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historiography - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2022-12-09 15:40

2014-07-29 Tue

#1919. 英語の拡散に関わる4つの crossings [history][irish][ireland][standardisation][linguistic_imperialism][ame][new_englishes][bilingualism][historiography][model_of_englishes][esl][efl][elf]

 Mesthrie and Rakesh (12--17) に,"INTEGRATING NEW ENGLISHES INTO THE HISTORY OF THE ENGLISH LANGUAGE COMPLEX" と題する章があり,World Englishes あるいは New Englishes という現代的な視点からの英語史のとらえ方が示されており,感心した.
 英語の拡散は,有史以前から現在まで,4つの crossings により進行してきたという.第1の crossing は,5世紀半ばに北西ゲルマン民族がブリテン島に渡ってきた,かの移住・侵略を指す.この段階から,ポストコロニアルあるいはポストモダンを想起させるような複数の英語変種,多言語状態,言語接触がすでに存在していた.複数の英語変種としては,アングル族,サクソン族,ジュート族などの間に民族変種の区別が移住の当初からあったろうし,移住後も地域変種や社会変種の発達がみられたろう.多言語状態および言語接触としては,基層言語としてのケルト語の影響,上層言語としてのラテン語との接触,傍層言語としての古ノルド語との混交などが指摘される.後期ウェストサクソン方言にあっては,1000年頃に英語史上初めて書き言葉の標準が発展したが,これは続くノルマン征服により衰退した.この衰退は,英語標準変種の "the first decline" と呼べるだろう (13) .
 第2の crossing は,中英語期の1164年に Henry II がアイルランドを征服した際の,英語の拡散を指す.このとき英語がアイルランドへ移植されかけたが,結果としては定着することはなかった.むしろ,イングランドからの植民者はアイルランドへ同化してゆき,英語も失われた.詳しくは「#1715. Ireland における英語の歴史」 ([2014-01-06-1]) を参照されたい.
 後期中英語から初期近代英語にかけて,英語史上2度目の書き言葉の標準化の動きが南イングランドにおいて生じた.この南イングランド発の標準変種は,それ以降,現在に至るまで,英語世界において特権的な地位を享受してきたが,20世紀に入ってからのアメリカ変種の発展により,また20世紀後半よりみられるようになったこれら標準変種から逸脱する傾向を示す世界変種の成長により,従来の特権的な地位は相対的に下がってきている.この地位の低下は,南イングランドの観点からみれば,英語標準変種の "a second decline" (16) と呼べるだろう.ただし,"a second decline" においては,"the first decline" のときのように標準変種そのものが死に絶えたわけではないことに注意したい.それはあくまで存在し続けており,アメリカ変種やその他の世界変種との間で相対的に地位が低下してきたというにすぎない.
 一方で,近代英語期以降は,西欧列強による世界各地の植民地支配が進展していた.英語の拡散については「#1700. イギリス発の英語の拡散の年表」 ([2013-12-22-1]) をはじめとして,本ブログでも多く取り上げてきたが,英語はこのイギリス(とアメリカ)の掲げる植民地主義および帝国主義のもとで,世界中へ離散することになった.この離散には,母語としての英語変種がその話者とともに移植された場合 ("colonies of settlement") もあれば,経済的搾取を目的とする植民地支配において英語が第2言語として習得された場合 ("colonies of exploitation") もあった.前者は the United States, Canada, Australia, New Zealand, South Africa, St. Helena, the Falklands などのいわゆる ENL 地域,後者はアフリカやアジアのいわゆる ESL 地域に対応する(「#177. ENL, ESL, EFL の地域のリスト」 ([2009-10-21-1]) および「#409. 植民地化の様式でみる World Englishes の分類」 ([2010-06-10-1]) を参照).英米の植民地支配は被っていないが保護領としての地位を経験した Botswana, Lesotho, Swaziland, Egypt, Saudi Arabia, Iraq などでは,ESL と EFL の中間的な英語変種がみられる.また,20世紀以降は英米の植民地支配の歴史を直接的には経験していなくとも,日本,中国,ロシアをはじめ世界各地で,EFL あるいは ELF としての英語変種が広く学ばれている.ここでは,英語母語話者の人口移動を必ずしも伴わない,英語の第4の crossing が起こっているとみることができる.つまり,英語史上初めて,英語という言語がその母語話者の大量の移動を伴わずに拡散しているのだ.
 英語史上の4つの crossings にはそれぞれ性質に違いがみられるが,とりわけポストモダンの第4の crossing を意識した上で,過去の crossings を振り返ると,英語史記述のための新たな洞察が得られるのではないか.この視座は,イギリス史の帝国主義史観とも相通じるところがある.

 ・ Mesthrie, Rajend and Rakesh M. Bhatt. World Englishes: The Study of New Linguistic Varieties. Cambridge: CUP, 2008.

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2014-01-13 Mon

#1722. Pisani 曰く「言語は大河である」 [wave_theory][family_tree][language_change][historiography][neolinguistics]

 「#1578. 言語は何に喩えられてきたか」 ([2013-08-22-1]) や「#1579. 「言語は植物である」の比喩」 ([2013-08-23-1]) の記事ほかで,「言語は○○である」の比喩を考察した.言語を川に喩える謂いは「#449. Vendryes 曰く「言語は川である」」 ([2010-07-20-1]) で紹介したが,Vendryes とは異なる意味で言語を川(というよりは大河)に喩えている言語学者がいるので紹介したい.昨日の記事「#1721. 2つの言語の類縁性とは何か?」 ([2014-01-12-1]) で導入した Pisani である.
 Pisani は,系統樹モデルでいう継承と波状モデルでいう借用とのあいだに有意義な区別を認めず,両者を言語的革新 (créations) として統合しようとした.この区別をとっぱらうことで木と波のイメージをも統合し,新たなイメージとして大河 (fleuve) が浮かんできた.支流どうしが複雑に合流と分岐を繰り返し,時間に沿ってひたすら流れ続ける大河である.

À vrai dire, le terme de parenté, avec les images qu'il reveille, porte à une vision erronée comme l'autre, qui y est connexée, de l'arbre généalogique. Une image beaucoup plus correspondante à la réalité des faits linguistiques pourrait être suggérée par un système hydrique compliqué: un fleuve qui rassemble l'eau de torrents et ruisseaux, à un certain moment se mêle avec un autre fleuve, puis se bifurque, chacun des deux bras continue à son tour à se mêler avec d'autres cours d'eau, peut-être aussi avec un ou plusieurs dérivés de son compagnon, il se forme des lacs dont de nouveaux fleuves se départent, et ainsi de suite. (13)


 この大河の部分部分は○○水系や○○河と呼ばれる得るが,○○水系や○○河の始まりがどこなのか,別の水系や河との境はどこなのかという問いに答えることはできない.同じことが大河に喩えられた言語にもいえる.言語という複雑な一大水系のなかで,どの部分がゲルマン系と呼ばれるのか,どの部分が英語と呼ばれるのかを答えることはできない.せいぜいできることといえば,およその部分に便宜的にそれらのラベルを貼ることぐらいだろう.そのように考えると,英語史記述というのも,迷路のような支流群のなかから,ある特定の川筋を鉛筆でたどり,「はい,この線が英語(史)ですよ」と言っているに等しいことになる.

 ・ Pisani, Vittore. "Parenté linguistique." Lingua 3 (1952): 3--16.

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2013-12-06 Fri

#1684. 規範文法と記述文法 [prescriptive_grammar][hel][historiography]

 標題は「#747. 記述規範」 ([2011-05-14-1]) でも取り上げた話題だが,きわめて重要な区別なので改めて話題にしたい.規範文法 (prescriptive grammar) と記述文法 (descriptive grammar) は,Crystal (230--31) によれば,次のように説明される.

A prescriptive grammar is essentially a manual that focuses on constructions where usage is divided, and lays down rules governing the socially correct use of language. These grammars were a formative influence on language attitudes in Europe and America during the 18th and 19th centuries. Their influence lives on in the handbooks of usage widely found today, such as A Dictionary of Modern English Usage (1926) by Henry Watson Fowler (1858--1933), though such books include recommendations about the use of pronunciation, spelling, and vocabulary, as well as grammar.


A descriptive grammar describes the form, meaning, and use of grammatical units and constructions in a language, without making any evaluative judgements about their standing in society. These grammars became commonplace in 20th-century linguistics, where it was standard practice to investigate a corpus of spoken or written material, and to describe in detail the patterns it contains.


 さらに,記述文法が包括的になると「参考文法」というカテゴリーに移行するという指摘がある.これは規範主義的な目的で参照されることもあるため,そのような場合には,規範と記述の中間点にあるともいえる.
 

When a descriptive grammar acts as a reference guide to all patterns of usage in a language, it is often called a reference grammar. An example is A Comprehensive Grammar of the English Language (1985) by Randolph Quirk (1920--) and his associates. Such grammars are not primarily pedagogical in intent, as their aim --- like that of a 'reference lexicon', or unabridged dictionary --- is to be as comprehensive as possible. They provide a sourcebook of data from which writers of pedagogical grammars can draw their material.


 「文法」を語る場合には,いずれの意味の文法かを常に区別しておく必要がある.ただし,規範と記述は,概念上は峻別すべきだが,個人のなかで同居しうることにも注意したい.
 言語学者は記述を規範に優先させるのが原則であり,その原則に異存はないが,規範がいかにして生じ,育ち,根付くかという問題は社会言語学の最重要テーマの1つであり,規範それ自体が記述対象になりうるということは忘れてはならない.「英語史」という分野は,狭い意味では記述英語文法の歴史に限定されるが,広い意味では規範英語文法の歴史をも含む.後者は「英語学史」という分野に入れられることが多いが,規範と記述が相互乗り入れを許容するものであるとするならば,初めから広い意味での「英語史」を前提とし,志向するのが適切のように思われる.

