謹賀新年.今年も英語史に関する話題を広く長く提供し続ける「hellog?英語史ブログ」を続けていきます.引き続きよろしくお願いいたします.
2021年に本ブログのどの記事が最もよく読まれたか,調べてみました.12月30日付のアクセス・ランキング (access ranking) のトップ500記事をご覧ください(昨年版と一昨年版については,それぞれ「#4267. 2020年によく読まれた記事」 ([2021-01-01-1]) と「#3901. 2019年によく読まれた記事」 ([2020-01-01-1]) をどうぞ).
「素朴な疑問」系の記事 (sobokunagimon) がよく読まれているようなので,その系列で上位に入っている50件ほどを以下に挙げておきます(各行末の数字は年間アクセス数).お正月の読み物(ラジオの場合は聴き物)としてどうぞ.
・ 「#4188. なぜ sheep の複数形は sheep なのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2020-10-14-1]) (8159)
・ 「#4044. なぜ活字体とブロック体の小文字 <a> の字形は違うのですか?」 ([2020-05-23-1]) (7541)
・ 「#3717. 音声学と音韻論はどう違うのですか?」 ([2019-07-01-1]) (5679)
・ 「#43. なぜ go の過去形が went になるか」 ([2009-06-10-1]) (5164)
・ 「#1299. 英語で「みかん」のことを satsuma というのはなぜか?」 ([2012-11-16-1]) (4807)
・ 「#4017. なぜ前置詞の後では人称代名詞は目的格を取るのですか?」 ([2020-04-26-1]) (3126)
・ 「#1258. なぜ「他動詞」が "transitive verb" なのか」 ([2012-10-06-1]) (2937)
・ 「#3611. なぜ He is to blame. は He is to be blamed. とならないのか?」 ([2019-03-17-1]) (2756)
・ 「#4042. anti- は「アンティ」か「アンタイ」か --- 英語史掲示板での質問」 ([2020-05-21-1]) (2696)
・ 「#2784. なぜアメリカでは英語が唯一の主たる言語となったのか?」 ([2016-12-10-1]) (2511)
・ 「#3747. ケルト人とは何者か」 ([2019-07-31-1) (2304)
・ 「#3677. 英語に関する「素朴な疑問」を集めてみました」 ([2019-05-22-1]) (2226)
・ 「#4272. 世界に言語はいくつあるのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2021-01-06-1]) (2120)
・ 「#2924. 「カステラ」の語源」 ([2017-04-29-1]) (1882)
・ 「#4069. なぜ live の発音は動詞では「リヴ」,形容詞だと「ライヴ」なのですか?」 ([2020-06-17-1]) (1845)
・ 「#2502. なぜ不定詞には to 不定詞 と原形不定詞の2種類があるのか?」 ([2016-03-03-1]) (1801)
・ 「#4060. なぜ「精神」を意味する spirit が「蒸留酒」をも意味するのか?」 ([2020-06-08-1]) (1695)
・ 「#4196. なぜ英語でいびきは zzz なのですか?」 ([2020-10-22-1]) (1598)
・ 「#2618. 文字をもたない言語の数は? (2)」 ([2016-06-27-1]) (1591)
・ 「#2885. なぜ「前置詞+関係代名詞 that」がダメなのか (1)」 ([2017-03-21-1]) (1563)
・ 「#1205. 英語の復権期にフランス借用語が爆発したのはなぜか」 ([2012-08-14-1]) (1539)
・ 「#4233. なぜ quite a few が「かなりの,相当数の」の意味になるのか?」 ([2020-11-28-1]) (1529)
・ 「#4199. なぜ last には「最後の」と「継続する」の意味があるのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2020-10-25-1]) (1526)
・ 「#3648. なんで *He cans swim. のように助動詞には3単現の -s がつかないのですか?」 ([2019-04-23-1]) (1475)
・ 「#3017. industry の2つの語義,「産業」と「勤勉」 (1)」 ([2017-07-31-1]) (1447)
・ 「#3298. なぜ wolf の複数形が wolves なのか? (1)」 ([2018-05-08-1]) (1446)
・ 「#4304. なぜ foot の複数形は feet なのですか?」 ([2021-02-07-1]) (1404)
・ 「#11. 「虹」の比較語源学」 ([2009-05-10-1]) (1398)
・ 「#3941. なぜ hour, honour, honest, heir では h が発音されないのですか?」 ([2020-02-10-1]) (1395)
・ 「#2601. なぜ If I WERE a bird なのか?」 ([2016-06-10-1]) (1360)
・ 「#2105. 英語アルファベットの配列」 ([2015-01-31-1]) (1358)
・ 「#3852. なぜ「新橋」(しんばし)のローマ字表記 Shimbashi には n ではなく m が用いられるのですか? (1)」 ([2019-11-13-1]) (1350)
・ 「#3831. なぜ英語には冠詞があるのですか?」 ([2019-10-23-1]) (1337)
・ 「#103. グリムの法則とは何か」 ([2009-08-08-1]) (1280)
・ 「#3588. -o で終わる名詞の複数形語尾 --- pianos か potatoes か?」 ([2019-02-22-1]) (1270)
・ 「#4195. なぜ船や国名は女性代名詞 she で受けられることがあるのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2020-10-21-1]) (1262)
・ 「#417. 文法化とは?」 ([2010-06-18-1]) (1249)
・ 「#4389. 英語に関する素朴な疑問を2685件集めました」 ([2021-05-03-1]) (1224)
・ 「#423. アルファベットの歴史」 ([2010-06-24-1]) (1211)
・ 「#4186. なぜ Are you a student? に対して *Yes, I'm. ではダメなのですか?」 ([2020-10-12-1]) (1156)
・ 「#4026. なぜ Japanese や Chinese などは単複同形なのですか? (3)」 ([2020-05-05-1]) (1122)
・ 「#3113. アングロサクソン人は本当にイングランドを素早く征服したのか?」 ([2017-11-04-1]) (1062)
・ 「#2891. フランス語 bleu に対して英語 blue なのはなぜか」 ([2017-03-27-1]) (1053)
・ 「#3983. 言語学でいう法 (mood) とは何ですか? (1)」 ([2020-03-23-1]) (1012)
・ 「#47. 所有格か目的格か:myself と himself」 ([2009-06-14-1]) (962)
・ 「#4219. なぜ DX が digital transformation の略記となるのか?」 ([2020-11-14-1]) (938)
・ 「#2200. なぜ *haves, *haved ではなく has, had なのか」 ([2015-05-06-1]) (936)
・ 「#580. island --- なぜこの綴字と発音か」 ([2010-11-28-1]) (925)
・ 「#2189. 時・条件の副詞節における will の不使用」 ([2015-04-25-1]) (920)
・ 「#146. child の複数形が children なわけ」 ([2009-09-20-1]) (890)
新年は学び始めにふさわしい時期でもあります.英語史に関心をもった方,さらに関心をもちたい方は,「#4359. ぜひ英語史学習・教育のために hellog の活用を!(2021年度版)」 ([2021-04-03-1]) および「なぜ英語史を学ぶか」の記事セットをご覧ください.
