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etymology - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2022-12-09 13:04

2014-03-25 Tue

#1793. -<ce> の 過剰修正 [spelling][french][etymology][hypercorrection][spelling_pronunciation_gap]

 「#81. oncetwice の -ce とは何か」 ([2009-07-18-1]) の記事で,once, twice の -<ce> は語源的には属格語尾の -s を表わすが,フランス語の綴字習慣を容れて置き換えたものであると述べた.他に hence, thence も同様だし,語源的に複数語尾の -s を表わした pence のような例もある.また,ice, mice などの本来語の語根の一部を表わす /s/ ですら,垢抜けた見栄えのするフランス語的な -<ce> で綴られるようになった.何としても /s/ を <ce> で表わしたいという思いの強さが伝わってくるような例の数々である.
 だが,Horobin (88) が指摘しているように,この -<ce> は妙な分布を示している.上記の通り現代英語で複数形 mice は -<ce> を示すが,単数形 mouse では本来語的な -<se> の綴字が保持されている.louse -- lice も同様だ.単複のあいだにこの綴字習慣が共有されていないというのが気になるところである.とりわけ -<ice> という綴字連鎖が好まれるということのようだ.
 それでは,-<ice> をもつ語を洗いざらい調べてみよう.OALD8 より該当する語(複合語は除く)を拾い出すと62語が得られた.上記の ice, lice, mice を除きほとんどがフランス語起源だが,このうち語源形において問題の子音が <s> で綴られていたものは以下の22語である.

advice, apprentice, choice, coppice, cowardice, device, dice, juice, lattice, liquorice, poultice, price, pumice, rejoice, rice, service, sluice, splice, suffice, surplice, vice, voice


 例えば,advice はフランス語 avis に対応するので,英語側で -<is> → -<ice> が生じたことになる(advice については,「#1153. 名詞 advice,動詞 advise」 ([2012-06-23-1]) を参照).同様に,rice は古フランス語の ris (現代フランス語では riz)に対応したので,やはり英語側で -<is> → -<ice> と刷新した.現代フランス語の標準的な綴字と異なるものもあり,フランス語側での綴字変化も考慮に入れる必要はあるが,それでも英語として,いかにもフランス的な外見を示す -<ice> で定着してきたことが興味深い.
 この英語側の行動は,一種の過剰修正 (hypercorrection) と呼んでいいだろう.当然ながらこの過剰修正は一貫して起こったわけではないため,英語の綴字体系にもう1つの混乱がもたらされることとなった.ただし,-<ce> は /z/ ではなく /s/ を一意に表わすことができるという点で,両音を表わしうる -<se> よりも機能的とは言える.

 ・ Horobin, Simon. Does Spelling Matter? Oxford: OUP, 2013.

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2014-03-23 Sun

#1791. 語源学は技芸が科学か (2) [etymology][bibliography][lexicography]

 標題については,「#466. 語源学は技芸か科学か」 ([2010-08-06-1]) や「#727. 語源学の自律性」 ([2011-04-24-1]) で論じてきた話題だが,言語科学における語源学の位置づけというのは実に特異で,私の頭の中でも整理できていない.通時的な音韻論,形態論,意味論,語彙論でもあり,一方で文献学でもあり,はたまた言語外の社会を参照する必要がある点で社会史や文化史の領域にも属する.ある語の語史をひもとくために様々な知識を総合し,書き上げた作品が,1つの辞書項目ということになる.語源調査は,1つの学問領域を構成するというよりは,マルチタレントを要求する技芸である,という見解が現れるのももっともである.
 昨日の記事「#1790. フランスでも16世紀に頂点を迎えた語源かぶれの綴字」 ([2014-03-22-1]) で引用したブリュッケルの『語源学』を読んで,上の印象を新たにした.ブリュッケルも,以前の語源学に関する記事で言及したブランショや Malkiel とともに,語源学の自律性について肯定的に論じようと腐心しているのだが,読めば読むほど科学というよりは技芸に近いという印象が増してくる.ブリュッケル (34--35) は,語源学者のもつべき資質を挙げている.

語源学者の仕事に先行する諸条件は彼の仕事や彼の探求の対象に対する言語学者としての一連の準備または素質のなかにある.つぎの諸点を考慮に入れればよい.文学語にも,また諸方言にも富んだ,できるかぎり広範囲にわたる資料;関係する領域における音声進化についての的確な知識;語の規定と語が包含する言語外の現実との間の諸関係を明らかにすることを可能にするレアリア realia 〔文物風土.ある言語社会の制度,習慣,歴史,動植物などに関する事実,またはそれらの知識を示す.言語を言語外の事実との関連で取り扱う,本来外国語教育の用語で,最初ドイツ語の Realien――実体,事実――から借用された〕についての幅広い経験;社会文化的,社会言語学的部門がなおざりにされてはならないということ;最小限の創意と,時には想像力がなければ,語源学者は自分を認めさせることがむずかしくなるであろうということ.


 さらに,p. 44 でこうも述べている.

語の起源や意味作用を把握するために,具体的な事物,品物,仕事の道具,農業生活,田園生活などを理解し,植物相,動物相,風土,地形を考慮することの必要性を強調する人々は多い.FEW の著者である,W・フォン・ヴァルトブルクは事物に関する正確な知識を語源学的研究の絶対的条件であると考える.


 これは,博物学者の資質といったほうがよい項目の羅列である.芸人の天分の領域にも近い.
 ブリュッケルの『語源学』には特に新しい視点は見られなかったが,4章にはいくつかのフランス語語源辞典の解題が付けられており便利である.以下に書誌を示しておく.

 ・ Diez, Friedrich Christian. Etymologisches Wörterbuch der romanischen Sprachen. Adolph Marcus, 1853.
 ・ Meyer-Lübke, Wilheml, ed. Romanisches etymologisches Wörterbuch. C. Winter's Universitätsbuchhandlung, 1911. (= REW)
 ・ Wartburg, Walther von. Französisches etymologisches Wörterbuch. Mohr, 1950. (= FEW)
 ・ Baldinger, Kurt, Jean-Denis Gendron, Georges Straka, and Martina Fietz-Beck. Dictionnaire étymologique de l'ancien francais. Max Niemeyer: Presses de l'Université Laval, 1971--. (= DEAF)
 ・ Bloch, Oscar and W. von Wartburg. Dictionnaire étymologique de la langue française. Presses universitaires de France, 1932.
 ・ Dauzat, Albert, Jean Dubois, and Henri Mitterand. Nouveau dictionnaire étymologique et historique. 2nd ed. Larousse, 1964. (= DDM)
 ・ Picoche, Jacqueline. Nouveau dictionnaire étymologique du français. Hachette-Tchou, 1971.
 ・ Trésor de la langue française. Ed. Centre national de la recherche scientifique. Institut nationale de la langue Française. Nancy Gallimard, 1986. (= TLF)

 ・ シャルル・ブリュッケル 著,内海 利朗 訳 『語源学』 白水社〈文庫クセジュ〉,1997年.

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2014-03-15 Sat

#1783. whole の <w> [spelling][phonetics][etymology][emode][h][hc][hypercorrection][etymological_respelling][ormulum][w]

 whole は,古英語 (ġe)hāl (healthy, sound. hale) に遡り,これ自身はゲルマン祖語 *(ȝa)xailaz,さらに印欧祖語 * kailo- (whole, uninjured, of good omen) に遡る.heal, holy とも同根であり,hale, hail とは3重語をなす.したがって,<whole> の <w> は非語源的だが,中英語末期にこの文字が頭に挿入された.
 MED hōl(e (adj.(2)) では,異綴字として wholle が挙げられており,以下の用例で15世紀中に <wh>- 形がすでに見られたことがわかる.

a1450 St.Editha (Fst B.3) 3368: When he was take vp of þe vrthe, he was as wholle And as freysshe as he was ony tyme þat day byfore.


 15世紀の主として南部のテキストに現れる最初期の <wh>- 形は,whole 語頭子音 /h/ の脱落した発音 (h-dropping) を示唆する diacritical な役割を果たしていたようだ.しかし,これとは別の原理で,16世紀には /h/ の脱落を示すのではない,単に綴字の見栄えのみに関わる <w> の挿入が行われるようになった.この非表音的,非語源的な <w> の挿入は,現代英語の whore (< OE hōre) にも確認される過程である(whore における <w> 挿入は16世紀からで,MED hōr(e (n.(2)) では <wh>- 形は確認されない).16世紀には,ほかにも whom (home), wholy (holy), whoord (hoard), whote (hot)) whood (hood) などが現れ,<o> の前位置での非語源的な <wh>- が,当時ささやかな潮流を形成していたことがわかる.wholewhore のみが現代標準英語まで生きながらえた理由については,Horobin (62) は,それぞれ同音異義語 holehoar との区別を書記上明確にするすることができるからではないかと述べている.
 Helsinki Corpus でざっと whole の異綴字を検索してみたところ(「穴」の hole などは手作業で除去済み),中英語までは <wh>- は1例も検出されなかったが,初期近代英語になると以下のように一気に浸透したことが分かった.

 <whole><hole>
E1 (1500--1569)7132
E2 (1570--1639)682
E3 (1640--1710)840


 では,whole のように,非語源的な <w> が初期近代英語に語頭挿入されたのはなぜか.ここには語頭の [hw] から [h] が脱落して [w] となった音韻変化が関わっている.古英語において <hw>- の綴字で表わされた発音は [hw] あるいは [ʍ] だったが,この発音は初期中英語から文字の位置の逆転した <wh>- として表記されるようになる(<wh>- の規則的な使用は,1200年頃の Ormulum より).しかし,同時期には,すでに発音として [h] の音声特徴が失われ,[w] へと変化しつつあった徴候が確認される.例えば,<h> の綴字を欠いた疑問詞に wat, wænne, wilc などが文証される.[hw] と [h] のこの不安定さゆえに,対応する綴字 <wh>- と <h>- も不安定だったのだろう,この発音と綴字の不安定さが,初期近代英語期の正書法への関心と,必ずしも根拠のない衒いに後押しされて,<whole> や <whore> のような非語源的な綴字を生み出したものと考えられる.
 なお,whole には,語頭に /w/ をもつ /woːl/, /wʊl/ などの綴字発音が各種方言に聞かれる.EDD Online の WHOLE, adj., sb. v. を参照.