 ・ Crystal, David. How Language Works. London: Penguin, 2005.

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2013-06-30 Sun

#1525. 日本語史の時代区分 [periodisation][historiography][timeline][japanese]

 昨日の記事「#1524. 英語史の時代区分」 ([2013-06-29-1]) を受けて,今日は日本語史の時代区分を示す.日本語についても,細かい時代区分は研究者の数だけあるといって過言ではないが,そのうち2つの時代区分の例を示したい.1つ目は『日本語概説』 (pp. 282--83) に示されている時代区分をもとにしたもの.フラットに区分と名称が与えられている.

1.古代B.C. 13000 ? A.D. 600縄文・弥生・古墳時代
2.上代600 ? 784飛鳥・奈良時代 約200年間
3.中古784 ? 1184平安・院政時代 約400年間
4.中世1184 ? 1603鎌倉・室町時代 約400年間
5.近世1603 ? 1867江戸時代 約300年間
6.近代1868 ? 1945明治・大正・昭和前半時代 約80年間
7.現代1946 ?昭和後半・平成時代 約70年間


 次に,『概説 日本語の歴史』 (p. 14) の表をもとにしたものを掲げる.

IIIIIIIVV
古代古代上代上代奈良時代とそれ以前
中古中古平安時代
中世中世前期中世前期院政・鎌倉時代
近代中世後期中世後期室町時代
近代近世近世前期江戸時代前期
近世後期江戸時代後期
現代現代明治以降


 ここでは,階層上に入り組んだ区分と名称が用いられている.最も大雑把には I のレベルの区分により古代と近代が区別されるが,一般的には III や IV のレベルの区分と名称が用いられることが多い.
 日本史の時代区分を2例ほど挙げたが,相互に時代の呼称が入り乱れていることからも推察されるように,時代区分はその研究者の言語史観を如実に表わすものとして研究上重要な意味をもつが,一方で参照ポイントとしてはあくまで便宜的なものにすぎないことに注意されたい.

 ・ 加藤 彰彦,佐治 圭三,森田 良行 編 『日本語概説』 おうふう,1989年.
 ・ 佐藤 武義 編著 『概説 日本語の歴史』 朝倉書店,1995年.

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2013-06-29 Sat

#1524. 英語史の時代区分 [periodisation][historiography][timeline]

 標記の話題は periodisation の各記事で様々に扱ってきた.また,timeline の各記事で種々の英語史年表を掲げてきた.英語史に関するブログなので,古英語,中英語,近代英語,現代英語など,各時代の呼称や範囲に関する知識は前提としてきたが,一応の解説は施しておくほうがよいと思ったので以下に記す.
 個別言語史の時代区分は言語そのものと同様に揺れ動くものであり,これぞ決定版というものはない.実際,研究者の数だけあるといっても大げさではないほどだ.英語史や日本語史も例外ではない.だが,研究者間で緩やかな合意があることは確かであり,時代間の区切り目の年代が一致しないなど細部の相違はあるものの,互いに「翻訳」可能なので実際上の大きな問題は生じない.以下に挙げるのは,厳密さを期さない,区切り年代を分かりやすく取った英語史時代区分だが,比較的広く受け入れられているものの1つではある.参考のために古英語より前の時代も含めてある.すべての年代を表わす数字に circa (およそ)を補って理解されたい.細かいことを言い始めるときりがないので,ひとまずはこの辺りで.

始源印欧語 (Proto-Indo-European)  -- 4000 BC
始源ゲルマン語 (Proto-Germanic)  4000 BC -- 500 BC
始源古英語 (Proto-Old English)  500 BC -- 450
古英語 (Old English)前古英語 (Pre-Old English)450 -- 700450 -- 1100
初期古英語 (Early Old English)700 -- 900
後期古英語 (Late Old English)900 -- 1100
中英語 (Middle English)初期中英語 (Early Middle English)1100--13001100 -- 1500
後期中英語 (Late Middle English)1300--1500
近代英語 (Modern English)初期近代英語 (Early Modern English)1500--17001500 -- 1900
後期近代英語 (Late Modern English)1700--1900
現代英語 (Present-Day English)  1900 --

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2013-03-27 Wed

#1430. 英語史が近代英語期で止まってしまったかのように見える理由 (2) [historiography][emode][language_change][variety][variation][new_englishes]

 「#339. 英語史が近代英語期で止まってしまったかのように見える理由」 ([2010-04-01-1]) や 「#386. 現代英語に起こっている変化は大きいか小さいか」 ([2010-05-18-1]) に引き続いての話題.この問題について,Knowles にも関連する言及を見つけた.

The fixing of the language can give the superficial impression that the history of English came to an end some time towards the end of the eighteenth century. It is true that there has been little subsequent change in the forms of the standard language, at least in the written standard language. There have been substantial changes in non-standard spoken English. In any case what were actually fixed were the forms of Standard English. The way these forms have been used in different social situations has continued to change. (136)


 (特に書き言葉の)現代標準英語を到達点としてとらえる伝統的な主流派英語史の観点からは,確かに近代英語期に突入して以来,言語的にみて劇的な変化はないとも言いうるかもしれない.しかし,これは現代標準英語という1変種のみに焦点を当てた,偏った見方だろう.なるほど,この変種は現代世界においてきわめて重要で,最も注目度の高い変種であることは疑い得ない.しかし,英語が過去にも,現在にも,そして未来にわたっても決して一枚岩ではなく,多変種の緩やかな連合体であることを考えれば,理想的な英語史もまた,それら諸変種の歴史の総合であるはずである.後者の variationist な英語史の観点からは,歴史が近代英語期で止まったと言うことは決してできない.地域方言にせよその他の社会方言にせよ,標準英語がここ数世紀の間に経験していない種類や規模の変化を経ている変種はあるし,"New Englishes" や種々のピジン英語のように,近代英語期に新たに生じた変種もある.
 標題で「止まってしまったかのように見える理由」と述べているのは,Standard English 偏重の英語観に立てばそのように見えてしまうということを強調するためである.そこから脇道にそれてみれば,必ずしも「英語史が近代英語期で止まってしまったかのように見え」ないかもしれないのである.
 実際には,非主流派の観点から英語史を眺めるという機会は研究者にもなかなかないことではある.しかし,標準英語の歴史を読んだり書いたりする際には,単なる1変種へのバイアスの事実を自覚しておく必要はあるだろう.この観点からの英語史としては,Crystal がお薦めである.

 ・ Knowles, Gerry. A Cultural History of the English Language. London: Arnold, 1997.
 ・ Crystal, David. The Stories of English. London: Penguin, 2005.

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2013-03-16 Sat

#1419. 橋本版,英語史略年表 [timeline][history][historiography]

 timeline の各記事で書きためてきた英語史年表シリーズに,『英語史入門』から橋本版の略年表 (216) を加えたい.英語史の最重要事項に絞られているが,右2列に日本史の流れが合わせて示されており有用.

55--54 BCシーザー英国征服失敗

43 ADクローディアス英国征服

410ローマ兵士本国に引き揚げる

c405ラテン語訳聖書 (The Vulgate) 翻訳完成

432St. Patrick がアイルランドで布教開始

449Angle, Saxon, Jute の英国侵入開始538仏教伝来
c563St. Columba がスコットランドで布教開始(北から南下するアイリッシュ・キリスト教)

597St. Augustine ケントで布教開始(南から北上するローマ・カトリック教)604十七条の憲法制定


645大化の改新
664Whitby 宗教会議(キリスト教2派の対立を収拾するための宗教会議)672壬申の乱
c680Beowulf 絎????

c700最古の英語の文献現れる708和同開珎の鋳造


710--94奈良朝
735Bede 死す712『古事記』
787Viking の英国侵入開始720『日本書紀』
871Alfred 大王が Wessex 国王に就任794--1192平安朝
886デーン・ロー (Danelaw) のとり決め(アングロ・サクソン人とヴァイキングの居住区域の協定)797『続日本紀』


c900『竹取物語』
1016--42ヴァイキングの王カヌートが英国の王に就任(ヴァイキングの言葉が公用語になる)c1000『枕草子』


c1010『源氏物語』


c1059『更級日記』
1066ノーマン・コンクエスト(ヴァイキングの子孫でフランス国王の公爵ノルマンディー公が英国の王に就任.英国の公用語がフランス語になる)c1120『今昔物語』
1171Henry II がアイルランド侵攻1192--1333鎌倉時代
1337--1453100年戦争 (Hundred Years' War)c1219『平家物語』
1348--50黒死病 (Black Death)c1330『徒然草』


1336--1392南北朝時代
1362議会で英語を使用1336--1573室町時代
1367Edward 黒太子スペイン遠征c1371『太平記』
1343--1400Geoffrey Chaucer1397金閣寺の建立
1381農民一揆 (Peasants' Revolt)

1384Wycliffe が新約・旧約聖書・外典を完訳

1400--大母音推移 (the Great Vowel Shift)c1402世阿弥『花伝書』
1476Caxton が印刷機械を英国に導入1489銀閣寺の建立
1534英国国教会 (Church of England)1543鉄砲伝来
1558カレー喪失,Elizabeth I 即位1549キリスト教伝来
1565--1616William Shakespeare1590秀吉の全国統一
1607最初のアメリカ大陸入植1603--1867江戸時代
1611『欽定訳聖書』1612キリスト教禁止令
1620メイフラワー号で清教徒プリマス入植1639鎖国令
1642--49Charles I が議会と戦争 (Civil War)

1649Charles I 処刑,共和国成立1682『好色一代男』
1755Samuel Johnson が英語辞書出版1782--87天明の大飢饉
1884--1928the Oxford English Dictionary (旧名:the New English Dictionary)出版1868--1912明治時代
1899--1861Ernest Hemingway1867--1916夏目漱石


 ・ 橋本 功 『英語史入門』 慶應義塾大学出版会,2005年.