また,本ブログとは別に,昨年の6月2日に音声配信プラットフォーム Voicy にて「英語の語源が身につくラジオ」と題するチャンネルをオープンしました.耳で学ぶ英語史として毎日配信していますので,こちらも是非お聴きください(cf. 「#4421. 「英語の語源が身につくラジオ」をオープンしました」 ([2021-06-04-1])).
分野別に整理された書誌を専門家が定期的にアップデートしつつ紹介してくれる Oxford Bibliographies より,"Semantic-Pragmatic Change" の項目を参照した(すべてを読むにはサブスクライブが必要).この分野の重鎮といえる Elizabeth Closs Traugott による選で,最新の更新は2020年12月8日となっている.副題に "Your Best Research Starts Here" とあり入門的書誌を予想するかもしれないが,実際には専門的な図書や論文も多く含まれている. *
今回はそのイントロを引用し,この分野の研究のあらましを紹介するにとどめる.
Semantic change is the subfield of historical linguistics that investigates changes in sense. In 1892, the German philosopher Gottlob Frege argued that, although they refer to the same person, Jocasta and Oedipus's mother, are not equivalent because they cannot be substituted for each other in some contexts; they have different "senses" or "values." In contemporary linguistics, most researchers agree that words do not "have" meanings. Rather, words are assigned meanings by speakers and hearers in the context of use. These contexts of use are pragmatic. Therefore, semantic change cannot be understood without reference to pragmatics. It is usually assumed that language-internal pragmatic processes are universal and do not themselves change. What changes is the extent to which the processes are activated at different times, in different contexts, in different communities, and to which they shape semantic and grammatical change. Many linguists distinguish semantic change from change in "lexis" (vocabulary development, often in cultural contexts), although there is inevitably some overlap between the two. Semantic changes occur when speakers attribute new meanings to extant expressions. Changes in lexis occur when speakers add new words to the inventory, e.g., by coinage ("affluenza," a blend of affluent and influenza), or borrowing ("sushi"). Linguists also distinguish organizing principles in research. Starting with the form of a word or phrase and charting changes in the meanings of that the word or phrase is known as ???semasiology???; this is the organizing principle for most historical dictionaries. Starting with a concept and investigating which different expressions can express it is known as "onomasiology"; this is the organizing principle for thesauruses.
意味・語用変化の私家版の書誌としては,3ヶ月ほど前に「#4544. 英単語の意味変化と意味論を研究しようと思った際の取っ掛かり書誌(改訂版)」 ([2021-10-05-1]) を挙げたので,そちらも参照されたい.
皆様,今年も「hellog?英語史ブログ」のお付き合い,ありがとうございました.よいお年をお迎えください.
私が大学で担当している3,4年生を対象とするゼミは「英語史ゼミ」あるいは「フィロロジーゼミ」ということになっています.慶應文学部の専門ゼミは正式には(伝統的かつ大仰に)「研究会」と呼ばれるため,内部では「英語史研究会」や「フィロロジー研究会」,はたまた担当者の名前をとって「堀田研究会」などと呼ばれることもあります(最後のものは,私自身が研究されてしまうかのようで,ゼミ合宿などの折りに貸し切りバスやセミナー室の扉に貼り出されると少々恥ずかしいです).また,大学院でも対応する英語史のゼミがあります.
1年のこの時期は,現学部2年生が来年度以降に所属する専門ゼミを志望し,選考を経て,およそ決定する時期です.来年度の英語史ゼミ所属予定者も,先日,無事に確定しました.来年度もゼミでは広く英語史・英語学の諸問題を扱っていきたいと考えています.
さて,大学・大学院の英語史ゼミの現役メンバーや卒業生・修了生などを中心とするコミュニティとして,khelf (= Keio History of the English Language Forum) という組織が立ち上がっています.ほぼ2年前の2020年1月に発足し,同年11月にはホームページもオープンしました(「#4212. ゼミのホームページがオープンしました」 ([2020-11-07-1])).内輪メンバーからなる組織ではありますが,そこでの英語史学習・研究・教育の様子は可能な範囲で一般に公表していくという方針をとっています.この2年間のゼミ活動の足跡も,いくつかコンテンツ化されたものが上記ホームページ上に公開されていますので,ゼミ所属予定者はじっくりと読んでおいてください.また,また,本ブログを読んでいただいている一般の方々も,こんなことまでもが英語史・英語学の話題になり得るのかと,その幅広さを味わってみてください.
とりわけ,ゼミ生が英語史・英語学のどのような話題に関心をもっているかを眺めてもらえればと思います.この11月にはゼミ生研究テーマ紹介ページが設けられました.テーマ紹介となるコンテンツの作成に当たっては,各ゼミ生に前もってウェブ上での一般公開を前提とするので分かりやすい紹介コンテンツとなるように工夫してくださいと述べてありました.ですので,大学院生の研究テーマなども,本当はいずれも専門的で難解なテーマではありますが,通常よりもずっと分かりやすく紹介されています.昨年度のゼミ生(=卒業生)の卒論題目なども掲載されています.過年度のゼミ生の卒論題目については,合わせて sotsuron の各記事もご参照ください.