 ・ Horobin, Simon. Does Spelling Matter? Oxford: OUP, 2013.

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2014-03-06 Thu

#1774. Japan の語源 [etymology]

 英単語 Japan の語源を探ってみよう.まずは,OED による語源記述を引用しよう.

Like the other European forms (Dutch, German, Danish, Swedish Japan, French Japon, Spanish Japon, Portuguese Japão, Italian Giappone), apparently < Malay Jăpung, Japang, < Chinese Jih-pŭn (= Japanese Ni-pon), 'sun-rise', 'orient', < jih (Japanese ni) sun + pŭn (Japanese pon, hon) origin. The earliest form in which the Chinese name reached Europe was apparently in Marco Polo's Chipangu, in Pigafetta Cipanghu. The existing forms represent Portuguese apão and Dutch Japan, 'acquired from the traders at Malacca in the Malay forms' (Yule).


 すなわち,英語 Japan はマレー語 Japung から借用されたものであり,これ自体は「日の出」を意味する中国語 Jihpûnjih 日 + pûn 本)からの借用ということである.また,現行の形態はポルトガル語やオランダ語の形態の影響を受けたものとされる.英語での初出は1577年で,以下の文である.

1577 R. Eden & R. Willes (title) The history of travayle in the West and East Indies, and other countreys..as Moscovia, Persia,..China in Cathayo and Giapan.


 一方,Japanese は1588年に "R. Parke tr. J. G. de Mendoza Comm. Notable Thinges in tr. J. G. de Mendoza Hist. Kingdome of China 375 There is no nation so abhorred of the Chinos as is the Iapones." として初出しているが,ラテン語的な形態であり,英語に同化した形態とはみなせない.実質的な初例は,「日本人」の語義で1604年,「日本の」で1719年,「日本語」で1808年である.なお,イギリスではなくヨーロッパに初めて「日本」の語を持ち込んだのは Marco Polo (1254--1324) なので,14世紀のことと考えられる.
 日本の国名を表わす語として,英語には Japan のほかに Nippon という語もある.こちらは1670年に初出し,後には Japan の口語的な変異形として,とりわけ国家的意識を強く伴う場合の変異形として用いられるようになった.こちらの語源は日本語としての「にっぽん」の語源と同一となるが,OED によると,

< Japanese Nippon (more formal variant of usual Nihon), short for Nippon-koku, lit. 'land of the origin of the sun' (in official Japanese use by the early 7th cent., after Hi-no-moto, lit. 'sun's origin'; 1603 as Nippon, Nifon in Vocabulario da Lingoa de Iapam) < nip-, combining form (before p-) of nichi sun + -pon, combining form of hon origin + -koku country; all elements < Middle Chinese. Compare French nippon, nippon(n)e, adjective (1888).


 派生語としては Nipponese という語もあり,「日本の」の語義での初出は1859年,「日本人」では1860年,「日本語」では1916年である.
 なお,上記の OED の説明で,日本語において「にっぽん」は「にほん」より形式張った変異形だとされているのが目を引く.この記述は,日本語として,確かに少なからぬ日本語母語話者の感覚を言い表わしているように思われるが,「にほん」か「にっぽん」かという問題は方々で議論されている興味深い問題である.

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2014-02-27 Thu

#1767. 固有名詞→普通名詞→人称代名詞の一部と変化してきた guy [etymology][history][personal_pronoun][semantic_change]

 先日の記事「#1750. bonfire」 ([2014-02-10-1]) で触れたが,イギリスでは11月5日は Bonfire Night あるいは Guy Fawkes Night と呼ばれ,花火や爆竹を打ち鳴らすお祭りが催される.
 James I の統治下の1605年同日,プロテスタントによる迫害に不満を抱くカトリックの分子が,議会の爆破と James I 暗殺をもくろんだ.世に言う火薬陰謀事件 (Gunpowder Plot) である.主導者 Robert Catesby が募った工作員 (gunpowder plotters) のなかで,議会爆破の実行係として選ばれたのが,有能な闘志 Guy Fawkes だった.11月4日の夜から5日の未明にかけて,Guy Fawkes は1トンほどの爆薬とともに議会の地下室に潜み,実行のときを待っていた.しかし,その陰謀は未然に発覚するに至った.5日には,James I が,ある種の神託を受けたかのように,未遂事件の後始末としてロンドン市民に焚き火を燃やすよう,お触れを出した.なお,gunpowder plotters はすぐに捕えられ,翌年の1月末までに Guy Fawkes を含め,みな処刑されることとなった.
 事件以降,この日に焚き火の祭りを催す風習が定着していった.17世紀半ばには,花火を打ち上げたり,Guy Fawkes をかたどった人形を燃やす風習も確認される.本来の趣旨としては,あのテロ未遂の日を忘れるなということなのだが,趣旨が歴史のなかでおぼろげとなり,現在の風習に至った.Oxford Dictionary of National Biography の "Gunpowder plotters" の項によれば,次のように評されている.  *  *  *  *

. . . the memory of the Gunpowder Plot, or rather the frustration of the plot, has offered a half-understood excuse for grand, organized spectacle on autumnal nights. Even today, though, the underlying message of deliverance and the excitement of fireworks and bonfires sit alongside the tantalizing what-ifs, and a sneaking respect for Guy Fawkes and his now largely forgotten coconspirators.


 さて,Guy という人名はフランス語由来 (cf. Guy de Maupassant) だが,イタリア語 Guido などとも同根で,究極的にはゲルマン系のようだ.語源的には guideguy (ロープ)とも関連する.この固有名詞は,19世紀に,「Guy Fawkes をかたどった人形」の意で用いられるようになり,さらにこの人形は奇妙な衣装を着せられることが多かったために,「奇妙な衣装をまとった人」ほどの意が発展した.さらに,より一般化して「人,やつ」ほどの意味が生じ,19世紀末にはとりわけアメリカで広く使われるようになった.固有名詞から普通名詞へと意味・用法が一般化した例の1つである.この意味変化を Barnhart の語源辞書の記述により,再度,追っておこう.

guy2 n. Informal. man, fellow. 1847, from earlier guy a grotesquely or poorly dressed person (1836); originally, a grotesquely dressed effigy of Guy Fawkes (1806; Fawkes, 1570--1606, was leader of the Gunpowder Plot to blow up the British king and Parliament in 1605). The meaning of man or fellow originated in Great Britain but became popular in the United States in the late 1800's; it was first recorded in American English in George Ade's Artie (1896).


 口語的な "fellow" ほどの意味で用いられる guy は,20世紀には you guys の形で広く用いられるようになってきた.you guys という表現は,「#529. 現代非標準変種の2人称複数代名詞」 ([2010-10-08-1]) やその他の記事 (you guys) で取り上げてきたように,すでに口語的な2人称複数代名詞と呼んで差し支えないほどに一般化している.ここでの guy は,人称代名詞の形態の一部として機能しているにすぎない.
 あの歴史的事件から400年余が経った.Guy Fawkes の名前は,意味変化の気まぐれにより,現代英語の根幹にその痕跡を残している.

 ・ Barnhart, Robert K. and Sol Steimetz, eds. The Barnhart Dictionary of Etymology. Bronxville, NY: The H. W. Wilson, 1988.

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2014-02-25 Tue

#1765. 日本で充実している英語語源学と Klein の英語語源辞典 [etymology][dictionary][lexicology][hebrew]

 日本にもたびたび訪れている英語史界の重鎮,ポーランドの Fisiak (8) に,日本の英語語源学が充実している旨,言及がある.

One important area of research in Japan is English etymology. At least two important recent dictionaries should be mentioned: Osamu Fukushima An etymological dictionary of English derivatives, 1992 (in English), and Yoshio Terasawa.(sic) The Kenkyusha dictionary of English etymology, 1997 (in Japanese), I received both of them in 1997. Fushima's (sic) dictionary is unique in its handling solely derivatives. Terasawa's opus magnum is in Japanese but with some explanations it can be used by people who do not read Japanese. . . . The dictionary is a magnificent piece of work. It is the largest etymological dictionary of English. Its scope is unusually wide. In the notes sent to me Professor Terasawa wrote that the dictionary "includes approximately 50.000 words, the majority of which are common words found in general use, new coinages, slang, and such technical terms as seen in science and technology, such components of a word as prefixes, suffixes, linking forms, as well as major place names and common personal names" (private correspondence). It is comprehensive and up-to-date, well-researched and contains a fairly large number of entries thoroughly revised in comparison with earlier etymological dictionaries. Onions' Oxford dictionary of English etymology, 1966 contains 38.000 words with the derivatives and as could be expected many of the etymologies require revisions. From a linguistic point of view Terasawa's dictionary compares favorably with Klein's comprehensive etymological dictionary of the English language, 1966--67.


 寺澤,福島による語源辞典を愛用する者として,おおいに歓迎すべき評である.Fisiak は,『英語語源辞典』を Klein の辞典に比較すべき労作であるとしているが,ここで引き合いに出されている Klein の英語語源辞典とはどのようなものか,確認しておこう.Klein については,寺澤自身が『辞書・世界英語・方言』 (80) で次のように評している.

本辞典は,'history of words' と同時に 'history in words' を明らかにすることを目標としている.その副題も "Dealing with the origin of words and their sense development thus illustrating the history of civilization and culture" とあり,巻頭のモットーにも "To know the origin of words is to know the cultural history of mankind" と揚言されている.言い換えれば,単語を,言語の一要素であると同時にそれを用いる人間の一要素,自然・人文・科学の諸分野の発達を写し出す鏡の役目をもつものと捉える.これが本辞書の第一の特色である.第二は,印欧語根に遡る場合,従来の英語辞典であまり取り上げられなかったトカラ語 (Tocharian) の同族語を記載する,第三は750に及ぶセム語 (Semitic) 起源の語について,印欧語に準ずる記述を行なう.第四は人名のほか,神話・伝説上の固有名詞(例:Danaüs.ただし,その語源解には問題あり)を豊富に採録.第五は科学・技術の専門語を重視する,などである


 Klein は1日11時間,18年の年月をかけてこの辞典を編んだというから,まさに労作中の労作である.Klein については,荒 (100) も次のように評している.「E. クラインは、初めチェッコスロヴァキアでラビ(ユダヤ教の教師)をしていたが、ナチの強制収容所に捕えられ、その間、父、妻、一人息子、三人姉妹の二人を失った。戦後、カナダに移り、イギリス語の語原辞典の編集を思い立ち、文明と文化に重点をおき、これまで無視されていたセミティック系の諸言語との関係を究明した点では、画期的なもの」である.

