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etymology - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2024-12-21 12:40

2019-08-06 Tue

#3753. 英仏語におけるケルト借用語の比較・対照 [french][celtic][loan_word][borrowing][lexicology][etymology][gaulish][language_shift][diglossia][sociolinguistics][contrastive_language_history]

 昨日の記事「#3752. フランス語のケルト借用語」 ([2019-08-05-1]) で,フランス語におけるケルト借用語を概観した.今回はそれと英語のケルト借用語とを比較・対照しよう.
 英語のケルト借用語の数がほんの一握りであることは,「#3740. ケルト諸語からの借用語」 ([2019-07-24-1]),「#3750. ケルト諸語からの借用語 (2)」 ([2019-08-03-1]) で見てきた.一方,フランス語では昨日の記事で見たように,少なくとも100を越えるケルト単語が借用されてきた.量的には英仏語の間に差があるともいえそうだが,絶対的にみれば,さほど大きな数ではない.文字通り,五十歩百歩といってよいだろう.いずれの社会においても,ケルト語は社会的に威信の低い言語だったということである.
 しかし,ケルト借用語の質的な差異には注目すべきものがある.英語に入ってきた単語には日常語というべきものはほとんどないといってよいが,フランス語のケルト借用語には,Durkin (85) の指摘する通り,以下のように高頻度語も一定数含まれている(さらに,そのいくつかを英語はフランス語から借用している).

. . . changer is quite a high-frequency word, as are pièce and chemin (and its derivatives). If admitted to the list, petit belongs to a very basic level of the vocabulary. The meanings 'beaver', 'beer', 'boundary', 'change', 'fear' (albeit as noun), 'to flow', 'he-goat', 'oak', 'piece', 'plough' (albeit as verb), 'road', 'rock', 'sheep', 'small', and 'sow' all figure in the list of 1,460 basic meanings . . . . Ultimately, through borrowing from French, the impact is also visible in a number of high-frequency words in the vocabulary of modern English . . . beak, carpentry, change, cream, drape, piece, quay, vassal, and (ultimately reflecting the same borrowing as French char 'chariot') carry and car.


 この質的な差異は何によるものなのだろうか.伝統的な見解にしたがえば,ブリテン島のブリトン人はアングロサクソン人の侵入により比較的短い期間で駆逐され,英語への言語交代 (language_shift) も急速に進行したと考えられている.一方,ガリアのゴール人は,ラテン語・ロマンス祖語の話者たちに圧力をかけられたとはいえ,長期間にわたり共存する歴史を歩んできた.都市ではラテン語化が進んだとしても,地方ではゴール語が話し続けられ,diglossia の状況が長く続いた.言語交代はあくまでゆっくりと進行していたのである.その後,フランス語史にはゲルマン語も参入してくるが,そこでも劇的な言語交代はなかったとされる.どうやら,英仏語におけるケルト借用語の質の差異は言語接触 (contact) と言語交代の社会的条件の違いに帰せられるようだ.この点について,Durkin (86) が次のように述べている.

. . . whereas in Gaul the Germanic conquerors arrived with relatively little disruption to the existing linguistic situation, in Britain we find a complete disruption, with English becoming the language in general use in (it seems) all contexts. Thus Gaul shows a very gradual switch from Gaulish to Latin/Romance, with some subsequent Germanic input, while Britain seems to show a much more rapid switch to English from Celtic and (maybe) Latin (that is, if Latin retained any vitality in Britain at the time of the Anglo-Saxon settlement).


 この英仏語における差異からは,言語接触の類型論でいうところの,借用 (borrowing) と接触による干渉 (shift-induced interference) の区別が想起される (see 「#1985. 借用と接触による干渉の狭間」 ([2014-10-03-1]), 「#1780. 言語接触と借用の尺度」 ([2014-03-12-1])) .ブリテン島では borrowing の過程が,ガリアでは shift-induced interference の過程が,各々関与していたとみることはできないだろうか.
 フランス語史の光を当てると,英語史のケルト借用語の特徴も鮮やかに浮かび上がってくる.これこそ対照言語史の魅力である.

 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

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2019-08-05 Mon

#3752. フランス語のケルト借用語 [french][celtic][loan_word][borrowing][lexicology][etymology][gaulish][hybrid][hfl]

 連日英語におけるケルト諸語からの借用語を話題にしているが,観点をかえてフランス語におけるケルト借用語の状況を,Durkin (83--87) に依拠してみていこう.
 ローマ時代のフランス(ガリア)では,ラテン語と並んで土着のゴール語 (Gaulish) も長いあいだ用いられていた.都市部ではラテン語や(ロマンス祖語というべき)フランス語の前身が主として話されていたが,地方ではゴール語も粘り強く残っていたようだ.この長期にわたる接触の結果として,後のフランス語には,英語の場合よりも多くのケルト借用語が取り込まれてきた.とはいっても,100語を越える程度ではある(見方によって50--500語までの開きがある).ただし,「#3749. ケルト諸語からの借用語に関連する語源学の難しさ」 ([2019-08-02-1]) で英語の場合について議論を展開したように,借用の時期やルートの特定は容易ではないようだ.この数には,ラテン語時代に借用されたものや,いくつもの言語の仲介を経て間接的に借用されたものなども含まれており,フランス語話者とゴール語話者の直接の接触に帰せられるべきものばかりではない.
 上記の問題点に注意しつつ,以下に意味・分野別のケルト借用語リストの一部を挙げよう (Durkin 84) .

 ・ 動物:bièvre "beaver", blaireau "badger", bouc "billy goat", mouton "sheep", vautre "type of hunting dog"; chamois "chamois", palefroi "palfrey", truie "sow" (最後の3つは混種語)
 ・ 鳥:alouette "lark", chat-huant "tawny owl"
 ・ 魚:alose "shad", loche "loach", lotte "burbot", tanche "tench", vandoise "dace", brochet "pike"; limande "dab" (ケルト接頭辞を示す)

 これらの「フランス単語」のうち,後に英語に借用されたものもある.mutton, palfrey, loach, tench, chamois などの英単語は,実はケルト語起源だったということだ.しかし,英単語 buck, beaver などは事情が異なり,フランス語の bièvre, bouc との類似は借用によるものではなく,ともに印欧祖語にさかのぼるからだろう.brasserie (ビール醸造)や cervoise (古代の大麦ビール)などは,ゴール人の得意分野を示しているようでおもしろい.
 フランス語におけるケルト借用語のその他の候補をアルファベット順に挙げてみよう (Durkin 84) .

arpent'measure of land'
bec'beak'
béret'beret'
borne'boundary (marker)'
boue'mud'
bouge'hovel, dive' (earlier 'bag')
bruyère'heather, briar-root'
changer'to change'
char'chariot' (reflecting a borrowing which had occurred already in classical Latin, whence also charrue 'plough')
charpente'framework' (originally the name of a type of chariot)
chemin'road, way'
chêne'oak'
craindre (partly)'to fear'
crème'cream'
drap'sheet, cloth'
javelot'javelin'
lieue'league (measure of distance)'
marne'marl' (earlier marle, hence English marl)
pièce'piece'
ruche'beehive'
sillon'furrow'
soc'ploughshare'
suie'soot'
vassal'vassal'
barre'bar'
jaillir'to gush, spring, shoot out'
quai'quay'


 英仏語におけるケルト借用語の傾向の差異という話題については,明日の記事で.

