昨日と今日の2日間,私の Voicy の番組 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」で古英語(期)の超入門をお届けしています.10分×2回の短いものです.現代の英語は知っているけれども古い英語はまったく初めて,という多くの方々に向けて,古英語期とはどんな時代なのか,古英語とはどんな言語なのかについて,おしゃべりしています.
1本目の「古英語期ってどんな時代?」では,英語の始まりから説き起こして,英語の歴史の時代区分,そして古英語期といわれる5?12世紀のイングランドについて,駆け足で独りごちました.
2本目の「対談 『毎日古英語』のまさにゃんと,古英語ってどんな言語?」では,日本初の古英語系 YouTuber であるまさにゃんとインフォーマルな対談を通じて,古英語という言語の特徴を紹介しました.
ちなみに,最近まさにゃんは「まさにゃんチャンネル」にて,シリーズ「毎日古英語」を精力的に展開しています.今回の heldio 対談は古英語の超入門のみで終わっていますので,関心をもった方はぜひ「毎日古英語」で具体的な古英語にテキストに触れてみてください.なお,本ブログでも1年半ほど前に「#4005. オンラインの「まさにゃんチャンネル」 --- 英語史の観点から英単語を学ぶ」 ([2020-04-14-1]) で紹介しています.
昨日の記事「#4557. 「英語史への招待:入門書10選」」 ([2021-10-18-1]) で,明治学院大学で英語史の授業を担当している泉類尚貴氏による推薦書を紹介させていただきました.その中で7番目の書籍である鳥飼玖美子(著)『国際共通語としての英語』(講談社現代新書,2011年)が意外性をもって受け取られるかもしれません.タイトルからは確かに英語を巡る重要な問題であることは分かるのですが,英語史とどのように関わるのかという疑問が浮かぶのではないでしょうか.この点を確認すべく,昨日に引き続き「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて同氏と対談しました.「対談 英語史×国際英語」というお題です.以下よりどうぞ.
英語史の領域では近年,世界英語 (world_englishes) への関心が急上昇しています.私自身も食らいついていかなければと思い,にわか勉強を始めているわけですが,急激なオンライン・リソースの拡大も相まって,すでに分野を一望するのも難しい水準にまで膨張しています.関心はあってもどこから始めたらよいかと迷うのも無理もありません.
私のお勧め図書としては,唐澤一友(著)『世界の英語ができるまで』(亜紀書房,2016年)を挙げておきます.本ブログでも world_englishes や model_of_englishes にて関連する記事を多く書いてきましたが,比較的最近書いた記事をピックアップすると,次のようなラインアップになります.
・ 「#4531. 「World Englishes 入門」スライド --- オンラインゼミ合宿の2日目の講義より」 ([2021-09-22-1])
・ 「#4466. World Englishes への6つのアプローチ」 ([2021-07-19-1])
・ 「#4506. World Englishes の全体的傾向3点」 ([2021-08-28-1])
・ 「#4507. World Englishes の類型論への2つのアプローチ」 ([2021-08-29-1])
・ 「#4508. World Englishes のコーパス研究の未来」 ([2021-08-30-1])
・ 「#4169. GloWbE --- Corpus of Global Web-Based English」 ([2020-09-25-1])
・ 「#4492. 世界の英語変種の整理法 --- Gupta の5タイプ」 ([2021-08-14-1])
・ 「#4493. 世界の英語変種の整理法 --- Mesthrie and Bhatt の12タイプ」 ([2021-08-15-1])
・ 「#4501. 世界の英語変種の整理法 --- McArthur の "Hub-and-Spokes" モデル」 ([2021-08-23-1])
・ 「#4502. 世界の英語変種の整理法 --- Görlach の "Hub-and-Spokes" モデル」 ([2021-08-24-1])
世界英語を扱うオンライン・コーパスとしては,上にも触れた GloWbE (= Corpus of Global Web-Based English) を入り口としてお勧めします.このコーパスについては,専修大学文学部英語英米語学科の菊地翔太先生のHPより,こちらのページに関連情報があります.ちなみに菊地翔太先生のHPを探検し紹介するコンテンツ「菊地先生のホームページを訪れてみよう 」を大学院生が作ってくれましたので,こちらもお勧めしておきます.