 この労作と比肩するものとして日本の英語語源辞典が紹介されているということは,素直に賞賛と受け取ってよいだろう.ただし,Klein の辞典の利用には注意が必要である.英語史内での語史記述が不十分であること,編者の経歴からセム語(特にヘブライ語)の記述は期待されそうだが必ずしも正確ではないことなどは,気にとめておく必要がある.
 関連して,「#600. 英語語源辞書の書誌」 ([2010-12-18-1]) も参照.

 ・ Fisiak, Jacek. "Discovering English Historical Linguistics in Japan." Phrases of the History of English: Selection Papers Read at SHELL 2012. Ed. Michio Hosaka, Michiko Ogura, Hironori Suzuki, and Akinobu Tani. Frankfurt am Main: Peter Lang, 2013.
 ・ 寺澤 芳雄 (編集主幹) 『英語語源辞典』 研究社,1997年.
 ・ 福島 治 編 『英語派生語語源辞典』 日本図書ライブ,1992年.
 ・ Klein, Ernest. A Comprehensive Etymological Dictionary of the English Language, Dealing with the Origin of Words and Their Sense Development, Thus Illustrating the History of Civilization and Culture. 2 vols. Amsterdam/London/New York: Elsevier, 1966--67. Unabridged, one-volume ed. 1971.
 ・ 寺澤 芳雄(編) 『辞書・世界英語・方言』 研究社英語学文献解題 第8巻.研究社.2006年.
 ・ 荒 正人 『ヴァイキング 世界史を変えた海の戦士』 中央公論新社〈中公新書〉,1968年.

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2014-02-14 Fri

#1754. queue [bre][ame_bre][etymology][semantic_change][french][loan_word]

 イギリス人の習性として,何事にも列を作るということがしばしば言われる.例えば,NTC's Dictionary of Changes in Meanings によると,George Mikes は How to Be an Alien (1946) のなかで,"Queueing is the national pastime of an otherwise dispassionate race. The English are rather shy about it, and deny that they adore it" と評している.
 イギリス人のこの習性を反映し,いかにもイギリス英語的と言うべき語が上にも出た「行列(を作る)」を意味する queue である.アメリカ英語ではこの意味では line を用いるのが普通である.先日,オーストラリアに出かけていたが,そこでは予想通りイギリス的な queue が用いられている.queue がイギリス英語的であることを具体的に確認すべく,「#1730. AmE-BrE 2006 Frequency Comparer」 ([2014-01-21-1]) や「#1739. AmE-BrE Diachronic Frequency Comparer」 ([2014-01-30-1]) に,^queu(e[sd]?|ing)$ と入れて検索してみると,統計的に検定するまでもなく,明らかに分布はイギリス英語への偏りを示す.AmE-BrE 2006 Frequency Comparer による検索結果を以下に掲げておこう.

IDWORDFREQTEXTSRANK
AME_2006BRE_2006AME_2006BRE_2006AME_2006BRE_2006
1queue219212263485149
2queued0101039987
3queues090908971
4queuing090908972


 一見するところ,イギリス英語的な queue のほうが古くて由緒正しい「行列」であり,line はアメリカ英語での散文的な革新ではないかと疑われるかもしれない.しかし,事実は逆である.line は古英語より「ひも」の意味で文証される古い語で,ゲルマン祖語 *līnjōn に遡る.一方,これと同根のラテン語 līnea から発展した古フランス語 ligne が中英語に入り,両者が line として合流した.line の「列」の意味は a1500 に発生しており,当然ながら近代英語期のイギリスでは普通に用いられていた.この使用が,そのままアメリカ英語に持ち越されたことになる.
 ところが,その後,イギリス側で革新が生じた.1837年の Carlyle, French Revolution を初例として,queue なる語が「列」の語義を line から奪い取っていったのである.この queue は中英語末期に「一列の踊り子たち」ほどの意味で初出しており,古フランス語 co(u)e からの借用語である.これ自体はラテン語 cauda (tail) に遡る.したがって,英語でも当初の意味は「獣の尾」であり,caudal (尾の), cue (突き棒;弁髪)も同根である.英語では,18世紀に「弁髪」の語義がはやった後,19世紀にフランス語を再び参照して「列」の語義を獲得した.だが,Carlyle を含めた英語の初期の用例ではフランス(語)的な文脈で現れることが多く,英語の語彙に同化するにはしばらく時間がかかったようである.この経緯を考えると,19世紀当時,列を作るのはむしろフランスの特徴だったということになりそうだ.
 「イギリス人=列を愛する人」というステレオタイプを体現する語としての queue の定着は,案外と新しいものだったことになる.今では,Are you in the queue?, How long were you in the queue? などは,イギリス生活において必須の日常表現といっていいだろう.
 イギリス英語とアメリカ英語の保守と革新という問題については,「#315. イギリス英語はアメリカ英語に比べて保守的か」 ([2010-03-08-1]),「#627. 2変種間の通時比較によって得られる言語的差異の類型論」 ([2011-01-14-1]),「#628. 2変種間の通時比較によって得られる言語的差異の類型論 (2)」 ([2011-01-15-1]),「#1304. アメリカ英語の「保守性」」 ([2012-11-21-1]) ほか colonial_lag の各記事を参照.また,関連して「#880. いかにもイギリス英語,いかにもアメリカ英語の単語」 ([2011-09-24-1]) も参照.

 ・ Room, Adrian, ed. NTC's Dictionary of Changes in Meanings. Lincolnwood: NTC, 1991.

Referrer (Inside): [2019-05-05-1]

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2014-02-10 Mon

#1750. bonfire [etymology][semantic_change][phonetics][folk_etymology][johnson][history][trish]

 昨日の記事「#1749. 初期言語の進化と伝播のスピード」 ([2014-02-09-1]) で,Aitchison の "language bonfire" の仮説を紹介したが,この bonfire (焚き火)という語の語誌が興味深いので触れておきたい.意味と形態の両方において,変化を遂げてきた語である.
 この語の初出は15世紀に遡り,bonnefyre, banefyre などの綴字で現れる.語源としては比較的単純で,bone + fire の複合語である.文字通り骨を集めて野外で火を焚く,おそらくキリスト教以前に遡る行事を指していたようで,「宗教的祭事・祝典・合図などのため野天で焚く大かがり火」を意味した. 黒死病の犠牲者の骨を山のように積んで燃やす火のことでもあり,火あぶりの刑や焚書に用いる火のことでもあった.Onians (268fn) によると,骨は生命の種と考えられており,それを燃やすことで豊饒,多産,幸運が得られると信じられていたともいう.ラテン語 ignis ossium,フランス語 feu d'os などの対応語句がある.初期の例は,MED bōn-fīr を参照.
 16世紀からは第1音節がつづまった bonfire の綴字が普及するにつれて bone の原義が忘れられるようになり,一般化した語義「焚き火」「ゴミ焚き」が現れてくる.ただし,スコットランドでは,OED bonfire, n. の語源欄にあるように,元来の綴字と原義が1800年頃まで保たれていたようだ ("In Scotland with the form bane-fire, the memory of the original sense was retained longer; for the annual midsummer 'banefire' or 'bonfire' in the burgh of Hawick, old bones were regularly collected and stored up, down to c1800.") .ほかにも近代の方言形では長母音を示す綴字が残っている (see "bonefire" in EDD Online) .
 第1要素の bon が何を表すのか不明になってくると,民間語源風の解釈が行われるようになり,1755年には Johnson の辞書ですら次のような解釈を示した.

BO'NFIRE. n. s. [from bon, good, Fr. and fire.] A fire made for some publick cause of triumph or exultation.


 だが,複合語の第1要素がこのように短縮するのは珍しいことではない.もともとの長母音が,複合により語全体が長くなることへの代償として,短母音化するという音韻過程は,gospell (< God + spell), holiday (< holy + day), knowledge (< know + -ledge), Monday (< moon + day) などで普通に見られる.
 bonfire といえば,イギリスでは11月5日に行われる民間行事 Bonfire Night あるいは Guy Fawkes Night が有名である.1605年11月5日,カトリック教徒が議会爆破と James I 暗殺をもくろんだ火薬陰謀事件 (Gunpowder Plot) が実行される予定だったが,計画が前日に露見し,実行者とされる Guy Fawkes (1570--1606) が逮捕された.以来,陰謀の露見と国王の無事を祝うべく,街頭で大きなかがり火を燃やし,Guy Fawkes をかたどった人形を燃やし,花火をあげる習俗が行われてきた.

 ・ Onians, Richard Broxton. The Origins of European Thought about the Body, the Mind, the Soul, the World, Time, and Fate. 2nd ed. Cambridge: CUP, 1954.

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2014-01-28 Tue

#1737. アメリカ州名の由来 [onomastics][toponymy][etymology][map]

 「#1735. カナダ州名の由来」 ([2014-01-26-1]) と「#1736. イギリス州名の由来」 ([2014-01-27-1]) に続いて,今回はアメリカの州 (state) の名前の由来を訪ねる.まずは,州境の入った地図から.
 
Map of USA States

 語源別に50州の内訳をみると,以下のようになっている.過半数がアメリカ先住民の言語に由来する.

NumberOrigin
28American Indian
11English
6Spanish
3French
1Dutch (Rhode Island)
1from America's own history (Washington)


 では,Crystal (145) を参照して50州名の由来をアルファベット順に示そう.