私は英語史を学習し,研究し,教える立場にある.教える立場から「英語史教育」という表現をしばしば用いるのだが,この表現は実際には多義的だと考えている.通常は「英語史を教えること」と解釈されるが,「英語史で(何か別のことを)教える」と解釈することもできる.後者の典型は「英語史の知見を活用して英語を教える」ことだろう.教わる立場からすれば「英語史を教わるのか」あるいは「英語史で教わるのか」という違いである.
この2つの区別を念頭に置きつつ,「誰が,何を通じて,何を,誰に,何のために,教えるのか」という文の各項に語句を流し込んでいくと,私が思いつく限り,議論に値するとおぼしき組み合わせが5種類あった.
(1) 英語史研究者が 英語史を 英語史専攻学生に 英語史研究のために 教える.
(2) 英語史研究者が 英語史を 英語教員に 英語教育のために 教える.
(3) 英語史研究者が 英語史を 英語学習者に 英語学習のために 教える.
(4) 英語史研究者が 英語史を 一般の人々に 教養のために 教える.
(5) 英語教員が 英語史を通じて 生徒・学生に 英語を 教える.
英語史研究者でもあり英語教員でもある私の私的な見解にすぎないので,他にも様々な組み合わせの可能性があるだろう(あれば教えてください).私自身としては5つのすべてについて多かれ少なかれ何らかの教育経験がある.本ブログや「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」も,ランダムではあるが,およそ5つのすべてに関わっている.とはいえ,普段の活動の基本は (1), (3), (4) 辺りに置いていると自己分析している.
(4) で「教養」という表現を敢えて用いたが,これが指す範囲はきわめて広い.言語,文学,歴史,文化,思考法,等々.英語史が専門科目であると同時に教養科目でもあることについては,「#3641. 英語史のすゝめ (1) --- 英語史は教養的な学問領域」 ([2019-04-16-1]),「#3642. 英語史のすゝめ (2) --- 英語史は教養的な学問領域」 ([2019-04-17-1]) を参照されたい.また「#4329. 「英語史の知見を活かした英語教育」について参考文献をいくつか」 ([2021-03-04-1]) もご覧ください.
英語史のミニマムエッセンシャルを挙げなさいといわれたら,どのような項目を挙げるか.「#4084. 英語史のために必要なミニマルな言語学的知識」 ([2020-07-02-1]) や「#4143. 英語史のキーワードを10個挙げなさいといわれたら?」 ([2020-08-30-1]) でも似たような話題を取り上げてきたが,今回は私自身が試しに考えたものを掲げたい.
キーワードというよりはフレーズでの項目列挙となったが,第1階層だけ考えれば見出しは5項目までに圧縮される.第2階層まで数えると,見出しは20項目となる.第3階層まですべて含めると,見出しは34項目.
30分ほどで作ってみた暫定版の私案だが,今後これを精緻化してアップデートいくのもおもしろそうだ.ここで行なっていることは,要するに,英語史概説の講義や本を作るとなったら,どのような章立てを設けるかということである.各人の英語史観や狙いが如実に反映されたものになるはずで,皆で出し合ってみるとエキサイティングだろう.皆さんの英語史ミニマムエッセンシャルはいかがでしょうか?
今週末の11月20日(土) 13:00?14:30 に,立命館大学国際言語文化研究所の主催する「国際英語文化の多様性に関する学際研究」プロジェクトの一環として「世界の "English" から "Englishes" の世界へ」のタイトルでお話しさせていただきます(立命館大学の岡本広毅先生を始め関係の方々に感謝いたします).対面と Zoom によるハイブリッド形式の講演会となっています(当日は Zoom による一般参加も可).詳しくはこちらの案内をどうぞ. *
昨今 "Englishes" や "World Englishes" という表現がよく聞かれるようになってきました."Englishes" という新表現は,英語が複数変種として存在するという事実を表わしている以上に,人々の英語に対する認識が変わってきていることを示しているのではないかと私は考えています.本講演では,英語の歴史を通じて様々な英語変種が生まれてきた過程を概観し,現在英語に作用している求心力と遠心力について議論します.英語が歴史の最初から現在に至るまで(そして,おそらく未来にかけても)常に複数形で存在してきたことを,様々な具体例とともに示していく予定です.
皆さんの英語観が,これまでの単数形の "English" から,複数形の "Englishes" へと変わっていく契機になるのではないかと期待しています.主たるオーディエンスとなる立命館大学国際コミュニケーション学域の皆さんとの議論も楽しみにしています.関心のある一般の方も,ぜひどうぞ.
先週より,NHK連続テレビ小説(朝ドラ)の新シリーズが始まっています.『カムカムエヴリバディ』です.「カムカム英語」として名をはせたラジオ英会話の昭和史とともに,3世代にわたるヒロインの人生を描く朝ドラです.斜めからではありますが日本における英語受容史を描いているという点で,本ブログの読者の皆さんにも一推ししておきたいと思います.第2週目ですので,まだ見ていない方も十分に追いつけます.なお,今後登場してくるはずのラジオ英会話の平川唯一は,英語受容史上に名を残す重要な存在です (cf. 「#3695. 日本における英語関係史の略年表」 ([2019-06-09-1])) .
日本における英語受容史ということですので,大きくいえば日本の言語文化史の話題となりましょうか.もう少し言語学に寄せていえば,日本における諸言語使用の歴史というところかと思います.
しかし,見方によっては英語史の話題ともなり得ます.近現代において英語が世界的拡大を進めるなかで,○○国にはどのような過程で英語が食い込んでいったのか,という観点からみると,周辺的ではありますが一応英語史のテーマとなり得ます.昨今の英語史では近現代の世界英語 (world_englishes) への関心が著しく高まっていますが,この機会に,日本を舞台とする英語拡大史の一環を「カムカム英語」を通じて振り返ってみるのもおもしろいと思います.
ということで,私としては向こう半年ほど,日本の英語受容史の観点と英語史の観点を織り交ぜて意識しながら,この朝ドラを追いかけていきたいと思っています.脚本家も役者も素晴らしいですしね.皆さんも,ぜひどうぞ.