Referrer (Inside): [2019-11-02-1]

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2013-02-02 Sat

#1377. Gelderen 版,英語史略年表 [timeline][history][historiography]

 [2011-06-13-1]の Crystal 版,[2013-01-24-1]の Fennel 版,[2013-01-25-1]のフィシャク版に引き続き,英語史年表シリーズ.今回は,Gelderen の英語史概説書 (313--17) より抜き書き.概説書にしてもそうだが,年表も,何度も同じもの,違うものを眺めていると,発見があるものである.

8000 BC   Hunter-gatherers move across Europe also into what is now the British Isles
6500 BC   Formation of English Channel
6000 BC   Shift to farming
3000 BC   Stonehenge culture
2500 BC   Bronze Age in Britain
1000 BC   Migrations of Celtic people to Britain begins
600 BC   Iron Age
55 BC--54 BC   Expeditions by Caesar
43   Invasion by Claudius
43--47   South and East England brought under Roman control
50   London founded
70--84   Wales, Northern England, and Scotland under Roman control
100--200   Uprisings in Scotland
122   Hadrian Walls begun
150   Small groups of settlers from the continent
410   Romans withdraw
450   Hengest and Horsa come to Kent ('invited' to hold back the Picts)
455   Hengest rebels against Vortigern
477   Saxons in Sussex
495   Saxons in Wessex
527   Saxon kingdoms in Essex and Middlesex
550   Anglian kingdoms in Mercia, Northumbria, and East Anglia
560   Æthelberht becomes King of Kent
597   Augustine missionaries land in Kent and conversion to Christianity starts
794   Scandinavian attacks on Lindisfarne, Jarrow, Iona and subsequent conquest of Northumbria
865   Scandinavian conquest of East Anglia
871--899   Rule of King Alfred and establishment of the Danelaw
1016--1042   Rule of King Cnut and his heirs
1042--1066   Rule of King Edward (January 1066)
1066   Death of King Edward (January 1066)
1066   King Harold's defeat at Hastings and William of Normandy takes over (December 1066)
1066   William (of Normandy) becomes king (December 1066)
1095   First Crusade
1162   Becket is murdered
1169--1172   Conquest of Ireland
1204   King John loses Normandy to the French
1282--1283   Conquest of Wales
1290   Expulsion of Jews from England
1315--1316   Great Famine
1337--1453   The 100-year War
1349--1351   The Black Death, i.e. plague, kills one-third of the population
1362   Statute of Pleadings (legal proceedings in English)
1381   The Peasants' revolt
1382   Condemnation of Wycliff
1476   Introduction of the printing press by Caxton
1492   Columbus reaches the 'New World'
1497   Cabot reaches Newfoundland, Canada
1504   St John's, Newfoundland, established as the first British colony in North America
1509--1547   Reign of Henry VIII
1534   Act of Supremacy, English monarch becomes head of the Church of England
1536   Monasteries dissembled
1539   English bible in every church
1550   Population of England reaches 3 million
1558--1603   Queen Elizabeth I
1600   The East India Company is granted a charter
1607   Settlement at Jamestown
1611   The King James Bible (KJV)
1612   English presence in Bermuda and in India
1620   Pilgrim fathers establish colony in Plymouth
1624--1630   War between England and Spain
1626--1629   War between England and France
1627--1647   Settlements on Barbados and the Bahamas
1629   Charles I dissolves parliament
1642--1648   First and Second Civil War
1649   Charles I beheaded
1649   Charles II becomes king
1649   Jews officially admitted
1649--1655   Cromwell conquers Ireland
1655   English presence in Jamaica
1653--1660   Cromwell is 'Lord Protector'
1660   Charles II 'restored''
1660   Royal Society founded, to promote science
1670   Hudson Bay Company active
1670--1679   Colonization of West Africa
1688   The Glorious Revolution
1689--1702   Rule of William and Mary
1700   Population of England is 5 million
1707   Act of Union, uniting England and Scotland as the UK
1746   Battle of Culloden; subsequent repression of Scottish Gaelic
1755   Johnson's Dictionary
1759   Wolfe takes Quebec for England
1760--1850   Highland Clearances in Scotland, with resulting emigration and loss of Celtic
1763   Trading in Basra, Iraq
1765--1947   British rule over India
1773   Boston Tea Party
1775--1783   American War of Independence
1776   American Declaration of Independence
1780--1789   Colonies (of convicts) in Australia
1789   French Revolution
1789   George Washington first American president
1791   British colonies in Upper and Lower Canada
1803   Louisiana Purchase
1806   British take over the Cape Colony in South Africa
1806   Webster's Dictionary
1819--1824   Malacca and Singapore occupied by the British
1820--1829   Railroads in the US
1821--1823   Irish famine
1830--1839   Settlement of New Zealand
1834   Slavery abolished in the British Empire
1842   China cedes Hong Kong
1844   First telegraph
1837--1901   Reign of Queen Victoria
1853   Gadsden Purchase
1853   Japan opened to Western trade
1858   Decision to start the OED
1861--1865   American Civil War
1861   British colony in Nigeria
1862   British colony in Honduras
1865   Abolition of slavery in the United States of America
1869   Suez Canal opened
1876   Telephone invented
1884   Berlin Conference determines colonial power in Africa
1886   Annexation of Burma
1890--1899   Rhodesia and Uganda colonized in an attempt to control the Cape-to-Cairo corridor
1880--1902   Boer Wars and British conquest of South Africa
1898   American control over Hawaii, Philippines, and Puerto Rico
1898   Hong Kong and Territories leased to Britain for 99 years
1901   Death of Queen Victoria
1907   Hollywood becomes a filmmaking center
1914--1918   First World War
1916   Easter Uprising, leading to Irish independence in 1921
1918   Women (over 30) get the vote in Britain
1920   Kenya as British colony
1922   BBC starts
1928   OED appears (with supplement in 1933)
1931   Statute of Westminster (former British Dominions de fact independent); British Commonwealth
1939   photocopying invented
1939--1945   Second World war
1942   First computers
1945   United Nations founded
1946   Philippines independent
1947   The independence of India and Pakistan; and New Zealand
1948   Burma and Ceylon (Sri Lanka) independent
1949   NATO founded
1950--1953   Korean War
1951   First computers
1960   Nigeria becomes independent
1960   World population reaches 3 billion
1961--1975   Vietnam War
1963   Kenya becomes independent
1973   Britain joins European Union (confirmed in a 1975 referendum)
1980   CNN starts
1984   Apple PC
1990   Native American Languages Act
1990--1991   Gulf War
1990--1999   Internet becomes major communication tool
1999   World population reaches 6 billion
2000   OED online
2003   Iraq War
2003   In Wales, 20% speak Welsh, up 2.4% in 10 years


(後記 2013/03/18(Mon):同じ年表は Gelderen のコンパニオンサイトより,"Timeline" から閲覧できる.)

 ・ Gelderen, Elly van. A History of the English Language. Amsterdam, John Benjamins, 2006.

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2013-01-25 Fri

#1369. フィシャク版,英語史略年表 [timeline][history][historiography]

 昨日の記事「#1368. Fennell 版,英語史略年表」 ([2013-01-24-1]) に引き続き,今日はフィシャク版の年表を再現する.日本語での英語史年表もあると便利だと思い,和訳に従った (207--10) .同じ英語史の年表といっても,作成者によって力点が異なるものであり,それぞれに特徴がある.年表も確かに1つの歴史記述の方法であるということを認識させられる.

