の結果,worse が178例,worser が21例.例文をみてみると,worser は Our worser thoughts や the worser part of it などのように限定的用法の形容詞として用いられる傾向が強い一方で,worse は単独で用いられる傾向があるとわかる.これは,現代英語に標準用法として存在する二重比較級である lesser がもっぱら限定的用法で用いられるのに対応している.
などなど,ちょっとした発見が得られる.
(後記 2014/02/08(Sat):追加的に有用なサイトを以下に挙げておく.)
・ Shakespeare's Words: David Crystal による Shakespeare の言語への導入的サイト
・ Shakespeare Authorship
・ Stratford-upon-Avon - Shakespeare Birthplace Trust
・ Royal Shakespeare Company (RSC)
グラスゴー大学の英語学科のサイトには,英語史学習に最適な教材が置かれている.以下に,コメントをつけつつリンクを張る.
・Essentials of Old English: オンラインで古英語を勉強するならここ.古英語の歴史的背景や文法などが学べる.特に,A short grammar of Old Englishは手軽で必見.
・Readings in Early English: 古英語,中英語,初期近代英語のテキストとそれを読み上げたオーディオファイルが入手できる.
・ Essentials of Early English のリソース集: 古英語の屈折表などがPDFで手に入る.中世の写本へのリンクも張られている.本書はこちら
・The Basics of English Metre: 英語の韻律について学べる.英語史の理解にも,韻律や音節の学習は必要.
今回はちょっとしたサイトの紹介だけ.BBC の Ages of English Timeline は,FLASH により遊び感覚で英語史の要点を学べる.
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