 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

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2019-08-04 Sun

#3751. 人名・地名のケルト語要素 [onomastics][toponymy][personal_name][celtic][etymology][caedmon][hydronymy]

 「#1216. 古英語期のケルト借用語」 ([2012-08-25-1]),「#3740. ケルト諸語からの借用語」 ([2019-07-24-1]),「#3749. ケルト諸語からの借用語に関連する語源学の難しさ」 ([2019-08-02-1]),「#3750. ケルト諸語からの借用語 (2)」 ([2019-08-03-1]) などで英語における一般的なケルト借用語に焦点を当ててきたが,人名・地名などの固有名詞におけるケルト語要素についても,Durkin (81--82) にしたがって状況を覗いてみよう.
 まず,人名について.古英語詩で有名な Cædmon の名前が真っ先に挙がる(「#2898. Caedmon's Hymn」 ([2017-04-03-1]) を参照).続いて,ウェストサクソン王国の諸王や貴族の名前で Ċerdiċ, Ċeawlin, Ċeadda, Ċeadwalla, Ċedd, Cumbra が見つかる.残念ながら,これらの意味については定説がない.
 地名については人名よりも豊富な証拠があり,ケルト語要素を同定しやすいが,だからといって問題は簡単ではないようだ.その地理的な分布は,「#2443. イングランドにおけるケルト語地名の分布」 ([2016-01-04-1]) でみたように北部や西部に偏っている.Thames, Severn, Trent などの河川名は(前)ケルト語要素として同定しやすいものが多い (see 「#1188. イングランドの河川名 Thames, Humber, Stour」 ([2012-07-28-1])) .
 Kent がケルト語要素を保っているのは,その位置(ブリテン島の南東部)を考えるとやや奇異に思えるが,これはアングロサクソン人のブリテン島渡来以前から知られていた地名だったからだろう.Chevening, Chattenden, Chatham, Dover, Reculver, Richborough, Sarr, Thanet などもケルト語(あるいは前ケルト語)要素を保持している.
 他の関連する話題として,「#1736. イギリス州名の由来」 ([2014-01-27-1]) と「#3113. アングロサクソン人は本当にイングランドを素早く征服したのか?」 ([2017-11-04-1]) も参照.

 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

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2019-08-03 Sat

#3750. ケルト諸語からの借用語 (2) [celtic][loan_word][borrowing][lexicology][etymology][toponymy][onomastics][irish]

 昨日の記事「#3749. ケルト諸語からの借用語に関連する語源学の難しさ」 ([2019-08-02-1]) で論じたように,英語におけるケルト借用語の特定は様々な理由で難しいとされる.今回は,「#3740. ケルト諸語からの借用語」 ([2019-07-24-1]) のリストと部分的に重なるものの,改めて専門家による批評を経た上で,確かなケルト借用語とみなされるものを挙げていきたい.その専門家とは,英語語源学の第1人者 Durkin である.
 Durkin (77--81) は,古英語期のあいだ(具体的にその時期のいつかについては詳らかにしないが)に借用されたとされる Brythonic 系のケルト借用語をいくつかを挙げている.まず,brock "badger" (OE brocc) は手堅いケルト借用語といってよい.これは,「アナグマ」を表わす語として,初期近代英語期に badger にその主たる地位を奪われるまで,最も普通の語だった.
 「かいばおけ」をはじめめとする容器を指す bin (OE binn) も早い借用とされ,場合によっては大陸時代に借りられたものかもしれない.
 coomb "valley" (OE cumb) も確実なケルト借用語で,古英語からみられるが主として地名に現われた.地名要素としての古いケルト借用語は多く,古英語ではほかに luh "lake", torr "rock, hill", funta "fountain", pen "hill, promontory" なども挙げられる.
 The Downs に残る古英語の dūn "hill" も,しばしばケルト借用語と認められている.「#1395. up and down」 ([2013-02-20-1]) で見たとおり,私たちにもなじみ深い副詞・前置詞 down も同一語なのだが,もしケルト借用語だとすると,ずいぶん日常的な語が借りられてきたものである.他の西ゲルマン諸語にもみられることから,大陸時代の借用と推定される.
 「ごつごつした岩」を意味する crag は初例が中英語期だが,母音の発達について問題は残るものの,ケルト借用語とされている.coble 「平底小型漁船」も同様である.
 hog (OE hogg) はケルト語由来といわれることも多いが,形態的には怪しい語のようだ.
 次に,ケルト起源説が若干疑わしいとされる語をいくつか挙げよう.古英語の形態で bannuc "bit", becca "fork", bratt "cloak", carr "rock", dunn "dun, dull or dingy brown", gafeluc "spear", mattuc "mattock", toroc "bung", assen/assa "ass", stǣr/stær "history", stōr "incense", cæfester "halter" などが挙がる.専門的な見解によると,gafeluc は古アイルランド語起源ではないかとされている.
 古アイルランド語起源といえば,ほかにも drȳ "magician", bratt "cloak", ancra/ancor "anchorite", cursung "cursing", clugge "bell", æstel "bookmark", ċine/ċīne "sheet of parchment folded in four", mind "a type of head ornament" なども指摘されている.この類いとされるもう1つの重要な語 cross "cross" も挙げておこう.
 最近の研究でケルト借用語の可能性が高いと判明したものとしては,wan "pale" (OE wann), jilt, twig がある.古英語の trum "strong", dēor "fierce, bold", syrce/syrc/serce "coat of mail" もここに加えられるかもしれない.
 さらに雑多だが重要な候補語として,rich, baby, gull, trousers, clan も挙げておきたい (Durkin 91) .

 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

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2019-08-02 Fri

#3749. ケルト諸語からの借用語に関連する語源学の難しさ [celtic][loan_word][borrowing][lexicology][contact][etymology][hydronymy]

 「#3740. ケルト諸語からの借用語」 ([2019-07-24-1]) を受け,より専門的な語源学の知見を参照しながら英語へのケルト借用語について考えておきたい.主として参照するのは,Durkin の第5章 "Old English in Contact with Celtic" (76--95) である.
 ケルト諸語から英語への借用語が少ないという事実は疑いようがないが,ケルト借用語とされている個々の単語については,語源や語史の詳細が必ずしも明らかになっていないものも多い.先の記事で挙げたような,一般の英語史書でしばしば取り上げられる一連の単語は比較的「手堅い」ものが多いが,その中にももしかすると怪しいものがあるかもしれない.本当にケルト語からの借用語なのかという本質的な問題から,どの時代に借用されたのか,あるいはいずれのケルト語から入ってきたのかといった問題まで,様々だ.
 背景には,英語の歴史とケルト諸語の語源の両方に詳しい専門家が少ないという現実的な事情もある.また,ケルト語源学やケルト語比較言語学そのものも,発展の余地をおおいに残しているという側面もある.たとえば,河川名などの地名に関して「#1188. イングランドの河川名 Thames, Humber, Stour」 ([2012-07-28-1]) でみたように,ケルト語源を疑う見解もあるのだ.
 さらに,時期の特定の問題も難しい.英語話者とケルト諸語の話者との接触は,前者が大陸にいた時代から現代に至るまで,ある意味では途切れることなく続いている.問題の語が,大陸時代にゲルマン語に借用されたケルト単語なのか,アングロサクソン人のブリテン島への渡来の折に入ってきたものなのか,その後の中世から近代にかけてのある時点において流入したものなのか,判然としないケースもある.
 いずれのケルト語から入ってきたかという問題については,その特定に際して,「#778. P-Celtic と Q-Celtic」 ([2011-06-14-1]) で触れた音韻的な特徴がおおいに参考になる.しかし,この音韻差の発達は紀元1千年紀中に比較的急速に起こったとされ,ちょうどアングロサクソン人の渡来と前後する時期なので,語源の特定にも微妙な問題を投げかける.
 今後ケルト言語学が発展していけば,上記の問題にも答えられる日が来るのだろう.今後の見通しについては,Durkin (80--81) の所見を参考にされたい.