AlabamaChoctaw "I open the thicket" (i.e. clears the land)
AlaskaInuit "great land"
ArizonaPapago "place of the small spring"
ArkansasSioux "land of the south wind people"
CaliforniaSpanish "earthly paradise"
ColoradoSpanish "red" (colour of the earth)
ConnecticutMohican "at the long tidal river"
Delawarenamed after English governor Lord de la Warr
FloridaSpanish "land of flowers"
Georgianamed after George II
HawaiiHawaiian "homeland"
IdahoShoshone "light on the mountain"
IllinoisAlgonquian via French "warriors"
IndianaEnglish "land of the Indians"
IowaDakota "the sleepy one"
KansasSioux "land of the south wind people"
KentuckyIroquois "meadow land"
Louisiananamed after Louis XIV of France
Mainenamed after a French province
Marylandnamed after Henrietta maria, queen of Charles I
MassachusettsAlgonquian "place of the big hill"
MichiganChippewa "big water"
MinnesotaDakota Sioux "sky-coloured water"
MississippiChippewa "big river"
MissouriAlgonquian via French "muddy waters" (?)
MontanaSpanish "mountains"
NebraskaOmaha "river in the flatness"
NevadaSpanish "snowy"
New Hampshirenamed after an English county
New Jerseynamed after Jersey (Channel Islands)
New Mexiconamed after Mexico (Aztec "war god, Mextli")
New Yorknamed after the Duke of York
North Carolinanamed after Charles II
North DakotaSioux "friend"
OhioIroquois "beautiful water"
OklahomaChoctaw "red people"
OregonAlgonquian "beautiful water" or "beaver place" (?)
Pennsylvanianamed after William Penn and Latin "woodland"
Rhode IslandDutch "red clay"
South Carolinanamed after Charles II
South DakotaSioux "friend"
TennesseeCherokee settlement name, unknown origin
TexasSpanish "allies"
UtahNavaho "upper land" or "land of the Ute" (?)
VermontFrench "green mountain"
Virginianamed after Elizabeth I, the "virgin queen"
Washingtonnamed after George Washington
West Virginianamed after Elizabeth I, the "virgin queen"
WisconsinAlgonquian "grassy place" or "beaver place" (?)
WyomingAlgonquian "place of the big flats"


(後記 2014/02/24(Mon):アメリカ州名の学習にはこちらをどうぞ.)

 ・ Crystal, David. The Cambridge Encyclopedia of the English Language. 2nd ed. Cambridge: CUP, 2003.

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2014-01-27 Mon

#1736. イギリス州名の由来 [onomastics][toponymy][etymology][map][celtic]

 昨日の記事「#1735. カナダ州名の由来」 ([2014-01-26-1]) に続いて,今回はイギリスの州 (county, shire) の名前の起源について.まずは,州境の入った地図を掲げたい.Ordnance Survey - Outline maps より入手した,1972--1996年の旧州名の入った地図である.下図をクリックして拡大 (65KB) ,あるいはさらなる拡大版 (260KB),あるいはPDF版 (243KB) を参照しながらどうぞ.

Map of UK Counties

 以下の州名の由来は,Crystal (143) にもとづく.Western Isles, Highland, Central, Borders など,自明のものは省略してある.当然ながらケルト諸語に由来する州名が多い.

Avon"river"
Bedford"Beda's ford"
Berkshire"county of the wood of Barroc" ("hilly place")
Buckingham"riverside land of Bucca's people"
Cambridge"bridge over the river Granta"
Cheshire"county of Chester" (Roman "fort")
Cleveland"hilly land"
Clwyd"hurdle" (? on river)
Cornwall"(territory of) Britons of the Cornovii" ("promontory people")
Cumbria"territory of the Welsh"
Derby"village where there are deer"
Devon"(territory of) the Dumnonii" ("the deep ones", probably miners)
Dorset"(territory of the) settlers around Dorn" ("Dorchester")
Dumfries and Galloway"woodland stronghold"; "(territory of) the stranger-Gaels"
Durham"island with a hill"
Dyfed"(territory of) the Demetae"
Essex"(territory of) the East Saxons"
Fife"territory of Vip" (?)
Glamorgan"(Prince) Morgan's shore"
Gloucester"(Roman) fort at Glevum" ("bright place")
Grampianunknown origin
Gwent"favoured place"
Gwynedd"(territory of) Cunedda" (5th-century leader)
Hampshire"county of Southampton" ("southern home farm")
Hereford and Worcester"army ford"; "(Roman) fort of the Wigora"
Hertford"hart ford"
Humberside"side of the good river"
Kent"land on the border" (?)
Lancashire"(Roman) fort on the Lune" ("health-giving river")
Leicester"(Roman) fort of the Ligore people"
Lincoln"(Roman) colony at Lindo" ("lake place")
London"(territory of) Londinos" ("the bold one") (?)
Lothian"(territory of) Leudonus"
Man"land of Mananan" (an Irish god)
Manchester"(Roman) fort at Mamucium"
Merseyside"(side of the) boundary river"
Norfolk"northern people"
Northampton"northern home farm"
Northumberland"land of those dwelling north of the Humber"
Nottingham"homestead of Snot's people"
Orkney"whale island" (?) (After J. Field, 1980)
Oxford"ford used by oxen"
Powys"provincial place"
Scillyunknown origin
Shetland"hilt land"
Shropshire"county of Shrewsbury" ("fortified place of the scrubland region")
Somerset"(territory of the) settlers around Somerton" ("summer dwelling")
Stafford"ford beside a landing-place"
Strathclyde"valley of the Clyde" (the "cleansing one")
Suffolk"southern people"
Surrey"southern district"
Sussex"(territory of) the South Saxons"
Tayside"silent river" or "powerful river"
Tyne and Wear"water, river"; "river"
Warwick"dwellings by a weir"
Wight"place of the division" (of the sea) (?)
Wiltshire"county around Wilton" ("farm on the river Wylie")
Yorkshire"place of Eburos"


(後記 2014/02/24(Mon):イギリス州名の学習にはこちらをどうぞ.)

 ・ Crystal, David. The Cambridge Encyclopedia of the English Language. 2nd ed. Cambridge: CUP, 2003.

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2014-01-26 Sun

#1735. カナダ州名の由来 [onomastics][toponymy][etymology][map][canada]

 「#1733. Canada における英語の歴史」 ([2014-01-24-1]) および「#1734. Canada の国旗と紋章」 ([2014-01-25-1]) でカナダを取り上げたが,今回はカナダの州 (province) と準州 (territory) の名前について.
 カナダは世界第2位の面積を誇る巨大な大陸国家だが,政治区画としては10州と3準州からなる.Nunavut は1999年に設立されたばかりの準州で,住民の多くが先住民族である.

Map of Canada

 Northwest Territories は文字通りなので除外し,語源辞典等により調べた,12(準)州の名前を構成する主要素の起源をアルファベット順に掲げる.

 ・ Alberta は,Queen Victoria の4番目の娘 Princess Louise Caroline Alberta にちなむ.
 ・ Brunswick は,George II, Duke of Brunswick にちなむ.
 ・ Columbia は,ハドソン湾会社の時代の Columbia District より引き継がれた.「コロンブスの地」の意.
 ・ Labrador は,ポルトガル語 lavrador (yeoman farmer) に由来するとされ,John Cabot の命名とも想定されるが,未詳.
 ・ Manitoba は,北米先住民の言語 Algonquian の manito bau (spirit straight) より.この manito は,1698年に英語へ manitou として入っており,「(アルゴンキアン族の)霊,魔;超自然力」を表わす.
 ・ Newfoundland は,「新しく発見した土地」として John Cabot により命名されたもの.
 ・ Nova Scotia は,ラテン語で "New Scotland" の意.
 ・ Nunavut は,北米先住民の言語 Inuit で "our land" を意味する.
 ・ Ontario は,北米先住民の言語 Iroquoian の Oniatariio (the fine lake) のフランス語形より.
 ・ Prince Edward は,George III の4番目の息子 Prince Edward Augustus, the Duke of Kent にちなむ.
 ・ Quebec は,北米先住民の言語 Algonquian の kabek (the place shut in) より.
 ・ Saskatchewan は,北米先住民の言語 Cree の kisiskatchewani (swift-flowing river) より.Rocky 山脈に発する川に当てられた名前.
 ・ Yukon は,北米先住民の言語 Athapascan の yukon-na (big river) より.ベーリング海峡に注ぐ川に当てられた名前.

Referrer (Inside): [2014-01-28-1] [2014-01-27-1]

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2014-01-15 Wed

#1724. Skeat による2重語一覧 [doublet][etymology][lexicology]

 昨日の記事「#1723. シップリーによる2重語一覧」 ([2014-01-14-1]) に引き続き,今度は Skeat の語源辞典 (748--51) に掲載されている2重語 (doublet) を一覧しよう.その前に,Skeat (748) の2重語の定義を掲げよう.

Doublets are words which, though apparently differing in form, are nevertheless, from an etymological point of view, one and the same, or only differ in some unimportant suffix. Thus aggrieve is from L. aggrauāre; whilst aggravate, though really from the pp. aggrauātus, is nevertheless used as a verb, precisely as aggrieve is used, though the senses of the words have been differentiated.


 では,以下に645組の2重語一覧を掲げる.(なお,本ブログ右欄に「今日の doublet」コーナーを設けてみました.)

