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preposition - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2019-12-08 10:39

2013-12-13 Fri

#1691. than の代用としての as [conjunction][comparison][preposition]

 than は形容詞や副詞の比較級の後に用いられるのが通常である.一方,原級は as [so] . . . as ののように,as をもって比較対象を示す.しかし,比較級と as がタッグを組む構造がある.規範文法に照らせば誤用となるが,歴史的に文証されるし,現在でも各方言で見られる.OED の as, adv. and conj. の B. 5 では,次のようにある.

5. After the comparative degree: than. Now Eng. regional (Yorks.), Sc. regional, Irish English (north.) and U.S. regional.
   [Compare German besser als better than, classical Latin tam...quam as..as, plus quam more than.]


 例文も,c1300年の初例から,現代英語に至るまで15例が取り上げられている.MEDas (conj.) の語義 3(b) のもとに,3つの例文が挙げられている.いくつかランダムに挙げよう.

 ・ c1300 St. Edward Elder (Laud) l. 38 in C. Horstmann Early S.-Eng. Legendary (1887) 48 (MED), Fellere þing nis non ase wumman ȝware heo wole to vuele wende.
 ・ ?a1425(1373) * Lelamour Macer (Sln 5) 67b: Also this erbe haviþ mo vertues as endyue haþe.
 ・ (1460) Paston 3.241: I hadde never more neede for to have help of my goode, as I have at this tyme.
 ・ a1475(?a1430) Lydg. Pilgr.(Vit C.13) 2914: Hys lordshepe was nat mor at al, As ben thys lordys temporal.
 ・ ?a1600 Marriage Wit & Wisdom (1846) iii. 27, I had rather haue your rome as your componie.
 ・ 1893 H. A. Shands Some Peculiarities of Speech in Mississippi 17 Illiterate whites..say: 'This is better as that', 'I'd rather have this as that', etc.


 なお,than の代用としての as については,細江 (447) が次のように述べている.

 これは今日においてはまず廃語ではあるが,近世初期にはなお多く用いられたもので,その後の書中にも散見する。
 たとえば,
 Darkness itself is no more opposite to light as their actions were diametrical to their words.---James Howell.
 I rather like him as otherwise.---Scott.


 ラテン語,ドイツ語でも原級の場合と比較級の場合とでは同じ接続詞を用いるし,フランス語 que もそうだ.このように他言語と比べると,むしろ英語が asthan を区別するほうが説明を要するのではないかとすら思えてくる.比較級の asthan に比べれば歴史的にも周辺的ではあったろうが,中英語から近代英語にかけての分布は調べてみる価値がありそうだ.
 asthan の語源については,それぞれ「#693. as, so, also」 ([2011-03-21-1]) 及び「#1038. thenthan」 ([2012-02-29-1]) を参照.また,比較の前置詞 to については,「#1180. ロマンス系比較級と共起する比較基準の前置詞 to」 ([2012-07-20-1]) を参照.

 ・ 細江 逸記 『英文法汎論』3版 泰文堂,1926年.

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2013-10-20 Sun

#1637. CLMET3.0 で betweenbetwixt の分布を調査 [corpus][lmode][preposition][clmet]

 今年3月に Leuven 大学の Hendrik De Smet により The Corpus of Late Modern English Texts, version 3.0 (CLMET3.0) が公開された.編者にメールで使用許可をもらえば無償でダウンロードし利用できる.1710--1920年のイギリス英語コーパスで,約3,400万語からなるジャンルを整理したバランスコーパスである(先行版 CLMETEV の1500万語から大幅に拡大).プレーンテキストとタグ付きテキストで配布されており,70年間で分けた3つの時代区分ごとにヒット数を数える Perl スクリプトが付属しており,とりあえず使うのに便利である.コーパスの構成は以下の通り.

Sub-periodNumber of authorsNumber of textsNumber of words
1710--1780518810,480,431
1780--1850709911,285,587
1850--19209114612,620,207
TOTAL21233334,386,225

Genre1710--17801780--18501850--1920
Narrative fiction4,642,670 words4,830,7186,311,301
Narrative non-fiction1,863,8551,940,245958,410
Drama407,885347,493607,401
Letters1,016,745714,343479,724
Treatise1,114,5211,692,9921,782,124
Other1,434,7551,759,7962,481,247


 現在関心をもっている betweenbetwixt の揺れについて,後期近代英語でそれぞれがどのような分布を示すか,CLMET3.0 で軽く調査してみた.付属の検索ツールで検索した結果は,以下の通り.

Sub-periodbetweenbetwixt
1710--17804,869 words (464.58 wpm)657 (62.69 wpm)
1780--18505,457 (483.54 wpm)109 (9.66 wpm)
1850--19207,672 (607.91 wpm)51 (4.04 wpm)


 18世紀中は,between (88.11%) と並んで betwixt (11.89%) が,まだある程度の比率で使われていた.しかし,19世紀以降に激減し,現代英語における影の薄い変異形となったことがわかる.
 なお,De Smet は同じサイトで The Corpus of English Novels (CEN) も公開している.こちらは1882--1922年という1世代の間に書かれた英米の小説を集めたもので,短期間の言語変化調査や作家間の語法比較を念頭に置いたコーパスだという.全体で2,600万語からなる(内訳はソースHTMLを参照).こちらで調べると,between が9,905例 (98.86%),betwixt が114例 (1.14%) であり,確かに後者はすでに影が薄い.

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2013-10-05 Sat

#1622. eLALME [me_dialect][lalme][preposition][map][web_service]

 昨日の記事「#1621. The Middle English Grammar Corpus (MEG-C)」 ([2013-10-04-1]) で触れたが,後期中英語の方言地図 LALME の改訂・電子版 eLALME が,今年,Edinburgh 大学よりオンラインで公開された.書籍版 LALME にあった誤りが訂正されるなど,改訂版といってよく,機能の豊富さや検索の便などで,今後は電子版が主として利用されてゆくことになると思われる.
 書籍版に対して種々の拡張がなされているが,Item Number などの対応番号が異なっているものもあるので注意を要する.例えば,between の異形の分布について,書籍版では Dot Maps 703--06, 1118--19 に6種類の分布図が掲載されているが,電子版では Item Number 89 のもとに16種類の分布図が掲載されている.実際,Dot Map の数は電子版になって1/3以上増えた.
 また,ユーザー定義の方言地図が描けるというのが目を見張る.「#1394. between の異形態の分布の通時的変化」 ([2013-02-19-1]) や昨日の記事 ([2013-10-04-1]) でも話題にした between の歴史的異形に関して,語末の子音群に x を含むタイプが後期中英語でどのように分布していたかを知りたい場合を想定しよう."User-defined Maps" の機能から,"Select one or more items" で "89 BETWEEN pr [North & Ireland]" を選んだ上で,"Select one or more forms" で x を含む形態のすべてにチェックを入れる.それから "Make map" をクリックすれば,以下のような Dot Map が得られるという仕組みである.既製の Dot Map よりも,条件を細かくチューニングできる.

Map of x-Type of BETWEEN by eLALME

 書籍版の Item Map に相当するものは,ウェブ上での地図製作技術の限界から,電子版では得られない.しかし,代替手段として,ユーザー定義地図のドットをクリックすることにより,その地点における言語項目の異綴字をポップアップさせることができる.これは既製の Dot Map では不可能なので,ユーザー定義地図の利用価値は高い.
 昨日紹介した LALME 系コーパス The Middle English Grammar Corpus (MEG-C) と合わせて,中英語方言研究もついに本格的にデジタル時代へ突入したといえるのではないか.
 なお,方言地図作成といえば自作の「#846. HelMapperUK --- hellog 仕様の英国地図作成 CGI」 ([2011-08-21-1]) もどうぞ.