55, 54 BC   ユーリウス・カエサルが軍隊を率いてブリテン島に上陸
43 BC   ローマ帝国による組織的なブリテン島征服が始まる
end of C3   ゲルマン人諸部族による最初のブリテン島攻撃
367   スコット人(アイルランドから),ピクト人(北から),サクソン人(東から)が,ローマ支配下のブリテン島を攻撃
375   フン族の西進を逃れようと西ゴート族がドナウ川を渡りローマ領内に侵入し,ゲルマン民族の大移動が始まる.ローマ帝国が大打撃を受ける
383   ローマ軍がローマに召喚される
410   最後のローマ軍団がブリテン島から撤退
449   ゲルマン人部族がブリテン島に侵入し,征服を始める
c500   「バドニクス丘」の戦いで侵入者ゲルマン人が敗れ,ブリテン島征服は南部において一時中断
547?   ハンバー川以北にアングル族が王国を建てる
597   聖アウグスティヌスがケント王国に到着し,ブリテン島南部に住んでいたゲルマン人にキリスト教の布教を始める
634   アイルランドの修道僧がノーサンブリアのキリスト教化に乗り出す
655   マーシアのキリスト教改宗がノーサンブリアとアイルランドの宣教師たちの手により完了
664   ノーサンブリアにおいて,ホイットビー教会会議が開かれる.ブリテン島やアイルランドのキリスト教がローマ教会に統一される契機となる
c725   口承による『ベーオウルフ』がこの頃完成される
787   デーン人の侵攻が始まる
865   デーン人侵攻の第2期
871--899   アルフレッド大王の治世
879   アルフレッド大王と(グスルムが率いる)デーン人との間でウェドモアの協定.デーンロー地域の確定
886   アルフレッド大王がロンドンを占領.グスルムの王国を除く全イングランドがその統治権を認める
964   修道院の改革が始まり,英語の標準化に影響を与える
973   エドガーがバースにおいて,初めてキリスト教の儀式による戴冠式を挙げ,(デーンロー地域を含む)全イングランドの最初の王となる
991   オラフ・トリュグヴァソンがイギリスに侵攻.デーン人侵攻の第3期が始まる
1066   ウィリアム征服王がヘースティングズの戦いで勝利をおさめ,ノルマン人の英国征服が始まる.フランス語とラテン語が英語に代わって公用語となる
1154   『ピーターバラ年代記』と呼ばれる写本の記録はこの年で終結する.(一般に『アングロ・サクソン年代記』と呼ばれる.写本は7つあり,カエサルの侵入から始まっている.)
1204   ジョン王がフランス国王フィリップ2世に敗れ,ノルマンディーがフランス王の手に渡る.イギリスの民族主義が高まり始める
1250   英国貴族の二重忠節が終結し,フランス語を重んずる必要がなくなる
1258   ヘンリー3世が,ノルマン人の英国征服以降初めて英語で布告を出す
1295   チェルムズフォードの裁判所で,文書が英語とフランス語の両語で読まれる
1337--1453   百年戦争.この戦争により,イギリス人はフランスのあらゆるものに対して敵愾心を抱くようになる
1344   大法官宛の請願書が初めて英語で書かれる
1348--1350   黒死病のため,イギリス社会に大規模な住民の移動がおこる
1362   国会が初めて英語で開会される.議会は「訴答手続法」を制定し,1363年1月以降はすべての訴訟手続,審議は英語で行なうことに決められる
1381   農民一揆がおこり,社会的変動の進行を加速する
c1385   英語がイングランド全域の学校で用いられるようになる
1413   ヘンリー4世が英国王として初めて英語で遺書を残す
1422   英語による最初の玉璽文書
1423   国会の議事録が英語で書かれ始める
c1430   町や同業組合の公文書に英語を用い始める
1476   ウィリアム・キャクストンがイングランドに戻り,ウエストミンスターに最初の印刷所をつくる
1499   キャクストンの後継者ピンソンが,英語・ラテン語の二言語語彙集,『子供のための言葉の宝庫』を出版する(書かれたのは1440年).辞書編纂への一歩となる
1534   ヘンリー8世がローマ教会との関係を絶ち,英国国教会が成立
1564--1616   ウィリアム・シェークスピアの生涯
1586   ウィリアム・ブローカ著『文法のための小冊子』(同著者による現存しない文法書の簡易版)が出版される.最初の英文法書
1588   スペインの無敵艦隊に勝利.英語が世界に広がる端緒となる
1604   ロバート・コードリー著『アルファベット順語彙一覧』の出版.最初の英語の一言語辞典(英英辞典)
1607   アメリカに英語がもたらされる.今日のヴァージニア州に,入植者によってジェームズタウンが建設される
1611   欽定英訳聖書(ジェームズ王聖書)の出版
1639--1686   インド(マドラス,カルカッタ,ボンベイ)に英国の入植地が建設される
1642--1660   市民革命
1664   王立教会が「英語を改良するための」委員会を設置
1712   J. スウィフトによるオックスフォード伯への手紙が『英語の矯正,改良,確定のための提案』として出版され,アカデミーの設立を促す
1713   ノヴァスコシアがフランスからイギリスに譲渡される
1755   サミュエル・ジョンソン著『英語辞典』が出版される.19世紀末まで正しい英語の揺るぎない権威的存在となる
1759   ウルフ将軍がケベックの戦いでフランス軍に勝利
1761   インドがイギリスの植民地となる
1769--1777   キャプテン・クックが,南太平洋への航海途上で,オーストラリア,ニュージーランド,タスマニアをイギリス王領と宣言する
1775--1783   アメリカ独立戦争により,アメリカ合衆国の誕生
1788   オーストラリアのニューサウスウェールズに最初の流刑地植民地が建設される.ケープタウン(南アフリカ)にあるオランダ植民地がイギリス領有となる
1805   トラファルガーの海戦においてイギリス軍がフランス軍に勝利する.イギリスが海上覇権を掌握し植民地拡大への道を開く
1816   イギリスで最初の安価な新聞が発行され,英語に影響を与えるマスメディア時代が始まる
1840   ニュージーランドにおいて,イギリス植民地が建設される.イギリスの安価な郵便制度が文字通信の発達を促し,さらに英語が普及する
1858   『新英語辞典』(後に『オックスフォード英語辞典』と称される)の編集作業が始まる
1890--1910   数多くの発明や科学上の発見が,英語に前例のない大きな影響を与える
1899--1901   南アフリカのブール戦争において初期オランダ入植者の子孫が敗北.イギリスの覇権が確立
1914--1918   第1次世界大戦.英語の威信が高まる.フランス語は教育言語として,また外交言語としてさえ,その地位を失い始める(ヴェルサイユ条約がフランス語と英語で書かれる)
1939--1945   第2次世界大戦がさらに,英語の普及を押し進め,その威信を高める


 ・ ヤツェク・フィシャク著,小林 正成・下内 充・中本 明子 訳 『英語史概説 第1巻外面史』 青山社,2006年.

Referrer (Inside): [2013-02-02-1]

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2013-01-24 Thu

#1368. Fennell 版,英語史略年表 [timeline][history][historiography]

 「#777. 英語史略年表」 ([2011-06-13-1]) では,Crystal 版の英語史略年表を掲載したが,今回は Fennell 版を再現する.Fennell では各章の最初に対象となっている時代に関する年表が載せられており,以下はそれをほぼ忠実に編集したまでで,細かくは整理していない.Fennell の著書の題名から予想されるとおり,社会史的な側面が強く反映されている年表である.