 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

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2019-08-01 Thu

#3748. 不定詞マーカー atado 「騒動」 [infinitive][preposition][old_norse][etymology][shakespeare][semantic_change][lalme][map]

 「#3741. 中英語の不定詞マーカー forto」 ([2019-07-25-1]) で触れたように,中英語には toforto などと並んで,不定詞マーカーとして at という語も稀に用いられた.この語は馴染みのある前置詞 at とは別物で,古ノルド語の不定詞マーカー at を借用したものとされる.ただし両形態とも結局のところ語源を一にするので,語の借用というよりは,用法の借用というべき事例かもしれない.OED の at, prep. によると,不定詞マーカーとしての用法について次のように記述がある.

VI. With the infinitive mood.
†39. Introducing the infinitive of purpose (the original function also of to; cf. French rien à faire, nothing to do, nothing at do, nothing ado n. and adj.2). Obsolete exc. dialect.
   Corresponding to Old Norse at (Danish at, Swedish att) in gefa at eta to give one at eat, i.e. to eat; but not, like it, used with the simple infinitive; the nearest approach to which was in the phrase That is at say = French c'est à dire.


 MEDat adv. with infinitive を参照すると,at do, at ete, at kep, at sai のような決まった動詞とともに用いられる傾向があるという.MED より最初期の例をいくつか挙げておこう.

 ・ c1280 Chart.in Birch Cart.Sax.2.326: Yat ye land of seint Wilfrai..fre sal be ay; At na nan..In yair Herpsac sal have at do.
 ・ c1300 Horn (LdMisc 108)906: Þe hondes gonnen at erne [Hrl: to fleon] In to þe schypes sterne.
 ・ c1330(?a1300) Tristrem (Auch)543: Ynouȝ þai hadde at ete.
 ・ c1330(?c1300) Guy(1) (Auch)2495: Þat he cum wiþ þe at ete.
 ・ (1399) RParl.3.451a: The Answers of certeins Lordes, that is atte saye, of the forsayd Ducs of Aumarle [etc.].


 古ノルド語の用法に由来するということから察せられるように,不定詞マーカー at は北部方言によくみられた.eLALME の Item 81 として取り上げられており,以下の Dot Map が得られる.明確に北部的な分布だ.

eLALME Dot Map for AT

 ちなみに名詞 ado 「騒動;面倒」は at do の約まったものに由来する.シェイクスピアの喜劇 Much Ado About Nothing 『空騒ぎ』は,要するに much to do about nothing ということである.「すべきこと」→「面倒な仕事」→「騒動」ほどの意味の発展を経たと考えられる.初出は以下の通りで,すでに「騒動;衝突」ほどの意味で使われている.

c1380 Firumb.(1) (Ashm 33)5648: Olyuer wyþ a corde bond him fast, Ac arst was muche ado.

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2019-07-28 Sun

#3744. German の指示対象の歴史的変化と語源 [german][germanic][etymology][ethnic_group]

 昨日の記事「#3743. Celt の指示対象の歴史的変化」 ([2019-07-27-1]) に続き,今回は German という語の指示対象の変遷について.
 古代ローマ人は,中欧から北欧にかけて居住していたゲルマン系諸語を話す民族を Germānī (ゲルマニア人)と呼んでいた.そして,その対応する地域名が,現代の Germany (ドイツ)に連なる Germānia (ゲルマニア)だった.基本的には他称であり,自称として用いられたことはないようだ.
 英語でも後期中英語期に German がゲルマニア人を指す語としてフランス語を介して入ってきたが,近代の16世紀に入ると現代風にドイツ人を指すようになった.それ以前には,英語でドイツ人を指す名称としては AlmainDutch が一般的だった.
 German の語源については諸説ある.1つは,ゴール人が東方のゲルマニア人をケルト語で「隣人」と呼んだのではないかという説だ(cf. 古アイルランド語の gair (隣人)).もう1つは,同じくケルト語 gairm (叫び)に由来するという説もある.つまり「騒々しい民」ほどの蔑称だ.また,ゲルマン語で「貪欲な民」を意味する *Geramanniz (cf. OHG ger "greedy" + MAN) がラテン語へ借用されたものとする説もある.
 しかし,いずれの語源説も音韻上その他の難点があり,未詳といってよいだろう.

Referrer (Inside): [2021-05-25-1]

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2019-07-27 Sat

#3743. Celt の指示対象の歴史的変化 [celtic][etymology][ethnic_group]

 「#760. Celt の発音」 ([2011-05-27-1]) で,この重要な民族名の発音と語史について略述した.この名前が指してきたのは誰のことなのか,結局ケルト人とは何者なのかという問題に迫るために,OED より (1) 歴史的な指示対象と,(2) 18世紀以降の現代的な指示対象とを比べてみよう.

 (1) 英語での初例は1607年と近代に入ってからだが,古典語ではガリア人や大陸に分布している彼らの仲間たちを指す名前として普通に用いられていた.古代では,ブリトン人を指すのに用いられたことはない点に注意が必要である.

1. Historical. Applied to the ancient peoples of Western Europe, called by the Greeks Κελτοί, Κέλτοι, and by the Romans Celtae.
   The Κελτοί of the Greeks, also called Γαλάται, Galatae, appear to have been the Gauls and their (continental) kin as a whole; by Cæsar the name Celtae was restricted to the people of middle Gaul (Gallia Celtica), but most other Roman writers used it of all the Galli or Gauls, including the peoples in Spain and Upper Italy believed to be of the same language and race; the ancients apparently never extended the name to the Britons.


 (2) 1703年にフランスの歴史家 P. Y. Pezron が Antiquité de la nation et de la langue des Celtes (『古代ケルト民族・言語史』)を出して以来,ブリトン人を含めたケルト系諸言語の話し手全体を指す用法が発達した.