 ・ McIntosh, Angus, M. L. Samuels, and M. Benskin. A Linguistic Atlas of Late Mediaeval English. 4 vols. Aberdeen: Aberdeen UP, 1986.

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2013-10-04 Fri

#1621. The Middle English Grammar Corpus (MEG-C) [corpus][preposition][me_dialect]

 ノルウェーの Stavanger 大学で,Merja Stenroos 氏が中心となって The Middle English Scribal Texts Programme (MEST) が進行中である.Glasgow 大学と Helsinki 大学の協力のもとに,中英語のテキストのコーパス化が進んでいる.このプログラムは具体的には2つのプロジェクトからなり,1つは1998年に Glasgow 大学が立ち上げた Middle English Grammar Project の延長線上にある The Middle English Grammar Corpus (MEG-C) の編纂で,もう1つは2012年に開始された Language and Geography in Middle English Local Documents (MELD) である.
 今回は,前者のプロジェクト MEG-C について紹介したい.このコーパスは,後期中英語の方言地図 LALME のソースとなったテキストを電子化するという目的で編纂されている.姉妹版である初期中英語の方言地図 LAEME が最初からコーパス付きでオンライン公開されたのと対照的に,LALME では,編纂された時代が時代だけに,方言地図が紙媒体で公表されたにすぎなかった.2013年に LALME が改訂・電子化され eLALME としてアクセスできるようになったが,方言地図作成のもととなった資料自体は電子化されていなかった.現在,そのコーパスファイル群がMEG-C files から自由にダウンロードできるようになっている.
 MEG-C は,実際には LALME の参照した1350--1500年のソーステキストのみならず,より早い時期のテキストをも含むコーパスとして成長している.長いテキストについては3000語のサンプルを取って収容しているが,現行の2011.1版では,目標とするテキストの半分ほどがカバーされているという.写本やファクシミリから転写しているというから,LAEME のコーパスに勝るとも劣らぬ大変な労力である.ありがたく利用させていただきたい.
 早速,MEG-C にちょっとした検索をかけてみた.「#1394. between の異形態の分布の通時的変化」 ([2013-02-19-1]) で見た between の歴史的異形の分布のなかで,とりわけ語尾において x をもつ betwix(t) タイプが,後期中英語でどれくらい使用されていたかに関心があった.そこで検索してみると,104例が -x で終わるタイプ,14例が -xe で終わるタイプ,2例が -xt で終わるタイプという結果が出た.この頻度の傾向は,Helsinki Corpus による M3--M4期からの証拠とほぼ符合する.互いのコーパスの信頼度を測ることができたといえるだろう.
 中英語の方言研究も,ますますツールが充実してきた感がある.

 ・ Stenroos, Merja, Martti Mäkinen, Simon Horobin, and Jeremy Smith. The Middle English Grammar Corpus, version 2011. 1. U of Stavanger, 2011. Online at http://www.uis.no/research/culture/the_middle_english_grammar_project/. Accessed : 4 October 2013.

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2013-08-18 Sun

#1574. amongst の -st 語尾 [preposition][phonetics][euphony][analogy][suffix][morpheme]

 -st の語尾音添加 (paragoge) については,昨日の記事「#1573. amidst の -st 語尾」 ([2013-08-17-1]) を含め,##508,509,510,739,1389,1393,1394,1399,1554,1555,1573 の各記事で扱ってきた.その流れで,今日は amongst について.
 OED によると,語尾音添加形は15世紀に起こっており,挙げられている例としては amongest の綴字で16世紀初頭の "1509 Bp. J. Fisher Wks. (1876) 296 Yf ony faccyons or bendes were made secretely amongest her hede Officers." が最も古い.直接のモデルとなったと考えられる amonges のような形態はすでに中英語で広く用いられていた(MEDamong(es (prep.) を参照).apheresis (語頭音消失)を経た 'mongst も16世紀半ばから現われている.
 小西 (69) によれば,amongamongst のあいだに意味の違いはなく,使用頻度は10対1である.ただし,イギリス英語ではアメリカ英語よりも amongst の使用頻度が高い.母音の前では好音調 (euphony) から amongst が用いられる傾向があるという指摘もあるが,BNC を用いた調査ではそのような結果は出なかったとしている.この指摘が示唆的なのは,「#1554. against の -st 語尾」 ([2013-07-29-1]) で触れたように,-st 語尾の添加は後続する定冠詞の語頭子音との結合に起因するという説との関連においてである.もし amongst + 母音の傾向があるとすれば,逆方向ではあるが同じ euphony で説明されることになる.
 さて,本ブログではこれまで -st の語尾音添加について against, amidst, amongst, betwixt, unbeknownst, whilst の6語についてみてきた.OED や語源辞典で得た初出時期の情報を一覧してみよう.

againstc1300
betwixtc1300
whilsta1400
amongstC15
amidstC15
unbeknownst1854


 unbeknownst は別として,初例が14--15世紀に集まっている.集まっているとみるか散らばっているとみるかは観点一つだが,後期中英語以降 -st 語群の緩やかな連合が発達してきたように思われる.生産性はきわめて低いながらも,形態素 -st を見出しとして立てるのは行き過ぎだろうか.

 ・ 小西 友七 編 『現代英語語法辞典』 三省堂,2006年.

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2013-08-17 Sat

#1573. amidst の -st 語尾 [preposition][genitive][phonetics][analogy]

 「#1554. against の -st 語尾」 ([2013-07-29-1]) や「#1555. unbeknownst」 ([2013-07-30-1]) などの記事に引き続き,-st 添加の話題.
 amidst は,古英語 on middan に由来する中英語 amid に副詞的属格語尾 -es を付加して amiddes を作り,そこにさらに -t を付加した語形成である.amid の初例は ?a1200 の Layamon であり,amiddes は14世紀前半に初出している.中英語からの例は,MEDamid(de, amiddes (adv. & prep.) を参照.
 -t を添加した amidst 系列については,OED の例文つき初出は "1565 T. Stapleton tr. Bede Hist. Church Eng. 66 Warme with a softe fyre burning amidest therof." であるが,amidest の綴字は15世紀から現われているようだ.その apheresis (語頭音消失)の結果と考えられる myddest が,名詞としてではあるがやはり15世紀に文証されており,amidst と相互に影響し合っていた可能性がある.興味深いのは,OED "midst, n., prep., and adv. の語義 C1 によると,14世紀に m が挿入された綴字ではあるが,mydmeste という形態が文証されることである.