8000 BC   Hunter groups move into Lapland
7000 BC   Wheat, barley and pulses cultivated from Anatolia to Pakistan; goats and pigs domesticated
7000 BC   Farming developed on Indian subcontinent; barley main crop
6500 BC   Adoption of farming in Balkan region; beginning of the European Neolithic spread of domestic animals, probably from Anatolia
6200 BC   Farming villages established in the west and central Mediterranean
5200 BC   First farmers of central Europe spread northwest as far as the Netherlands
4500 BC   Cattle used as plough animals in lower Danube region
4500 BC   First megalithic tombs built in western Europe
4400 BC   Domestication of horse on Eurasian Steppes
4200 BC   Earliest copper mines in eastern Europe
4200 BC   Agriculture begins south of the Ganges
3800 BC   Ditched enclosures around settlements in western Europe, forming defended villages
3500 BC   New faming practices: animals increasingly used for traction, wool and milk; simple plough (ard) now used in northern and western Europe
3250 BC   Earliest writing from western Mesopotamia: pictographic clay used for commercial accounts
3200 BC   First wheeled vehicles in Europe (found in Hungary)
3100 BC   Cuneiform script developed in Mesopotamia
3000 BC   Construction of walled citadels in Mediterranean Europe and development of successful metal industry
2900 BC   Appearance of Corded Ware pottery in northern Europe
2500 BC   Bell beakers found in western Europe, often associated with individual burials
2500 BC   Development of urban civilization in the Indian Plain
2500 BC   Earliest syllabic script used in Sumerian literature
2300 BC   Beginning of full European Bronze Age
2000 BC   Fortified settlements in east and central Europe point to increasing social and economic pressures
1900 BC   Cretan hieroglyphic writing
1850 BC   Horses used for the first time to pull light carts in the western Steppes
1650 BC   Linear A script (Crete and the Cyclades)
1650 BC   City-states of central Anatolia unified to form the Hittite kingdom with a strongly fortified capital at Boğazköy
1400 BC   Linear B script (mainland and islands of Greece)
1400 BC   Development of pastoral nomadism on the Steppes: cattle herded from horseback
1300 BC   Westward spread of urnfield cemeteries
1200 BC   Collapse of Hittite empire
1000 BC   Hillforts in Western Europe
1000 BC   Full nomadic economy on the Steppes based on rearing horses, cattle and sheep
850 BC   First settlement at Rome; cluster of huts on Palatine Hill
800 BC   Establishment of culture north and east of Alps --- first stage of Celtic Iron Age (Hallstatt)
800 BC   Rise of Etruscan city-states in central Italy
800 BC   Rise of cities and states in Ganges Valley supported by rice farming
750 BC   First Greek alphabetic inscription
750 BC   Ironworking spreads to Britain
750 BC   Earliest Greek colonies set up from western Mediterranean to the eastern shores of the Black Sea
690 BC   Etruscan script developed from Greek
600 BC   Trade between Celts north west of Alps and Greek colonies of the west Mediterranean; rich wagon burials attest to wealth and power of Celtic elite
600 BC   Latin script
600 BC   Central lowlands of northern Europe first settled
600 BC   First Greek coins
480 BC   2nd stage of European Bronze Age (La Tène)
480 BC   Emergence of classical period of Greek arts and architecture
480 BC   City-states reach height of importance
460 BC   Parchment replaces clay tablets for Aramaic administrative documents
450 BC   Athens, the greatest Greek city-state, reaches the peak of its power
400 BC   Carthage dominates the west Mediterranean
390 BC   Celts sack Rome
334 BC--329 BC   Alexander the Great invades Asia Minor, conquers Egypt and Persia and reaches India; Hellenism established in Asia
331 BC   Alexandria founded
250 BC   Brahmin alphabetic script in India
250 BC   All of peninsular Italy controlled by Rome
206 BC   Rome gains control of Spain
146 BC   Romans destroy the Greek states but Greek culture still important and Greek artists brought to Rome
146 BC   Roman destruction of Carthage
55 BC   Julius Caesar attempts to invade Britain
27 BC   Augustus sole ruler of Roman empire
43--50   Emperor Claudius invades Britain
50   Rome largest city in the world --- population 1 million
117   Roman empire reaches its greatest extent
125   Hadrian's Wall built
285   Administrative separation of eastern and western halves of Roman empire
313   Edict of Milan: toleration of Christianity in Roman empire
330   Constantine founds Constantinople as new eastern capital of the Roman empire
410   Sack of Rome by Visigoths leading to collapse of western Roman empire
410   Romans withdraw from Britain
429   German (Vandal) kingdom in north Africa
449   Angles, Saxons and Jutes invade Britain
597   St Augustine introduces Christianity to the English
787   Scandinavian invasions begin
793   Sacking of Lindisfarne
878   King Alfred defeats the Danes at Eddington
878   Treaty of Wedmore
899   King Alfred dies
1016   Danish King Cnut rules England
1042   Accession of Edward the Confessor to the English throne
1066   Battle of Hastings; Norman Conquest
1095   First Crusade
1170   Assassination of Thomas à Becket
1204   King John loses lands in Normandy
1259--1265   The Barons' War
1337--1453   The Hundred Years War
1340--1400   Geoffrey Chaucer
1346   Battle of Crecy
1346   Battle of Poitiers
1348--1351   The Black Death
1362   Parliament opened in English
1362   The Statute of Pleading (English becomes the official language of legal proceedings)
1381   The Peasants' Revolt
1415   Battle of Agincourt
1476   Caxton introduces the printing press
1489   French no longer used as the language of Parliament
1509   Henry VIII ascends the throne
1534   Act of Supremacy
1536   Small monasteries dissolved
1536   Statute incorporates all of Wales with England
1539   English translation of Bible in every church
1547   Edward VI
1553   Mary Tudor
1554   Mary marries Philip of Spain
1558   Elizabeth I
1559   Act of Supremacy restores laws of Henry VIII
1574   First company of actors; theatre building begins
1577   Sir Francis Drake plunders west coast of South America
1584   Colonists at Roanoke
1600   British East India Company founded
1600   Population of England c.2.5 million
1603   James I
1605   Barbados, West Indies, claimed as English colony
1606   Virginia Company of London sends 120 colonists to Virginia
1607   Jamestown, Virginia, is established by London Co. as the first permanent English settlement in America
1611   King James Bible
1616   Death of Shakespeare
1620   The Pilgrims arrive at Plymouth Rock on the Mayflower
1621   English attempt to colonize Newfoundland and Nova Scotia
1625   Charles I
1627   Charles I grants charter to the Guiana Company
1633   English trading post established in Bengal
1637   English traders established in Canton
1639   English established at Madras
1642--1646   Civil War
1646   English occupy the Bahamas
1648   Second Civil War
1649   Cromwell invades Ireland
1649   Charles I beheaded
1649   Charles II
1649   Commonwealth established
1653   Cromwell becomes Lord Protector
1655   English capture Jamaica
1660   Charles II restored to throne
1663   Charles II grants charter to Royal African Company
1668   British East India Company gains control of Bombay
1670   English settlement in Charles Town, later Charleston, South Carolina
1680--1689   Welsh Quakers settle in large numbers in Pennsylvania
1680--1689   First German immigrants in America
1684   Bermudas become Crown Colony
1689   William and Mary proclaimed king and queen in England and Ireland
1690   Calcutta founded
1690   Population of England c.5 million
1700   Population of England and Scotland 7.5 million
1707   Union of England and Scotland as Great Britain
1707   British land in Acadia, Canada
1710   English South Sea Company founded
1727   George II
1729   North and South Carolina become Crown Colonies
1729   Benjamin and James Franklin publish 'The Pennsylvania Gazette'
1744   Robert Clive arrives at Madras
1756--1763   The French and Indian War in North America
1759   British take Quebec from the French
1760   George III
1762   British capture Martinique, Grenada, Havana and Manila
1765--1947   British Raj in India
1770   James Cook discovers Botany Bay, Australia
1774   Parliament passes the Stamp Act, unifying the colonies against the British
1775   The East India, or Tea, Act prompts the Boston Teat Party
1775--1783   American War of Independence
1776   American Declaration of Independence
1776   The Revolutionary War begins
1778   Cook discovers Hawaii
1783   The Treaty of Paris successfully ends the Revolution
1783   British recognize US independence
1784   Pitt's India Act: East India Company under government control
1786   Penang ceded to Great Britain
1789   George Washington inaugurated as first US President
1790   The first penal colony established in Sydney, Australia
1795, 1806   British forces occupy Cape of Good Hope
1800   British capture Malta
1803   The Louisiana Purchase doubles the size of US territory
1810   British seize Guadeloupe
1811   British occupy Java
1812--1814   War of 1812 between the USA and Britain
1819   Florida purchased by the USA from Spain
1819   British settlement established in Singapore by East India Company
1822   English becomes the official language of the Eastern Cape of South Africa
1822   Liberia founded --- Africa's oldest republic
1824   Erie Canal opens, strengthening east-west trade, but increasing the isolation of the south
1824   British take Rangoon, Burma
1828   The Baltimore and Ohio Railway opens
1832   Britain occupies the Falkland Islands
1837   Queen Victoria
1837   The electric telegraph demonstrated by Samuel Morse
1840   New Zealand becomes an official colony
1840   Penny post introduced in Britain
1842   Hong Kong ceded to Great Britain
1848   Gold discovered in California
1849   Gold Rush
1851   Victoria, Australia, proclaimed separate colony
1852   New constitution for New Zealand
1858   Powers of East India Company transferred to British Crown
1860   Kowloon added to British territories in South-East Asia
1861   Civil War begins with the Confederate attack on Fort Sumter
1861   British Colony founded in Lagos, Nigeria
1863   Emancipation of the slaves is proclaimed, as of 1 January
1865   General Lee surrenders to Grant at Appomattox
1865   President Lincoln is assassinated, five days later
1867   Alaska is purchased from Russia, becoming the 49th state in 1959
1867   Federal Malay States become a Crown Colony
1869   The first transcontinental railroad is completed
1876   Alexander Graham Bell patents the telephone
1877   Edison invents the phonograph
1878   David Hughes invents the microphone
1879   London opens its first telephone exchange
1884   Papua New Guinea becomes British protectorate
1885   Britain established protectorate over Northern Bechuanaland, Niger River Region and southern New Guinea, and occupies Port Hamilton, Korea
1886   First Indian National Congress meets
1887   First Colonial Conference opens in London
1888   Cecil Rhodes granted mining rights by King of Matabele
1890   Rhodes becomes Premier of Cape Colony
1893   Uganda united as British protectorate
1893   USA annexes Hawaii
1895   Marconi invents radiotelegraphy
1895   Auguste and Louis Lumière invent the motion-picture camera
1895   British South Africa Company territory south of the Zambezi River becomes Rhodesia
1898   America receives Guam and sovereignty over the Philippines
1898   New Territories leased by Britain from China for 99 years
1899   First magnetic sound recordings
1899--1902   Boer War
1900   R. A. Fessenden transmits the human voice via radio waves
1900   British capture Bloemfontein, relieve Mafeking, annex Orange Free State and Transvaal and take Pretoria and Johannesburg Commonwealth of Australia created
1901   Marconi transmits radiotelegraph messages from Cornwall to New Zealand
1901   End of Queen Victoria's reign
1903   Ford Motor Company founded
1903   Orville and Wilbur Wright make the first successful manned flight at Kitty Hawk, North Carolina
1903   British conquer northern Nigeria
1907   New Zealand becomes a dominion within the British Empire
1908   Union of South Africa established
1908   Henry Ford introduces the mass-produced Model T
1914   Panama Canal opened
1914--1918   World War I
1916   USA purchases Danish West Indies (Virgin Islands)
1917   USA purchases Dutch West Indies
1919   League of Nations founded
1920   Gandhi emerges as leader of India
1920   Kenya becomes British colony
1921   British Broadcasting Corporation founded
1921   First Indian Parliament meets
1924   The National Origins Act marks the official end of large-scale immigration to America; from this point on numbers are restricted and quotas are introduced
1924   British Imperial Airways founded
1925   John Logie Baird transmits a picture of a human face via television
1928   John Logie Baird demonstrates first colour television
1929   Teleprinters and teletypewriters first used
1929   First scheduled TV broadcasts in Schernectedy, New York
1929   First talking pictures made
1936   BBC London television service begins
1938   Lajos Biró invents the ball-point pen
1939--1945   World War II
1942   First computer developed in the United States
1942   Magnetic recording tape invented
1944   First telegraph line used between Washington and Baltimore
1945   United Nations founded
1946   Chester Carlson invents Xerography
1946   Philippines become independent from the United States
1947   Transistor invented at Bell Laboratories
1947   India proclaimed independent
1948   Peter Goldmark invents the long-playing record
1951   Colour TV introduced into USA (15 million TV sets in USA)
1952   Accession of Queen Elizabeth II
1957   Common Market established by Treaty of Rome
1957   Malaysian independence
1958   First stereophonic recordings
1962--1975   Uganda, Kenya, Zambia (Northern Rhodesia), Malawi, Malta, Gambia, Southern Rhodesia (Zimbabwe), Guyana, Mauritius, Nigeria, Bahamas, Papua New Guinea all become independent of Great Britain
1965   Atlantic cable completed
1968   Intelsar communication satellite launched
1989   South Africa desegregated
1997   Hong Kong rule returns to China


 ・ Crystal, David. The English Language. 2nd ed. London: Penguin, 2002.
 ・ Fennell, Barbara A. A History of English: A Sociolinguistic Approach. Malden, MA: Blackwell, 2001.

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2013-01-14 Mon

#1358. ことばの歴史とは何の歴史か [linguistics][historiography][saussure][language_change]

 英語史を専攻しているが,英語史とは何かときかれることはあまりない.読んで字の如く,英語の歴史であることは自明だからだ.しかし,英語にせよ日本語にせよ,ある言語の歴史とは何なのか,考えてみると単純ではない.同じ問題意識は,小松 (15) にも現われている.