 2. A general name applied in modern times to peoples speaking languages akin to those of the ancient Galli, including the Bretons in France, the Cornish, Welsh, Irish, Manx, and Gaelic of the British Isles.
   This modern use began in French, and in reference to the language and people of Brittany, as the presumed representatives of the ancient Gauls: with the recognition of linguistic affinities it was extended to the Cornish and Welsh, and so to the Irish, Manx, and Scottish Gaelic. Celtic adj. has thus become a name for one of the great branches of the Aryan family of languages . . . ; and the name Celt has come to be applied to any one who speaks (or is descended from those who spoke) any Celtic language. But it is not certain that these constitute one race ethnologically; it is generally held that they represent at least two 'races', markedly differing in physical characteristics. Popular notions, however, associate 'race' with language, and it is common to speak of the 'Celts' and 'Celtic race' as an ethnological unity having certain supposed physical and moral characteristics, especially as distinguished from 'Saxon' or 'Teuton'.


 Celt の指示対象は,このように18世紀以降の「ケルトの復興」を経て変化してきたが,Celt の究極の語源は何かといえば,ラテン語 celsus "high" に関連するともいわれるが不詳である.周辺の関連語 Gallia, Gallic, Gaul, Galatian, Goidel, Wales, Welsh は互いにつながっているようだが,Celt はまた別らしい.
 なお,この語の語頭子音について,先の記事で OED では /sɛlt, kɛlt/ の順で挙げられていると述べたが,OED Online の最新版で確認したところ /kɛlt, sɛlt/ となっていたことを述べておく.

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2019-07-12 Fri

#3728. o'clock [etymology][preposition][clitic]

 It's two o'clock. (今2時だ)のように用いる o'clock は,of the clock が約まったものとされる.「?時(ちょうど)」を意味し,「?時5分」など分の端数が出る場合には用いられない.
 一般に元の句の前置詞は of であるとされるが,実際にはこの表現が後期中英語に初出した頃から様々な前置詞が用いられていた.OED の clock, n.1 の語義3によれば,前置詞を伴った句としての初例は "c1386 Chaucer Parson's Prol. 5 Ten of the clokke it was tho as I gesse." であり,ここでは確かに of が現われているが,他の例では a, o', at も用いられている.また MED clok(ke (n.) を参照すると "at (the) ~, atte ~, of (the) ~, on the ~, the ~" などと定冠詞の有無も含めてヴァリエーションは豊富なようだ.さらに MED では aclokke (adv.) の見出しで "(?1471) Stonor 1.121 : I must be with my lord by vij a kloke." の例を挙げており,後期中英語までに前置詞が後接辞 (proclitic) 化した形式も行なわれていたことがわかる.
 なお最初期のケースといってよい Chaucer CT. ML. l. 14 の例では,Robinson 版では It was ten of the clokke となっているが,Hengwrt, Ellesmere の両写本に実際に見えるのは at the clokke である.
 標題の表現に限らず of の後接辞化した形式が o' として綴られるのは初期近代では普通のことだったが,後に衰退して,jack-o'-lantern (カボチャのちょうちん), will-o'-the-wisp (鬼火) Tom o' Bedlam (狂人)などの固定表現に残るばかりとなってしまった.

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2019-06-25 Tue

#3711. 印欧祖語とゲルマン祖語にさかのぼる基本英単語のサンプル [indo-european][germanic][lexicology][etymology]

 『英語語源辞典』によると,印欧語比較言語学の成果により,1,000から2,000ほどの印欧語根が想定されている.そのおよそ半数が現代英語の語彙にも反映されているといわれるが,主に基本語彙として受け継がれているものを列挙しよう(寺澤,p. 1656;カッコは借用語を表わす).

身体arm, brow, ear, eye, foot, heart, knee, lip, nail, navel, tooth
家族father, mother, brother, sister, son, daughter, nephew, widow
??????beaver, cow, ewe, goat, goose, hare, hart, hound, mouse, sow, wolf; bee, wasp; louse, nit; crane, ern(e), raven, starling; fish, (lax)
罎????alder, ash, asp(en), beech, birch, fir, hazel, tree, withy
飲食物bean, mead, salt, water, (wine)
天体・自然現象moon, star, sun; snow
数詞one, two, ..., ten, hundred
代名詞I, me, thou, ye, it, that, who, what
動詞be, bear, come, do, eat, know, lie, murmur, ride, seek, sew, sing, stand, weave
形容詞full, light, middle, naked, new, sweet, young
その他acre, ax(e), furrow, month, name, night, summer, wheel, word, work, year, yoke


 一方,ゲルマン祖語にさかのぼる,ゲルマン語に特有の基本英単語を挙げてみよう(寺澤,p. 1657).眺めてみると,印欧祖語の時代に比べ「社会生活の進歩,環境の変化がうかがわれ」「とくに,農耕・牧畜関係の語の充実とともに,航海・漁業関係の語が豊富であり,戦争・宗教関係の語も目立つ」(寺澤,p. 1657)ことが確認できる.

身体bone, hand, toe
穀物・食物berry, broth, knead, loaf, wheat
動物bear, lamb, sheep, †hengest (G Hangst), roe, seal, weasel
鳥類dove, hawk, hen, rave, stork
海洋cliff, east, west, north, south, ebb, sail, sea, ship, steer, keel, haven, sound, strand, swim, net, tackle, stem
戦争bow, helm, shield, sword, weapon
絎????god, ghost, heaven, hell, holy, soul, weird, werewolf
住居bed, bench, hall
社会atheling, earl, king, knight, lord, lady, knave, wife, borough
経済buy, ware, worth
その他winter, rain, ground steel, tin


 「基本語彙」を巡る議論については,(基本語彙) の各記事を参照.

 ・ 寺澤 芳雄(編) 『英語語源辞典』 研究社,1997年.

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2019-06-12 Wed

#3698. 語源学習法のすゝめ [etymology][lexicology][academic_word_list][asacul][notice]

 過去2日間の記事で,語源を活用した学習法を紹介してきた(「#3696. ボキャビルのための「最も役に立つ25の語のパーツ」」 ([2019-06-10-1]) と「#3697. 印欧語根 *spek- に由来する英単語を探る」 ([2019-06-11-1]) ).中田氏による近著『英単語学習の科学』の第11章「語源で覚える英単語」でも「語源学習法」の効用が説かれている.

英単語は出現頻度によって,(1) 高頻度語,(2) 中頻度語,(3) 低頻度語の3つのグループに分類できます.中頻度語と低頻度語は,リーディングやリスニングにおける出現頻度があまり高くないため,文脈から自然に習得することは困難であり,意図的に学習することが欠かせません.中頻度語と低頻度語を覚えるには,その多く(約3分の2)がラテン語・ギリシア語起源であるため「語源学習法」が有効です.また,学術分野で頻度が高い英単語を集めた Academic Word List (Coxhead, 2000) の約90%もラテン語・ギリシア語起源なので,語源学習法が役に立ちます.(73)


 特に中級以上の英語学習者にとって,語源学習法が有効である理由が説得力をもって示されている.中田は,章末において語源学習法のポイントを次のようにまとめている.

・ 英単語をパーツに分解し,パーツの意味を組み立ててその単語の意味を理解する学習法を「語源学習法」と呼ぶ.語源学習法は特に,中頻度語・低頻度語および学術的な英単語の学習に効果的である.
・ 語源学習法には,(1) 単語の長期的な記憶保持が可能になる,(2) 未知語の意味を推測するヒントになる,(3) 単語の体系的・効率的な学習が可能になる,といった利点がある.
・ 既知語やカタカナ語を手がかりにして,数多くの語のパーツを効率的に学習できる.特に,「最も役に立つ25の語のパーツ」は重要.