abbreviateabridge
abetbet
acajoucashew
adamantdiamond
adventureventure
advocateavouch, avow
aggrieveaggravate
aiteyot
alarmalarum
allocateallow
ameeremir, omrah
amiableamicable
anone
ancientensign
announceannunciate
antemmet
anthemantiphon
anticantique
appalpall
appeal (sb)peal
appearpeer
appraiseappreciate
apprenticeprentice
aptitudeattitude
arcarch
armyarmada
arrackrack, raki
asphodeldaffodil
assayessay
assembleassimilate
assessassize (vb)
assoilabsolve
attachattack
attiretire, tire
baleball
balmbalsam
bandbond
banjomandoline
barbbard
basebasis
bashawpasha
batonbatten
bawdbold
beadlebedell
beakerpitcher
beefcow
beldambelladonna
benchbank, bank
benisonbenediction
blameblaspheme
boilbile
bossbotch
boughbow
boundbourn
bowerbyre
bowlbull
boxpyx, bush
bravebravo
brevebrief
brotherfriar
brownbruin
buffbuffalo
cadencechance
caitiffcaptive
caldron, cauldronchaldron
calibercaliver
calumnychallenge
camerachamber
cancercanker
cannoncanon
caravanvan
cardchart, carte
casechase, cash
caskcasque
castigatechasten
catchchase
cattlechattels, capital
cavalierchevalier
cavalrychivalry
cessassess
chaisechair
chalkcalx
champaigncampaign
channelcanal, kennel
chantcant
chapitercapital
chargecark, cargo
chateaucastle
cheatescheat
check (sb)shah
chicorysuccory
chiefcape
chieftaincaptain
chirurgeonsurgeon
choirchorus, quire
cholercholera
chordcord
chuckshock, shog
churchkirk
cipherzero
cistchest
cithernguitar, gittern, kit
civechive
clauseclose (sb)
climateclime
coffercoffin
coincoign, quoin
colekail
collectcull, coil (vb)
collocatecouch
comfitconfect
commendcommand
commodorecommander
complacentcomplaisant
complete (vb)comply
compostcomposite
comprehendcomprise
computecount
conduct (sb)conduit
confoundconfuse
construeconstruct
conveyconvoy
coolgelid
corngrain
cornhorn
coronationcarnation
corralkraal
corsairhussar
costumecustom
cotcote
couple (vb)copulate
coyquiet, quit, quite
coycage
crapecrisp
creamchrism
creasecrest
crevicecrevasse
cribcratch
crimsoncarmine
cropcoup
crowdrote
cryptgrot
cudquid
cuequeue
curariwourali
curriclecurriculum
curtle-axecutlass
cyclewheel
dacedart, dare
daintydignity
damedam, donna, duenna
dandon, domino
dauphindolphin
deckthatch
defencefence
defendfend
delaydilate
delldale
demesnedomain
dentdint
deploydisplay, splay
depotdeposit (sb)
descrydescribe
desideratedesire (vb)
despitespite
deucetwo
devilishdiabolic
diedado
direct (vb)dress
dishdisc, desk, daïs
disportsport
distainstain
ditchdike
dittodictum
diurnaljournal
dogeduke
doitthwaite
doledeal (sb)
dominiondungeon
doom-dom (suffix)
dragondragoon
dropsyhydropsy
duedebt
dunedown
eatableedible
éclatslate
elfoaf, ouphe
éliteelect
emeraldsmaragdus
emerodshemorrhoids
employimply, implicate
endowendue, indue
enginegin
entireinteger
enviousinvidious
escapescape
eschewshy (vb)
escutcheonscutcheon
especialspecial
espyspy
esquiresquire
establishstablish
estatestate, status
estimateesteem
estopstop
estreatextract
etiquetteticket
exampleensample, sample
exemplarsampler
extraneousstrange
fabricforge (sb)
factfeat
facultyfacility
fanvan
fancyfantasy, phantasy
fashionfaction
fatvat
fauteuilfaldstool
fealtyfidelity
feeblefoible
fellpell
fester (sb)fistula
feudfief, fee
feverfewfebrifuge
fiddleviol
fifepipe, peep
finchspink
finitefine
fitchvetch
flagflake, flaw
flowerflour
flushflux
foamspume
fontfount
forcefarce
foremostprime
fosterforester
fragilefrail
frayaffray
frofrom
frounceflounce
fungussponge
furlfardel
gabblejabber
gadged
gaffergrandfather
gagewage
gambadogambol
gamegammon
gaoljail
garthyard
geargarb
genteelgentle, gentile
genuskin
germgermen
gigjig
ginjuniper
girdgride
girdlegirth
glamourgramarye
graincorn
granarygarner
grece, grisegrade
guarantee (sb)warranty
guardward
guardianwarden
guesthost
guilewile
guisewise
gulletgully
gustgusto
guyguide (sb)
gypsyEgyptian
hackbutarquebus
halewhole
hamperhanaper
haranguering, rank, rink
hash (vb)hatch
hatchmentachievement
hautboyoboe
heaphope
hecklehackle, hatchel
hemi-semi-
henthint
historystory
hockhough
hoopwhoop
hospitalhostel, hotel, spital, spittle
hubhob
humanhumane
hyacinthjacinth
hydraotter
hyper-super-
hypo-sub-
illuminelimn
inaptinept
inchounce
inditeindict
influenceinfluenza
innocuousinnoxious
invitevie
invokeinvocate
iotajot
isolateinsulate
jaggerysugar
jealouszealous
jinngenie
jointjunta, junto
jointurejuncture
jutjet
juttyjetty
ketchcatch
labellapel, lappet
laclake
lacelasso
lairleaguer
lakeloch, lough
lateenLatin
launch, lanchlance (vb)
lealloyal, legal
lectionlesson
libglib
lieulocus
limblimbo
limbeckalembic
lineallinear
liquorliqueur
listlust
loadlode
lobbylodge
locustlobster
lonealone
losellorel
lurchlurk
madammadonna
majormayor
malemasculine
maledictionmalison
mandatemaundy
manglemangonel
manœuvremanure
marchmark, marque
marginmargent, marge
marishmorass
maulmall
mauvemallow
maximmaximum
mazermazzard
meanmesne, mizen
memorymemoir
mentormonitor
metalmettle
miltmilk
minimminimum
minstermonastery
mintmoney
mistermaster
mobmobile, movable
modemood
mohairmoire
momentmomentum, movement
monstermuster
morrowmorn
moslemmussulman
mouldmodule
munnionmullion
musketmosquito
naivenative
nakednude
namenoun
natronnitre
naught, noughtnot
nauseanoise
neatnet
niaseyas
noyaunewel
obedienceobeisance
octaveutas
ofoff
onionunion
orationorison
ordinanceordnance
orpimentorpine
ospreyossifrage
ottoattar
ouchnouch
outerutter
overplussurplus
paddlespatula
paddockpark
pain (vb)pine
paladinpalatine
palepallid, fallow
palettepallet
paperpapyrus
paradeparry
paradiseparvis
paralysispalsy
paroleparable, parle, palaver
parsonperson
passpace
pastelpastille
pastypatty
pateplate
patronpattern
pausepose
pawnpane, vane
paynimpaganism
peerappear
peisepoise
pelissepilch
pellitoryparitory
penancepenitence
peregrinepilgrim
perukeperiwig, wig
pewterspelter
phantasmphantom
piazzaplace
pickpeck, pitch (vb)
picketpiquet
pietypity
pigmentpimento
pikepeak, pick (sb), pique (sb), spike
pippinpip
pistilpestle
pistolpistole
plaintiffplaintive
plaitpleat, plight
planplain, plane, llano
plateauplatter
plumprune
poignantpungent
pointpunt
poisonpotion
pokepouch
polepale, pawl
pomade, pommadepomatum
pomppump
poorpauper
popepapa
porchportico
posypoesy
potentpuissant
poultpullet
pouncepunch
pouncepumice
poundpond
poundpun (vb)
powerposse
praiseprice
preachpredicate
premierprimero
priestpresbyter
privateprivy
probe (sb)proof
proctorprocurator
prolongpurloin
prosecutepursue
providepurvey
providentprudent
punchpunish
punypuisne
purlprofile
purposepropose
purviewproviso
quarternquadroon
queenquean
racemeraisin
rackwrack, wreck
radixradish, race, root, wort
raidroad
railrally
raiserear
rampromp
ransomredemption
rapineravine, raven
raseraze
ratioration, reason
rayradius
rayahryot
rear-wardrear-guard
reaverob
reconnaissancerecognisance
regalroyal, real
relicrelique
renegaderunagate
renewrenovate
reprievereprove
residueresiduum
respectrespite
revengerevindicate
rewardregard
rhomb, rhombusrumb
ridgerig
rodrood
rondeauroundel
roteroute, rout, rut
roundrotund
rouserow
roverrobber
sacksac
sacristansexton
sawsaga
saxifragesassafras
scabbyshabby
scaleshale
scandalslander
scar, scaurshare
scarfscrip, scrap
scattershatter
schoolshoal, scull
scot(free)shot
screenshriek
screedshred
screwshrew
scurscour
scuttleskillet
sect, sept, setsuite, suit
sennetsignet
separatesever
sequinsicca
sergeant, serjeantservant
settlesell, saddle
shammychamois
sharksearch
shawm, shalmhaulm
sheaveshive
shedshade
shirtskirt
shrubsherbet, syrup
shufflescuffle
sicker, sikersecure, sure
sinesinus
sir, siresenior, seignior, señor, signor
size, sizeassise
skewershiver
skiffship
skirmishscrimmage, scaramouch
slabberslaver
sleightsloid
sleuthslot
slobberslubber
sloopshallop
snivelsnuffle
snubsnuff
soilsole, sole
sopranosovereign
soughsurf
soupsup
sousesauce
spadespade
speciesspice
spellspill
spenddispend
spiritsprite, spright
spoorspur
spraysprig, asparagus
spritsprout (sb)
sprout (vb)spout
spryspark
squallsqueal
squinancyquinsy
squiresquare
stanktank
stavestaff
steerTaurus
stilldistil
stocktuck
stovestew (sb)
straitstrict
strapstrop
stressdistress
superficiessurface
supersedesurcease
suppliantsupplicant
sweepswoop
tabortambour
tachetack
taintattaint
tampertemper
tarpaulingtar
tasktax
taunttempt, tent
tawnytenny
teasetose
teetaw
teindtithe, tenth
tendtender
tensetoise
terceltassel
threadthrid
thrill, thirldrill
tinetooth
tippettape
titteat
titletittle
totoo
tontun
tonetune
tourturn
towtug
towndown
tracktrick
tracttrait
traditiontreason
travailtravel
trebletriple
trifletruffle
tripodtrivet
triumphtrump
trothtruth
tucktug
tucktouch
tulipturban
tweaktwitch
umbelumbrella
unityunit
ureopera
vadefade
vairvarious
valetvarlet
vantageadvantage
vastwaste
vawardvanguard
vealwether
veldtfield
veneerfurnish
venew, veneyvenue
verbword
vermeilvermillion
vertexvortex
vervainverbena
viaticumvoyage
viperwyvern, wivern
visorvizard
vizier, visieralguazil
vocalvowel
wainwagon, waggon
waleweal
wattlewallet
weetwit
whirlwarble
wightwhit
woldweald
yelpyap


 ・ Skeat, Walter William, ed. An Etymological Dictionary of the English Language. 4th ed. Oxford: Clarendon, 1910. 1st ed. 1879--82. 2nd ed. 1883.

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2014-01-14 Tue

#1723. シップリーによる2重語一覧 [doublet][etymology][lexicology]

 本ブログでは2重語 (doublet) に関する記事を多く書いてきたが,一覧を作っておくと便利である.シップリーの語源辞典の巻末に,2重語(と3重語以上の多重語)のリストが載っていたので,以下に転載する.その前に,シップリー (708) による2重語の定義と説明を示しておこう.

