-st の語尾音添加 (paragoge) については,昨日の記事「#1573. amidst の -st 語尾」 ([2013-08-17-1]) を含め,##508,509,510,739,1389,1393,1394,1399,1554,1555,1573 の各記事で扱ってきた.その流れで,今日は amongst について.
OED によると,語尾音添加形は15世紀に起こっており,挙げられている例としては amongest の綴字で16世紀初頭の "1509 Bp. J. Fisher Wks. (1876) 296 Yf ony faccyons or bendes were made secretely amongest her hede Officers." が最も古い.直接のモデルとなったと考えられる amonges のような形態はすでに中英語で広く用いられていた(MED の among(es (prep.) を参照).apheresis (語頭音消失)を経た 'mongst も16世紀半ばから現われている.
小西 (69) によれば,among と amongst のあいだに意味の違いはなく,使用頻度は10対1である.ただし,イギリス英語ではアメリカ英語よりも amongst の使用頻度が高い.母音の前では好音調 (euphony) から amongst が用いられる傾向があるという指摘もあるが,BNC を用いた調査ではそのような結果は出なかったとしている.この指摘が示唆的なのは,「#1554. against の -st 語尾」 ([2013-07-29-1]) で触れたように,-st 語尾の添加は後続する定冠詞の語頭子音との結合に起因するという説との関連においてである.もし amongst + 母音の傾向があるとすれば,逆方向ではあるが同じ euphony で説明されることになる.
さて,本ブログではこれまで -st の語尾音添加について against, amidst, amongst, betwixt, unbeknownst, whilst の6語についてみてきた.OED や語源辞典で得た初出時期の情報を一覧してみよう.
against | c1300 |
betwixt | c1300 |
whilst | a1400 |
amongst | C15 |
amidst | C15 |
unbeknownst | 1854 |
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