昨日,青山英語史研究会(青山学院大学・寺澤盾先生主催)がオンラインで開催されました.「研究会」とはいうものの,今回は英語史を学ぶ大学生を主たるオーディエンスとして想定し,英語史の学びをエンカレッジする様々な企画が組まれました.私も参加させていただきましたが,たいへん実りの多い会となりました.ありがとうございます.
プログラムの1つとして,明治学院大学で英語史の授業を担当している泉類尚貴氏による「英語史への招待:入門書10選」が紹介されました.氏の許可を得て,そのリスト(実際にはオマケ付きで11冊)を以下に掲載します.氏によると,この順序で手に取ってみることをお勧めするとのことです.
ちなみに泉類氏とは,本日の「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて同じ話題で対談していますので,こちらも是非お聴きください.推薦書リストというものは,選者による簡単な解説があるだけでも説得力が増しますね.
・ 寺澤 盾 『英語の歴史:過去から未来への物語』 中公新書,2008年.
・ 家入 葉子 『ベーシック英語史』 ひつじ書房,2007年.
・ 堀田 隆一 『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史』 研究社,2016年.
・ 唐澤 一友 『英語のルーツ』 春風社,2011年.
・ 唐澤 一友 『世界の英語ができるまで』 亜紀書房,2016年.
・ 寺澤 盾 『聖書でたどる英語の歴史』 大修館書店,2013年.
・ 鳥飼 玖美子 『国際共通語としての英語』 講談社現代新書,2011年.
・ 西村 秀夫 編 『コーパスと英語史』 ひつじ書房,2019年.
・ 高田 博行・渋谷 勝巳・家入 葉子(編著) 『歴史社会言語学入門』 大修館書店,2015年.
・ Baugh, A. C. and T. Cable. A History of the English Language. 6th ed. Routledge, 2013.
・ Crystal, D. The Cambridge Encyclopedia of the English Language. 3rd ed. CUP, 2018.
番外編として,参考になるウェブサイトということで以下の4点も紹介されました.
・ TED Ed
・ YouTube 「まさにゃんチャンネル」
・ 「hellog?英語史ブログ」
・ khelf (= Keio History of the English Language Forum)
以上,英語史の学びのエンカレッジでした.昨日の記事「#4556. 英語史の世界にようこそ」 ([2021-10-17-1]) も合わせてどうぞ.
学期の始めなので,標題のような「英語史の学びのエンカレッジ系」の記事が多くなります.最近では「#4546. 新学期の始まりに,英語史の学び方」 ([2021-10-07-1]) も書いており,本ブログの記事などに関連するリンクを多々張っていますので,詳しくは是非そちらもご覧ください.今回は先の記事から重要な6点のみピックアップし,改めて英語史への入り口を案内します.
(1) 私(堀田隆一)の考える「英語史の魅力」はズバリこれ.
1. 英語の見方が180度変わる!
2. 英語と歴史(社会科)がミックスした不思議な感覚の科目!
3. 素朴な疑問こそがおもしろい!
4. 英語が本当によく分かるようになる!
(2) 上記の「素朴な疑問こそがおもしろい!」は本当です.「#1093. 英語に関する素朴な疑問を募集」 ([2012-04-24-1]) に挙げたような疑問が,英語史によりスルスルと解けていきます.それでも足りない方は「#4389. 英語に関する素朴な疑問を2685件集めました」 ([2021-05-03-1]) でどうでしょう!