ちなみに,朝ドラと連動する形で,NHKラジオではこの11月1日より新講座として「ラジオで!カムカムエヴリバディ」も開講されているようです.テキストでは「日本人と英語講座の100年の歩み」と題する連載も始まっており,実に楽しみです.朝ドラ,英会話学習,英語受容史の記事で,3倍(以上)楽しめるのではないでしょうか.それはそうと,私自身がNHKラジオの別の講座『中高生の基礎英語 in English』のテキストに毎月寄稿している連載「歴史で謎解き 英語のソボクな疑問」もよろしくお願いしますね(笑).
それにしても,朝ドラの第1週目は展開が甘酸っぱすぎて,オジサンの私には刺激が強すぎました,しかも朝から(泣).第2週も引き続きキツそうですので,昭和らしく正座してテレビに向かおうと思います.
昨日の記事「#4570. 英語史は高校英語の新学習指導要領において正当に評価されている」 ([2021-10-31-1]) と連動して,大学における英語の教職科目についても,英語史の重要性が正当に評価されている事実を紹介しておきたい. *
文部科学省は「外国語(英語)コアカリキュラムについて」という文書にて「英語科に関する専門的事項」の方針を述べている (7--9) .そこでは「英語コミュニケーション」「英語学」「英語文学」「異文化理解」の4つの系列の各々に学習目標と到達目標が定められているのだが,注目すべきは「英語学」に関する文言である.同文書の p. 8 より引用する.
◇学習項目
(1) 英語の音声の仕組み
(2) 英文法
(3) 英語の歴史的変遷,国際共通語としての英語
◇到達目標
1) 英語の音声の仕組みについて理解している.
2) 英語の文法について理解している.
3) 英語の歴史的変遷及び国際共通語としての英語の実態について理解している.
それぞれの第3項目にみえる「英語の歴史的変遷」は,まずもって英語史という領域が扱ってきた伝統的な領域であることは言うまでもない.同じく「国際共通語としての英語」も,近年の社会言語学的な知見を取り入れた英語史の得意とする分野である.3項目のうちの1つを担っている点が重要である.(さらにいえば,第1,2項目の英語の音声や文法も,当然ながら英語史の領域でしっかり(以上に)カバーしている.)
このように英語史が日本の英語教育において正当に評価されていることは素晴らしいことだと思う.私も英語史が英語教育におおいに貢献できることをこれからも示していきたいし,多くの英語教育関係者の方々には,ぜひ英語史に関心を寄せていただければと切に思う次第です.
英語教育や英語史の界隈ではある程度知られていることだが,平成30年(2018年)に告示された「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 外国語編 英語編 平成30年7月」では,英語史の重要性が正当に評価されている.高校における英語科のいわゆる新指導要領において,英語史の役割がしっかり認められているということだ. *
「第3章第1節 指導計画作成上の配慮事項」の第7項 (214--15) に次のような文言が見える.
(7)言語能力の向上を図る観点から,言語活動などにおいて国語科と連携を図り,指導の効果を高めるとともに,日本語と英語の語彙や表現,論理の展開などの違いや共通点に気付かせ,その背景にある歴史や文化,習慣などに対する理解が深められるよう工夫をすること.
日本語や英語の背景にある「歴史や文化,習慣」への理解を促すためには,日本語史や英語史の知見が求められるということである.この後に,次のような説明書きも続く (215) .
この配慮事項は,言語能力の向上が,学校における学びの質や,教育課程全体における資質・能力の育成に関わる重要な課題であるという平成28年度12月の中央教育審議会答申に基づき,国語科の指導内容とのつながりについて述べたものである.
国語教育と英語教育は,学習の対象となる言語は異なるが,共に言語能力の向上を目指すものであるため,共通する指導内容や指導方法を扱う場面がある.各学校において指導内容や指導方法等を適切に連携させることによって,英語教育を通して日本語の特徴に気付いたり,国語教育を通して英語の特徴に気付いたりするなど,日本語と英語の言語としての共通性や固有の特徴への気付きを促すことにより,言語能力の効果的な育成につなげていくことが重要である.
「日本語と英語の言語としての共通性や固有の特徴への気付き」を促すことは,まさに日本において英語学や英語史が従来担ってきた役割でもある.
次に「第3章第2節 内容の取扱いに当たっての配慮事項」の第4項に注目したい (217) .
(4)現代の標準的な英語によること.ただし,様々な英語が国際的に広くコミュニケーションの手段として使われている実態にも配慮すること.
標準英語とともに,世界英語 (world_englishes) の存在にも注意を払うべきことが明記されている.様々な英語が存在し,尊重されるべきであることは,英語史を通じて最も効果的に理解することができる.昨今の英語史研究において,世界英語への関心が著しく高まってきていることは「#4558. 英語史と世界英語」 ([2021-10-19-1]) などでも触れてきた通りである.
「第3章第3節 教材についての配慮事項」の第2項には,より直接的に英語史に関わる文言が確認される (219) .
(2)英語を使用している人々を中心とする世界の人々や日本人の日常生活,風俗習慣,物語,地理,歴史,伝統文化,自然科学などに関するものの中から,生徒の発達の段階や興味・関心に即して適切な題材を効果的に取り上げるものとし,次の観点に配慮すること.〔後略〕
このように英語史は,新学習指導要領において正当に評価されており,重要な役割が認められていることを強調しておきたい.
昨日と今日の2日間,私の Voicy の番組 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」で古英語(期)の超入門をお届けしています.10分×2回の短いものです.現代の英語は知っているけれども古い英語はまったく初めて,という多くの方々に向けて,古英語期とはどんな時代なのか,古英語とはどんな言語なのかについて,おしゃべりしています.
1本目の「古英語期ってどんな時代?」では,英語の始まりから説き起こして,英語の歴史の時代区分,そして古英語期といわれる5?12世紀のイングランドについて,駆け足で独りごちました.
2本目の「対談 『毎日古英語』のまさにゃんと,古英語ってどんな言語?」では,日本初の古英語系 YouTuber であるまさにゃんとインフォーマルな対談を通じて,古英語という言語の特徴を紹介しました.