 中田はさらに別の箇所で「無味乾燥になりがちな単語学習を,興味深い発見の連続に変えてくれる」 (75--76) とも述べている.
 さらにもう2点ほど地味な利点を付け加えておきたい.1つは,語種の判別ができるようになることだ.主としてラテン語・ギリシア語からなる「パーツ」を多数学ぶことによって,初見の単語でも,ラテン語・ギリシア語のみならずフランス語,スペイン語,イタリア語などを含めたロマンス系諸語からの借用語であるのか,あるいはゲルマン系の本来語であるのか,ある程度判別できるようになる.借用語か本来語かという違いは,語感の形式・略式の差異ともおよそ連動するし,強勢位置に関する規則とも関係してくるので,語種を大雑把にでも判別できることには実用的な意味がある.
 もう1つは,借用元の言語も当然ながら学びやすくなるということだ.とりわけ第2外国語としてフランス語なりスペイン語なりのロマンス系諸語を学んでいるのであれば,英語学習と合わせて一石二鳥の成果を得られる.
 最近では,語源学習法に基づいた英単語集として,清水健二・すずきひろし(著)『英単語の語源図鑑』(かんき出版,2018年)が広く読まれているようだ.なお,私もこの7月より朝日カルチャーセンター新宿教室にて「英語の歴史と語源」と題するシリーズ講座を開始する予定(cf. 「#3687. 講座「英語の歴史と語源」が始まります」 ([2019-06-01-1])).こちらはボキャビルそのものを主たる目標としているわけではないものの,その知識は当然ながらボキャビルのためにも役立つはずである.
 なお,上の第1引用にある Academic Word List については,「#612. Academic Word List」 ([2010-12-30-1]) と「#613. Academic Word List に含まれる本来語の割合」 ([2010-12-31-1]) も参照.

 ・ 中田 達也 『英単語学習の科学』 研究社,2019年.

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2019-06-11 Tue

#3697. 印欧語根 *spek- に由来する英単語を探る [etymology][indo-european][latin][greek][metathesis][word_family][lexicology]

 昨日の記事「#3696. ボキャビルのための「最も役に立つ25の語のパーツ」」 ([2019-06-10-1]) で取り上げたなかでも最上位に挙げられている spec(t) という連結形 (combining_form) について,今回はさらに詳しくみてみよう.
 この連結形は印欧語根 *spek- にさかのぼる.『英語語源辞典』の巻末にある「印欧語根表」より,この項を引用しよう.

spek- to observe. 《Gmc》[その他] espionage, spy. 《L》 aspect, auspice, conspicuous, despicable, despise, especial, expect, frontispiece, haruspex, inspect, perspective, prospect, respect, respite, species, specimen, specious, spectacle, speculate, suspect. 《Gk》 bishop, episcopal, horoscope, sceptic, scope, -scope, -scopy, telescope.


 また,語源の取り扱いの詳しい The American Heritage Dictionary of the English Language の巻末には,"Indo-European Roots" なる小辞典が付随している.この小辞典から spek- の項目を再現すると,次のようになる.

spek- To observe. Oldest form *spek̂-, becoming *spek- in centum languages.
▲ Derivatives include espionage, spectrum, despise, suspect, despicable, bishop, and telescope.
   I. Basic form *spek-. 1a. ESPY, SPY, from Old French espier, to watch; b. ESPIONAGE, from Old Italian spione, spy, from Germanic derivative *speh-ōn-, watcher. Both a and b from Germanic *spehōn. 2. Suffixed form *spek-yo-, SPECIMEN, SPECTACLE, SPECTRUM, SPECULATE, SPECULUM, SPICE; ASPECT, CIRCUMSPECT, CONSPICUOUS, DESPISE, EXPECT, FRONTISPIECE, INSPECT, INTROSPECT, PERSPECTIVE, PERSPICACIOUS, PROSPECT, RESPECT, RESPITE, RETROSPECT, SPIEGELEISEN, SUSPECT, TRANSPICUOUS, from Latin specere, to look at. 3. SPECIES, SPECIOUS; ESPECIAL, from Latin speciēs, a seeing, sight, form. 4. Suffixed form *spek-s, "he who sees," in Latin compounds. a. Latin haruspex . . . ; b. Latin auspex . . . . 5. Suffixed form *spek-ā-. DESPICABLE, from Latin (denominative) dēspicārī, to despise, look down on (dē-), down . . .). 6. Suffixed metathetical form *skep-yo-. SKEPTIC, from Greek skeptesthai, to examine, consider.
   II. Extended o-grade form *spoko-. SCOPE, -SCOPE, -SCOPY; BISHOP, EPISCOPAL, HOROSCOPE, TELESCOPE, from metathesized Greek skopos, on who watches, also object of attention, goal, and its denominative skopein (< *skop-eyo-), to see. . . .


 2つの辞典を紹介したが,語源を活用した(超)上級者向け英語ボキャビルのためのレファレンスとしてどうぞ.

 ・ 寺澤 芳雄(編) 『英語語源辞典』 研究社,1997年.
 ・ The American Heritage Dictionary of the English Language. 4th ed. Boston: Houghton Mifflin, 2006.

Referrer (Inside): [2019-06-12-1]

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2019-06-10 Mon

#3696. ボキャビルのための「最も役に立つ25の語のパーツ」 [elt][latin][greek][etymology][prefix][combining_form][lexicology]

 中田(著)『英単語学習の科学』に,先行研究に基づいた「最も役に立つ25の語のパーツ」が提示されている (76--77) .これは,3000?1万語レベルの英単語を分析した結果,とりわけ多くの語に含まれるパーツを取り出したものである.パーツのほとんどが,ラテン語やギリシア語の接頭字 (prefix) や連結形 (combining_form) である.