(3) 本ブログ「hellog?英語史ブログ」は「英語史に関する話題を広く長く提供し続けるブログ」として2009年5月1日に立ち上げたものです.大学の英語史概説の講義に対する補助的な読み物を提供する趣旨で始めました.日々の記事の種類は多岐にわたり,英語を学び始めたばかりの中学生などを読者と想定した話題もあれば,大学院博士課程の学生を念頭においた学術的な話題もあります.書き手以外何を言っているか分からないという話題も少なくないと思います,失礼! それでも,ぜひ毎日タイトルだけでも目を通していれば,英語史のカバーする範囲の広さが分かってくると思います.毎日タイトルをお届けするツイッターアカウントもあります.
(4) 本ブログの姉妹版・音声版として「hellog ラジオ版 (hellog-radio)」(2020年6月23日?2021年2月7日に不定期で),および続編である「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」(2021年6月2日より現在まで毎日定期的に)を配信しています.hellog に比べ,話題は「英語に関する素朴な疑問」におよそ特化しています.各放送は10分以内の短い英語史ネタです.ぜひこれを聞くことを日課にどうぞ! ちなみに本日の放送では,上記 (1) を熱く語っています.
去る7月に,ちくま新書より井上逸兵(著)『英語の思考法 ー 話すための文法・文化レッスン』が出版されました.著者は私の慶應義塾大学文学部英米文学専攻の同僚です(井上さん,ご献本いただきましてありがとうございます!).
著者の井上氏には本日,私が6月から放送している「英語の語源が身につくラジオ」(heldio) に特別ゲストとして出演していただいています(←同僚としての役得に甘えました).新書についてのおしゃべりです.10分×2本の収録となっていますので,2本目もお聞き逃しなく! しかも,2本目の最後は5秒ほど時間が足りなくてお尻が切れています(泣).
日本語(文化)には厄介なタテマエとホンネがありハッキリとものを言いにくいのに対して,英語(文化)ではそういうものがないのでハッキリ主張することが好ましい.これは,日本人の英語学習者の多くが感じていることではないでしょうか.しかし,井上氏が本書で軽妙なオヤジギャグと豊富な用例により次々と明らかにしていくのは,そうではないということです.英語(文化)にもタテマエとホンネはちゃんとある.ただし,日本語(文化)のそれとは違った形で存在している,ということです.
では,どう違っているのかといえば,英語(文化)の基盤には「独立」「つながり」「対等」への志向があるということです.「個人として対等な関係を保ちながらつながりを求める」のが英語流ということですね.個性や独立心が比較的弱く,上下関係のつながりを重視する伝統的な日本語(文化)の発想とは,確かに大きく異なります.
私が英語史の観点から抱いた関心は,英語的な「独立」「つながり」「対等」への志向は,いつ生まれたのだろうかということです.中世まではさほど強くなかったように思われるからです.おそらく近代に入ってからではないかと.社会的上下関係を内包する2人称代名詞の you/thou の区別が解消していくのも,近代期(17世紀以降)だった事実が思い出されます.
本書の中心テーマは日英語文化比較やポライトネスといったところだと思いますが,英語学研究者としての著者の真骨頂は,副題の「文法・文化レッスン」に現われているように思われます.文法という言語学的な堅い代物にも,その担い手の社会に特有の文化や思考回路が色濃く反映されているのだという点です.
一方,本書はすぐに使える英語の用例が豊富で,実用書的に読むこともできます.実際,私も英語を話したり書いたりするときに,早速いくつかの語法を活用しています.You lost me. とか Let me share with you . . . . とか.ですが,褒められたときに Can you tell my wife that? と返すのは,私には歯が浮いて言えなさそうです.
笑いながら読める英語本です.ぜひご一読ください.
・ 井上 逸兵 『英語の思考法 ー 話すための文法・文化レッスン』 筑摩書房〈ちくま新書〉,2021年.
一昨日,音声配信プラットフォーム Voicy にて「英語の語源が身につくラジオ」と題するチャンネルをオープンしました.本ブログとも部分的に連携しつつ,英語史に関するコンテンツを広くお届けする試みとして始めました.一昨日,昨日と,10分弱の音声コンテンツを2本配信していますので,そちらをご案内します.