 1. In the middle place. Obs.
  Only in first, last, and midst and similar phrases recalling Milton's use (quot. 1667).

[c1384 Bible (Wycliffite, E.V.) (Douce 369(2)) (1850) Matt. Prol. 1 In the whiche gospel it is profitable to men desyrynge God, so to knowe the first, the mydmeste, other the last.]
1667 Milton Paradise Lost v. 165 On Earth joyn all yee Creatures to extoll Him first, him last, him midst, and without end.


 first, last, and midst という句が示すとおり,最上級の -st との連想(そして Coda での押韻)が作用していることがわかる.
 -st の語尾音添加 (paragoge) を受けた against, amidst, amongst, betwixt, whilst などのあいだには,意味的に「間」や最上級と連想されうる要素が共有されているようにも思われるし,機能語としての役割も共通している.初出の時期も,-(e)s 系列も含めて,およそ中英語から近代英語にかけての時期にパラパラと現われている.微弱ながらも,何らかの類推 (analogy) が作用していそうである.
 なお,現代英語における amidamidst の使い分けについて,小西 (70) より記そう.両者ともに文語的だが,専門データベースによると前者のほうが12倍以上の頻度を示す.しかし,amidst はイギリス英語で好まれるという特徴がある.また,OED によると,"There is a tendency to use amidst more distributively than amid, e.g. of things scattered about, or a thing moving, in the midst of others." とある通り,amidst は個別的な意味が強いというが,これが事実だとすれば -st の音韻的な重さと意味上の強調とのあいだに何らかの関係を疑うことができるかもしれない.
 -st 語尾音添加については,ほかにも[2013-07-29-1]の記事の末尾につけたリンク先の諸記事を参照.

 ・ 小西 友七 編 『現代英語語法辞典』 三省堂,2006年.

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2013-08-14 Wed

#1570. all over the worldall the world over [preposition][adverb][word_order][reanalysis]

 通常の分析によれば,all over the world における over は前置詞と解され,all the world over は副詞と解されるだろう.前置詞が後ろに置かれては用語上の自家撞着であるから,後者は副詞と考えるのが妥当ではないかという議論はもっともである.とはいえ,共時的には様々な理論的な分析が可能である.
 しかし,歴史的にみれば,両表現に大きな差はない.それぞれの句は,文字通り,起源を同じくする表現の over が前に出ている版か後ろに出ている版かの違いにすぎない.古英語や中英語では,前置詞がその目的語の後ろに回る表現も見られたからである.いや,「前置詞が目的語の後ろに回る」という表現の仕方は時代錯誤かもしれない.初期中英語までは,目的語に相当する名詞句は形態的に与格や対格などに格変化しており,それだけで副詞的な機能を示しえた.だが,その副詞的な機能をより明確に表わすために,前置詞に相当する副詞や小辞が,前であれ後ろであれ,近くに添えられることがあった.後期中英語以降に格が衰退し,名詞句それ自身で格を示すことができなくなると,その名詞句は近くの副詞や小辞とともに構造をなしていると解釈される機会が増え,「前置詞+目的語」あるいは「目的語+前置詞」と再分析 (reanalysis) されるようになった.もとより前者の語順のほうが普通であったことは確かであるし,他の範疇でも「主要部+補語」の語順が一般的であったから,「前置詞+目的語」の順序で固定化したことは自然である.
 近代になると前置詞が後ろに回る古い語順は衰退したが,現代英語に至るまで,詩においては前置詞の後置は珍しくない.細江 (213--14) の挙げている例を再現しよう.

 ・ While the cock... / Stoutly struts his dames before.---Milton.
 ・ For having but thought my heart within. / A treble penance must be done.---Scott.
 ・ She must lay her conscious head / A husband's trusting heart beside.---Byron.
 ・ His leaves that live December through.---Housman.
 ・ As the boat-head wound along / The willowy hills and fields among.---Tennyson.
 ・ The corn-sheaves whisper the grave around.---Mrs. Hemans.


 詩のほかには,慣用的な句においても古い語順が見られる.標記の all the world over がその例であり,all the year around なども同じである.細江 (214) の注では,他の例とともに標記の句について次のような記述があるので,参考までに引用しておこう.

Cp. I'll search all England through.---Anne Brontë; Which they keep all the year through.---Charlotte Brontë; Here I stayed the winter throgh.---Watts-Dunton. これらは副詞と解すべきであるが,今日の前置詞の多くは元来動詞の頭についた接頭辞が分離してまず副詞となり,それが再転して前置詞となったものであるから,用法のあるのにはなんの不思議もない。Cp. all the world over, all over the world.


 ・ 細江 逸記 『英文法汎論』3版 泰文堂,1926年.

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2013-07-29 Mon

#1554. against の -st 語尾 [preposition][adverb][genitive][phonetics][link]

 語源的には againstagain から派生した形態だが,いったいこの -st 語尾は何なのだろうか.
 古英語で,again は ongēan などの形態で副詞,前置詞(与格あるいは対格を支配する),接頭辞として広く機能していた.平行して,副詞を示す属格語尾語尾を伴った ongēanes などの形態も行なわれていた([2009-07-18-1]の記事「#81. oncetwice の -ce とは何か」を参照).中英語になると,前置詞としての again は,異形 agains および後続の against とともに競合し始め,近代英語の標準語確立の過程で副詞としての機能に限定されてゆくこととなった.近代英語で前置詞としての標準的な地位を確立したのは,最も後発の against だった.
 さて,again の直後の -(e)s の添加は,上述の通り,副詞化する属格語尾とされているが,さらなる t の添加はどのように説明されるだろうか.OED の against, prep., conj., adv., and n. の語源欄によると次のようにある.

The development of excrescent final -t . . . was probably reinforced by the fact that the word was frequently followed by te, variant of THE adj., and perhaps also by association with superlatives in -st; compare similarly AMONGST prep. 1a, AMIDST adv., BETWIXT prep.


 『英語語源辞典』の記述も,OED に沿っているが,補足説明がある.

-t はおそらく最上級の -st と混同されたための添え字 (cf. AMIDST, AMONGST, BETWIXT), または agains þeagains teagainst(e) þe (cf. hwīls þatwhilst þat) となる異分析によるものか.この -st に終わる語形の最初の例は Layamon Brut の Otho 写本 (c1300) に aȝenest として見いだされる(Caligula 写本 (?a1200) では toȝines). Trevisa や1400年以降 London の英語では広く使用され,16C半には文語として確立した.again, against とも ModE -g- の綴りと発音は ON の影響を受けた北部方言による.


 Brut からの初例は,MED ayēn(e)s (prep.) 1(b) より,"c1300 Lay. Brut (Otho C.13) 22476: He dude ase a wisman and wende a3enest [Clg: to3eines] him anon." である.
 上記より,against の -st 添加については,(1) 最上級語尾 -st との類推,(2) 直後の定冠詞の語頭子音に関わる異分析,という説明が提案されてきたということである.同じ語尾添加の例として amidst, amongst, betwixt, whilst などがあるが,これらの初出時期,互いの機能的類似性,-st の有無による意味の相違,語末3子音連続の音韻論的意義などを考察して,総合的に迫るべき問題だろう.関連して,古英語 ongēan の類義語 tōgēan(es) に基づいて,-t の添加された形態が15世紀に toȝenes として初出していることも付け加えておく.
 ほかに against における語尾音添加 (paragoge) については,「#739. glide, prosthesis, epenthesis, paragoge」 ([2011-05-06-1]) を参照.また,whilst については「#508. Dracula に現れる whilst」 ([2010-09-17-1]),「#509. Dracula に現れる whilst (2)」 ([2010-09-18-1]),「#510. アメリカ英語における whilst の消失」 ([2010-09-19-1]) を,betwixt については「#1389. between の語源」 ([2013-02-14-1]),「#1393. between の歴史的異形態の豊富さ」([2013-02-18-1]),「#1394. between の異形態の分布の通時的変化」 ([2013-02-19-1]),「#1399. 初期中英語における between の異形態の分布」 ([2013-02-24-1]) を参照.