二重語とは,同じ語源の言葉が異なった経路を経て英語になった一組の言葉(あるいはその組の一語)を意味する。下記はその例に数えられるもので,それらの語源や経路をたどろうと思えば,すべて OED (『オックスフォード英語大辞典』)で見ることができ,これらの二重語から,英語の豊かさと,言葉についてのさまざまな興味ある話しを読み取ることができる。二重語には,語源は同じでありながら,その意味は互いに大いに異なるものがある。


 では,以下に126組の2重語一覧を掲げる.

abbreviate (略記する)abridge (短縮する)
acute (先の尖った)cute (かわいい)ague (激しい熱,【病理】悪寒)
adamant (剛直な)diamond (ダイアモンド)
adjutant (助手の)aid (手伝う)
aggravate (さらに悪化させる)aggrieve (悲しませる)
aim (狙いを定める)esteem (尊重する)estimate (評価する)
allocate (割り当てる)allow (置く)
alloy (合金)ally (同盟する)
an (一つの:不定冠詞)one (一つの)
antic (こっけいなしぐさ)antique (古臭い)
appreciate (高く評価する)appraise (値段をつける)apprize (尊重する)
aptitude (適正)attitude (態度)
army (軍隊)armada (艦隊)
asphodel (《詩語》スイセン)daffodil (ラッパスイセン)
assemble (集合させる)assimilate (消化吸収する)
astound (仰天させる)astonish (驚かす)stun (呆然とさせる)
attach (貼り付ける)attack (攻撃する)
band (バンド)bond (きずな)
banjo (バンジョー)mandolin (マンドリン)
bark (バーク船)barge (平底荷船)
beaker (ビーカー)pitcher (ピッチャー)
beam (梁)boom (【海事】帆桁)
belly (腹部)bellows (ふいご)
benison (祝福の祈り)benediction (祝福)
blame (非難する)blaspheme (冒瀆する)
block (大きな塊)plug (栓)
book (本)buck(wheat) (ソバ)beech (ブナ)
boulevard (広い並木道)bulwark (堡塁)
brother (兄弟)friar (托鉢修道士)
cadet (仕官候補生)cad (育ちの悪い男)
cadence (拍子)chance (偶然)
cage (鳥かご)cave (洞窟)
calumny (誹謗)challenge (挑戦)
cancel (取り消す)chancel (《教会堂の》内陣)
cant (偽善的な説教)chant (詠唱)
captain (首領)chieftain (《山賊などの》かしら)
cavalry (騎兵隊)chivalry (騎士道)
cell (《大組織の》基本組織)hall (ホール)
charge (負担させる,請求する)cargo (船荷)
chariot (《馬で引く》二輪戦車)cart (荷馬車)
chattel (【法律】動産)cattle (畜牛)capital (資本)
check (阻止する,【チェス】王手)shah (イラン国王)
costume (服装)custom (慣習)
crate (わく箱)hurdle (ハードル)
daft (ばかな)deft (器用な)
dainty (上品な)dignity (威厳)
danger (危険)dominion (支配権)
dauphin (【歴史】《フランスの》王太子)dolphin (イルカ)
deck (デッキ)thatch (わら葺き屋根)
defeat (負かす)defect (欠陥)
depot (停車場)deposit (預金)
devilish (悪魔のような)diabolical (邪悪な)
diaper (多彩に小柄模様にする)jasper (碧玉)
disc (レコード)discus (円盤)dish (皿)dais (演壇)desk (机)
ditto (同上)dictum (公式見解,金言)
employ (雇う)imply (暗に意味する)implicate (暗に示す)
ensign (軍旗)insignia (記章)
etiquette (エチケット)ticket (切符)
extraneous (外部からの)strange (奇妙な)
fabric (織物)forge (鍛冶場)
fact (事実)feat (偉業)
faculty (才能)facility (容易さ)
fashion (ファッション)faction (派閥)
feeble (弱い)foible (《愛嬌のある》弱点)
flame (炎)phlegm (痰)
flask (フラスコ)fiasco (完全な失敗)
flour (小麦粉)flower (花)
fungus (菌類)sponge (海綿)
genteel (上品ぶった)gentle (優しい)gentile (異教徒の)jaunty (陽気な)
glamour (魅惑的な)grammar (文法)
guarantee (保証)warranty (保証,権限)
hale (健全な)whole (全体の)
inch (インチ)ounce (オンス)
isolation (孤立)insulation (隔離)
jay (カケス)gay (同性愛の,快活な)
kennel (溝)channel (海峡)canal (運河)
kin (血縁)genus (《分類上の》属)
lace (締めひも)lasso (投げ輪)
listen (聴く)lurk (待ち伏せする)
lobby (ロビー)lodge (山小屋)
locust (バッタ)lobster (カキ)
maneuver (作戦行動)manure (肥料をやる;肥料)
monetary (通貨の)monitory (警告の)
monster (怪物)muster (召集する)
musket (マスケット銃)mosquito (蚊)
naive (単純な)native (生まれた時からの)
onion (タマネギ)union (結合)
paddock (小放牧地)park (公園)
parable (寓話)parabola (放物線)parole (執行猶予)parley (討議)palaver (商談)
parson (教区牧師)person (人)
particle (分子)parcel (小包)
patron (後援者)pattern (模様)
piazza (《イタリア都市の》広小路)place (場)plaza ((スペイン都市などの)広場)
poignant (痛切な)pungent (辛らつな)
poison (毒薬)potion (《毒液の》一服)
poor (貧しい)pauper (乞食)
pope (ローマ教皇)papa (パパ)
praise (ほめる)price (価格)
quiet (静かな)quit (やめる)quite (すっかり)coy (内気な)
raid (襲撃)road (道路)
ransom (身代金)redemption (買い戻し)
ratio (比率)ration (割り当て)reason (理由)
respect (尊敬する)respite (《仕事などの》小休止)
restrain (抑制する)restrict (制限する)
rover (放浪者)robber (泥棒)
saliva (唾液)slime (ねば土,ぬめり)
scandal (恥辱)slander (中傷)
scourge (むち,天罰)excoriate (皮をはぐ)
scout (斥候)auscultate (聴診する)
secure (安全な)sure (自信を持って)
sergeant (軍曹)servant (使用人)
sovereign (主権者)soprano (ソプラノ)
stack (干し草の山)stake (杭)steak (ステーキ)stock (蓄え)
supervisor (管理者)surveyor (測量者)
tamper (干渉する)temper (気性)
triumph (勝利)trump (トランプ)
tulip (チューリップ)turban (ターバン)
two (2の)deuce (ジュース)
utter (口に出す)outer (外側の)
valet (近侍)varlet (従者)
vast (広大な)waste (荒廃させる)
veneer (ベニア)furnish (家具を設備する)
verb (動詞)word (言葉)
whirl (旋回する)warble (さえずる)
yelp (かん高い声を上げる)yap (キャンキャン吠え立てる)
zero (ゼロ)cipher (暗号)


 ・ ジョーゼフ T. シップリー 著,梅田 修・眞方 忠道・穴吹 章子 訳 『シップリー英語語源辞典』 大修館,2009年.

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2014-01-01 Wed

#1710. of yore [etymology][oe][vowel]

 謹賀新年.本年も本ブログを続けていきます.よろしくお願いします.
 New Year にちなんで,year と関連する(かもしれない)語の語源について.標題の of yore は「昔の,昔は」を意味する成句である.次のように形容詞的あるいは副詞的に用いる.

 ・ This was once a Roman road in days of yore.
 ・ The great composers of yore performed for kings and queens.
 ・ But Satan now is wiser than of yore.


 yore は,古英語 gēar (year) の複数属格形 gēara に由来するとされる.属格は副詞的機能を果たしたので,「何年も前;昔」という意味が生じたものと解釈されている.yore 単独での副詞としての用法は古英語からあり,1613年の例を最後に廃用となったが,名詞としては ?c1350 に初出し,あらたに属格の副詞用法を反映したかのような of yore の成句が生まれ,現在まで続いている(成句の文証は a1375 より).
 ただし,この語源説は音韻的には難があるようにもみえる.古英語の複数属格形が *geāra であればその後の音韻変化につながるが,実際には gēara ではなかったか.Skeat (Principles 55fn) は,"The A.S. ge-, as occurring here before á, represents the sound of mod. E. y; at any rate, it did so in late A.S." と解釈しており,もともとの下降2重母音 (falling diphthong) が上昇2重母音 (rising diphthong) へ変化したとみている.同様に,Klein も gēarageāra を並記して,両方とも妥当な古英語形であるとみなしている.さらに,Barnhart も geāra を "variant" とみなしている.Partridge もこの語源説に特に問題を認めていない.
 だが,OED の yore, adv. (and adj.) では,語源について "Old English geára, also geáre, geáro, adverbial formations of obscure origin." としており,"year" との関連については言及を避けている.Oxford 系の語源辞典は,同様に "of obscure origin" を添えている.OED に記されている別の語源説によると,gefyrn (< ge- + fyrn (long ago)) をまねて ge- + ār (ere) として造語されたものではないかともされる.
 上記の事情で,複数属格説はいまだ完全なる定説というわけではないが,多くの語源学者が採用している有力な説であることには違いない.もしこの語源説が受け入れられるとすれば,成句 of yore は,古英語の名詞を副詞化する複数属格の用法が,機能と形態において,限りなく間接的な形ではあるがかろうじて現在にまで伝わった希有な例ということになる.

 ・ Skeat, Walter W. Principles of English Etymology. 1st ser. 2nd Rev. ed. Oxford: Clarendon, 1892.
 ・ Skeat, Walter William, ed. An Etymological Dictionary of the English Language. 4th ed. Oxford: Clarendon, 1910. 1st ed. 1879--82. 2nd ed. 1883.
 ・ Skeat, Walter William, ed. A Concise Etymological Dictionary of the English Language. New ed. Oxford: Clarendon, 1910. 1st ed. 1882.
 ・ Klein, Ernest. A Comprehensive Etymological Dictionary of the English Language, Dealing with the Origin of Words and Their Sense Development, Thus Illustrating the History of Civilization and Culture. 2 vols. Amsterdam/London/New York: Elsevier, 1966--67. Unabridged, one-volume ed. 1971.
 ・ Barnhart, Robert K. and Sol Steimetz, eds. The Barnhart Dictionary of Etymology. Bronxville, NY: The H. W. Wilson, 1988.
 ・ Partridge, Eric Honeywood. Origins: A Short Etymological Dictionary of Modern English. 4th ed. London: Routledge and Kegan Paul, 1966. 1st ed. London: Routledge and Kegan Paul; New York: Macmillan, 1958.