語のパーツとその意味具体例
spec(t) = 見るspectacle(見せ物),spectator(観客),inspect(検査する),perspective(視点),retrospect(回顧)
posit, pos = 置くimpose(負わせる,課す),opposite(反対の),dispose(配置する,処分する),compose(校正する,作る),expose(さらす)
vers, vert = 回すversus(対),adverse(反対の,不利な),diverse(多様な),divert(転換する),extrovert(外交的な)
ven(t) = 来るconvention(大会,しきたり,慣習),prevent(妨げる,予防する),avenue(通り),revenue(歳入),venue(場所)
ceive/ceipt, cept = とる(こと)accept(受け入れる,容認する),exception(例外),concept(概念),perceive(知覚する),receipt(レシート,受け取ること)
super- = 越えてsuperb(すばらしい),supervise(感得する),superior(上級の),superintendent(監督者),supernatural(超自然の,神秘的な)
nam, nom, nym = 名前surname(苗字),nominate(指名する),denomination(命名,単位),anonymous(匿名の),synonym(同義語)
sens, sent = 感じるsensible(分別のある),sensitive(敏感な),sensor(センサー),sensation(感覚),consent(同意,同意する)
sta(n), stat = 立つstable(安定した),status(地位),distant(離れた),circumstance(状況),obstacle(障害)
mis, mit = 送るpermit(許可する),transmit(送る),submit(提出する),emit(放射する),missile(ミサイル)
med(i), mid(i) = 真ん中intermediate(中級の),Mediterranean(地中海),mediocre(並みの),mediate(仲裁する),middle(中央,中間の)
pre, pris = つかむprison(刑務所),enterprise(事業),comprise(構成する),apprehend(捕らえる,理解する),predatory(捕食性の,食い物にする)
dictate, dict = 言うdictate(書き取らせる,命じる),dedicate(捧げる),predict(予言する),contradict(否定する,矛盾する),verdict(評決)
ces(s) = 行くaccess(アクセス,接近),excess(超過),recess(休憩),ancestor(先祖),predecessor(前任者)
form = 形formal(形式的な),transform(変形する),uniform(同形の,制服),format(形式),conform(一致する)
tract = 引くextract(抜粋,抜粋する),distract(気をそらす),abstract(要約,抽象的な),subtract(引く),tractor(トラクター,牽引車)
graph = 書くtelegraph(電報),biography(伝記),autograph(サイン),graph(グラフ),geography(地理)
gen = 生むgenuine(本物の),gene(遺伝子),genius(天才),indigenous(土着の,固有の),ingenuity(工夫)
duce, duct = 導くconduct(導く),produce(生み出す),reduce(減らす),induce(引き起こす,誘発する),seduce(誘惑する)
voca, vok = 声advocate(主張する,唱道者),vocabulary(語彙),vocal(声の,ボーカル),invoke(祈る),equivocal(あいまいな)
cis, cid = 切るprecise(正確な),excise(削除する),scissors(はさみ),suicide(自殺),pesticide(殺虫剤)
pla = 平らなplain(明白な,平原),plane(平面,平らな),plate(皿),plateau(高原,高原状態)
sec, sequ = 後に続くconsequence(結果),sequence(連続),subsequent(その次の),consecutive(連続した),sequel(続編)
for(t) = 強いfortress(要塞),effort(努力),enforce(実施する,強いる),reinforce(強化する),forte(長所)
vis = 見るvisible(目に見える),envisage(心に描く),revise(改訂する),visual(視覚の,映像),vision(視力,ビジョン)


 本ブログでも,必ずしもボキャビルを目的とした記事ではないが,接頭辞,接尾辞,連結形について多々取り上げてきた.prefix, suffix, combining_form などの記事をご覧ください.

 ・ 中田 達也 『英単語学習の科学』 研究社,2019年.

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2019-06-01 Sat

#3687. 講座「英語の歴史と語源」が始まります [asacul][notice][etymology]

 この夏,朝日カルチャーセンター新宿教室にて「英語の歴史と語源」と題するシリーズ講座が始まります.全12回ほどの予定となるシリーズで,1年ほどかけてゆっくりペースで進めていく企画です.完全なスケジュールは決まっていませんが,最初の3回分については確定しており,受付も開始しています.以下をご覧ください

 ・ 7月13日(土)15:15?18:30 「英語の歴史と語源・1 インドヨーロッパ祖語の故郷」
 ・ 7月27日(土)15:15?18:30 「英語の歴史と語源・2 ケルトの島」
 ・ 9月7日(土)15:15?18:30 「英語の歴史と語源・3 ローマ帝国の植民地」

 まずは初回の7月13日の案内を,以下に掲載しておきます.

 シリーズ「英語の歴史と語源」では,英語という言語がたどってきた波乱に富んだ紆余曲折の歴史を,世界史的な大事件と関連づけながら追っていきます.言語の歴史には文法や発音の歴史も含まれますが,本シリーズでとりわけ注目するのは語源,つまり単語の起源です.著名な事件と単語の起源とを結びつけながら,主にイギリスを舞台とする英語の歴史物語を,全12 回にわたり,つむいでいきます.

1 インドヨーロッパ祖語の故郷(7月13日)
 シリーズの初回では,英語の究極の祖先というべきインドヨーロッパ祖語に焦点を当てます.英語はもとよりフランス語,スペイン語,ドイツ語,ロシア語,ヒンディー語などを含む巨大なインドヨーロッパ語族は,紀元前4千年頃の南ロシアのステップ地方に起源をもつとされます.実際,私たちの知る多くの英単語の語源が,この太古の時代にまでさかのぼります.6千年という時間を超えて受け継がれてきた数々の単語について,その由来をひもといて行きましょう.


 これまでも英語史関連の講座をいくつか開いてきましたが,今回はとりわけ単語・語源に注目して,英語の歴史を辿っていく予定です.「シリーズ」とはいえ,単発での参加ももちろん可能ですので,ご関心のある方は是非どうぞ.シリーズの全体像につていは,こちらのチラシもご覧ください.

Referrer (Inside): [2019-07-15-1] [2019-06-12-1]

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2019-05-02 Thu

#3657. mountain, mount, Mt. [etymology][latin][french][loan_word][abbreviation]

 Mt. Fuji is the highest mountain in Japan. には,Mt. (= mount) と mountain という「山」を意味する2つの単語が現われる.固有名詞とともに現われる場合には mount (表記上はたいてい省略して Mt.)を用い,一般名詞としては mountain を用いる.
 古英語で普通に「山」を意味する語は本来語の beorg (ドイツ語 Berg)だった.しかし,すでに古英語期から,ラテン語で「山」を意味する mōns, mont- が借用語 munt として入っており,用いられることはあった.さらに中英語期になると,同語源で古フランス語の語形 mont にも強められるかたちで通用されるようになった(MEDmount n.(1) を参照).現代英語では,一般名詞としては文語・古語としての響きを有し,上記のように Mt. として固有名詞の一部として用いられるのが普通である.
 一方,mountain は13世紀後半に初出する.語源は先にもあげたラテン語 mōns, mont- の形容詞形ともいうべきもので,俗ラテン語の *montānea(m) (regiōnem) (= "mountainous region") から古フランス語形 montagne を経て,英語に mountain(e n. として入ってきたものである.現在までに最も普通の「山」を表わす一般名詞として発展してきた.(考えてみると,mountainous という形容詞は,語源的には形容詞の,そのまた形容詞ということになっておもしろい.)
 実は Mt. という省略表記の使用の歴史について知りたいと思い,いくつかの歴史辞書でこれらの語を引いてみたのだが,ほとんど情報がない.別の資料にあたって調べてみる必要がありそうだ.ちなみに,関連するかもしれないと思って調べてみた MrMrs などの表記については,およそ初期近代に遡るという(cf. 「#895. Miss は何の省略か?」 ([2011-10-09-1])).