ちなみに,最近まさにゃんは「まさにゃんチャンネル」にて,シリーズ「毎日古英語」を精力的に展開しています.今回の heldio 対談は古英語の超入門のみで終わっていますので,関心をもった方はぜひ「毎日古英語」で具体的な古英語にテキストに触れてみてください.なお,本ブログでも1年半ほど前に「#4005. オンラインの「まさにゃんチャンネル」 --- 英語史の観点から英単語を学ぶ」 ([2020-04-14-1]) で紹介しています.
去る9月21日,22日の両日,昨年に引き続きオンライン開催となりましたが,学部・大学院のゼミ合宿を実施しました.本ブログでも「#4530. 今年度のオンラインゼミ合宿の1日目」 ([2021-09-21-1]) と「#4531. 「World Englishes 入門」スライド --- オンラインゼミ合宿の2日目の講義より」 ([2021-09-22-1]) で簡単に報告した通りですが,2日間にわたるゼミ合宿では様々なイベントを催行しました.
そのなかの目玉の1つが,4大学合同で開催したオンラインの「英語史コンテンツ展覧会」でした(具体的には学習院大学,専修大学,明治学院大学,慶應義塾大学).学生が事前に英語史に関して調べたコンテンツ(雑談以上でレポート以下,ただし学術のルールに則って参考文献などはしっかり付すこと,という仕様)を匿名で公表し,決められた時間内にお互いに読み合って,ツイート風にコメントするというライヴ企画です.
展覧会の後には出展者である学生同士で投票を行ない,おもしろかったコンテンツを選出するという仕掛けも設けました.そのベスト10コンテンツ(実際には順位タイも含めて12件)が決まりましたので,一般にも公開したいと思います.khelf (= Keio History of the English Language Forum) のサイトに展覧会用特設ページを設けました.
ぜひ学生たちの柔軟な好奇心と鋭い問題意識,英語史の幅広さと奥深さ,遊び心からスタートする学びの素晴らしさをご堪能ください.以下にもラインアップを示しておきます.軽めで読みやすいものから調査を尽くした力作まで,硬軟のコンテンツが揃っています.なにせ出展者は学部2年生から博士課程シニアの学生までと幅広く,本当に感心するほど多岐にわたっておもしろいです!
・ "dog" に対する「人間」のイメージ
・ I think, I think うっせえわ
・ 主語と時制を無視するスラング 'ain't'
・ 「はい,チーズ!」 じゃなきゃダメなんですか?
・ フリーランスと騎士
・ 自分の名前を紹介するときどちらを使うか?
・ 語源から考える人間像
・ どっちそっち「チラ見」?
・ ちゃんと「カンパイ」出来ていますか?
・ アナ雪『Let It Go』はなぜ“ありのまま”と訳される?
・ 5文型の先の世界
・ ニューヨークの地名から見る英語史
英語史教育・学習の一環として行なった企画です.趣旨を理解していただき,ぜひ楽しんでお読みいただければ幸いです.
昨日の記事「#4557. 「英語史への招待:入門書10選」」 ([2021-10-18-1]) で,明治学院大学で英語史の授業を担当している泉類尚貴氏による推薦書を紹介させていただきました.その中で7番目の書籍である鳥飼玖美子(著)『国際共通語としての英語』(講談社現代新書,2011年)が意外性をもって受け取られるかもしれません.タイトルからは確かに英語を巡る重要な問題であることは分かるのですが,英語史とどのように関わるのかという疑問が浮かぶのではないでしょうか.この点を確認すべく,昨日に引き続き「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて同氏と対談しました.「対談 英語史×国際英語」というお題です.以下よりどうぞ.
英語史の領域では近年,世界英語 (world_englishes) への関心が急上昇しています.私自身も食らいついていかなければと思い,にわか勉強を始めているわけですが,急激なオンライン・リソースの拡大も相まって,すでに分野を一望するのも難しい水準にまで膨張しています.関心はあってもどこから始めたらよいかと迷うのも無理もありません.
私のお勧め図書としては,唐澤一友(著)『世界の英語ができるまで』(亜紀書房,2016年)を挙げておきます.本ブログでも world_englishes や model_of_englishes にて関連する記事を多く書いてきましたが,比較的最近書いた記事をピックアップすると,次のようなラインアップになります.
・ 「#4531. 「World Englishes 入門」スライド --- オンラインゼミ合宿の2日目の講義より」 ([2021-09-22-1])
・ 「#4466. World Englishes への6つのアプローチ」 ([2021-07-19-1])
・ 「#4506. World Englishes の全体的傾向3点」 ([2021-08-28-1])
・ 「#4507. World Englishes の類型論への2つのアプローチ」 ([2021-08-29-1])
・ 「#4508. World Englishes のコーパス研究の未来」 ([2021-08-30-1])
・ 「#4169. GloWbE --- Corpus of Global Web-Based English」 ([2020-09-25-1])
・ 「#4492. 世界の英語変種の整理法 --- Gupta の5タイプ」 ([2021-08-14-1])
・ 「#4493. 世界の英語変種の整理法 --- Mesthrie and Bhatt の12タイプ」 ([2021-08-15-1])
・ 「#4501. 世界の英語変種の整理法 --- McArthur の "Hub-and-Spokes" モデル」 ([2021-08-23-1])
・ 「#4502. 世界の英語変種の整理法 --- Görlach の "Hub-and-Spokes" モデル」 ([2021-08-24-1])
世界英語を扱うオンライン・コーパスとしては,上にも触れた GloWbE (= Corpus of Global Web-Based English) を入り口としてお勧めします.このコーパスについては,専修大学文学部英語英米語学科の菊地翔太先生のHPより,こちらのページに関連情報があります.ちなみに菊地翔太先生のHPを探検し紹介するコンテンツ「菊地先生のホームページを訪れてみよう 」を大学院生が作ってくれましたので,こちらもお勧めしておきます.
昨日,青山英語史研究会(青山学院大学・寺澤盾先生主催)がオンラインで開催されました.「研究会」とはいうものの,今回は英語史を学ぶ大学生を主たるオーディエンスとして想定し,英語史の学びをエンカレッジする様々な企画が組まれました.私も参加させていただきましたが,たいへん実りの多い会となりました.ありがとうございます.