コトバは空気の振動であるから、発話された瞬間に消え失せる。/対象が延々と持続してこそ歴史が作られると考えるなら、実体をもたず、持続することもないコトバに歴史などありうるはずはない。/もし、コトバに歴史があるとしたら、コトバの場合、対象が持続するとはどういうことを意味するかをよく考えてみる必要がある。


 コトバには実体も持続性もない.とすれば,そこに歴史などあるはずはない,と考えるのが自然だろう.ところが,英語史にしろ日本語史にしろ,それが無意味で空虚だという感覚はない.言語には歴史があるとわかっている(と少なくとも思っている).この矛盾はどこから来るのだろうか.
 1つの答えは,上で実体や持続性がないものと考えたコトバとはソシュールのいう parole (言)を指し,歴史をもつものとしての言葉は langue (言語)を指すのではないか,ということだ.parole と langue の関係はチョムスキーのいう performance (運用)と competence (能力)の関係にも近く,重ね合わせて考えてもよいが,表現としては,competence の歴史というよりも langue の歴史というほうがしっくり来るのではないか.それは,langue という術語が言語の社会契約としての側面を強調しており,その社会契約の変化こそが言語の変化にほかならない,と考えられるからだろう.
 小松は同著の別の箇所で,上の疑問に対する解答に相当するものを与えている (119) .

言語に実体がないとしたら、言語変化とよばれる現象は、実体としての言語に変化が生じることではなく、その言語を情報伝達の媒体として生活する共同体のメンバーが、すなわち、言語共同体 (speech community) を構成する人たちが、徐々に、それまでと違った言いかたをするようになることである。したがって、現に進行しつつある日本語の変化には日本語話者の全員が積極的に関わっている。


 小松は日本語について述べているが,もちろん同じことは英語についても言える.主として第2言語として英語を学習している多くの日本語母語話者が,lingua franca としての英語を使用する際にすら,上の引用はある程度は当てはまる.英語の言語共同体に部分的にであれ参加しているその分だけ,世界の英語の変化に貢献しているのだ.そして,その変化の軌跡が,英語の歴史の一部となる.
 結論としていえば,ことばの歴史とは,話者集団が違った言いかたを採用してゆく無数の選択の軌跡ととらえることができるだろう.「採用」と関連して,「#1056. 言語変化は人間による積極的な採用である」 ([2012-03-18-1]) や「#1069. フォスラー学派,新言語学派,柳田 --- 話者個人の心理を重んじる言語観」 ([2012-03-31-1]) も参照.

 ・ 小松 秀雄 『日本語の歴史 青信号はなぜアオなのか』 笠間書院,2001年.

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2012-12-27 Thu

#1340. Strang の英語史の遡及的記述 [historiography][teleology]

 昨日の記事「#1339. インドヨーロッパ語族の系統図(上下反転版)」 ([2012-12-26-1]) および「#253. 英語史記述の二つの方法」 ([2010-01-05-1]) で,Strang による英語史の名著とそこで採用されている「遡行的記述」について簡単に触れた.私見によれば,歴史を現在から過去へ遡って記述する方法の利点の一つとして,「現代的な視点に基づく好奇心をくすぐる」ことができる点を指摘したが,本家 Strang の主張を聞いてみよう.少々長いが,Strang (20--21) を引用する.

The principle of chronological sequence once adopted still leaves a choice --- to move forward from the earliest records to the present day, or back from the present day to the earliest records. Most historians have preferred to move towards the present day. Yet this is an enterprise in which it is doubtfully wise to 'Begin at the beginning and go on till you come to the end: then stop.' The most important reasons for this are clear in the very formulation of the King's directive to the White Rabbit, in the implication that there is a beginning and an end. Something begins, of course; the documentation of the language. But, however carefully one hedges the early chapters about, it is difficult to avoid giving the impression that there is a beginning to the English language. At every point in history, each generation has been initiated into the language-community of its seniors; the form of the language is different every time, but process and situation are the same, wherever we make an incision into history. The English language does not have a beginning in the sense commonly understood --- a sense tied to the false belief that some languages are older than others. / At the other terminal it is almost impossible to free oneself from the teleological force of words like 'end'. The chronological narrative comes to an end because we do not know how to continue it beyond the present day; but the story is always 'to be continued'. Knowing this perfectly well, one is yet liable to bias the narrative in such a way as to subordinate the question 'How was it in such a period'? to the question 'How does the past explain the present?' Both are important question, but the first is more centrally historical. / In addition, the adoption of reverse chronological order imposes on us the discipline of asking the same questions of every period; this is salutary even where it does no more than force us to acknowledge our ignorance.


 要約すれば,英語史を遡及的に記述する利点は3つある.

 (1) 英語に "beginning" 「始まり」がないという事実を強調することができる.
 (2) 英語に "end" 「終わり」(あるいは「目的」)がないという事実を強調することができる.
 (3) 同じ質問を各時代の記述において繰り返すことを余儀なくさせ,現在の時点における我々の限界(無知)を思い起こさせてくれる.

 これは,言語史記述の1つの方法論であるという以上に歴史哲学の世界へと一歩踏み込んだ議論だろう.遡及的記述のほうが "more centrally historical" であるという認識は,Strang が説明 (why の探究)よりも記述(how の探究)を重視した英語史家であることを物語っている.著書の英語史記述そのものは構造言語学に基づいた硬派路線なのだが,遡及的記述の採用によって,独特の歴史観が漂っていることは確かである.

 ・ Strang, Barbara M. H. A History of English. London: Methuen, 1970.

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2012-12-26 Wed

#1339. インドヨーロッパ語族の系統図(上下反転版) [indo-european][family_tree][historiography]

 本ブログでは,印欧語族の系統図をいくつかの形で示してきた.

 ・ [2009-06-17-1]: 「#50. インドヨーロッパ語族の系統図をお遊びで」(Flash版
 ・ [2010-07-26-1]: 「#455. インドヨーロッパ語族の系統図(日本語版)」(Flash版
 ・ [2012-06-16-1]: 「#1146. インドヨーロッパ語族の系統図(Fortson版)」

 今回は,寺澤・川崎 (2--3) の印欧語族系統図を参照した上で,2種類の版を作成してみた.いずれも横長の系統図だが,1つ目は印欧祖語が上に来る通常のタイプ,2つ目は印欧祖語が下に来る通常のタイプである(それぞれ下図をクリックすると拡大版を表示できる).

Indo-European Family Tree with GraphViz
Reversed Indo-European Family Tree with GraphViz

 系統図は系統樹とも呼ばれるが,本来の木は,当然のことながら,下が根で上が梢である.しかし,系統関係を示す系統樹においては,ほとんどの場合,上下が反転しており,上が根で下が梢である.これは,上から下へ時間が流れて行くという我々の時間についての直感に合うために採用されているわけだが,ある意味では歴史的な見方に反している.歴史をみる場合,現在を起点にして過去へ遡って行くというのが自然な動機づけではないだろうか.現在の物事の起源は何かと問うて過去を振り返るのが,歴史に対する関心というものではないだろうか.また,このようにして過去へ遡及してゆくとき,ビッグバンのような宇宙史規模の時間の幅を念頭におくのでない限り,終着点は想定されず,さらなる過去へと常に開かれている.この歴史観や時間観は,現在を一応の終着点とみなす通常の系統図が前提とする歴史観や時間観とはおおいに異なる.
 上に述べた系統図の上下を反転させるという発想と意義は,時間遡及的な英語史を著わした Strang に負っている.印欧語族の見え方も変わってくるのではないか.関連して,「#253. 英語史記述の二つの方法」 ([2010-01-05-1]) を参照.

 ・ 寺澤 芳雄,川崎 潔 編 『英語史総合年表?英語史・英語学史・英米文学史・外面史?』 研究社,1993年.
 ・ Strang, Barbara M. H. A History of English. London: Methuen, 1970.

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2012-09-29 Sat

#1251. 中英語=クレオール語説の背景 [creole][me][family_tree][history_of_linguistics][evolution][sociolinguistics][historiography][language_equality]

 ##1223,1249,1250 の記事で,中英語=クレオール語とする仮説を批判的に見てきた.およそ議論の決着はついているのだが,議論それ以上に関心を寄せているのは,なぜこの仮説が現われ,複数の研究者に支持されたのかという背景である.
 Baily and Maroldt が論争を開いた1970年代以降,クレオール語研究が盛んになり,とりわけ言語進化論や社会言語学へ大きな刺激を与えてきたという状況は,間違いなく関与している.
 言語進化論との関係でいえば,Baily and Maroldt は,言語と生物の比喩を強烈に押し出している.

One of the authors has for more than a half-dozen years been contending that internal language-change will result only in new subsystems, while creolization is required for the creation of a new system, i.e. a new node on a family tree. Each node on a family tree therefore has to have, like humans, at least two parents. (22)


 これは,比較言語学の打ち立てた the family tree model の肯定でもあり,同時に否定のもう一つの形でもある.この発想自体が議論の的なのだが,いずれにせよクレオール研究の副産物であることは疑い得ない.
 次に,解放の言語学ともいえる社会言語学の発展との関係では,世界語の座に最も近い,威信のある言語である英語を,社会的には長らく,そして現在も根強く劣等イメージの付されたクレオール語と同一視させることによって,論者は言語的平等性を主張することができるのではないか.特定の言語に付された優勢あるいは劣勢のイメージは,あくまで社会的な価値観の反映であり,言語それ自体に優劣はなく平等なのだ,というメッセージを,論者はこの仮説を通じて暗に伝えているのではないか.
 私は,このような解放のイデオロギーとでもいうような動機が背景にあるのではないかと想定しながら Bailey and Maroldt を読んでいた.そのように想定しないと,[2012-09-27-1]の記事「#1249. 中英語はクレオール語か? (2)」でも言及したように,論者が英語をどうしても creolisation の産物に仕立て上げたいらしい理由がわからないからだ.支離滅裂な議論を持ち出しながらも,「英語=クレオール語」を推したいという想いの背景には,ある意味で良心的,解放的なイデオロギーがあるのではないか,と.
 ところが,論文の最後の段落で,この想定は見事に裏切られた.むしろ,逆だったのだ.creolisation の議論を手段とした世界語としての英語の賛歌だったのである.これには愕然とした.読みが甘かったか・・・.