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2019-03-28 Thu

#3622. latter の形態を説明する古英語・中英語の "Pre-Cluster Shortening" [consonant][vowel][shortening][adjective][comparison][sound_change][etymology][shocc]

 「#3616. 語幹母音短化タイプの比較級に由来する latter, last, utter」 ([2019-03-22-1]) で取り上げたように,中英語では,形容詞の比較級において原級では長い語幹母音が短化するケースがあった.これを詳しく理解するには,古英語および中英語で生じた "Pre-Cluster Shortening" なる音変化の理解が欠かせない.
 "Pre-Cluster Shortening" とは,特定の子音群の前で,本来の長母音が短母音へと短化する過程である.音韻論的には,音節が「重く」なりすぎるのを避けるための一般的な方略と解釈される.原理としては,feed, keep, meet, sleep などの長い語幹母音をもつ動詞に歯音を含む過去(分詞)接辞を加えると fed, kept, met, slept と短母音化するのと同一である.あらためて形容詞についていえば,語幹に長母音をもつ原級に対して,子音で始まる古英語の比較級接尾辞 -ra (中英語では -er へ発展)を付した比較級の形態が,短母音を示すようになった例のことを話題にしている.Lass (102) によれば,

Originally long-stemmed adjectives with gemination in the comparative and superlative showing Pre-Cluster Shortening: great 'great'/gretter, similarly reed 'red', whit 'white', hoot 'hot', late. (The old short-vowel comparative of late has been lexicalised as a separate form, later, with new analogical later/latest.)


 長母音に子音群が後続すると短母音化する "Pre-Cluster Shortening" は,ありふれた音変化の1種と考えられ,実際に英語音韻史では異なる時代に異なる環境で生じている.Lass (71) によれば,古英語で生じたものは以下の通り(gospel については「#2173. gospel から d が脱落した時期」 ([2015-04-09-1]) を参照).

About the seventh century . . . long vowels shortened before /CC/ if another consonant followed, either in the coda or the onset of the next syllable, as in bræ̆mblas 'branbles' < */bræːmblɑs/, gŏdspel 'gospel' < */goːdspel/. This removes one class of superheavy syllables.


 この古英語の音変化は3子音連続の前位置で生じたものだが,初期中英語で生じたバージョンでは2子音連続の前位置で生じている.今回取り上げている形容詞語幹の長短の交替に関与するのは,この初期中英語期のものである (Lass 72--73) .

Long vowels shortened before sequences of only two consonants . . . , and --- variably--- certain ones like /st/ that were typically ambisyllabic . . . . So shortening in kĕpte 'kept' < cēpte (inf. cēpan), mĕtte met < mētte'' (inf. mētan), brēst 'breast' < breŏst 'breast' < brēost. Shortening failed in the same environment in priest < prēost; in words like this it may well be the reflex of an inflected form like prēostas (nom./acc.pl.) that has survived, i.e. one where the /st/ could be interpreted as onset of the second syllable; the same holds for beast, feast from French. This shortening accounts for the 'dissociation' between present and past vowels in a large class of weak verbs, like those mentioned earlier and dream/dreamt, leave/left, lose/lost, etc. (The modern forms are even more different from each other due to later changes in both long and short vowels that added qualitative dissociation to that in length: ME /keːpən/ ? /keptə/, now /kiːp/ ? /kɛpt/, etc.)


 latter (および last) は,この初期中英語の音変化による出力が,しぶとく現代まで生き残った事例として銘記されるべきものである.

 ・ Lass, Roger. "Phonology and Morphology." The Cambridge History of the English Language. Vol. 2. Cambridge: CUP, 1992. 23--154.

Referrer (Inside): [2020-07-13-1] [2020-02-29-1]

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2019-03-22 Fri

#3616. 語幹母音短化タイプの比較級に由来する latter, last, utter [etymology][comparison][vowel][adjective]

 初期近代英語までは,形容詞の語幹母音を短くした上で接尾辞 -er を付すタイプの比較級形成法があった.たとえば great の比較級が gretter となったり,whitewhitter となったりするような例だ.しかし,語幹母音が長く保たれる形態も併存していたので,大多数の形容詞においては,やがてそちらが優勢となり,語幹母音短化タイプの比較級形態は存在感を薄めていった.
 ところが,それでも生き延びたものがいた.late の語幹母音短化タイプの比較級である latter と最上級の last だ.共時的には late の比較級・最上級とはみなされておらず,別の語彙項目と受け取られているが,歴史的には密接に関わっている.なお,母音を長く保った形態は各々 later, latest となり,現在の標準的な late の比較級・最上級となっている.
 同様に,out の語幹母音短化タイプの比較級形態が現在の utter に連なっている.この場合も,utterout と関連しているという共時的な感覚はなくなっており,独立した別の語となっている.だからこそ,utterly のように,さらなる派生接尾辞を付けることができる.一方,長い母音を保ったタイプは outer となったが,これはこれでやはり out の比較級形態としては意識されず,別の形容詞として受け取られているのがおもしろい.
 latterlater,あるいは utterouter のように,同機能を果たす変異形にすぎなかったものが,互いに役割を分化させ,独立した語へと発展していくという事例は少なくない.比較される例について「#55. through の語源」 ([2009-06-22-1]),「#86. one の発音」 ([2009-07-22-1]),「#693. as, so, also」 ([2011-03-21-1]) を参照.
 以上,Lass (156) を参照して執筆した.

 ・ Lass, Roger. "Phonology and Morphology." 1476--1776. Vol. 3 of The Cambridge History of the English Language. Ed. Roger Lass. Cambridge: CUP, 1999. 56--186.

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2019-02-16 Sat

#3582. 中英語期のフランス借用語,ラテン借用語,"mots savants" (2) [french][latin][loan_word][lexicology][etymology][borrowing]

 昨日の記事 ([2019-02-15-1]) で,標題に関する Ellenberger の批評を紹介した.中英語の学問語 (= "mots savants") のソース言語に関する伝統的な見解は,不当にフランス語寄りではないかという問題提起である.では,Ellenberger 自身は,この問題についてどのような姿勢を取るのがふさわしいと考えているのだろうか.論文の終わりに,4箇条を掲げている (149--50) .

   1. Words are borrowed not once and for all but many times and from many sources.
   2. A Latin word borrowed into either of Anglo-French or English would be given an ending prescribed by Anglo-Norman scribal tradition.
   3. Words could be borrowed from Latin or French depending on what spheres of society the borrowers moved in. Clerics would be more likely to borrow from Latin than would laics.
   4. As the medieval libraries of England contained mainly Latin books and school curricula concentrated on Latin texts, learned words borrowed into French from written Latin sources would be more likely also to have entered English from those same sources than through French.


 英語史では,中英語の借用語の話題といえばフランス語がさらっていく.しかし,学問語に関する限り,中英語期のラテン語からの借用は,一般に思われているよりもずっと豊富だったことに注意したい.関連して,「#120. 意外と多かった中英語期のラテン借用語」 ([2009-08-25-1]),「#1211. 中英語のラテン借用語の一覧」 ([2012-08-20-1]),「#2961. ルネサンスではなく中世こそがラテン語かぶれの時代?」 ([2017-06-05-1]),「#292. aureate diction」 ([2010-02-13-1]) を参照.

 ・ Ellenberger, Bengt. "On Middle English Mots Savants." Studia Neophilologica 46.1 (1974): 142--50.

