標題は「#137. 世界の言語の基本語順」 ([2009-09-11-1]) で触れた話題だが,改めて考えてみたい.語順の果たす役割の大きさは言語によって異なるとはいえ,語順という統語手段をまったく利用しない言語は存在しない.語順とは,情報伝達の経済という観点からみて必然的な言語装置である.
Greenberg は言語普遍性と関連して語順の類型論 (word order typology) を提起した.それによると,世界の言語の平叙文における主語,目的語,動詞の語順は,論理的に (1) SVO, (2) SOV, (3) VSO, (4) VOS, (5) OSV, (6) OVS の6種類が可能である.複数の語順を取り得る言語も少なくないが,非常に多くの言語において相対的に優勢な語順は決まっている.つまり基本語順というものが存在する.基本語順をもつ言語のほとんどが,主語が目的語に先行するパターン,すなわち (1), (2), (3) のいずれかを取る.ほかに (4) の言語はある程度確認されるが,(5), (6) は非常に少ないことも分かっている.
コムリー他 (19) より,それぞれの基本語順を示す言語の例を挙げよう.
基本語順 | 言語例 |
---|---|
(1) SVO | 英語,フィンランド語,中国語,スワヒリ語 |
(2) SOV | ヒンディー語/ウルドゥー語,トルコ語,日本語,朝鮮語 |
(3) VSO | 古典アラブ語,ウェールズ語,サモア語 |
(4) VOS | マダガスカル語,ツォツィル語(中央アメリカのマヤ語) |
(5) OSV | カバルド語(北コの言語)ーカサス地方 |
(6) OVS | ヒシュカリヤナ語(ブラジルのカリブ語) |
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