hellog〜英語史ブログ

#1697. Liberia の国旗[vexillology][link][map][geography]

2013-12-19

 旗を研究対象とする旗章学 (vexillology) と呼ばれる分野がある.国旗のデザイン,由来,変遷の歴史なども研究対象となるが,世界の地理や歴史を学ぶ上で,よい教材を提供してくれる.英語史でも,近代以降の英語の世界展開をたどるのに時に有益である.例えば,英国の歴史をたどる上で,Union Jack (Union Flag) 成立の経緯は重要である(詳しくはこちらのサイトを参照).国旗に関する出版物は多いが,ウェブ上のリソースも便利なものが多いので,いくつかを紹介しておこう.
 
 ・ Flags of the World (FOTWO): 由来や変遷の歴史など詳細な情報を含み,非常に有用.
 ・ World Flag Database: アルファベット順で,大きくデザインを表示する.国の地図へも飛べる.
 ・ All Flags in Alphabetical Sequence: アルファベット順にサムネイルで一覧.各種のサイズをフリーで利用できる.
 ・ 外務省 世界の国旗: 地域ごとにサムネイルで一覧するのに便利

 さて,今日は リベリア共和国 (Republic of Liberia) とその国旗を取り上げる.西アフリカ南西部,大西洋に面したこの土地には,古来多数の土着民族が住んでいた.建国につながる近現代史に限れば,1822年にアメリカ植民協会 (American Colonization Society) が米国の黒人解放奴隷の入植地として買収したことに始まる.首都となる Monrovia (アメリカ第5代大統領 James Monroe にちなむ)へ移住したアメリカの解放奴隷が支配層となり,1847年に独立した.アフリカで最も古い共和国である.国名には,ラテン語で「自由な」を意味する liber が含まれている.

Map of Liberia

 350万人ほどの国民のうち,解放奴隷の子孫は数パーセントを占めるにすぎないが,早くから欧米式の教育を受け,社会的には影響力のある集団となっている.英語が国語として採用されているのもそのためである.使用されている英語変種としては,アメリカ英語の影響を受けた標準的な変種のほか,Liberian English と呼ばれるピジン英語もある.アフリカにおける標準英語変種は,英植民地の歴史によりイギリス英語のそれに大きく偏っているが,リベリアはアメリカ英語に基づいており,特異な存在である.「#376. 世界における英語の広がりを地図でみる」 ([2010-05-08-1]) で,アフリカ大陸のなかで唯一リベリアがピンクで示されていることを確認されたい.ほかに Ethnologue: Liberia も参照.
 アメリカとの関連の深さは,国旗にもよく現れている.アメリカの星条旗 (Stars and Stripes) を基にしたデザインであることが明らかである.赤白11本の縞は憲法の起草者の数を,白い1つの星 (Lone Star) はアフリカにおいて模範となるべき欧米風独立国家の象徴を表わす.

National Flag of Liberia

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