 ・ 寺澤 芳雄 (編集主幹) 『英語語源辞典』 研究社,1997年.

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2013-02-24 Sun

#1399. 初期中英語における between の異形態の分布 [laeme][corpus][preposition][me_dialect][methodology]

 「#1389. between の語源」 ([2013-02-14-1]),「#1393. between の歴史的異形態の豊富さ」([2013-02-18-1]),「#1394. between の異形態の分布の通時的変化」 ([2013-02-19-1]) に続いて,今回は LAEME を用いて通時的変化および方言別分布を調査した結果を報告する.
 Helsinki Corpus による通時的調査 ([2013-02-19-1]) の場合と同様に,多数の異形態をまとめるに当たって,語尾以外における母音の違いは無視し,第2音節以降の子音(と,もしあれば語尾の母音も)の種類と組み合わせに注目した.lexel に "between" を指定して取り出した例をもとに,241個のトークンを半世紀ごと,方言別に整理した(区分は[2012-10-10-1]の記事「#1262. The LAEME Corpus の代表性 (1)」で採用したものと同じ).原データはこちらを参照.以下,最初に年代別,次に方言別の集計結果を掲げる.

PERIODnnnnexxexnxtehnhetntxtxntxethsseynznSum
C12b181270000000000000028
C13a23419644091401010000085
C13b2032321341000102111164
C14a5132892200031000010064
Sum662172247941014321121211241

DIALECTnnnnexxexnxtehnhetntxtxntxethsseynznSum
N00192200001000000015
NEM140000000000000000014
NWM706000081400002000037
SEM1420950000030100000052
SWM3112675702001010101184
SW001630040000000010024
SE001400000000000010015
Sum662172247941014321121211241


 現代英語の between に連なる,n を含む最も普通のタイプが左3列に示されているが,bitweonen などの "nn" タイプは時代とともに "n" タイプや "ne" タイプに置換されてゆく様子がうかがえる.Mustanoja (369) は,"nn" タイプについて "The -en forms occur mainly in the more southern parts of the country" と記述しているが,実際には NEM や NWM にも現われている.つまり,"nn" タイプの分布は,方言の問題である以上に時代の問題である可能性がある.語尾の n の脱落がより北部で,かつ,より遅い時代に見られることは,予想できることだろう.
 n 系列には遠く及ばないが,bituixbitƿixen などの x 系列の使用がこの時期に稀でないことは,Helsinki Corpus の調査結果と符合している.x 系列は N, SEM, SWM, SW に分布しており,間に挟まれた NEM, NWM には文証されない.この分布は妙だが,全体として例が十分に多くないために,North Midlands の現存テキストに現われる機会がなかったということかもしれない.近代英語期にかけて成長する t を付加した xte タイプは,初期中英語では C13b SW に bitwixte などの形態でわずかに現われるにとどまっている.
 bituhenbituhe などの h 系列は,Helsinki Corpus によれば,古英語後期より一気に衰退したとのことだったが,LAEME によれば,初期中英語では C13a NWM に集中する形で生き残っていたようだ.しかし,その時までに衰退傾向は決定づけられていたと言えるだろう.
 今回の調査で感覚を得たが,(初期)中英語期に開始した,あるいは進行していると疑われる変化について調べるには,Helsinki Corpus で通時的変化を大づかみにした上で,LAEME を用いて,より細かい時代区分と方言の別を考慮して掘り下げてゆくのがよさそうだ.

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2013-02-20 Wed

#1395. up and down [etymology][adverb][preposition][map]

 副詞あるいは前置詞の up は,ゲルマン祖語 *upp- (オランダ語 op, ドイツ語 auf, 古ノルド語 upp), さらには印欧祖語 *upo に遡る.原義は「下から上へ」であり,そこから英語の「上に」へつながるのだが,興味深いことに,関連するラテン語 sub やギリシア語 hupó は起点である「下」が焦点化されて「下に」の語義を取ることになった.sub- (下), super- (上), hyp(o)- (下), hyper- (上) など,上下の入り乱れた語義発達である(関連して,[2010-04-14-1]の記事「#352. ラテン語 /s/ とギリシャ語 /h/ の対応」及び[2010-04-12-1]の記事「#350. hypermarketsupermarket」を参照).なお,英語の over も同根に遡る.
 一方,英語において up に対応する down は,語源がまったく別のところにある.古英語 of dūne (from the hill) が原型であり,adūne と縮まった後に,その語頭母音も消失して,古英語後期には dūne として現われている.つまり,副詞・前置詞 down は,同音異義語として辞書には別見出しとして挙げられている名詞 down (特にイングランド南部で牧羊に適する小高い草原地)と,語源的には関連していることになる.イングランド南部には North DownsSouth Downs と呼ばれる丘陵地帯が広がっているが,その down である.丘とは高くて上にあるものだから,それが down というのは妙なものだ.

Map of North Downs and South Downs

 古英語 dūne (丘)の由来はおそらく大陸時代のケルト語の *dūnom (砦)にあり,ここから後に英語となる言語を含むヨーロッパ諸言語へと借用されたと考えられる.オランダ語へ取り入れられた形態がフランス語経由で dune として,18世紀末に再び英語に入ってきたが,このときの意味は「砂丘」だった.
 なお,印欧祖語にまで遡れば,英語 towndown と同根(原義「砦」を参照)であり,語源的には downtown とは妙な組み合わせのように思えてくる.
 上か下かよくわからなくなる話しでした.

Referrer (Inside): [2019-08-03-1] [2014-09-02-1]

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2013-02-19 Tue

#1394. between の異形態の分布の通時的変化 [hc][corpus][preposition]

 「#1389. between の語源」 ([2013-02-14-1]) 及び昨日の記事「#1393. between の歴史的異形態の豊富さ」([2013-02-18-1]) に引き続いての話題.between の歴史的な異形態の分布を,Helsinki Corpus でざっと調査してみた.調査の結果,全コーパスより between の形態として 97 types, 793 tokens が確認された.以下はその97種類の異形態,異綴りである.

be-twen, be-twene, be-twix, be-twyen, be-twyn, be-twyx, be-twyxe, betuen, betuene, betuh, betuih, betuixt, betun, betux, betuyx, betwe, between, betweene, betwen, betwenan, betwene, betweoh, betweohn, betweon, betweonan, betweonen, betweonon, betweonum, betweox, betweoxan, betwex, betwi, betwih, betwihn, betwinan, betwinum, betwioh, betwion, betwix, betwixe, betwixt, betwixte, betwixts, betwne, betwoex, betwonen, betwuh, betwux, betwuxn, betwyh, betwyn, betwynan, betwyne, betwyx, betwyxe, betwyxen, betwyxte, bi-tuine, bi-twen, bi-twene, bi-twenen, bi-tweohnen, bi-tweone, bi-tweonen, bi-twexst, bi-twext, bi-twihan, bi-twixst, bituen, bituene, bituhe, bituhen, bituhhe, bituhhen, bituien, bituih, bituin, bituix, bitunon, bitweies, bitwen, bitwene, bitwenen, bitwenenn, bitweon, bitweone, bitweonen, bitweonon, bitweonum, bitwex, bitwexe, bitwien, bitwih, bitwix, bitwixe, bitwixen, bitwyxe