Referrer (Inside): [2022-06-05-1] [2021-07-06-1]

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2019-02-15 Fri

#3581. 中英語期のフランス借用語,ラテン借用語,"mots savants" (1) [french][latin][loan_word][lexicology][etymology][borrowing]

 「#653. 中英語におけるフランス借用語とラテン借用語の区別」 ([2011-02-09-1]),「#848. 中英語におけるフランス借用語とラテン借用語の区別 (2)」 ([2011-08-23-1]) で論じてきたように,とりわけ中英語期にラテン語・フランス語から入ってきた借用語は,いずれの言語をソースとするのか判然としないケースが多い.ラテン語なのか,ラテン語化したフランス語なのか,フランス語なのか,フランス語化したラテン語なのか,等々.
 OED を中心とする,この問題に対する伝統的な対処法として,「フランス語形が文証されればフランス語を借用元言語とし,そうでない場合に限ってラテン語をソースとみなす」ことが一般的だった.もう少し強くいってしまえば,判然としない場合には,フランス語をソースとみなすのをデフォルトとしようというスタンスだ.Ellenberger (142) は,この立場を紹介しながら,それに対する批判的な見解を示している.

. . . the 'learned words' . . . could have been taken either from French or directly from Latin. The difficulty of determining the exact source has been recognized with varying hesitation. Foremost in Francophilia stands the Oxford English Dictionary, which regards as borrowed from Latin only those words that have not been recorded in French; in addition, French forms are often postulated. To the author's knowledge, no scholar before Marchand has openly criticized this procedure.


 Ellenberger が引用中で同じ意見の仲間として引き合いに出している H. Marchand は,The Categories and Types of Present-Day English Word-Formation (2nd ed. München, 1969) の p. 238 で次のように述べている (Ellenberger 142fn) .

It would . . . be an erroneous standpoint to be always looking for the Latin original or the French pattern of a word (which the OED often does). The existence of an actual pattern is irrelevant so long as, potentially, the coinage is Latin. . . . the principle of assuming an actual original is wrong.


 借用元の形態が文証されるからフランス語であるとか,そうでないからラテン語であるとか,そのような議論はおそらく成り立たないだろうということだ.Ellenberger (148) 自身の言葉でいえば,次のような議論となる.

The clerks knew about adaptation and suffixation; they were used to latinizing English names, and sometimes words, and we may trust them to have been able to anglicize a Latin word in the same way as they or the French would have Frenchified it. To request a French intermediary for each and every word is to deny the knowledge of Latin in England. To regard an English word as a loan from French because a corresponding French loan is recorded a few years earlier in an ever so obscure source is to fall a victim to the perilous argument of post hoc, ergo propter hoc; as far as we know, no annual lists of new French words circulated among English clerks. Whether a learned word occurs first in French or English is simply a matter of chance, need, and literary activity.


 中英語期の学問語 (= "mots savants") のソースがフランス語なのかラテン語なのかという問題を議論することよりも大事なことは,むしろそれが一般のフランス借用語とは異なるレベルに属することを再認識することだろう.Ellenberger (150) が,論文の最後で次のように述べている通りである.

A far more useful distinction than that between learned words that might have and those that could not have been mediated by French is that between Romance popular and learned words. Middle English mots savants are latinisms and should be treated as such.


 なお,Ellenberger では,OED が上記のように槍玉に挙げられているが,現在編纂が進んでいるOED3 の編者の1人である Durkin は,この問題に柔軟な態度を示していることを付け加えておきたい.「#848. 中英語におけるフランス借用語とラテン借用語の区別 (2)」 ([2011-08-23-1]) を参照.

 ・ Ellenberger, Bengt. "On Middle English Mots Savants." Studia Neophilologica 46.1 (1974): 142--50.

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2019-01-11 Fri

#3546. 英語史や語源から英単語を学びたいなら,これが基本知識 [hel_education][etymology][toc][lexicology][historiography]

 英語史や英語語源学が英語学習に貢献できる最大のものは,語源を利用した英単語の暗記である.ラテン系の接頭辞や接尾辞など,語源的な知識を用いて英語語彙を増やす方法は昔から試みられている.最近では『英単語の語源図鑑』が注目されているようだ.
 この学習用の効果は私も疑わないが,この方向でさらにステップを目指すのであれば,ぜひ英語史概説の修得を視野に入れたい.そんなときに役立つのが,下宮ほか編の『スタンダード英語語源辞典』の付録である.語彙学習にカスタマイズされた簡易的な英語史の概説として,おおいに奨められる.pp. 611--41 という40頁ほどの(内容の割には)コンパクトな解説だが,よく書けており,これを読んでおくのとおかないのとではスタートラインが違うと思う.以下に,章節の見出しを再現し,雰囲気をつかんでもらおう.語彙の観点に立った英語史入門と理解して差支えない.

1. 英語の語源
   1.1. 英語の語源を知るための予備知識
      英語の歴史と同系の諸言語
   1.2 歴史言語学 (historical linguistics) のキーワード
      二重語
      ウムラウトとアプラウト
   1.3 単語の構造
      派生語,複合語
      混種語
   1.4 音韻変化 (phonetic change)
      同化
      異化
      音位転換
   1.5 同源であるかどうかの見分け方
      形が似ていて語源が異なる場合
      形が異なっても同源の場合
   1.6 印欧語根の例
   1.7 英語・ドイツ語・フランス語の関係
      ドイツ語とは文法・基本単語が共通
      フランス語とは語彙が共通
2. 印欧祖語からゲルマン語へ
   2.1 サンスクリットの発見と印欧祖語
      比較言語学の成立
      印欧語族の発見
   2.2 印欧祖語と印欧語族
      祖語の再建
      印欧語族の系統
   2.3 ゲルマン民族とゲルマン語
      ゲルマン祖語
      イギリス人の祖先
      ゲルマン祖語の分化
   2.4 印欧祖語からゲルマン語へ
      グリムの法則
      ヴェルナーの法則
      ゲルマン語のアクセントの特徴
      ゲルマン語の分化の進展
3. 英語の歴史 --- 古英語・中英語を中心にして ---
   3.1 Stratford-upon-Avon について
      英語の歴史の原点を見る
      ブリテン島の原住民
      ケルト語起源の語
      ラテン語起源の語
      本来の英語 --- ゲルマン起源の語 ---
   3.2 英語の歴史の時代区分
      3つの時代区分
      古英語と中英語
      古英語の時代
      中英語の時代
   3.3 外来語について
      ラテン語からの借用
      古ノルド語からの借用
      フランス語からの借用
   3.4 古英語ミニ解説
      聖書の古英語訳
      ドイツ語と似た文法上の性
      名詞・形容詞・動詞の変化
      屈折の実例
4. ラテン語・ギリシア語ミニマム
   4.1 ヨーロッパの二大文明語
      語彙の60%はギリシア・ラテン起源
   4.2 ラテン語
      名詞
      動詞
      文例
   4.3 ギリシア語
      豊富な変化形
      名詞
      動詞
      用例


 なお,筆者も別の観点から「語彙学習のための英語史」を試みたことがある(「#3381. 講座「歴史から学ぶ英単語の語源」」 ([2018-07-30-1]) を参照).

 ・ 下宮 忠雄・金子 貞雄・家村 睦夫(編) 『スタンダード英語語源辞典』 大修館,1989年.

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