A closing word on the value of creolization will not be amiss. Just as the evolution of plants and animals became vastly more adaptive, once sexual reproduction became a reality --- because then the propagation of mutations through crossing of strains became feasible --- so creolization enables languages to adapt themselves to new communicative needs in a much less restricted way than is otherwise open to most languages. Thus creolization has the same adaptive and survival value for languages as sexual cross-breeding has for the world of plants or animals. The flexibility and adaptability which have made English so valuable as a world-wide medium of communication are no doubt due to its long history of creolization. (53)


 [2012-04-14-1]の記事「#1083. なぜ英語は世界語となったか (2)」で取り上げた Bragg の英語史観も参照.

 ・ Bailey, Charles James N. and Karl Maroldt. "The French Lineage of English." Langues en contact --- Pidgins --- Creoles --- Languages in contact. Ed. Jürgen M. Meisel. Tübingen: Narr, 1977. 21--51.

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2012-09-28 Fri

#1250. 中英語はクレオール語か? (3) [creole][me][french][old_norse][contact][historiography]

 「#1223. 中英語はクレオール語か?」 ([2012-09-01-1]) 及び「#1249. 中英語はクレオール語か? (2)」 ([2012-09-27-1]) に引き続いての話題.
 論争のきっかけとなった Bailey and Maroldt は,英語とフランス語との混交によるクレオール語化の説を唱えたが,多くの批判を浴びてきた.私も読んでみたが,突っ込みどころが満載で,論文が真っ赤になった.当該の学説はほぼ否定されているといってよいし,改めて逐一批判する必要もないが,珍説ともいえる議論が随所に繰り広げられており,それはそれでおもしろいのでいくつかピックアップする.

 (1) 中英語は,語彙,統語・意味 ("semantax"!),音声・音韻 ("phonetology"!),形態のいずれの部門においても,少なくとも40%は混合物である (21) .(語彙はよいとしても統語・意味や形態の混合度はどのように測るのだろうか?)
 (2) "In the instability created by the second, or minor, French creolization is to be seen the origin of the Great Vowel Shift, which, more than anything else, created modern English" (31). (同論文中に関連する言及がほかにないので,この文が何を意味しているのかほとんど不明である.)
 (3) "The Anglo-Saxon suffix -līċe (ME -ly), which has a functional counterpart in French -ment, is hardly an example of the reduction of inflections! This is in accord with the assumption of creolization" (33). (第1文内の論理と,第1文と第2文の因果関係が不明.)
 (4) 英語とフランス語の名詞の屈折体系は似ており,容易に融和され得た.([2011-11-29-1]の記事「#946. 名詞複数形の歴史の概要」でも触れた通り,複数接尾辞の -es に関する限り,私は両言語の直接的な関係はないと考えている.Hotta 154, 268 [Note 66] を参照.)
 (5) 論文全体を通して,英語とフランス語との間に平行関係が観察される言語項目 (pp. 51--52) を,同系統であるがゆえの遺産でもなく,独立平行発達でもなく,個々の借用でもなく,ひっくるめて英仏語のクレオール化として片付けてしまっている.説明としては手っ取り早いだろうが,それでは地道になされてきた個々の研究が泣く.

 説明としての手っ取り早さということでいえば,連想するのが大野晋の日本語・タミール語クレオール説だ.大野は両言語間の比較言語学に基づく系統関係の樹立に失敗し,代わりに両言語のクレオール説を唱えた.後者では厳密な音韻対応は必要とされず,大まかな混交ということで片付けられるからだ.
 クレオール化説の雑でいい加減な印象を減じるためには,クレオールの研究自体がもっと成熟する必要がある.それから改めてクレオール化説を提起したらどうだろうか.

 ・ Bailey, Charles James N. and Karl Maroldt. "The French Lineage of English." Langues en contact --- Pidgins --- Creoles --- Languages in contact. Ed. Jürgen M. Meisel. Tübingen: Narr, 1977. 21--51.
 ・ Hotta, Ryuichi. The Development of the Nominal Plural Forms in Early Middle English. Hituzi Linguistics in English 10. Tokyo: Hituzi Syobo, 2009.

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2012-09-27 Thu

#1249. 中英語はクレオール語か? (2) [creole][me][old_norse][contact][historiography][pchron]

 [2012-09-01-1]の記事「#1223. 中英語はクレオール語か?」で,Bailey and Maroldt による(中)英語=クレオール語説に対する Görlach の激しい反論を概観した.中英語=クレオール説は,Bailey and Maroldt のみならず,Poussa などの複数の追随者を生み出してきた(論争の概括は,Brandy Ryan 氏によるこちらの論説を参照).
 Bailey and Maroldt 及び Poussa の論考に直接当たってみたが,両者ともに,あまりに大胆で理解不能の議論が目立つ.彼らは,何らかの理由で,英語をどうしても creolisation の産物に仕立て上げたいらしい.論文中の "creolisation" を "(strong) influence from another language" と読み替えれば大体通ることから,結局のところ,他言語からの影響の程度をどう見るか,それをどの術語を用いて表現するかという,定義に関わる問題に行き着くように思われる."influence" というより一般的な用語で満足せずに,"creolisation" という専門的な,そして loaded な用語を敢えて用いる必要と利点がどこにあるのか,まるで呑み込めない.
 この種の議論が話題を呼ぶのは,証拠不在の時代の(社会)言語学的状況をどのように再建し,英語史全体をどのように紡ぎ直すかという英語史記述に関わる大問題が提起されるからである.既存の見解に対する挑戦あるいは挑発であるという点で見物としては楽しいのだが,議論としては最初から破綻していると言わざるを得ない.
 例えば,Poussa は,古英語と古ノルド語との creole 説を唱えているが,その結論は以下の通りである.

It is argued that the fundamental changes which took place between standard literary OE and Chancery Standard English: loss of grammatical gender, extreme simplification of inflexions and borrowing of form-words and common lexical words, may be ascribed to a creolization with Old Scandinavian during the OE period. The Midland creole dialect could have stabilized as a spoken lingua franca in the reign of Knut. Its non-appearance in literature was due initially to the prestige of the OE literary standard. (84)


 Görlach が正当に議論しているように,文法性の消失と屈折の単純化は,古ノルド語の関与があり得る以前の時代からの自然な発達に端を発しており,古ノルド語との接触により加速されたことは確かだが,あくまで自然な路線の延長である.基本語彙の借用については,[2012-07-23-1]の記事「#1183. 古ノルド語の影響の正当な評価を目指して」で触れた問題が関わる.creolisation には基本語彙の置換が付きものであり,基本語彙が置換されれば,それは creolisation なのだ,という閉じた議論が前提とされているように思われる.Knut がリンガ・フランカとしての新生 creole を推奨したという議論も評価しがたいし,creole が文献に反映されなかった理由にも納得しかねる.文献量は確かに少ないが,The Peterborough Chronicle の Continuations のように,古英語から中英語への言語変化の連続性を示唆する証拠があるからだ.
 何よりも,クレオール語説について理解できないのは,通常,"creol(isation)" とはまるで異なった2言語間の関係について言われることなのではないか,という点である.古英語と古ノルド語のような系統的にも類型的にも類似した,方言ともいうべき言語同士が混じり合う場合には,creolisation とは何を意味するのか.creole や creolisation の研究において,より盤石な定義や特徴づけがなされない限り,その用語の濫用は,問題の言語接触の理解を損ねてしまうのではないか.

・ Görlach, Manfred. "Middle English --- a Creole?" Linguistics across Historical and Geographical Boundaries. Ed. D. Kastovsky and A. Szwedek. Berlin: Gruyter, 1986. 329--44.
 ・ Poussa, Patricia. "The Evolution of Early Standard English: The Creolization Hypothesis." Studia Anglica Posnaniensia 14 (1982): 69--85.
 ・ Bailey, Charles James N. and Karl Maroldt. "The French Lineage of English." Langues en contact --- Pidgins --- Creoles --- Languages in contact. Ed. Jürgen M. Meisel. Tübingen: Narr, 1977. 21--51.

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2012-09-15 Sat

#1237. 標準英語のイデオロギーと英語の標準化 [standardisation][historiography][sociolinguistics][variation]

 Milroy の "Historical Description and the Ideology of the Standard Language." は,英語史における standardisation と英語学史における standard ideology を同時に考察した,読み応えのある論文である.variation の存在を捨象し,standard ideology に浸かった従来の英語史記述を批判するその舌鋒は,Milroy ならではのもの.
 Milroy は,近代に発達した標準英語のイデオロギーは英語史研究者を巻き込み,彼らの書いた英語史そのものが同イデオロギーに荷担してきたと主張する.とりわけイングランドや他の北ヨーロッパ諸国で発達した強い国家主義と純粋主義のもとで,ゲルマン語としての英語の正統性が強調され,Standard English は「歴史化」 (historicisation) されてきた.この歴史化のなかで,Anglo-Saxon は Old English として英語の歴史の中に位置づけられることになり,さらに遡って Germanic あるいは Proto-Indo-European までもが英語史の射程に入ることになった.また,英語の構造的な変化はもっぱら言語内的な要因によりもたらされたという言語変化観が支配的となり,英語が諸言語の影響を受けてきたという事実は,時に恥であるとすら考えられた.Sweet, Sisam, Skeat, Wyld という英語史を築いてきた大学者たちですら,こうして近代期に塗り固められてきた Standard English のイデオロギーに縛られてきたのであり,現在ですらこの状況は少なからず続いていると言ってよい.
 Milroy は,一般の人々のみならず英語史研究者をも強く縛ってきた標準英語のイデオロギーあるいは standardisation という過程に,互いに関連する5つの特徴を認めている.uniformity, respect for writing, invariability, prestige, carefulness である.