 全793例の形態を一定の基準でまとめて集計するのは容易ではないが,今回は語尾以外における母音の違いは無視することにし,第2音節以降の子音(と,もしあれば語尾の母音も)の種類と組み合わせによって集計した.例えば,"nm", "nn", "x", "xt" というタイプは,それぞれ betweonum, betweonan, betwyx, betwixt などの形態を代表する.以下の表は,Helsinki Corpus における時代区分を参照し,例の挙がらなかった O1 (古英語第1期)の時期を除く10期における通時的変化を要約したものである.


nmnnnnexxexnxtxtexstxtshhnhnnheseiSum
O214100130100003140000064
O35221605600000048000000147
O41153022000000300000044
M10284813010000041900068
M2015321110000000010042
M300431241801040000001083
M40041125621600000000156
E1001266200253000000000108
E2002344000316000000000104
E30054800014001000000077
Sum206712520015625572154182819111793


 現代の between に連なる n をもつ形態は,古英語から近代英語に至るまで一貫して主流派であることがわかる.betwix などの x 系列も,古英語から中英語まで n 系列に匹敵するほど頻用されているが,近代英語で xt 系列が出現するに及び,古くからの x 系列は影を潜めてゆく.h 系列は,古英語では盛んだったが,古英語末期から一気に衰退してゆく.
 中英語に関しては,方言による分布の差も調査する必要があるだろう.

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2013-02-18 Mon

#1393. between の歴史的異形態の豊富さ [preposition][etymology]

 「#1389. between の語源」 ([2013-02-14-1]) の記事で,between の語源を見た.between に連なる諸形態のほか,betwixt に連なる諸形態を確認したが,古英語や中英語にはさらに異なる系列も見られた.
 例えば,古英語の bitwih や中英語の bitwihe(n) のように h をもつものが確認される.これは,古英語以前の再建形で "two" を意味する後半要素の対格形が *twîhn のように h を含んでいたことに由来する.中英語形に見られる -e(n) 語尾は,bitwene(n) などの形態に基づく類推で加えられたものだろう.h を含む系列については,MED "bituhhe(n (prep.)" を参照.また,bitweies のような形態も中英語で文証される.これは,上記 bitwih などの形態に属格語尾が加えられたものと考えられる.MED "bitweien, bitweies (prep.)" を参照.
 このように,特に中英語期には異形態がひしめいて分布していた,Mustanoja (369) によればそれぞれの間に意味の区別はなかったという.中英語における乱立状態について,Mustanoja からの引用をもって要約しよう.

  BETWEEN(EN); BETWEIEN (BETWEIES); BETWIX(EN), BETWIXT, BETWUX); BETUH

 Between(en), from OE betweonum, and betwix(en, betwixt, betwux, betwixen), from OE betweox (-ix, -ux), are both found throughout the ME period, as in betweien (betweies), which results from a contamination of between with the numeral tweien. Betuh, a continuation of OE betweoh (-uh, -ih), survives only in earliest ME. The -en forms occur mainly in the more southern parts of the country. There do not seem to be any noticeable differences in meaning between these words.
 All the ME functions of these prepositions survive in present-day uses of between. In the sense 'among' between and betwix seem to occur somewhat more frequently in ME than today: --- þatt time þatt he come himm sellf Bitwenenn hemm to spellenn (Orm. 9422); --- the pitous joye . . . Bitwix hem thre (Ch. CT B ML 1115).


 この乱立状態は近代以降に解消されてゆき,現代では古風な betwixt を除けば between へと完全に収束したといえるが,どのような経緯で収束したのだろうか.Helsinki Corpus で調べてみたい.

 ・ Mustanoja, T. F. A Middle English Syntax. Helsinki: Société Néophilologique, 1960.

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2013-02-15 Fri

#1390. betweenamong の使い分け [preposition][prescriptive_grammar]

 昨日の記事「#1389. between の語源」 ([2013-02-14-1]) で取り上げたように,betweenamong の使い分けは,現代英語の語法問題として著名であり,多くの文法書や参考書で触れられている.一般に英文法において前置詞の使い分けは難しく,したがって主要な話題でもあるのだが,各前置詞の本質的な意味を理解することが肝心である.では,betweenamong のそれぞれを特徴づける意味とは何だろうか.
 両前置詞の各種の用法と用例については OED が語義を分けて詳細に記述しているので,それをじっくり読むのがよいが,種々の参考書に当たると,between は個別性を重視し,among は集合性を重視するといった特徴が指摘されていることが多い.確かに between は2という数字と結びつきが強いが,より重要なのは2という数字と結びつけられる個別性,対応性,具体性である.一方,among は,2より大きな数と結びつきやすいのは確かだが,より重要なのは具体的な個々の構成員というよりは漠然とした集合体と関連づけられるということだ.
 もし among が「3以上」を意味や用法の核としてもつのであれば,among the soldiers という集団に個人を付け加えて *among the soldiers and John と言えそうだが,実際には言えない.また,*the relations among a, b, c, d, and e などと個別に構成員を列挙することもできない.これらは集団性の原則に反するからだと考えられる.
 逆に,between が「3以上」を目的語に取る場合を考えると,そこには個別性が感じられるし,あくまで2の延長線上にあるという意味での3以上であると理解される.the divisions and conflicts between the various parts of Christendom, the fullest collaboration between all nations, a white and shining road between the singing nightingales, with long pauses between the sentences などの例を解釈すると,なるほどいずれも目的語は3以上と理解できるが,あくまで2という単位を基調とした組み合わせや倍数が念頭に置かれていると読める.
 between の目的語に来る構成員の数と,互いの間の関係について,論理的な観点から追究した(デンマーク人研究者とみられる)Bolbjerg の論文がある.これほど徹底的に論理に依存して between に迫った論文はない.議論は易しくはないが,実に整然としている.上に挙げたものを含む between の用例を吟味し,positive, negative, synthetic, analytic, midway, front, complex, reciprocity, interrelation などといった独自の用語と概念を駆使して,この前置詞の用法をきれいに分類したのである.ここで詳細を述べることはできないが,結論部 (Bolbjerg 132) に挙げられている wires between the housesbetween the teeth を例にとって,6つの用法をまとめよう.


wires between the housesbetween the teeth
MIDWAY"wires lying between the two houses""a fishbone between the teeth" (two)
FRONT"wires (being extended) from one house to another""the distance between the teeth" (two)
RECIPROCITY"wires connecting two houses""nip a cigar between the teeth" (one in lower, one in upper jaw)
TWO-ROW SYSTEM"(overhead) wires (for tramcars) between two rows of houses""with a handkerchief between the teeth" (lower and upper jaw)
ONE-ROW SYSTEM"wires between houses in a row (like railway carriages)""the interstices between the teeth" (lower or upper jaw)
ABSTRACT CONNECTION"(telephone) wires connecting all houses individually""the similarity between the teeth" (types of teeth)


 Bolbjerg (132) は,between を "feeler" (触覚器)にたとえて,結論とする.

Thus between, inherently dual in character, has the function of a feeler, i.e. it establishes a relation from one element to another or others individually. It cannot grasp a heap-like area, but must seek units one by one. It is a linguistic organ of touch built as a line. The feeler may act as a medium, as 'something between', i.e. an intermediate element with relations to either side. Or it may create a distance, or 'nothing between'. Finally it may function synthetically: feeling its way along by touching left and right, thus establishing a path between two rows of objects, --- or analytically: touching each of a number of objects individually or severally for examination.


