hellog〜英語史ブログ

#3427. 訓令式・日本式・ヘボン式のローマ字つづり対照表[japanese][writing][orthography][romaji][language_planning]

2018-09-14

 「#1879. 日本語におけるローマ字の歴史」 ([2014-06-19-1]),「#1892. 「ローマ字のつづり方」」 ([2014-07-02-1]) で見たとおり,日本語のローマ字表記は「現行の方式」「ヘボン式」「標準式」「日本式」「訓令式」などのいくつかのつづり方の間で揺れている.
 「現行の方式」は,1954年(昭和29年)12月9日に政府が「ローマ字のつづり方」として告示した「第1表」と「第2表」の二本立てである.この第1表とは次に示す「訓令式」と同一であり,第2表とは後に述べる「標準式」と,訓令式から漏れた部分を「日本式」から補ったものとから成っている.
 「ヘボン式」は,1885年(明治18年)に,チェンバレン,外山正一などによって組織された『羅馬字会』が発表した方式で,子音字を英語風に,母音字をイタリア語風に書き表す方法である.ヘボンの『和英語林集成』第3版(1886年)に採用されたため,その名がついた.
 「標準式」は,別名「改正ヘボン式」とも呼ばれるように,1908年(明治41年)に,ヘボン式から kwa, gwa, ye, wo を削除したものである.旧国鉄駅名や人名などに広く用いられている.一部が第2表に取り込まれている.
 「日本式」は,1886年(明治19年)に田中館愛橘らが羅馬字会に対抗して発表した方式で,日本語の五十音図に基づいている.一部が第2表に取り込まれている.
 「訓令式」は,1937年(昭和12年)9月21日に「国語ローマ字綴リ方ニ関スル件」の訓令で示された日本式の変種であり,そのまま第1表となっている.
 以下に,訓令式を基準とした訓令式・日本式・ヘボン式の対照表を示そう.日本式は青字 [ ] (特定の語に用いられるものには * を付す),ヘボン式は赤字イタリック体で示した.

ア行 aiueo    
カ行 kakikukeko kyakyukyo
  [kwa]*        
サ行 sasisuseso syasyusyo
   shi    shashusho
タ行 tatituteto tyatyutyo
   chitsu   chachucho
ナ行 naninuneno nyanyunyo
ハ行 hahihuheho hyahyuhyo
    fu      
マ行 mamimumemo myamyumyo
ヤ行 ya yu yo    
ラ行 rarirurero ryaryuryo
ワ行 wa   [wo]*    
           
ガ行 gagigugego gyagyugyo
  [gwa]*        
ザ行 zazizuzezo zyazyuzyo
   ji    jajujo
ダ行 dazizudedo zyazyuzyo
   [di][du]   [dya][dyu][dyo]
   ji    jajujo
バ行 babibubebo byabyubyo
パ行 papipupepo pyapyupyo


 以上,『日本語百科大事典』 (pp. 348--51) に依拠した.

 ・ 『日本語百科大事典』 金田一 春彦ほか 編,大修館,1988年.

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