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2013-12-30 Mon

#1708. *wer- の語根ネットワークと weird の語源 [etymology][indo-european][literature][shakespeare][word_family]

 昨日の記事「#1707. Woe worth the day!」 ([2013-12-29-1]) で,印欧語根 *wer- (to turn, bend) に由来する動詞 worth について取り上げた.この語根に由来する英単語は数多く,語彙の学習に役立つと思われるので,『英語語源辞典』 (1643) に従って語根ネットワークを示そう.

 ・ Old English: inward, stalworth, -ward, warp, weird, worm, sorry, worth, wrench, wrest, wrestle, wring, wrinkle, wrist, wry
 ・ Middle English: (wrap)
 ・ Old Norse: wrong
 ・ Other Germanic: gaiter, garrote, ribald, (wrangle), wrath, wreath, wriggle, writhe, wroth
 ・ Latin: avert, controversy, converge, converse, convert, dextrorse, diverge, divert, extrovert, introvert, inverse, obvert pervert, prose, reverberate, revert, (ridicule), subvert, transverse, universe, verge, vermeil, vermi-, vermicelli, vermicular, vermin, versatile, verse, version, versus, vertebra
 ・ Greek: rhabd(o)-, rhabdomancy, rhapsody, (rhomb, rhombus)
 ・ Slavic: verst
 ・ Sanskrit: bat (speech)


 一見すると形態的には簡単に結びつけられない語もあるが,意味的には「曲がりくねった」でつながるものも多い.くねくね動く虫 (worm) のイメージと結びつけられるものが多いように思われる.
 この中で,特に weird (不思議な,気味の悪い)を取り上げよう.この語の語源を古英語まで遡ると,(ge)wyrd (運命)にたどりつく.古英語文学においてとりわけ重要な単語であり概念である."to happen" を意味する weorþan の名詞形であり,"what is to happen" (起こるべきこと)を意味した.現代標準英語では「運命」の語義は古風だが,スコットランド方言などではこの語義が生きている.
 さて,この語は古英語以来,名詞として用いられていたが,1400年くらいから「運命を司る」を意味する形容詞としての用法が発達した.形容詞用法としては,Shakespeare が Macbeth において weird sisters (魔女;運命の3女神)を用いたことが後世に影響を与え,Shelley, Keats などのロマン派詩人もそれにならった.しかし,Shelley らは意味を「運命を司る」から「不可思議な,超自然的な」へと拡大し,さらに「奇妙な,風変わりな」の語義も発展させた.ロマン派詩人ならではの意味の発展のさせ方といえよう.この語は,古英語と後期近代英語の文学を象徴するキーワードといってもよいのではないか.
 現在の語形 weird は,中英語の北部方言形 wērd, weird に由来するとされる.Shakespeare 1st Folio では,the weyward sisters という綴字が見られ,語源的に区別すべき wayward (強情な;気まぐれな)との混同がうかがえる.

 ・ 寺澤 芳雄 (編集主幹) 『英語語源辞典』 研究社,1997年.

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2013-12-11 Wed

#1689. 南西太平洋地域のピジン語とクレオール語の語彙 [pidgin][creole][map][reduplication][lexicology][etymology][tok_pisin]

 昨日の記事「#1688. Tok Pisin」 ([2013-12-10-1]) を受けて,南西太平洋地域のピジン語とクレオール語の話題.関連諸言語の分布図を,Gramley (220) の地図を参考に示してみた.

Map of Southwestern Pacific Pidgins and Creoles

 ここに挙げられているピジン語やクレオール語は歴史的に関連が深く,言語的にも近い.いずれも英語を上層言語 (superstrate language) 及び語彙供給言語 (lexifier) とする混成語で,実際にいずれも語彙の8割前後は英語ベースである.Mühlhäusler を参照した Gramley (220) の表によると,ヴァヌアツの Bislama (「#1536. 国語でありながら学校での使用が禁止されている Bislama」 ([2013-07-11-1]) を参照), パプアニューギニアの Tok Pisin, ソロモン諸島の Solomon Pijin の3ピジン語でみると,語種分布は以下の通りである.


EnglishIndigenousOthers
Bislama90%53 (French)
Tok Pisin77167 (German etc.)
Solomon Pijin8965


 一般にピジン語やクレオール語の語彙は,上層言語を基準とすると,迂言,翻訳借用 (loan_translation),意味変化,加重 (reduplication),異分析などの例に満ちている.以下に,Gramley (220--22) に拠って Tok Pisin からの例を示そう.hair という代わりに gras bilong hed (grass that belongs to the head),beard という代わりに gras bilong fes (grass that belongs to the face) といった風である.現在形と過去形の区別はなく,例えば stei (stay) は文脈次第で現在・過去いずれの意味にもなりうる.tudir (too dear) は,「高価な」を表わす1語として分析され,同様に lego (let go) は「行かせる」, sekan (shake hands) は「和解する」として語彙化している.英語 arse (尻)に起源をもつ, as は文体的に中立な「後部;尻」であり,さらに意味変化を起こして「起源;原因」の意でも用いられる.that's all に起源をもつ tasol は,一般的に but の意味の接続詞として発達した.加重の例については,「#65. 英語における reduplication」 ([2009-07-02-1]) を参照されたい.
 現地の文化が語彙に反映されることもある.とりわけ親族名称 (kinship terms) では,mama (mother), papa (father) までは標準英語と同じだが,父系のおじとおばはそれぞれ smalpapa, smalmama だが,母系のおじとおばはともに kandare という1語で表わす.祖父母と孫は性別の区別もなく,一緒くたに tumbuna と表現する.兄弟姉妹も,同性であれば brata,異性であれば susa を用いるという点で,標準英語と異なる.

 ・ Gramley, Stephan. The History of English: An Introduction. Abingdon: Routledge, 2012.

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2013-10-28 Mon

#1645. 現代日本語の語種分布 [japanese][lexicology][statistics][etymology][loan_word][lexical_stratification]

 英語語彙の語種別の割合について,これまで多くの記事で各種統計を示してきた.

 ・ [2012-09-03-1]: 「#1225. フランス借用語の分布の特異性」
 ・ [2012-08-11-1]: 「#1202. 現代英語の語彙の起源と割合 (2)」
 ・ [2012-01-07-1]: 「#985. 中英語の語彙の起源と割合」
 ・ [2011-09-18-1]: 「#874. 現代英語の新語におけるソース言語の分布」
 ・ [2011-08-20-1]: 「#845. 現代英語の語彙の起源と割合」
 ・ [2010-12-31-1]: 「#613. Academic Word List に含まれる本来語の割合」
 ・ [2010-06-30-1]: 「#429. 現代英語の最頻語彙10000語の起源と割合」
 ・ [2010-05-16-1]: 「#384. 語彙数とゲルマン語彙比率で古英語と現代英語の語彙を比較する」
 ・ [2010-03-02-1]: 「#309. 現代英語の基本語彙100語の起源と割合」
 ・ [2009-11-15-1]: 「#202. 現代英語の基本語彙600語の起源と割合」
 ・ [2009-11-14-1]: 「#201. 現代英語の借用語の起源と割合 (2)」
 ・ [2009-08-19-1]: 「#114. 初期近代英語の借用語の起源と割合」
 ・ [2009-08-15-1]: 「#110. 現代英語の借用語の起源と割合」

 「#334. 英語語彙の三層構造」 ([2010-03-27-1]),「#335. 日本語語彙の三層構造」 ([2010-03-28-1]),「#1526. 英語と日本語の語彙史対照表」 ([2013-07-01-1]) で見たように,英語と日本語の語彙は比較される歴史をたどってきており,結果として現代の共時的な語彙構成にも共通点が見られる.今回は,現代英語との比較のために,現代日本語の語種別の割合をみよう.一般的にこの種の語彙統計を得るのは難しいが,『日本語百科大事典』 (420--21) に拠りながら3種の調査結果の概観を示す.

 (1) 明治から昭和にかけての3種の国語辞典『言海』(明治22年;1889年),『例解国語辞典』(昭和31年;1956年),『例解国語辞典』(昭和44年;1969年)の収録語を語種別に数えた研究がある.総語数は,『言海』39,103,『例解国語辞典』40,393,『角川国語辞典』60,218 である.以下に割合を示す表と図を示そう.

明治から昭和にかけての国語辞典調査

和語漢語外来語混種語
『言海』55.8%34.71.48.1
『例解国語辞典』36.653.63.56.2
『角川国語辞典』37.152.97.82.2


 時代が進むにつれて,和語に対する漢語と外来語の割合が高まってきているのがわかる.昭和では,1/2強が漢語,1/3強が和語という割合だ.

 (2) 現代の書きことばについては,国立国語研究所の『現代雑誌九十種の用語用字』調査のデータがよく参照される.昭和31年(1956年)の雑誌から,助詞,助動詞,固有名詞を除いて語彙を収集したものである.得られた語彙は,異なり語数で30,331,延べ語数で411,972.21世紀の現在から見ると古いデータではあるが,質において比肩する新しい調査は行われていない.

『現代雑誌九十種の用語用字』調査

和語漢語外来語混種語
異なり語数36.7%47.59.86.0
延べ語数53.941.32.91.9


 異なり語数と延べ語数では数値がかなり異なっており,特に和語と漢語の順位が入れ替わっているのが注目に値する.

 (3) 現代の話しことばの調査としては,知識層を対象としたものがある.日本語教育および語学関係の研究者7人とその話し相手の会話を延べ42時間分録音し,分析したものである.異なり語数は4,617で,延べ語数は64,023.