 Bolbjerg の論文を読んだ上で私なりにまとめると,between は数と関係の前置詞,すなわち論理の前置詞であり,個別性,具体性,主体性を含意する一方,among は場所の前置詞であり,集合性,抽象性,客体性を含意する,ということになるだろうか.
 デンマークには,「#1074. Hjelmslev の言理学」 ([2012-04-05-1]) のように論理学的な言語学の伝統があるが,Bolbjerg もその伝統をなにがしか受け継いでいるかのように思わせる論文だった.
 なお,between の区別・選択・分配の用法については,「#1068. choose between war or peace」 ([2012-03-30-1]) の記事も参照.

 ・ Bolbjerg, A. "Between and Among: An Attempt at an Explanation." English Studies 30 (1949): 124--32.

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2013-02-14 Thu

#1389. between の語源 [etymology][preposition][prescriptive_grammar][metanalysis]

 規範文法では,betweenamong の使い分けについて,前者は「2つのものの間」,後者は「3つ以上のものの間」の意味に使うべし,とされている.この両者の区別の記述は,実際の使用に照らした記述的な観点からは多くの点で不十分だが,守るべき規則としてこだわる人は多い.この規則の拠って立つ基盤は,between の語源にある.語源が "by two" であるから,当然,目的語には2つのものしか来てはならないというわけである.
 では,もう少し詳しく between の語源をみてみよう.古英語では,betwēonum の系列と betwēon の系列とがあった.前者の後半要素 -twēonum は数詞 twā (two) の複数与格形に対応し,後者の後半要素 -twēon は同語の中性複数対格形に対応する.前者の系列は,betwēonan などの異形態を発達させて中英語で bitwene(n) となり,後者の系列は北部方言に限られたが中英語で bitwen となった.語尾音の弱化と消失により,結局のところ15世紀には2系列が融合し,現代の between に連なる形態が確立した.つまり,between は,古英語に遡る2系列の形態が,中英語において融合した結果と要約することができる.古英語で between the seas などの構文は,be sǣm twēonum "by seas two" として現われることから,本来 "by" と "two" は別々の統語的機能を担っていたと考えられるが,"by two seas" のように接する位置に並んだときに,1つの複合前置詞と異分析 (metanalysis) されるに至ったのだろう.類例に,to us-wardto-ward us の異分析がある.
 さて,between には,古めかしい同義語がある.betwixt である.こちらは古英語 betwēox に由来するが,後半要素 -twēox を遡ると,ゲルマン祖語の *twa "two" + *-iskaz "-ish" にたどりつく.「2つほどのものの間」というような,やんわりとした原義だったのだろうか.古英語でも betwux, betyx などの異形態があったが,中英語では bitwix(e) などの形態が優勢となった.1300年頃に,「Dracula に現れる whilst」 ([2010-09-17-1]) や「#739. glide, prosthesis, epenthesis, paragoge」 ([2011-05-06-1]) で触れたように,語尾に -t が添加され,これが一般化した.なお,現代英語の口語に,betwixt and between (どっちつかず,はっきりしない)という成句がある.
 中英語における異綴りなどは,MED "bitwēne (prep.)" および "bitwix(e) (prep.)" を参照.
 なお,冒頭に述べた betweenamong の規範的な使い分けについて,OED "between, prep., adv., and n." は語義19において,記述的な観点から妥当な意見を述べている.

In all senses, between has been, from its earliest appearance, extended to more than two. . . . It is still the only word available to express the relation of a thing to many surrounding things severally and individually, among expressing a relation to them collectively and vaguely: we should not say 'the space lying among the three points,' or 'a treaty among three powers,' or 'the choice lies among the three candidates in the select list,' or 'to insert a needle among the closed petals of a flower'.


 Fowler's (106) でも,規範的な区別の無効たることが示されている.小西 (176) では,「between を3つ以上のものに用いる用法は次第に容認される傾向があり,特に米国ではその傾向が著しい」とある.

 ・ Burchfield, Robert, ed. Fowler's Modern English Usage. Rev. 3rd ed. Oxford: OUP, 1998.
 ・ 小西 友七 編 『現代英語語法辞典』 三省堂,2006年.

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2013-02-13 Wed

#1388. inorganic for [preposition][syntax][metanalysis][germanic]

 現代英語の文法に,to 不定詞の意味上の主語を表わすために「for + (代)名詞」を前置させる構文がある.この for は主語を明示するという文法的な機能を担っているにすぎず,実質的な意味をもたないので,"inorganic for" と呼ばれることがある.for . . . to . . . 構文の起源と発達は英語史でも盛んに扱われている問題だが,現代英語のように同構文を広く自由に利用できる言語はゲルマン諸語を見渡してもない.自由奔放な使用例として "Hearne was no critic. A hasty and ill-natured judgment might conclude that it sufficed for a document to appear old for him to wish to print it." などを挙げながら,Zandvoort (265) は inorganic for を含む構文について次のように評している.

Both in familiar and in literary style this construction has branched out in so many directions that not only has it become one of the most distinctive features of modern English syntax, but on occasion, too, one of those that may be employed to give to an utterance a somewhat esoteric turn.


 上で自由奔放と呼んできたのは,"It is absurd for us to quarrel." のような典型的な用法のみならず,様々な統語環境に現われうるからだ.例えば,"The rule was for women and men to sit apart." のような主格補語での用法,"For us to have refused the loan would have been a declaration of economic war." のような条件あるいは結果の用法,"She longed for him to say something." や "I always wanted so for things to be beautiful." のような動詞の後に置かれる用法,"I am not afraid for them to see it." のように形容詞の後に置かれる用法,"There were cries for the motion to be put." のように名詞と関わって目的を表わす用法など.Zandvoort (268) は,inorganic for のこれらの用法を体系的に記述した文法書が見当たらないなかで,Kruisinga の未刊の講義ノートに収められていた,簡潔にして的を射た記述を見つけ,絶賛した.

Prepositional Object and Stem with to.
Type: I shall be glad for you to help us. --- With regard to the facts of Living English it must be understood that the constr. is a supplementary one to the plain object & stem. the two are really parallel: a) the plain obj. & verbal stem are used with verbs; b) the preposit. object & stem is used with nouns & adjectives chiefly, and as a subject & nom. predicate, i.e. in practically all the other functions when a stem with to can be used at all. Finally the prep. obj. with stem is found with verbs, in a more or less clearly final meaning (see quot. in Shorter Acc.: pushing the glasses along the counter nodded for them to be filled).


 "It is absurd for us to quarrel." などの構文の起源については,英語史では "It is absurd for us | to quarrel." → "It is absurd | for us to quarrel." という統語上の異分析 (metanalysis) によるものとされている.Zandvoort (269) は,この異分析が可能となるためには for usabsurd の後ろに現われることが必要であり,英語の語順ではこの条件を満たしているという点を重視する.ドイツ語やオランダ語では,問題の for us に相当する部分は形容詞の前に現われるのであり,異分析はあり得ない.同族言語との比較に基づき,この構文の起源の問題には "the fixity of English word-order" (269) という観点を含める必要があるとの主張は説得力がある.

 ・ Zandvoort, R. W. "A Note on Inorganic For." English Studies 30 (1949): 265--69.