 (1) "the chief linguistic consequence of successful standardisation is a high degree of uniformity of structure" (13)
  uniformity の現われとして,正しい語法と誤った語法が明確に区別される(その基準は言語的には恣意的だが,社会言語学的には恣意的でない);実際にはこの変種の話者はいない;対置される非標準英語の立場も明確になる.
 (2) "standardisation is implemented and promoted primarily through written forms of language" (14)
  これにより,書き言葉偏重の英語史記述が促進される.
 (3) "standardisation inhibits linguistic change and variability" (14)
  標準英語が言語変化を完全に取り込まないというわけではないが,取り込む速度はゆっくりである.標準化が言語変化を嫌うということは,Swift や Johnson の時代から少しも変わっていない.
 (4) "the equation of the standard language with the prestige language" (15)
  prestige language とは少人数によって話されるにすぎない権威ある変種を指す.ただし,"prestige" という概念は分析されない社会的カテゴリーを表わすものであり,実体はわかっていない.経済的に区別される階級と重なることも多いが,必ずしも一致せず,多くの研究が必要とされている概念である.
 (5) "carefulness and clarity of enunciation" (19)
  RP のラジオ放送に代表されるように,この発音をおこなうには,マイクに慣れており,タキシードを着ている必要がある.それほどかしこまっていない限り,実現し得ない発音である.

 標準化のイデオロギーが言語研究者にも(言語研究者にこそ?)強い縛りをかけているということは重い現実であり,これをいかに克服するか,あるいは少なくとも認識しておくかは,言語研究者の主要テーマの一つである.

 ・ Milroy, Jim. "Historical Description and the Ideology of the Standard Language." The Development of Standard English, 1300--1800. Ed. Laura Wright. Cambridge: CUP, 2000. 11--28.

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2012-08-01 Wed

#1192. 初期近代英語という時代区分 [emode][periodisation][historiography][history]

 初期近代英語 (Early Modern English; 1500 or 1450 -- 1700) という時代区分は,英語史研究ではすでに一般化している.古英語,中英語,近代英語という伝統的で盤石な3区分に割って入るほどの力はないかもしれないが,実用上は日常化しているといってよいだろう.このことは,Early Modern English を題に含む多くの論著が著わされ,実りある成果を上げている事実からもわかる.
 近代英語期を細分化する試みは,[2009-12-18-1]の記事「#235. 英語史の時代区分の歴史 (4)」で見たように,古くは19世紀からある.20世紀前半にも,Zachrisson や Karl Luick などが初期近代英語という区分を提案している.しかし,この時代区分が広く認められ出したのは,Baugh, Görlach, Penzl などの論に反映されているとおり,20世紀後半である.ここには,ドイツ語史における確立した時代区分 "Frühneuhochdeutsch" からの類推が影響しているかもしれない (Penzl 261--62) .
 言語史において時代区分の役割が甚大であることは,[2012-06-12-1]の記事「#1142. 中英語期はいつ始まったか (1)」でも説いた.Penzl も同趣旨で次のように述べている.

A "period" is by definition a part of a language continuum; it should be a "natural" stage within the documentable history of a language. Its historical reality is not simply assured by scholarly tradition or practice, but only by definitely established, describable initial and terminal boundaries and by criteria applicable to the corpus of the entire period in question. (261)

A major advantage of specific and maximal periodization is the fact that it by no means handicaps the description of the transition to adjacent periods, but on the contrary forces the historiographers to consider internal change as well as internal cohesion and the impact of external historical events. (266)


 Penzl は,言語史の区分においては,言語内的な基準が唯一の基準であり,言語外的な基準は参照しないという考え方のようである.他言語との言語接触などの社会言語学的な要因は,言語内的な基準により定められた区画のなかで,その影響を考察すべきものであり,逆ではないという立場だ.
 一方で,Görlach のように,内面史と外面史のバランスを取った時代区分をよしとする論者もある.Görlach は,初期近代英語の始まりを1500年とする言語外的な根拠として,印刷術の開始 (1476) ,バラ戦争の終結 (1471) ,人文主義の開始 (1485--1510) ,英国国教会のローマとの分離 (1534) ,アメリカの発見 (1492) などの歴史的出来事を挙げている.
 しかし,Penzl (266) によれば,初期近代英語の終点である1700年前後については,英語の発展に直接あるいは間接の影響を及ぼす歴史的事件として目立ったものはない.しかし,言語内的にみれば,短母音字 <a>, <u> が現在の音価をもつに至っていたという事実や,規範文法がすでに固まっていたという事実があると述べている.
 時代区分は研究のためにあるのであり,研究のために時代区分があるわけではないが,現実問題としては相互依存の関係であるのも確かである.初期近代英語というくくりに基づいた研究で多くの成果が出てきているという事実は重く見るべきだろう.

 ・ Penzl, Herbert. "Periodization in Language History: Early Modern English and the Other Period." Studies in Early Modern English. Ed. Dieter Kastovsky. Mouton de Gruyter, 1994. 261--68.

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2012-07-13 Fri

#1173. 言語変化の必然と偶然 [synthesis_to_analysis][inflection][old_norse][contact][causation][historiography][language_change][philosophy_of_language]

 先日,大学の英語史の授業で,英語の屈折の衰退について,[2012-07-10-1]の記事「#1170. 古ノルド語との言語接触と屈折の衰退」で概説した議論を紹介した.屈折の衰退は,英語が総合的言語から分析的な言語 (synthesis_to_analysis へと言語類型を転換させる契機となった大変化であり,それ自身が,言語内的な要因だけでなく古ノルド語との接触といった言語外的な要因によって引き起こされたと考えられている.これは,英語史の多数の話題のなかでも,最もダイナミックで好奇心をくすぐる議論ではないだろうか.なにしろ,仮説であるとはいえ,説得力のある内的・外的な要因がいろいろと挙げられて,英語史上の大変化が見事に説明されるのだから,「そうか,言語変化にもちゃんと理由があるのだなあ」と感慨ひとしお,となるのも必定である.実際に,多くの学生が,この大変化の「原因」や「理由」がよく理解できたと,直接あるいは間接にコメントで述べていた.
 ところが,ある学生のコメントに次のようにあり,目から鱗が落ちた.「言語が今日どうあるかは,本当にぐう然でしかないんだなと思った。」
 こちらとしては,言語変化には原因や理由があり,完全に説明しきれるわけではないものの,ある程度は必然的である,ということを,屈折の衰退という事例を参照して,主張しようとした.実際に,多くの学生がその趣旨で解釈した.しかし,趣旨と真っ向から反する「偶然」観が提示され,完全に意表を突かれた格好となった.
 言語変化の原因論については causation の各記事で扱ってきたように,歴史言語学における最重要の問題だと考える.これは歴史における必然と偶然の問題と重なっており,哲学の問題といってよい.ある言語変化の原因を究明したとしても,その原因で説明できるのはどこまでなのか,どこまでを歴史的必然とみなせるのかという問題が残る.裏を返せば,その変化のどこまでが歴史的偶然の産物なのかという問題にもなる.
 すべて偶然だと言ってしまうと,そこで議論はストップする.すべて必然だと言ってしまうと,すべてに説明を与えなければならず,息苦しい.あるところまでは偶然で,あるところまでは必然だというのが正しいのだろうと考えているが,授業にせよ歴史記述にせよ,話している方も聞いている方も興味を感じるのは,必然の議論,理由があるという議論だろう.説明が与えられないよりも与えられたほうが「腑に落ちる」感覚を味わえるからだ.ただし,上の学生のコメントが誘発する問いは,常に抱いておきたい.

Referrer (Inside): [2016-05-29-1] [2015-06-28-1]

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2012-05-24 Thu

#1123. 言語変化の原因と歴史言語学 [language_change][causation][prediction_of_language_change][historiography]

 言語変化の原因はどこまで探ることができるのか,あるいはそもそも探ることができるものなのかどうか.これは,歴史言語学の本質的な疑問であり,本ブログでも causation の各記事で間接的に話題にしてきた.また,かつての言語変化の原因の解明は,今後の言語変化の予測可能性という問題にも関係するが,その議論は prediction_of_language_change で取り上げてきた.今回は,言語変化の原因を探ることに消極的な学者と積極的な学者の意見をそれぞれ紹介したい.前者を表明する Postal (283) は,言語変化は fashion であり,ランダムだという意見である.

. . . there is no more reason for languages to change than there is for automobiles to add fins one year and remove them the next, for jackets to have three buttons one year and two the next.


 Postal によれば,言語変化の原因は探ることができないものであり,探ってもしかたのないものである.一方で,Smith はこの考え方を批判している.個々の言語変化の原因は究極的には解明できないかもしれないが,一般論として言語変化の原因は議論できるはずである.そして,歴史言語学が原因を探ることをやめてしまえば,ただの年表作成に終始してしまうだろうと,反論を繰り広げる.Smith より,2カ所を引用しよう.

. . . it is held here that an adequate history of English must attempt at least to take account of the 'why' as well as the 'how' of the changes the language has undergone; problems of causation must therefore be confronted in any historical account, however provisional the resulting explanations might be. (12)


Although it is not possible, given the limitations of the evidence, to offer absolute proof as to the motivation of a particular linguistic innovation, or to predict the precise development of linguistic phenomena, nevertheless a rationally arguable historical explanation can be offered for the kinds of changes which languages can undergo, and a broad prediction can be made about the kinds of change which are liable to happen. This seems a reasonable goal for any historical enquiry which seeks to go beyond the simple chronicle. (194)


 Smith は,言語変化は言語内的および言語外的な複数の原因(あるいは条件的要素)が複雑に組み合わさって生じるという認識であり,それを積極的に探り,論じるのが歴史言語学者の仕事だと確信している.言語変化の予測 (prediction_of_language_change) にまで踏み込む言及があり,これには異論もあるに違いないが,私は概ね Smith の意見に賛成である.なお,Smith 先生は私の恩師です.

 ・ Postal, P. Aspects of Phonological Theory. New York: Harper & Row, 1968.
 ・ Smith, Jeremy J. An Historical Study of English: Function, Form and Change. London: Routledge, 1996.

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