プログラムの1つとして,明治学院大学で英語史の授業を担当している泉類尚貴氏による「英語史への招待:入門書10選」が紹介されました.氏の許可を得て,そのリスト(実際にはオマケ付きで11冊)を以下に掲載します.氏によると,この順序で手に取ってみることをお勧めするとのことです.
ちなみに泉類氏とは,本日の「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて同じ話題で対談していますので,こちらも是非お聴きください.推薦書リストというものは,選者による簡単な解説があるだけでも説得力が増しますね.
・ 寺澤 盾 『英語の歴史:過去から未来への物語』 中公新書,2008年.
・ 家入 葉子 『ベーシック英語史』 ひつじ書房,2007年.
・ 堀田 隆一 『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史』 研究社,2016年.
・ 唐澤 一友 『英語のルーツ』 春風社,2011年.
・ 唐澤 一友 『世界の英語ができるまで』 亜紀書房,2016年.
・ 寺澤 盾 『聖書でたどる英語の歴史』 大修館書店,2013年.
・ 鳥飼 玖美子 『国際共通語としての英語』 講談社現代新書,2011年.
・ 西村 秀夫 編 『コーパスと英語史』 ひつじ書房,2019年.
・ 高田 博行・渋谷 勝巳・家入 葉子(編著) 『歴史社会言語学入門』 大修館書店,2015年.
・ Baugh, A. C. and T. Cable. A History of the English Language. 6th ed. Routledge, 2013.
・ Crystal, D. The Cambridge Encyclopedia of the English Language. 3rd ed. CUP, 2018.
番外編として,参考になるウェブサイトということで以下の4点も紹介されました.
・ TED Ed
・ YouTube 「まさにゃんチャンネル」
・ 「hellog?英語史ブログ」
・ khelf (= Keio History of the English Language Forum)
以上,英語史の学びのエンカレッジでした.昨日の記事「#4556. 英語史の世界にようこそ」 ([2021-10-17-1]) も合わせてどうぞ.
学期の始めなので,標題のような「英語史の学びのエンカレッジ系」の記事が多くなります.最近では「#4546. 新学期の始まりに,英語史の学び方」 ([2021-10-07-1]) も書いており,本ブログの記事などに関連するリンクを多々張っていますので,詳しくは是非そちらもご覧ください.今回は先の記事から重要な6点のみピックアップし,改めて英語史への入り口を案内します.
(1) 私(堀田隆一)の考える「英語史の魅力」はズバリこれ.
1. 英語の見方が180度変わる!
2. 英語と歴史(社会科)がミックスした不思議な感覚の科目!
3. 素朴な疑問こそがおもしろい!
4. 英語が本当によく分かるようになる!
(2) 上記の「素朴な疑問こそがおもしろい!」は本当です.「#1093. 英語に関する素朴な疑問を募集」 ([2012-04-24-1]) に挙げたような疑問が,英語史によりスルスルと解けていきます.それでも足りない方は「#4389. 英語に関する素朴な疑問を2685件集めました」 ([2021-05-03-1]) でどうでしょう!
(3) 本ブログ「hellog?英語史ブログ」は「英語史に関する話題を広く長く提供し続けるブログ」として2009年5月1日に立ち上げたものです.大学の英語史概説の講義に対する補助的な読み物を提供する趣旨で始めました.日々の記事の種類は多岐にわたり,英語を学び始めたばかりの中学生などを読者と想定した話題もあれば,大学院博士課程の学生を念頭においた学術的な話題もあります.書き手以外何を言っているか分からないという話題も少なくないと思います,失礼! それでも,ぜひ毎日タイトルだけでも目を通していれば,英語史のカバーする範囲の広さが分かってくると思います.毎日タイトルをお届けするツイッターアカウントもあります.
(4) 本ブログの姉妹版・音声版として「hellog ラジオ版 (hellog-radio)」(2020年6月23日?2021年2月7日に不定期で),および続編である「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」(2021年6月2日より現在まで毎日定期的に)を配信しています.hellog に比べ,話題は「英語に関する素朴な疑問」におよそ特化しています.各放送は10分以内の短い英語史ネタです.ぜひこれを聞くことを日課にどうぞ! ちなみに本日の放送では,上記 (1) を熱く語っています.
今年度も後期が始まる時期となりました.年度初めの4月に,本ブログでは英語史の学びのモチベーションを高めるキャンペーンを張ったのですが,この学期初めの10月にも,改めて英語史の学びを促すべく広報したいと思います.
まず,私が新年度あるいは新学期の初回の授業で必ず述べることにしている「英語史」の魅力4点を明記します.
--- 英語史の魅力 ---
(1) 英語の見方が180度変わる!
(2) 英語と歴史(社会科)がミックスした不思議な感覚の科目!
(3) 素朴な疑問こそがおもしろい!
(4) 現代英語に戻ってくる英語史
以下に,上記4点とも密接に関わる,英語史の学びに役立つ本ブログからの記事をいくつか紹介します.
・ 「#4358. 英語史概説書等の書誌(2021年度版)」 ([2021-04-02-1]) --- 入門書から専門書までの厳選書誌
・ 「#4359. ぜひ英語史学習・教育のために hellog の活用を!(2021年度版)」 ([2021-04-03-1]) --- この hellog の効果的な使い方の tips
・ 「#4421. 「英語の語源が身につくラジオ」をオープンしました」 ([2021-06-04-1]) --- hellog の音声版というべき「英語の語源が身につくラジオ」 (heldio) を Voicy にて毎日配信中.1本10分未満で英語史の話題をお届けしています.
・ 「#4360. 英単語の語源を調べたい/学びたいときには」 ([2021-04-04-1]) --- 皆が関心をもつ英単語の語源の話題.自らどんどん調べてみてください.