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2013-01-07 Mon

#1351. 受動態の動作主に用いられた throughat [preposition][passive]

 昨日の記事「#1350. 受動態の動作主に用いられる of」 ([2013-01-06-1]) や「#1333. 中英語で受動態の動作主に用いられた前置詞」 ([2012-12-20-1]) で触れなかったが,もう2つばかり取り上げるべき前置詞があった.throughat である.
 through については,OED の through, prep. and adv. 7b に,すでに廃用としてであるが,受動態の動作主としての語義が与えられている.初例は c900 の Bede の Historia Ecclesiastica Gentis Anglorum の翻訳から,最終例は1598年のもので,全部で8例しか挙げられていない.また,MED は,受動態の動作主の用法としては語義を立てていない.中英語での用法について,いくぶんか詳しいのは Mustanoja (408) である.

Indicating the agent of a passive verb through is not particularly common in OE, and in ME it loses ground steadily: --- þuruh me ne schulde hit never more beon iupped (Ancr. 38); --- in Rome throu an þat hight Neron . . . Naild on þe rod he [Peter] was (Cursor 20909, Cotton MS); --- alle cristen folk been fled fro that contree Thurgh payens (Ch. CT B ML 542; it is impossible to say for certain whether been fled is an active or passive form).


 一方,at については,中尾 (355) によれば,中英語で「きわめてまれだが受動構造の動作主 (passive agent) をあらわす Prp として起こることがある」.MED では,語義9に "Of means or agency: by means of, through; by (sb.)." とあるが,例を眺めてみると,いずれも受動態の動作主として解釈できるかどうかは必ずしも明確ではない.OED では語義は立てられておらず,Mustanoja にも記述がない.at が受動態の動作主の用法をもっていたかどうか,疑わしくなってきた.
 なお,15世紀における ofby の競合について,中尾 (358) より興味深い記述を付け加えておく.「15世紀になるととくに口語では by が of を圧倒して行くようになる (Cely/PL/Shillingford/Stonor では of:by≒1:14)。」

 ・ Mustanoja, T. F. A Middle English Syntax. Helsinki: Société Néophilologique, 1960.
 ・ 中尾 俊夫 『英語史 II』 英語学大系第9巻,大修館書店,1972年.38頁.

Referrer (Inside): [2015-07-14-1]

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2013-01-06 Sun

#1350. 受動態の動作主に用いられる of [preposition][passive]

 「#1333. 中英語で受動態の動作主に用いられた前置詞」 ([2012-12-20-1]) で紹介した前置詞のうち,of に注目したい.of は,古英語の終わりから1600年頃まで,動作主の前置詞として広く使われた.その後 ofby に置換されていったが,近現代英語のいくつかの表現にかつての用法の痕跡をとどめている.細江 (277) に挙げられている例を引こう.

 ・ Then was Jesus led up of the spirit into the wilderness to be tempted of the devil. --- Matthew, iv. 1.
 ・ The poor sinner is forsaken of all. --- Eliot.
 ・ . . . while bream, beloved of our ancestors, cannot be recommended highly. --- Clifford Cordley. (in Chambers's Journal, Feb., 1916)
 ・ The observed of all observers --- Shakespeare Hamlet, III. i. 162
 ・ Thus she drew quite near to Clare, still unobserved of him --- Hardy Tess, XIX


 OED の of, prep. の該当箇所を引用しよう.

14. Introducing the agent after a passive verb.

The usual word for this is now by (BY prep. 33), which was prevalent by the 15th cent.; of was used alongside by until c1600. Of is subsequently found as a stylistic archaism in biblical, poetic, and literary use, and in certain constructions, e.g. 'on the part of'. In Old English of was less used than from (both of which, however, retain connotations of separation or origin): cf. German von from, of.

The use of of is most frequent after past participles expressing a continued non-physical action (as in admired, loved, hated, ordained of), or a condition resulting from a definite action (as in abandoned, deserted, forgotten, forsaken of, which approach branch II.). It is also occasional with participial adjectives in un-, as unseen of, unowned of. Of often shows an approach to the subjective genitive: cf. 'he was chosen of God to this work' with 'he was the chosen of the electors'. In other senses the agent has passed into the cause, as in afeard, afraid, frightened, terrified of; or the source or origin, as in born of. English of and by correspond somewhat to French de and par.


 be afraid of は,現代でこそ熟語として捉えられているが,中英語期にフランス語から入った「おびえさせる」を意味する動詞 affray を用いた典型的な受け身表現の名残にすぎない.また,引用の終わりのほうに触れられている born(e) of については,「#966. borne of」 ([2011-12-19-1]) を参照.

 ・ 細江 逸記 『英文法汎論』3版 泰文堂,1926年.

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2012-12-20 Thu

#1333. 中英語で受動態の動作主に用いられた前置詞 [preposition][passive][timeline]

 中英語で動作主を示すのに用いられた前置詞には,by, from, mid, of, with があった.すべてが同じような頻度で用いられていたわけではなく,時代により盛衰が見られた.
 古英語では,主として from が,またしばしば of が動作主を表わすのに用いられていた.このうち from は14世紀まで使用されたが,後に廃れていった.一方,of は古英語の終わりから中英語にかけて著しく伸張し,1600年辺りまでは最も広く用いられた.次に現代英語に連なる by をみてみると,動作主を示す用法は,古英語でもそれらしき例があったと指摘されてはいるが,はっきりしない(下の Mustanoja からの3番目の引用を参照).動作主の by が中英語で例証されるようになるのは14世紀終わりからであり,15--16世紀にかけて拡大し,of と肩を並べるほどになる.そのほか,動作主の前置詞としてはそれほど目立たないが,13世紀より文証される with や初期中英語で散見される mid の例もある.
 それぞれが廃用になった時期や各時代の相対頻度などの詳細は未調査だが,大雑把に時系列に並べてみると次のようになるだろう.

       1000      1100      1200      1300      1400      1500      1600      1700
from :************************************** - - -
of   :*************************************************************** - - -
bi   : - - -                                    *******************************
with :                        - - *** - -
mid  :                   - - *** - -

 Mustanoja より,各前置詞の関連する記述箇所を引用しておこう.

From its function to indicate a person as a source of an action, first as a giver or sender, from develops into a preposition of agency in OE. In this function it occurs down to the 14th century: --- he wæs gehalgod to biscop fram þone ærcebiscop Willelm of Cantwarabyri (OE Chron. an. 1129); --- I . . . am sett king from hym upon Sion (Wyclif Ps. ii 6; am maad of hym a kyng, Purvey). (385--86)


To express agency of is used less frequently than from in OE, but it begins to gain ground towards the end of this period and becomes the most popular preposition expressing agency in connection with a passive verb down to c 1600. It is possible that this use of of has been promoted by the influence of OF de. Examples: --- ich wolde þet heo weren of alle alse heo beoþ of ou iholden (Ancr. 21); --- is alle biset of helle muchares (Ancr. 67); --- if he wolde be slayn of Symkyn (Ch. CT A Rv. 3959); --- enformed whan the kyng was of that knyght (Ch. CT F Sq. 335). (397)  


Wülfing II, p. 338, quotes a doubtful OE instance of be denoting agency with a passive verb, and R. Gottweiss (Anglia XXVIII, 1905, 353--4) calls attention to what he calls 'signs of the use of be with the passive' in Ælfric's homilies. BTS, be 20, quotes an example from the OE Gospel of St Luke (þa þing þe be him wærun gewordene 'quae febant ab eo,' ix 7). Cf. active cases like þat was agan þære bi þan kaisere (Lawman A 27982). Unambiguous ME instances where by indicates the agent of a passive verb occur from the end of the 14th century on (I praye Jhesu shorte hir lyves That wol nat be governed by hir wyves, Ch. CT D WB 1262; --- ne hadde he ben holpen by the steede of brass, Ch. CT F Sq. 666). This use becomes increasingly common in the 15th and 16th centuries. In the Cloud (MSS of the early 15th---early 16th century) of is a little more frequently used to denote agency than by. It may be assumed that the use of by to indicate the agent of a passive expression is promoted by the influence of French par. (374--75)


With begins to occur as a preposition of agency in the 13th century: --- heder was þat mayde brouȝt With marchaundes þat hur had bouȝt (Flor. & Bl. 408); --- he was with þe prestes shrive (Havelok 2489); --- and with twenty knyghtes take, O persone allone, withouten mo (Ch. CT A Kn. 2724). (420)


. . . instrumental mid is occasionally used to express agency in early ME: --- a lefdi was þet was mid hire voan biset at abuten (Ancr. 177). (394)


 ・ Mustanoja, T. F. A Middle English Syntax. Helsinki: Société Néophilologique, 1960.