1. 「なぜ A pen なのに AN apple なの?」
2. 「flower (花)と flour (小麦粉)は同語源!」
チャンネル設立の趣旨は,Voicy 公式ページに掲載していますが,以下の通りです.
英語の歴史を研究しています,慶應義塾大学の堀田隆一(ほったりゅういち)です.このチャンネルでは,英語に関する素朴な疑問を入口として,リスナーの皆さんを広く深い英語史の世界に招待します.とりわけ語源の話題が満載です.
英語史と聞くと難しそう!と思うかもしれませんが,心配いりません.実は皆さんが英語に対して日常的に抱いているナゼに易しく答えてくれる頼もしい味方なのです.
なぜアルファベットは26文字なの? なぜ man の複数形は men なの? なぜ3単現の s なんてあるの? なぜ go の過去形は went なの? なぜ英語はこんなに世界中で使われているの?
英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も教えてくれなかった数々の謎が,スルスルと解決していく快感を味わってください.ついでに,英語の豆知識を得るにとどまらず,言葉の新しい見方にも気づくことになると思います.
本チャンネルと同じような趣旨で,毎日「hellog?英語史ブログ」を更新しています.合わせてご覧ください.なおハッシュタグの #heldio は,"The History of the English Language Radio" にちなみます.
基本的には,これまで私が本ブログ,著書,雑誌記事,大学教育,公開講座などで一貫して行なってきた「英語史の魅力を伝える」という活動の延長です.メディア,オーディエンス,スタイルは変わるかもしれませんが,この方針は変わりません.
チャンネル設立の背景について,もう少し述べておきたいと思います.昨年度,大学などでオンライン初年度となったことと関連して,通常の文章によるブログ記事の配信に加えて,音声版記事を「hellog ラジオ版」として配信する試みを始めました.主として英語に関する素朴な疑問に答えるという趣旨で,学期中は定期的に,学期外はやや不定期ですが継続してきました.結果として,数分から10分程度の長さの音声コンテンツが62本蓄積されました.
学生などから様々なフィードバックをもらって分かったことは,発音に関するトピックは音声コンテンツのほうが伝わりやすいということです.当たり前といえば当たり前の話しですが,私はナルホドと深くうなずきました.私自身は英語の綴字と発音の関係に大きな関心を寄せており,音声の話題はよく取り上げるのですが,文章ブログでは発音を発音記号で表現しなければならず,実際に口で発音すればすぐに伝わるものが容易に伝わらないもどかしさを,どこかで感じていました.そのような折に,試しに音声コンテンツを作ってみたら,発音の話題と相性が良いという当たり前のことに改めて気づいた次第です.逆に音声メディアでは綴字については語りにくいという側面もあり,一長一短ではあるのですが,従来の文章ベースの本ブログと平行して,音声ベースのブログがあるとよいと考えました.
昨年度は手弁当で「hellog ラジオ版」を作ってきましたが,昨今ウェブ上で音声配信プラットフォームが充実してきているという流れを受け,収録・配信の便を念頭に Voicy を通じて配信することに致しました.
本「hellog?英語史ブログ」では,高度に専門的な話題から中学生も読める話題まで,日々気の向くままに様々なレベルで書いているのですが,音声コンテンツとなると「素朴な疑問」系の話題や単語の語源に関する話題が多くなるかと思います.今後具体的にどのような感じになっていくのかは私も分からないのですが,基本方針としては「英語史に関する話題を広く長く提供し続ける」趣旨で,本ブログの姉妹版のような位置づけとなっていけばよいなと思っています.通称/ハッシュタグを「#heldio」 (= "The History of the English Language Radio") としたのも,本ブログとの連携を念頭に置いた上での命名です.
今後とも,本「hellog?英語史ブログ」と合わせて,「英語の語源が身につくラジオ」のほうもよろしくお願い申し上げます.
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