「英語史導入企画2021」も少しずつ軌道に乗ってきて好コンテンツが上がってきているが,昨日公表された学部生による「日本人はなぜ Japanese?」も,多くの英語学習者に訴えかける素朴な疑問といってよいだろう.
国名からその国民名,国語名,形容詞を作るのに,英語にはいろいろなやり方がある.特定の接尾辞 (suffix) を付けるのが一般的だが,その接尾辞にもいろいろある.America → American,Korea → Korean があるかと思えば,Spain → Spanish, Denmark → Danish があるし,New Zealand → New Zealander,Iceland → Icelander もある.日本はなぜか Japan → Japanese となり,この点では China → Chinese, Vietnam → Vietnamese, Portugal → Portuguese と同類だが,なぜ国名によってこれほどバラバラなのかがよく分からない.英語を学ぶ誰しもが,日本語の「?人」のように統一的な言い方にしてくれれば楽なのに,と思ったことがあるだろう.
本ブログでも真正面からこの話題を取り上げたことはなかったが,それは簡単に答えられる類いの問題ではないと知っていたからだ.しかし,知りたい.なぜ英語では Japan には -ese が付されるのか.なぜ *Japanian や *Japanish ではないのか(cf. ドイツ語 Japanisch).
「日本人はなぜ Japanese?」は,この素朴でありながら難解な問いに1年間かけて挑んだゼミ学生のコンテンツである.-ese を取る国名の一覧表,その分布を示した世界地図,簡潔で軽快な文章を通じて,非常にリーダブルなコンテンツとなっている.それでいて参考文献や脚注により学術性を担保しようという姿勢も感じられる.内容については,語誌的にも歴史学的にも綿密に検証する余地はあるが,好奇心を強く誘う仮説となっている.たいへん教育的で啓発的なコンテンツ.ぜひご一読を.
このトピックに緩く関係する本ブログからの記事として,以下を参照.
・ 「#4027. 接尾辞 -ese の起源」 ([2020-05-06-1])
・ 「#4024. なぜ Japanese や Chinese などは単複同形なのですか? (1)」 ([2020-05-03-1])
・ 「#4025. なぜ Japanese や Chinese などは単複同形なのですか? (2)」 ([2020-05-04-1])
・ 「#4026. なぜ Japanese や Chinese などは単複同形なのですか? (3)」 ([2020-05-05-1])
・ 「#3023. ニホンかニッポンか」 ([2017-08-06-1])
・ 「#1774. Japan の語源」 ([2014-03-06-1])
・ 「#2979. Chibanian はラテン語?」 ([2017-06-23-1])
・ 「#3918. Chibanian (チバニアン,千葉時代)の接尾辞 -ian (1)」 ([2020-01-18-1])
・ 「#3919. Chibanian (チバニアン,千葉時代)の接尾辞 -ian (2)」 ([2020-01-19-1])
・ 「#3920. Chibanian (チバニアン,千葉時代)の接尾辞 -ian の直前の n とは?」 ([2020-01-20-1])
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