・ 「#4361. 英語史は「英語の歴史」というよりも「英語と歴史」」 ([2021-04-05-1]) --- 上記の魅力 (2) に通じる話です
・ 「#1093. 英語に関する素朴な疑問を募集」 ([2012-04-24-1]) --- 上記の魅力 (3) に通じる話です
・ 「#4389. 英語に関する素朴な疑問を2685件集めました」 ([2021-05-03-1]) --- おびただしい疑問の一覧は直接こちらからどうぞ
・ 「#4545. 「英語はいかにして世界の共通語になったのか」 --- IIBC のインタビュー」 ([2021-10-06-1]) --- 英語史に関する究極の疑問かもしれません.インタビューに基づいたわかりやすい解説になっています.直接こちらからどうぞ.
・ 「なぜ英語史を学ぶのか」の記事セット --- 様々な角度から検討してみました.「英語史って何のため?」 (heldio) でもしゃべっています.
・ 「#4417. 「英語史導入企画2021」が終了しました」 ([2021-05-31-1]) --- 今年度初めに企画した英語史の学びを応援するイベント.すでに終了していますが「英語史コンテンツ」とは何かがよく分かります.
皆さん,今学期も実り多い学びを!
先日,TOEIC 事業などを手がける IIBC (一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会)の Newsletter 44号のために,標題についてのインタビューを受けました.10月19日が「TOEIC の日」に制定されたそうで,その特別企画としての取材でした.(関係者の皆様,夏の暑い時期でしたが,私の研究室までお運びいただきありがとうございました.)
冊子体でも発行されているのですが,ウェブでも公表されています.こちらよりご一読ください.英語史超入門ともなっています.(ゲルマン語系統図や英語史略年表も,とてもきれいに作っていただきました.あ,それから写真も.)
標題の素朴な疑問への答えはインタビュー記事を読んでいただければ分かるわけですが,かいつまんでいえば英米両国の覇権という社会的な要因がほぼすべてです.英語の語彙が豊かだからとか,文法が簡単だからとか,その他の英語の言語的特質に起因するものでは決してありません.この点は拙著や本ブログでも繰り返し主張してきました.以下は関連する記事群です.
・ 「#1072. 英語は言語として特にすぐれているわけではない」 ([2012-04-03-1])
・ 「#1082. なぜ英語は世界語となったか (1)」 ([2012-04-13-1])
・ 「#1083. なぜ英語は世界語となったか (2)」 ([2012-04-14-1])
・ 「#1607. 英語教育の政治的側面」 ([2013-09-20-1])
・ 「#1788. 超民族語の出現と拡大に関与する状況と要因」 ([2014-03-20-1])
・ 「#2487. ある言語の重要性とは,その社会的な力のことである」 ([2016-02-17-1])
・ 「#2673. 「現代世界における英語の重要性は世界中の人々にとっての有用性にこそある」」 ([2016-08-21-1])
・ 「#2935. 「軍事・経済・宗教―――言語が普及する三つの要素」」 ([2017-05-10-1])
・ 「#3470. 言語戦争の勝敗は何にかかっているか?」 ([2018-10-27-1])
・ 「#4279. なぜ英語は世界語となっているのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2021-01-13-1])
インタビューの後半では,むしろ今後英語がどうなっていくのかという問題も熱く論じました.これについては future_of_english の記事群をどうぞ.
一昨日,昨日と「khelf-conference-2021」と題する拡大版ゼミ合宿(オンライン)を開催し,無事に終了しました.たいへん濃密で充実した学びの時間となりました.ゼミ外部から参加していただいた方々にも,お礼申し上げます.
さて,新学期が始まる時期ということもありますし,英語史の学びを促してくれるHPを1つ紹介したいと思います.昨日のゼミ合宿でもお世話になった専修大学文学部英語英米語学科の菊地翔太先生のHPです.ご専門は初期近代英語期の社会言語学的研究ですが,英語史全般について,とりわけ授業関連のページに有用な情報が詰まっています.英語史に関して学べるサイトのリンク集や,ご専門の Shakespeare 関連の情報が含まれますが,とりわけ英語史関連の動画への案内が豊富です.
また,GloWbE (= Corpus of Global Web-Based English) 関連の情報がまとまっているこちらのページも,コーパスの使い方を学ぶ上で非常に参考になります.
今後,HP を充実してゆく予定とのことで,ますます楽しみです.(本ブログ記事にもたびたび言及していただいています,ありがとうございます!)
(後記 2021/10/18(Mon):菊地翔太先生の HP を探検し紹介するコンテンツ「菊地先生のホームページを訪れてみよう 」を大学院生が作ってくれました.こちらもご覧ください.)
昨日と今日,私のゼミのオンライン合宿が行なわれています.2日目の今日は,様々な活動の間に,私の「World Englishes 入門」が挟まります.趣旨としては,次の通りです.
英語が複数形で "Englishes" として用いられるようになって久しい.現在,世界中で使われている様々な種類の英語を総称して "World Englishes" ということも多くなり,学問的な関心も高まってきている.本講演では,いかにして英語が世界中に拡散し,World Englishes が出現するに至ったのか,その歴史を概観する.そして,私たちが英語使用者・学習者・教育者・研究者として World Englishes に対してどのような態度で向き合えばよいのかについて議論する.
準備したスライドをこちらに公開します.以下にスライドの各ページへのリンクも張っておきますので,復習などにご利用ください.
1. World Englishes 入門 for khelf-conference-2021
2. World Englishes 入門 --- どう向き合えばよいのか?
3. 目次
4. 1. はじめに --- 世界に広がる英語
5. 2. イギリスから世界へ
6. 関連年表
7. 3. 様々な英語
8. ピジン語とクレオール語
9. 4. 英語に働く求心力と遠心力
10. 5. 世界英語のモデル
11. おわりに
12. 参考文献
今日と明日,慶應義塾大学文学部英米文学専攻で英語史・英語学を学ぶ堀田隆一ゼミのゼミ合宿がオンラインで開催されます.昨年度に引き続き,コロナ禍により通常の泊まりがけのゼミ合宿はかなわず,オンラインでの開催となりますが,オンラインの良さを活かしたメニューで,充実の2日間にしたいと思っています.