現代話しことば調査

和語漢語外来語混種語
異なり語数46.9%40.010.13.0
延べ語数71.823.63.21.4


 話しことばでは,書きことばと異なり,異なり語数と延べ語数の間で和漢語の順位入れ替えはない.いずれの数え方でも和語の割合が最も多いが,とりわけ延べ語数では和語が圧倒している.
 この話しことばの調査では,公的な場面や私的な場面など場面別に分析がなされたが,全体的な傾向として,和語は (1) 私的な場面でのほうが多い,(2) 延べ語数でのほうが多い,(3) 使用頻度の高い語ほど多い,(4) 話し言葉でのほうが多い,という結果が出た.私的な話しことばで高頻度に用いられる語は,和語である確率が最も高いということになる.この結果は直感と一致するだろう.
 英語においても本来語は「私的な場面の話しことばで高頻度に用いられる」確率が高いと想像されるが,これについては統計は見たことはなく,今後,実証してゆく必要があるかもしれない.

 ・ 『日本語百科大事典』 金田一 春彦ほか 編,大修館,1988年.

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2013-10-26 Sat

#1643. 喉頭音理論 [reconstruction][indo-european][laryngeal_theory][etymology][phonetics][saussure][hittite]

 「#1640. 英語 name とギリシア語 onoma (2)」 ([2013-10-23-1]) で話題にした喉頭音理論 (laryngeal theory) について,もう少し解説する.
 理論の提唱者は,Ferdinand de Saussure (1857--1913) である.Saussure は,1879年の印欧祖語の動詞の母音交替に関する研究 (Mémoire sur le système primitif des voyelles dans les langues indo-européennes. Leipzig: 1879) で,内的再建の手法により,印欧祖語 (IE) の長母音は,基本母音 e/o とある種の鳴音 ("coéfficients sonantiques") との結合によって生じたものであると仮定した.この鳴音はデンマークのゲルマン語学者 H. Mó により,セム語で ə と表記される喉頭音 (laryngeal) と比較された.この仮説はしばらくの間は注目されなかったが,20世紀初頭の Hittite の発見と解読にともない(「#101. 比較言語学のロマン --- Tocharian と Anatolian」 ([2009-08-06-1]) を参照),そこに現れる ḫ が問題の喉頭音ではないかと議論されるようになった.
 喉頭音理論によれば,IE の長母音 ē, ā, ō は,schwa indogermanicum と称されるこの ə が,後続する短母音と結びつくことによって生じたものだという.この喉頭音は,Hittite を含む少数の Anatolia 語派の言語に痕跡が見られるのみで他の印欧諸語では失われたが,諸言語において母音の音価を変化 (coloring) させた原因であるとされており,その限りにおいて間接的に観察することができるといわれる.
 喉頭音理論で仮定されている喉頭音の数と音価については様々な議論があるが,有力な説によると,h1 (neutral, e-coloring), h2 (a-coloring), h3 (o-coloring) がの3種類が設定されている.それぞれの音価は,無声声門閉鎖音,無声喉頭摩擦音,有声喉頭摩擦音であるとする説がある (Fortson 58) .
 喉頭音理論は印欧諸語の母音の解明に貢献してきた.しかし,Hittite の研究が進むにつれ,そのすべてが古形ではないこと,問題の ḫ が子音的性質 (schwa consonanticum) をもつことが分かってきて,喉頭音理論を疑問視する声があがってきた.現在に至るまで,同理論は印欧語比較言語学における最重要の問題の1つとなっている.

 ・ 大塚 高信,中島 文雄 監修 『新英語学辞典』 研究社,1987年.
 ・ Bussmann, Hadumod. Routledge Dictionary of Language and Linguistics. Trans. and ed. Gregory Trauth and Kerstin Kazzizi. London: Routledge, 1996.
 ・ Campbell, Lyle and Mauricio J. Mixco, eds. A Glossary of Historical Linguistics. Salt Lake City: U of Utah P, 2007.
 ・ Fortson IV, Benjamin W. Indo-European Language and Culture: An Introduction. Malden, MA: Blackwell, 2004.

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2013-10-23 Wed

#1640. 英語 name とギリシア語 onoma (2) [reconstruction][indo-european][laryngeal_theory][etymology][phonetics][saussure][hittite]

 昨日の記事「#1639. 英語 name とギリシア語 onoma (1)」 ([2013-10-22-1]) に引き続き,ギリシア語 onoma の語頭母音 o- の謎に迫る.
 参考資料にもよるが,name の再建された印欧祖語形は *nomn-, *nomen- などとして挙げられていることが多い.しかし,印欧語比較言語学のより専門的な立場からは,さらに早い段階の形態として,ある別の音が語頭に存在したはずだと主張されている.昨日の記事でも参照した Watkins の印欧語根辞書より,該当箇所を掲げよう.

IE Root of

 問題となるのは,1行目のかっこ内にある "Oldest form" である.n の前に,ə1 という記号が見える.この記号は参考書によっては H1h1 とも書かれる.これは,印欧語比較言語学で長らく議論されている一種の喉頭音 (laryngeals) で,具体的にどのような調音特性をもっているのかについては議論があるが,印欧諸語の多くの形態を説明するのに理論的にぜひとも想定しなければならないと考えられている音である.
 1879年,かの Saussure が印欧祖語におけるこれらの喉頭音の存在を予見したことはよく知られている.ただし,この「喉頭音理論」 (laryngeal theory) が注目を集めるまでには,1915年の Hittite 文献の解読に伴い,対応する喉頭音の実在が明らかにされるのを待たなければならなかった.Saussure 以来,Meillet, Kuryłovicz, Benveniste, Szemerényi などの碩学が喉頭音の分布の問題に挑んできたが,いまだに解決には至っていない.同理論を疑問視する立場もあり,このような学問的な立場の違いにより,祖語の異なった解釈や再建がなされる事態となっている(『英語語源辞典』, p. 1655).
 喉頭音理論によれば,語頭で子音の前位置の喉頭音は,Greek, Armenian, Phrygian では母音化したが,他の多くの言語では母音化せずに消失した (Fortson 57) .したがって,問題の再建された語頭の ə1 は,英語を含む多くの言語では消失し,痕跡を残していないが,ギリシア語など少数の言語では母音化して残っていることになる.例えば,Laconian Greek では人名としての énuma が残っており,予想されるとおり,語頭に e が見られる.一方,Greek ónoma は語頭に e ではなく o を示すが,これは後続音節の後舌母音に影響されて,本来の e が後舌化したものと考えられる (Pokorny 321) .Fortson (111) の解説を引用しよう.

Fortson's Explication of Reconstruction of IE

 このように,英語 name に対するギリシア語 ónoma の語頭母音を説明するには,喉頭音理論という大装置を持ち出す必要がある.しかし,喉頭音理論そのものがいまだに議論されているのであり,上記とて,あくまで1つの可能な説明としてとらえておくべきかもしれない.

 ・ 寺澤 芳雄 (編集主幹) 『英語語源辞典』 研究社,1997年.
 ・ Watkins, Calvert, ed. The American Heritage Dictionary of Indo-European Roots. 2nd Rev. ed. Boston: Houghton Mifflin, 2000.
 ・ Fortson IV, Benjamin W. Indo-European Language and Culture: An Introduction. Malden, MA: Blackwell, 2004.
 ・ Pokorny, Julius. Indogermanisches etymologisches Wörterbuch. 2 vols. Tübingen and Basel: A. Francke Verlag, 2005.

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2013-10-22 Tue

#1639. 英語 name とギリシア語 onoma (1) [etymology][indo-european][loan_word][cognate][word_family]

 10月5日付けで「素朴な疑問」に寄せられた疑問より.

Online Etymology Dictionaryでnameを調べますと、"PIE *nomn-"とあり、ほとんどの言語において"n"で始まっていますが、Greekなど一部で"n"の前に母音があるのを不思議に思いました。何か訳があるのだろうと思います。ご教示いただけるとうれしいです。


 英語 name は基礎語として,多くの印欧諸語に同族語 (cognate) がみられる.以下は,OED より同族語の例一覧である.

Cognate with Old Frisian nama, noma (West Frisian namme), Middle Dutch name, naem (Dutch naam), Old Saxon namo (Middle Low German nāme, nām), Old High German namo, nammo (Middle High German name, nam, German Name), Old Icelandic nafn, namn, Norn (Shetland) namn, Old Swedish nampn, namn (Swedish namn), Danish navn, Gothic namo, and further with Sanskrit nāman, Avestan nāman-, ancient Greek ὄνομα, classical Latin nōmen, Early Irish ainm (Irish ainm), Old Welsh anu (Welsh enw, henw), Old Church Slavonic imw (genitive imene), Russian imja (genitive imeni), Old Prussian emmens, etc.


 ゲルマン諸語,ラテン語を始めとして多くの言語で語頭の n を示す.これ以外にも Tocharian A ñom, Tocharian B ñem, Hittite lāman (先行する nāman からの語頭子音の異化により)なども,語頭 n をもつ仲間とみてよい.しかし,ギリシア語 ὄνομα を筆頭に,上記引用の後半に挙がっている数例では n の前に母音が示されている.この母音は何なのだろうか.
 この問題を考察するに先だって,name の語根ネットワークで英語語彙を広げておこう (以下,Watkins 59 より).まずは,ゲルマン祖語の namōn- から古英語の nama を経て,現代英語の基礎語 name がある.次に,ラテン語 nōmen (name, reputation) から,nominal, nominate, noun; agnomen, binomial, cognomen, denominate, ignominy, misnomer, nomenclator, nuncupative, praenomen, pronoun, renown など多くの語が英語に借用されている.そして,ギリシア語 onoma, onuma からは,onomastic, -onym, -onymy; allonym, anonymous, antonomasia, eponym, eponymous, euonymus, heteronymous, homonymous, matronymic, metonymy, onomatopoeia, paronomasia, paronymous, patronymic, pseudonym, synonymous が入っている.最後に,古アイルランド語 ainm から moniker (name (humorously)) が英語に取り込まれた.
 上記のように英単語にもギリシア語系の onoma が多く反映されているので,この最初の o が何であるのかは確かに気になるところである.『英語語源辞典』では,Gk ónomao- は語頭添加音 (prosthesis) ではないかとしているが,印欧語比較言語学ではまた別の議論が展開されている.それについては,明日の記事で.

 ・ Watkins, Calvert, ed. The American Heritage Dictionary of Indo-European Roots. 2nd Rev. ed. Boston: Houghton Mifflin, 2000.
 ・ 寺澤 芳雄 (編集主幹) 『英語語源辞典』 研究社,1997年.

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