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2012-08-10 Fri

#1201. 後期中英語から初期近代英語にかけての前置詞の爆発 [preposition][semantic_change]

 [2011-11-30-1]の記事「#947. 現代英語の前置詞一覧」で挙げたように,英語には数多くの前置詞が存在する.他の品詞から転用されたもの,語を組み合わせた複合的なもの,借用されたものなど,語源の種類はまちまちだが,周辺的なものや頻度の低いものを合わせると,ざっと200個ほどを数える.
 では,これらの前置詞が古くからあったかというと,そうではない.古英語では,[2009-05-28-1]の記事「#30. 古英語の前置詞と格」で紹介した30個ほどが認められるにすぎない.すると,その他の多くの前置詞は中英語以後に発生したことになる.より具体的には,いつだったのだろうか.
 MED Spelling Search より,"\(prep\.|prep\.\)" と検索してみると,254種類の前置詞を取り出すことができた.それならば中英語期に前置詞が爆発したかというと,話しはそう単純ではない.リストを眺めると,本来語要素を組み合わせた複合的な前置詞やその異形が多く,現代標準英語に伝わっていないものも多い.現代用いられている多種の前置詞は,近代英語以降に現われたと考えられる.
 個々の前置詞の初出年を OED などで丹念に調べてゆけばよいのだろうが,そこまでは行なっていない.代わりに,この問題に触れている Schmitt and Marsden (66) の記述を引用しよう.

In Early Modern English, many prepositions still had a far wider range of meanings than they do today. Now they are quite restricted in use, with consequent difficulties for learners. One reason for the changes is that many new prepositions and sprecialized prepositional phrases came into use in later Middle English and Early Modern English, meaning that the scope for each word became smaller. For example. several earlier functions of by were taken over by near, in accordance with, about, concerning, by reason of, and owing to; for came to be replaced often by because of or as regards; and prepositional but became almost wholly replaced by unless, except, or bar (though it survives in the phrase all but you).


 この記述によると,爆発期は後期中英語から初期近代英語にかけてであり,既存の前置詞の意味の狭めを伴っていたということになる.残念ながらこの言及を支持する典拠が Schmitt and Marsden には挙げられていなかった.他の文献でも簡単に調べてみたが,関連しそうな言及にはたどりつかなかった.Gelderen (176) に,ラテン語に由来する前置詞 per, plus, via が近代英語期に現われたことが触れられていたくらいである(それぞれ1528年, 1668年, 1779年).現時点ではこれ以上詳しいことはわかっていない.

 ・ Schmitt, Norbert, and Richard Marsden. Why Is English Like That? Ann Arbor, Mich.: U of Michigan P, 2006.
 ・ Gelderen, Elly van. A History of the English Language. Amsterdam, John Benjamins, 2006.

Referrer (Inside): [2014-01-03-1]

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2012-07-20 Fri

#1180. ロマンス系比較級と共起する比較基準の前置詞 to [preposition][comparison][loan_word]

 石崎陽一先生のアーリーバードの収穫の記事で,興味深い問題が取り上げられていた.prefer という動詞には比較の基準を表わす前置詞として than ならぬ to が用いられる.同様に,similar, equal, preferable, superior, inferior, senior, junior, prior, anterior, posterior, interior, exterior, ulterior などのロマンス系の形容詞にも,比較基準の前置詞として to が用いられる.特に -ior をもつ語は意味的にも形態的にも比較級に相当するにもかかわらず,than ではなく to が伴われる.これには何らかの理由があるのか.歴史的に説明されうるのか.
 まず考えられるのは,superior, senior, prior 等のロマンス系の語は,確かに語源的に比較級の接尾辞をもっているとはいえ,共時的にはそのように分析されておらず,あくまで語彙化したものとしてとらえられている.これらの語は,接尾辞 -er の付加や more の前置により生産的に形成される比較級表現とは異なるものとして mental lexicon に格納されているのではないか.than と構造をなすのは後者の比較級表現だけであり,前者とは結びつかない規則が発達してきたということかもしれない.前者は,むしろ前置詞 to の「比例」「対応」「一致」といった用法の延長線上にある「比較」の用法と結びついてきたように思われる(現代英語の A is to B what C is to D, in proportion to, comparable to, according to, equal to などの表現を参照).
 この問題に迫るに当たって,まず OED を調べてみた.to の語義 A. VI. 21b として,廃用ではあるが,比較級とともに用いられる用法があったと記述されている.中世から近代まで,まばらではあるが than の代用としての例が挙がる.
 次に,MEDto (prep.) を調べた.語義23に,比較級において than の代替表現として to が使用されている例が3つほど挙げられている.特に借用語の形容詞・副詞に限定されているわけではなく,than のマイナー・ヴァリアントと考えられる.いずれも後期中英語からの例だ.
 中英語の状況をもう少し詳しく調べようと,Mustanoja (411--12) に当たると,次のようにある.

Closely connected with this use ['in respect to'] is the occurrence of to in the sense 'equal or comparable to:' --- was þere non to his prowesse (KAlis. 6538). This provides a basis for the use of to with the comparative degree, in the sense 'than:' --- nys none of wymman beter ibore To seint Johan þe baptyste (Shoreham i 590); --- another Decius, yonger to hym (MS Harl. 2261, fol. 225). Cf. present-day inferior to, superior to.


 比較級とともに用いられる to についての関連する言及は Mustanoja (284) にもあるが,OED, MED の記述と合わせて,少なくとも中英語以降に関しては,それほど目立った用法ではなかったようだ.歴史的に比較級とともに用いられてきた前置詞(あるいは接続詞)は,原則として,than だったといってよいだろう(than の語源については,[2012-02-29-1]の記事「#1038. thenthan」を参照).現在でも than は,原則として,用法が比較級表現に限定されており,統語構造の構成要素としての役割が大きい.このような職人気質の than にとって,superior, senior, prior は(語源的には同じ「比較級」とはいえ)少々異質なのではないだろうか.もっとも,議論はそれほど単純ではなく,inferiour . . . than などの例は歴史的に確認されるのではあるが(OED "than, conj." の 2.b を参照).
 than の比較以外の用法については,[2011-05-04-1]の記事「#737. 構文の contamination」の (2), (6) も参照.

 ・ Mustanoja, T. F. A Middle English Syntax. Helsinki: Société Néophilologique, 1960.

Referrer (Inside): [2013-12-13-1]

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