本ブログを読まれている皆さんには,この機会に上記ゼミで英語史に関して行なっている研究・教育活動について広報させていただきたいと思います.大学の1ゼミにすぎないのですが少々外向きの活動も行なってきていまして,今後もそのような活動の比重を高めたいと思っています.ゼミを構成する学部生・院生に,卒業生等の少数の関係者も加わって,khelf (= Keio History of the English Language Forum) と自称して活動しています.ホームページ制作班により khelf のホームページも昨年度から立ち上がっており,今後も少しずつコンテンツを増やしていく予定です.
今年度のこれまでの最大の活動としては,4月の年度初めから2ヶ月にわたってほぼ毎日継続した「英語史導入企画2021」が挙げられます.目下,年度後半が始まるタイミングでもありますし,年度初めの意気を蘇らせるためにも,その趣旨を改めて思い起こしておきたいと思います.
年度初めの4月,5月は,学生も教員も一般人も新しい学びに積極的になる時期です.そこで,英語史を専攻する私たち khelf メンバー(大学院と学部のゼミ生たちが中心)が発信元となって,英語史という分野とその魅力を世の中に広く伝えるべく,何らかの「コンテンツ」を毎日1つずつウェブ上に公表していこうという「英語史導入企画2021」を立てました.
4月5日(月)から始めて5月下旬まで,日曜日を除く毎日更新していく予定です.「こんなに身近なトピックが英語史の入口になり得るのか」とか「こんな他愛のない問題について真剣に学問している集団があるのか」とか,様々に感じてもらい,英語史に関心をもってもらえればと思います.
この企画を通じて,日々 khelf メンバーから英語史に関するエッセイ風コンテンツがアップロードされ,最終的には49件のコンテンツが集まりました.幸い多くの方に目を通していただき,それが励みとなって khelf メンバーの学習・研究の士気も大いに上がりました.本ブログの読者の皆様にも改めて感謝いたします.コンテンツのアーカイブは常にオープンしていますので,どうぞいつでもご閲覧ください.
今後どのような企画を立ち上げていくかなども,今日明日のゼミ合宿で話し合いたいと思っています.khelf 活動につきまして,今後ともご支援とご協力のほどよろしくお願いいたします.
一昨日,音声配信プラットフォーム Voicy にて「英語の語源が身につくラジオ」と題するチャンネルをオープンしました.本ブログとも部分的に連携しつつ,英語史に関するコンテンツを広くお届けする試みとして始めました.一昨日,昨日と,10分弱の音声コンテンツを2本配信していますので,そちらをご案内します.
1. 「なぜ A pen なのに AN apple なの?」
2. 「flower (花)と flour (小麦粉)は同語源!」
チャンネル設立の趣旨は,Voicy 公式ページに掲載していますが,以下の通りです.
英語の歴史を研究しています,慶應義塾大学の堀田隆一(ほったりゅういち)です.このチャンネルでは,英語に関する素朴な疑問を入口として,リスナーの皆さんを広く深い英語史の世界に招待します.とりわけ語源の話題が満載です.
英語史と聞くと難しそう!と思うかもしれませんが,心配いりません.実は皆さんが英語に対して日常的に抱いているナゼに易しく答えてくれる頼もしい味方なのです.
なぜアルファベットは26文字なの? なぜ man の複数形は men なの? なぜ3単現の s なんてあるの? なぜ go の過去形は went なの? なぜ英語はこんなに世界中で使われているの?
英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も教えてくれなかった数々の謎が,スルスルと解決していく快感を味わってください.ついでに,英語の豆知識を得るにとどまらず,言葉の新しい見方にも気づくことになると思います.
本チャンネルと同じような趣旨で,毎日「hellog?英語史ブログ」を更新しています.合わせてご覧ください.なおハッシュタグの #heldio は,"The History of the English Language Radio" にちなみます.
基本的には,これまで私が本ブログ,著書,雑誌記事,大学教育,公開講座などで一貫して行なってきた「英語史の魅力を伝える」という活動の延長です.メディア,オーディエンス,スタイルは変わるかもしれませんが,この方針は変わりません.
チャンネル設立の背景について,もう少し述べておきたいと思います.昨年度,大学などでオンライン初年度となったことと関連して,通常の文章によるブログ記事の配信に加えて,音声版記事を「hellog ラジオ版」として配信する試みを始めました.主として英語に関する素朴な疑問に答えるという趣旨で,学期中は定期的に,学期外はやや不定期ですが継続してきました.結果として,数分から10分程度の長さの音声コンテンツが62本蓄積されました.
学生などから様々なフィードバックをもらって分かったことは,発音に関するトピックは音声コンテンツのほうが伝わりやすいということです.当たり前といえば当たり前の話しですが,私はナルホドと深くうなずきました.私自身は英語の綴字と発音の関係に大きな関心を寄せており,音声の話題はよく取り上げるのですが,文章ブログでは発音を発音記号で表現しなければならず,実際に口で発音すればすぐに伝わるものが容易に伝わらないもどかしさを,どこかで感じていました.そのような折に,試しに音声コンテンツを作ってみたら,発音の話題と相性が良いという当たり前のことに改めて気づいた次第です.逆に音声メディアでは綴字については語りにくいという側面もあり,一長一短ではあるのですが,従来の文章ベースの本ブログと平行して,音声ベースのブログがあるとよいと考えました.
昨年度は手弁当で「hellog ラジオ版」を作ってきましたが,昨今ウェブ上で音声配信プラットフォームが充実してきているという流れを受け,収録・配信の便を念頭に Voicy を通じて配信することに致しました.
本「hellog?英語史ブログ」では,高度に専門的な話題から中学生も読める話題まで,日々気の向くままに様々なレベルで書いているのですが,音声コンテンツとなると「素朴な疑問」系の話題や単語の語源に関する話題が多くなるかと思います.今後具体的にどのような感じになっていくのかは私も分からないのですが,基本方針としては「英語史に関する話題を広く長く提供し続ける」趣旨で,本ブログの姉妹版のような位置づけとなっていけばよいなと思っています.通称/ハッシュタグを「#heldio」 (= "The History of the English Language Radio") としたのも,本ブログとの連携を念頭に置いた上での命名です.
今後とも,本「hellog?英語史ブログ」と合わせて,「英語の語源が身につくラジオ」のほうもよろしくお願い申し上げます.
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