hellog〜英語史ブログ

#3229. 2月,February,如月[calendar][etymology][mythology][latin][dissimilation]

2018-02-28

 末日になってしまったが,月名シリーズの締めくくりとして「2月」をお届けする.
 英語 February の究極の語源は不詳だが,ラテン語で「清めの祭り」を指した februa (pl.) に由来するとされる.この祭りの起源はイタリア半島を縦走するアペニン山脈地方の原住民サビニ人にあるとされ,祭りは2月15日に行なわれたという.この februa に接尾辞を付加して februārius (mēnsis) と月名を作り,それが俗ラテン語形 *fabrāriu(m) を経由して,ロマンス諸語へと伝わった.古フランス語では feverier (現代フランス語 février)となり,これが中英語期に fever(y)er, feverel などの形で入ってきた.英語での初例は1200年頃とされる.
 fever(y)er には第2子音に b ではなくフランス語形にならった v がみられるが,これは15世紀まで用いられた.なお,feverel の語末の l は異化 (dissimilation) によるものである(cf. laurel, marble, purple; 「#72. /r/ と /l/ は間違えて当然!?」 ([2009-07-09-1]) も参照) .現在のラテン語的な b をもつ形は,英語では februarie などの綴字で14世紀末から見られ,近代にかけて v を示す綴字を置き換えていった.ただし,ラテン語形そのもの形 februārius は,実は後期古英語に取り込まれていたことを付言しておく.
 現代の February の発音については,揺れのあることが知られている.規範的には /ˈfɛbruəri/ と発音されるが, 最初の r が消えた /ˈfɛbjuəri/ もよく聞かれる.LDP3 の Preference Poll によると,若い世代のアメリカ英語では後者の発音がすでに64%に達している.イギリス英語での対応する数値は39%だが,これも決して低くない.高い世代では英米いずれでも相対的に低い値となっており,まさにこの単語における発音変化が着々と進行しているものとみてよいだろう.
 古英語本来語では solmōnaþ "mud-month" 「ぬかるみの月」と表現していた.また,日本語で陰暦2月の異称「如月(きさらぎ)」は,寒いので更に上着を着る月とも,草木の更生する「生更ぎ」の月の意ともいう.
 さて,これで月名シリーズが完成したので,以下にシリーズの各記事へのリンクを張っておこう.

 ・ 「#2910. 月名の由来」 ([2017-04-15-1])
 ・ 「#3187. 1月,January,睦月」 ([2018-01-17-1])
 ・ 「#3229. 2月,February,如月 ([2018-02-28-1])
 ・ 「#2890. 3月,March,弥生」 ([2017-03-26-1])
 ・ 「#2896. 4月,April,卯月」 ([2017-04-01-1])
 ・ 「#2939. 5月,May,皐月」 ([2017-05-14-1])
 ・ 「#2983. 6月,June,水無月」 ([2017-06-27-1])
 ・ 「#3000. 7月,July,文月」 ([2017-07-14-1])
 ・ 「#3046. 8月,August,葉月」 ([2017-08-29-1])
 ・ 「#3073. 9月,September,長月」 ([2017-09-25-1])
 ・ 「#3103. 10月,October,神無月」 ([2017-10-25-1])
 ・ 「#3167. 11月,November,霜月」 ([2017-12-28-1])
 ・ 「#3168. 12月,December,師走」 ([2017-12-29-1])

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