hellog〜英語史ブログ

#3385. 中英語に弱強移行した動詞[me][verb][conjugation][inflection][tense][preterite][participle]

2018-08-03

 動詞の「強弱移行」の過程は,英語の形態論の歴史においてメジャーな話題である.これについて,「#178. 動詞の規則活用化の略歴」 ([2009-10-22-1]) ,「#527. 不規則変化動詞の規則化の速度は頻度指標の2乗に反比例する?」 ([2010-10-06-1]) ,「#528. 次に規則化する動詞は wed !?」 ([2010-10-07-1]),「#764. 現代英語動詞活用の3つの分類法」 ([2011-05-31-1]),「#1287. 動詞の強弱移行と頻度」 ([2012-11-04-1]) などで取り上げてきた.
 しかし,この大きな潮流に逆らう小さな逆流,すなわち「弱強移行」の事例もしばしば指摘されてきた.イギリス英語の dive -- dived (-- dived) に対するアメリカ英語の dive -- dove (-- dived) の例がよく知られているが,歴史的にはその他の例も散見される.
 たとえば,Wełna (425) によれば,中英語期に弱強移行し,今なお過去形か過去分詞形において強変化(不規則)形が用いられ続けているものとして,次のような例があるという(中英語の語形で挙げる).

INFINITIVEPASTPAST PARTICIPLE
chidechidde, chōdechidden
ringringde, rongen (PL)runge
sawesawed, sewsawid, sown
sewsowedsewed, sowen
shew, showshowedshowed, showen
styckestiked, stackesticked, stōken
weerwēred, wōrewēred, worn


 ほかにも,強変化形としては現代まで生き延びなかったものの,中英語期に短期的に弱強移行した経験のある動詞はいくつかあったようだ.珍しい例としては,通常は間違いなく弱変化動詞となるはずのフランス借用語が,過去形において弱変化形のみならず強変化形を取るようになった strive -- strōve/strīved がある.
 主流派に抵抗するこのような反乱分子の存在は,言語史において最も興味深い話題の1つである.

 ・ Wełna, Jerzy. "Middle English: Morphology." Chapter 27 of English Historical Linguistics: An International Handbook. 2 vols. Ed. Alexander Bergs and Laurel J. Brinton. Berlin: Mouton de Gruyter, 2012. 415--34.

Referrer (Inside): [2018-11-16-1]

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